
部署単位でのMVVI作成・浸透・実践で組織が変わるには?〜ビジネスエンジニアリングの事例に学ぶ〜

商品開発本部でのMVVI作成に携わって4年目に突入。当初からリーダーとして推進を担っている。

2019年に中途入社。自社製品ドキュメントや製品ラベルの翻訳を担当。MVVIの活動には、途中から推進メンバーとして参加している。

2008年に新卒入社。自社製品の設計や開発を担当。MVVIの活動には、初期推進メンバーの1人として2020年から活動している。
Wevoxをはじめ、さまざまな施策を通してエンゲージメントに取り組むビジネスエンジニアリング株式会社。同社の商品開発本部では、部署としてのMVVI(ミッション・ビジョン・バリュー・アイデンティティ)を掲げてエンゲージメントに取り組んでいます。今回は、MVVIの作成から浸透までを担う商品開発本部の推進メンバーに、作成の経緯や活動を進める中での気づきを伺いました。
一人ひとりが仕事の価値を語れるように
ーMVVI(ミッション・ビジョン・バリュー・アイデンティティ)を作成した経緯を教えてください。
別役:商品開発本部として、MVVIを作成したのは2020年でした。組織が目指す方向性をあらためて定義づけることで、社員一人ひとりが仕事の意義や価値を語れるようになったらいいなと。そしてその先で、個人がより働きやすくなったり、組織として成長したりすることを期待しています。
また一般的には「MVV」を作成するかと思うのですが、当時の商品開発本部長が「I(アイデンティティ)」も入れることに思い入れを持っていました。アイデンティティは「商品開発本部という組織の生い立ち」や「自分たちのありたい姿」で構成しています。「生い立ち」を明文化することは、以前から所属しているメンバーの考え方などを、新しく入ってきたメンバーが理解する際の手助けとなります。また「ありたい姿」を定義することにより、個人が成長していくための方向性を示せれば良いなという狙いがありました。
ー作成のきっかけは何だったのでしょうか。
別役:作成は、本部長の呼びかけから始まり、推進メンバーを手挙げ式で集めることになりました。私も、昔から社員一人ひとりが自分たちの仕事に誇りややりがいを持っていてほしいという思いがあったので、本部長の呼びかけに手を挙げることにしました。日々の業務は泥臭い仕事も多く、楽しいことばかりではないので、今一度みんなで仕事の価値を認識できるようになればいいなと。また、組織も少しずつ大きくなってきていたので、自分がまだ年次が低かったころと比べて、今の若手が持つ裁量が小さくなってきていることも課題に感じていました。そうした、当時の思いや課題感がMVVI作成に繋がっていたと思います。
五十嵐:私は途中から推進メンバーとして参加しました。私は自社が開発しているソフトウェアのドキュメントやラベルを翻訳する担当で、開発者がほとんどである他メンバーと業務が異なります。そうした中で、MVVI作成に携わらず結果だけを聞いてしまうと「これは開発者の人のものだから」と他人事になりそうだなという懸念があったんです。MVVIを自分ごとにしておきたいという思いもあり、推進活動に参加しました。
時間をかけて、現場社員とのすり合わせ「味見」を繰り返す
ーMVVIは、どのように作成したのでしょうか。
別役:まず、2020年度はMVVIがどういうものであるべきなのか、その定義をすり合わせるところから始めました。具体的には、推進メンバーが集まってM・V・V・Iそれぞれの関係を図式化し、それに沿って商品開発本部としてのMVVIを考えていきました。

そこから、ミッションとビジョンはまず当時の本部長が考え、それに対してメンバーが意見を述べていく形で決めました。バリューとアイデンティティについてはメンバーそれぞれが意見を出し合った上で議論を重ね、集約していきましたね。

2021年度は、一部の部署が他本部へ異動したり新たな部署が入ったりと大きな組織変更があったのですが、2020年度でまとまったMVVIを仮案として、新しく入ったメンバーも巻き込んで、みんなが納得感を持つことのできるMVVIになるようブラッシュアップしていきました。特に推進メンバー以外の社員とは、日々の仕事とマッチするか、文言がしっくりきているか、なども確認するようにしていました。

太田:MVVI作成プロジェクトは、「共感できるMVVIを作ろう」をモットーに進めていきました。社員が共感できるものでないと意味がないということはメンバーの中で共通認識を持っていたと思います。そして、社員とすり合わせをしていく段階のことを、プロジェクト内では「味見をする」と表現していたのですが、その「味見」をとても大切に進めていきました。2021年度は主にこの味見を中心に、ブラッシュアップを進めていったんです。年次や立場に関係なく、皆、真面目に向き合ってくれて、ちょっとした違和感なども意見として伝えてくれたことはとても嬉しかったですね。

