
「お互いを知らないままでいいの?」Shared Value作成で共通認識を生みチームになるまでの1年間

製造工程のモニタリングや品質管理、在庫管理などを行う製造実行システム(MES)の導入を長年担当し、現在は各種開発・導入プロジェクトのプロジェクトマネージャーを務める。デジタルインテグレーション部でのエンゲージメント活動において最初のファシリテーターを務めた。

プログラマーとして開発案件を担当したのち、現在は自社のIoT商材の導入を担当。デジタルインテグレーション部でのエンゲージメント活動において友杉氏、齊藤氏とともに部内の議論の際にファシリテーターを務めた。

自社のIoT商材の導入担当を経て、現在は他社製IoTシステムの導入を担当。デジタルインテグレーション部でのエンゲージメント活動において友杉氏、藤本氏とともに部内の議論の際にファシリテーターを務めた。
社長がエンゲージメント活動のトップを務め、継続的に社内のエンゲージメント向上に取り組んでいるビジネスエンジニアリング株式会社。デジタルインテグレーション部では、独自の活動として、メンバーの相互理解や部のShared Value作成に取り組みました。活動の詳細や活動を通じた組織・個人の変化について、部のメンバーを代表して3名の方に伺いました。
お互いの仕事を「知らない」組織状態から脱するために
―デジタルインテグレーション部(以下、DI部)では、部のShared Value(※)を作成するという活動をされたと聞いています。どのような背景からこの活動をされたのでしょうか?
※ここでは、DI部員として仕事に取り組む上での共通認識を指す。
友杉:きっかけはチームビルディングでした。DI部は10人ほどの小さな部であるにもかかわらず、部員は互いにどんな仕事をしているのかよくわかっていないという実態がありました。というのは、複数の商材を扱っていて、商材毎にチームが異なるため、部員同士でも仕事での絡みや会話も少ない状況でした。
そこに、2021年10月に新たに着任した部長がその状況に問題意識を抱き、「チームビルディングのために、部会で何かやってみよう」と提案したのが始まりです。
藤本:「お互いのことをあまりよく知らないメンバーもいるから、一つにまとまろうよ。壁をとっぱらおうよ」と部長が最初に話していたことを記憶しています。
友杉:部内のメンバーのコミュニケーションを促進させる目的もあったので、部長からは「何を話すかも含めてみんなで話し合ったらどう?」と、すべてを部員に委ねられて始まりました。そして、自分が「とりあえず最初のファシリテーターをよろしく」と任されました。
―そこからどのように対話を進めていったのですか?
友杉:「我々は部としてどのようなビジネスをしていくか」とか、「同じ方向を向いていかなきゃいけないよね」といった議論を将来的にはしたいという思いはありました。ただ、いきなりハードルの高いテーマで始めるとみんな口ごもってしまいます。
そこで、まずは「DI部としての共通認識(後のShared Valueと呼称)を持つこと」を目標に据え、とっかかりとして「あなたにとっての幸せって何ですか?」をテーマに、ディスカッションしようとみんなに投げかけました。部員の人となりをつかむのにもいいなと思って設定したテーマです。
そこから、毎週木曜日の朝に1時間、部会の時間を設けて、原則みんな参加するように促しました。ファシリテーターは部員で持ち回り、各回のテーマはみんなで決める、という形の部会を1年近く続けてできたのがShared Valueです。
―「あなたにとっての幸せって何ですか?」からShared Valueの作成に至るまで、どのようなテーマで議論をされたのですか?
友杉:例えば、「『One & Only』って何?」「DI部をどう説明するか」「DI部の提供価値って何?」「その価値を誰に提供していく?」「そもそもお客様の業務って何だろう?」などがありました。
「『One & Only』って何?」は、弊社の経営Visionで「製造業のビジネス変革を支える製品・サービスで、One & Only企業となる」と掲げられていることから設定したテーマです。我々社員は、経営層の考えを理解した上で仕事をしていくことが大事ですが、大半の社員は目の前の仕事で手一杯となり、じっくりと考える時間や機会は少ないように感じていました。だからこそ、経営Visionをはじめ、経営層が考えていることに対して我々自身が率直にどう感じているかを議論する回をちょこちょこと挟んでいきました。
「DI部をどう説明するか」は、お互いにどんな仕事をしているか知らない状態だったことに加え、別の部署の人から「あなたの部署は何をやっているの?」と言われたときにきちんと自分の言葉で説明できるか、という話題が出て設定したテーマです。
そして、そこからもう少し踏み込んで考えようと議論したのが、「DI部の提供価値って何?」です。当時は商材が大きく2つに分かれていたので、担当商材で2チームに分かれて「バリュープロポジションキャンバス(VPC)」のフレームワークに従ってまとめました。そこからさらに、「その価値を誰に提供していく?」という議論もしましたね。
齊藤:ディスカッションのテーマとして「そもそもお客様の業務って何だろう?」とみんなで考えたこともあります。これは、上司たちは、当社はお客様の業務知識があると言っているが、自分はそこまで業務を理解していないというギャップに悩みを抱えていた若者メンバーからの発案で掘り下げたテーマです。このように日頃の様々な課題をみんなで共有し、解決に向かっていく場でもありました。
友杉:こうして、「DI部として共通認識を持とう」という目標に向けて、徐々にテーマが仕事寄りにシフトしていきました。そして、1年弱の議論を経て最終的にでき上がったのが、「①皆がハッピー(Everyone is happy)」「②新しい技術への挑戦(Challenge to new technology)」「③オールラウンダー(All-rounder)」というDI部の3つのShared Valueです。英訳の頭文字をとって「ACE」というイメージ図もつくりました。
藤本:DI部の価値や、仕事に取り組むにあたって意識していることなどについて、全員で挙げた意見をまとめたものです。
友杉:全員の共感が集まった言葉をまとめたら、この3つになり、最終的には下表のように整理しました。

―みなさんで、Shared Valueを作り上げることが最終的なゴールだという認識を持って議論を進めていかれたのですか?
友杉:最初から「Shared Valueを決めよう」と言っていたわけではなく、いろいろと議論をしていく過程で、おのずとShared Valueに着地したという感じです。
齊藤:私の印象としては、いきなりすごく立派なものができたなという感じです。
藤本:自分たちも覚えやすいし、思い出しやすい形にはまったかなと思います。
―みなさんの中で、Shared Valueという形で言語化できるといいのではと意識が向き始めたきっかけなどはあったのでしょうか?
藤本:会社の方針について議論したことがきっかけの一つになった気がします。そこから「なぜトップがうちの部を必要としているのか?」という議論に繋がり、「じゃあうちの部って何なんだ?どこから説明する?」という話になって、その答えがShared Valueになったのかなと思います。
齊藤:最初に「あなたにとっての幸せって何ですか?」というテーマで議論を始めたとき、部員一人ひとりの幸せはそれぞれ違っていて、それぞれの考えを理解していく過程がありました。それを経て、「じゃあ同じ方向を向ける部分はなんだろう?」と考えていったことで、Shared Valueに至ったのかなと思います。
一人ひとりが前向きに、議論が前進するよう工夫
―ここからは、議論を進める上での工夫などについて伺えればと思います。まず、活用したツールなどはありましたか?
友杉:議論の際にはオンラインホワイトボード「Miro」を活用して、一つのホワイトボードで付箋を共有しながらディスカッションしました。
その際に、ただ箇条書きにしていくのではなく、世の中にあるいろんなフレームワークに当てはめながら議論しました。「VSPROモデル」「ソフトの4S」「ハードの3S」などです。こういったフレームワークに当てはめると議論しやすくなるのではないかという話になり、自分たちで検索して見つけてきたり、テーマ決めの際に部長が紹介してくれたりしました。Shared Valueも、フレームワークを活用する中で知った言葉で、部の共通認識を考える上で生かせそうだという話になりました。
―議論を進める上で苦労した点はありましたか?
友杉:最初の頃は、みんなの意見を引き出すのに苦労しました。みんな、探り探りで自分からは発言しないんですよね。
ただ、回を重ねていくと、一人ひとりの人となりや考え、価値観、困ったときに助けてくれるような発言をしてくれる人などがわかってきたので、そうなると、「こういうときはまずはあの人から振ってみようか」などと場の回し方もつかめてきて、やりやすくなりました。
―ファシリテーションをしたり、議論に参加されたりする際には、どんなことを意識していましたか?