別役:作成して終わりではなく、みんなが共感できている状態で浸透させていきたいという思いで発足したプロジェクトだったので、時間をかけて作成していくことは自然な流れでもありました。もちろん、プロジェクトの方で大枠を決めてトップダウン的に進める必要のある部分もあったのですが、細かい表現などは、推進メンバー以外の社員からの意見も大切に取りいれていきながら進めていきました。
五十嵐:「味見」の時期は、月に一度くらいミーティングも行っていました。その際、各チームに推進メンバーが入り、活発な意見交換ができるようにしていました。1チームの規模も小さく、それも意見の出やすさに繋がっていたなと思っています。
別役:最終的にまとまったMVVIのうち、バリューは以下になります。

推進のキーワードは「認知・実践・信頼」
ーMVVI作成後は、どのような活動を行ったのでしょうか。
別役:2021年度は主に「味見」を通した調整を重ね、2022年度から定着化に向けて活動に落とし込んでいき、現在も継続しているところです。具体的には「認知・実践・信頼」をキーワードに、MVVIの認知度を上げるための施策、MVVIを実践できるための施策、組織に対する信頼を持てる環境づくりを進めています。

例えば「認知」でいうと、オンラインでの打ち合わせの際に使える壁紙にMVVIの文言を入れたものを作成したり、Slackで「thanksチャンネル」を作成したりしました。
五十嵐:thanksチャンネルの運用は、バリューの1つ「良いところを探してみよう」に繋がっています。チームを越えて「ありがとう」を伝える場があることで、コミュニケーションのきっかけになればと思い作成しました。

また、私は中途入社だったので、入社当時は他チームのやっていることが見えづらく、コミュニケーションをとる機会もなかったことを課題に思っていました。このthanksチャンネルは商品開発本部の人であれば誰でも投稿でき、リアクションをすることができるので、部署内で生まれた「ありがとう」がチームを越えて共有される場になっています。これまで見えていなかったけれど、「あの人こんなこともやってるんだ」ということがちょっとずつ見えるようになってきたと感じています。
ーSlackのチャンネルを運用していくにあたって、工夫していることはあるのでしょうか。
五十嵐:最初は投稿するハードルを高く感じる社員が多いと思ったので、推進メンバーが積極的に投稿していました。そして、推進メンバー以外の方にも投稿してもらえるように、声かけをしました。スタンプなど、リアクションがあると投稿者も嬉しいと思うので、続けていくうちに好循環が生まれているように思いますね。時間が経つと廃れてしまうとも思っているので、地道な呼びかけは今も継続的に行っています。
また、thanksチャンネル以外に、MVVIと関連する出来事があったときに投稿してもらうチャンネルも設けています。thanksチャンネルほど浸透していないので、どのように使っていくかは今後の課題です。また、毎日1つランダムでバリューが流れてくるよう設定しています。MVVIは、定期的に目に触れないと忘れてしまうものだと思うので、少しでも意識するきっかけになればいいなと。
別役:定期的に業務の振り返りのミーティングも行っており、そこで挙がった事例も、こちらのチャンネルに投稿して共有するようにしています。無理にMVVIと関連づけるというよりは、よかったところや改善点などを幅広く振り返ることに重きをおいていますね。その中で関連するものがあれば、MVVIと紐付けて振り返り内容を共有するような流れにしています。
ーこうした振り返りの場は、もともと組織として積極的に行われていたのでしょうか。
別役:チームによって異なりますが、私が担当している製品に関わっているチームでは、製品の新バージョンのリリースが行われた後などに不定期に行われていました。作成をきっかけに定期的に行われるようになり、1年半ほど経ちました。
太田:定期的に実施されるようになる前は、こうした振り返りの場があったとしても年に一度程度でした。1年ごとに振り返りをしたとしても、前年の振り返り内容は忘れてしまいます。振り返りの頻度を上げて、より良いチームになるための話し合いや行動が生まれやすくなったと感じます。振り返りを繰り返すことで、社員一人ひとりから出てくる意見の量や場の雰囲気もどんどん良くなってきているように思いますね。
五十嵐:私の場合は、振り返りの場が、自分が何か悩んでいることがあった際に相談する場にもなっています。そのときに、MVVIに絡めたアドバイスや意見をもらえるので、自分が仕事を進めていく上でもすごく助かる機会になっていますね。
ー御社はWevoxを導入して5年が経ちますが、そうした施策にサーベイの結果も絡められているのでしょうか。
太田:MVVIを日常業務に活かせているかをWevoxのカスタムサーベイの質問に設定し、結果を共有することで、キーワードとして掲げている「信頼」に繋げたいと考えています。結果の分析については断定できないところも多いので、日常業務に活かしていくことについてはこれからの課題だとも思っています。ソフトウェア開発の中でのフェーズや社内イベントのタイミングなどとの相関関係がはっきりと見えるわけではないので、引き続き観察していきたいですね。

別役:分析については、Wevoxが提供する動画学習プログラム「Engagement Run!Booster」の受講内容を活かして、毎回の結果に仮説を立てながら勉強しているところです。通常のエンゲージメントサーベイの結果に関しては、WevoxとMVVIを直接結びつけて実施しているわけではありません。部署のミーティングにおいて活動を振り返る際に、サーベイの結果が着眼点の1つになるといった形で活用していることが多いですね。
五十嵐:チームミーティングでスコアを見ることがあります。スコアが社内の動きに連動していることが分かるタイミングもありました。MVVIや他の活動が良い影響を与えているのではないかと期待したいですね。
実践を繰り返す中で感じる、日々の言動の変化
ーMVVIの浸透を推進する中で、学びや気づきがあれば教えてください。
別役:実践してみないと分からないことがたくさんあったなと思います。Engagement Run!Boosterのコースでは、よく個人と組織の関係性についてテーマになりますが、個人的にはその関係や距離感について学びが多くありました。自分は推進していく立場だからこそ個人と組織が重なる部分が多い方だと思うのですが、もちろんそうでない社員もいて。そうしたときの歩み寄り方は、実践していく中で身についてきたように思っています。
バリューの中に「信頼される存在であろう」というものがあるのですが、これも実践しながら自分自身の中で理解が深まっていきました。コミュニケーションをとるときに前提をすり合わせたり、発言の意図を伝えたりすることで、伝えたいことをより正確に受けとってもらいやすい信頼関係ができていくのではないかと思います。バリューは一例ですが、MVVIを作成したからこそ、自分の日々の言動にも変化があったように感じています。
五十嵐:MVVIに共感する人・できない人がいるのは当たり前だと思っています。取り組んでみたからこそ、現場に浸透させていく難しさを実感しているところです。
一方で、MVVIに対する自分自身の理解や浸透度は変化を感じています。具体的には、バリューに基づいて言動を選べるようになったことが増えました。以前、時間的に難しい仕事を依頼されたことがあったのですが、その際「できません」と返すのではなく、「ここまでならできます」や「こういうやり方であれば可能です」と返したんですね。これは、バリューにある「期待される存在であろう」を踏まえての返事でした。今後は、MVVIが業務での判断の拠り所になっていくといいなと思っています。
太田:MVVIは決して押しつけるものではなく、社員一人ひとりの価値観も大事にしながら重なるところを見つけていってほしい、という思いが推進メンバーにはあり、そこはちゃんと伝わっている実感はあります。推進していく中でネガティブなコメントをもらうこともありますが、引き続き向き合っていきたいと思っています。
ーMVVIの策定や実践を通じて、部署やチームに変化は起きていますか?
別役:Wevoxのカスタムサーベイの結果を見ていると、スコアの変化はチームによるのかなと。ただ、部分的に見れば下がっているように捉えられる点も、全体で見るとスコアが高くなっているので、MVVIを意識してくれている人が増えてきた証拠なのかなとも思っています。
太田:振り返りミーティングの際にアンケートを実施するのですが、その回答結果の内容や、回答結果を共有したときの社内の反応が少しずつ良くなってきているように感じています。まだ人は限られてはいるものの、全体として積極性が見られるようになったことは嬉しいですね。
五十嵐:MVVIの活動は賛否両論あると思うのですが、特にマネジメント層の人はMVVIを意識しているように感じています。バリューに基づいてか、現場の社員に良かったところを積極的に伝えてくれていて、そういう変化が見られるようになったことがすごく嬉しいです。
別役:「あ、この人変わったな」と感じる瞬間は増えました。振り返りミーティングはマネジメント層に限らず主催してくれているので、全体としても意識を持ちやすくなってきているのかもしれません。
MVVIを普段から自然と意識できる組織に
ー今後の意気込みを教えてください。
別役:まずは引き続き、推進活動を継続していきたいですね。もう4年目に差しかかりますが、やり続ける先でこの活動を当たり前のものにしていきたいです。そのためにも、気負いすぎず、無理のない継続体制を考えていきたいです。そして、推進に共感してくれるメンバーがどんどん増えていくことも期待したいです。
五十嵐:今は、社内の出来事に対してMVVIを関連づけていることが多いのですが、今後はMVVIありきの出来事が増えるといいなと思っています。こういうMVVIがあったな、じゃあこうしよう、という動きを増やせるような施策を考えていきたいですね。
太田:以前、呼びかけをしたわけではないタイミングで、「これってMVVIに関連する共有事項だよね」と社員が言ってくれたことがありました。そんなふうに、普段から共有したいことが自然と出てきたり、会話の中にMVVIが出てきたりするようになったらいいなと思っています。そうしたチーム・部署になれるように活動を進めていきたいです。