藤本:僕の場合、ファシリテーションをするときは話を膨らませようとしていました。答えを出す必要はないということを最初に言われていたので、「Shared Valueにまとめるんだ」といったことは意識せずに、どちらかというと発散させるくらいの気持ちでいた気がします。
齊藤:ファシリテーターをやってからメンバーに戻ると、メンバーとしてどう振る舞えばファシリテーターにとってありがたいかがわかります。議論に参加する側になった際は、ファシリテーターの助けになる発言を心がけていました。
友杉:私は、ファシリテーターになるときもそうでないときも、次の意見が出やすくなるように意図的に合いの手を入れていました。それから、議論がまとまっていないと感じたときにはMiro上にポイントになりそうなことをポチポチと箇条書きで書いてみたりと、次の意見が出やすいようなきっかけや雰囲気をつくろうと意識していました。
共通の価値観・目標をつくることで、組織や個人の判断の拠りどころができる
―この取り組みを経て、デジタルインテグレーション部のみなさんにどのような変化がありましたか?
齊藤:チームとして部員同士の距離が縮まったと思います。議論の際に相手を否定しないことをルールとしていたので、心理的安全性も生まれて、率直な意見が出るようになりました。周りも、意見に対して否定もしないし、感情的にもならない。まずは相手の意見を聞いて、その上で判断することができるようなったかなと思います。
藤本:距離は縮まりましたね。
友杉:それが一番大きいかもしれない。これまでは、たかだか10人の部なのに全然話せなかったから。今はその壁はなくなりました。
―みなさん自身は、この取り組みを通して得た学びや仕事へのいい影響などはありましたか?
友杉:経営Visionや事業本部の戦略などに、意識を向けるようになりました。それらを理解した上で、我々の部門の仕事がどこに活きているのか、また、会社から見たときに我々の存在価値がどこにあるのかを客観的に見られるようになった気がします。そして、会社が見ている未来に向かって、我々DI部はどのように進んでいけばいいか考えていかなきゃと強く思うようになりました。
藤本:僕の場合、この取り組みをするまでは、担当するIoT商材の特性もあって、自部署も他部署も含めてほかの担当と連携した提案などはあまりしてきませんでした。それがこの取り組みを通して、会社として製造業のお客様に対して管理系から現場系まで一貫したシステムを提供出来ることを強みにしていることを理解しました。この理解があることで、システムとシステムを連携してお客様のデジタル化を支援していかなきゃいけない、と意識するようになりました。
そして、2023年度に入ってから、スマートファクトリーをテーマにして、自分が担当するIoT領域だけでなく、より上のレイヤーにある別のシステムにも繋ぐような提案に挑戦しています。経営方針を知り「自分たちはどうするべきか」ということを考えたことが、こういった形で領域を飛び出す活動に繋がっています。
齊藤:私はこの活動で最初にかなり衝撃を受けたのは、それぞれの人にとっての幸せは違うということでした。
あとは、もともと、部として明確な目標がないのはちょっと寂しいなという思いがあって、それを自分たちで決められるのは幸せだなと思って活動していました。結果、メンバー自身で作り上げた目標ができて、それを共通言語にして活動できるようになったのはすごくよかったです。例えば、選択肢が2つあってどちらかを選ばないといけないときにも、「DI部としてどうあるべきか」を思い出して、メンバー皆がその方向で動けるようになったと思います。
―最後に、これからのデジタルインテグレーション部の組織づくりとして取り組みたいことなどについて教えてください。
藤本:これまで活動をしてきて、会社の方針を知ることがすごく大事だと思いました。リーダーやマネージャーの立場でお客様と向き合うときには、会社の代表として、会社が目指す方向性を話せたり、方向性に沿って判断が出来たりする方が良いと実感しています。こうした考え方で仕事にあたると良いと、同僚にも伝えていければと思っています。
齊藤:2023年度からはDI部は他の部と合併して部員が13名から17名に増えました。別の事業本部のメンバーと一緒になったので、上半期はお互いに「どんな人たちなんだろう?」と思っているところから、自己開示し合って心理的安全性をつくっていくところから始めました。
そして、下期からは、Shared Valueの共有・理解に進む前に、Wevoxのスコアを見ながらエンゲージメントについて考え、話し合うことを始めています。
友杉: 2021年10月以降、自分たちについて議論する場に身を置いて、エンゲージメントってやっぱり大事だなと思うようになったんです。人間関係や職場環境も含めて、エンゲージメントが低いと仕事への意欲がわかず、楽しくないですよね。この当たり前のことを、「エンゲージメント」というワードで言語化・視覚化されたことで認識しやすくなったし、今は身にしみてその大切さを実感しています。Wevoxのスコアを個人で確認するだけでなく、部内でも共有して皆で議論したり、まだエンゲージメントへの関心が低い人たちにもその関心を高めていくように働きかけていきたいなと思っています。







