【Teamwork Sessionレポート】想いを繋ぎ、対話の文化をつくることでオンラインの壁は超えられる

【Teamwork Sessionレポート】想いを繋ぎ、対話の文化をつくることでオンラインの壁は超えられる

株式会社ブイキューブ
渡邉 暁雄氏
渡邉 暁雄氏
株式会社ブイキューブ
技術本部 副本部長

2011〜2016年までブイキューブに在籍。その後他社に入社するも、組織開発の経験を買われ、2021年3月に再入社。現在は、技術本部副部長兼組織開発責任者として活動している。

Wevoxの活用事例を学び合うユーザー参加型イベント「Teamwork Session」。今回は、株式会社ブイキューブ 技術本部 副本部長の渡邉暁雄さんにご登壇いただきました。リモート慣れしている同社と、そうでない前職の会社の両方を経験したという渡邉さん。その二社の間にはどのような違いがあったのでしょうか?セッションに参加された方々からのご質問も併せてご紹介します。

―本日のテーマは「東証一部上場企業の技術組織の組織開発責任者(VPoE)が語る“オンラインの壁を超える組織づくり”とは?」です。渡邉さん、どうぞよろしくお願いいたします。

ブイキューブ技術本部の渡邉と申します。ブイキューブはEvenな社会の実現を目指して活動しており、ウェブ会議の販売でご存じな方も多いと思いますが、現在は、オンラインセミナー等、クライアント企業様の、多様なコミュニケーションを実現するサービスを提供させていただいております。

プロダクトを制作しているエンジニアは、1都、1道、9県、更にシンガポール点在しており、フレキシブルに働いています。なぜこのようなことが出来るかというと、ブイキューブでは2013年頃からテレワークを運用していて、オンラインコミュニケーションに慣れ親しんでいるためです。今回のテーマについては「オンライン慣れしてるから簡単にやれたんでしょ」と思われるかもしれませんが、実は前職ではコロナショックでフルリモート化した会社に所属していました。

この会社でも、70名程度の組織開発部門・情報システム部門を見ており、コロナ禍で一生懸命リモート化に取り組む皆さんの苦労を間近で見てきましたので、こういった急激に変化していった会社と、元々リモート慣れした会社の両方の知見から共通するものをお伝えしたいと思います。

オンラインコミュニケーションで生じる壁

昨今オンラインでのコミュニケーションが注目されていますが、主戦場となるテキストコミュニケーションでは、読み手の感情によって感じ方が変わる難しさがあります。メールと違って短い文章でやりとりをするので、発信する側の技術だけでなく、受け取る側の技術も非常に重要になってきているのではないでしょうか。更に、私たちが販売しているビジュアルコミュニケーションではどうなのかというと、やはり会議室に誰かを招待するハードルの高さを感じられている方が多くいます。雑談に誘うには使いづらいという声も多く聞きますので、気軽なオンラインコミュニケーションをする上では、やはり壁があると感じています。

一方で、この壁を乗り越えるためのコミュニケーション施策を考える側にも苦しい部分があります。せっかく施策を作っても成果とトレードオフになってしまったり、そういったものを乗り越えたとしても、辛いと言っている人たちが参加してくれなかったり。コミュニケーションの時間を業務時間に取ることにみんな抵抗があるんですよね。施策を作る側も運営する側も報われない状況が出ているのかなというのが、今私の感じているところです。

これについては、コミュニケーションの難易度が上がっていることが大きなポイントだと思います。今まで経験したことのないコミュニケーション施策が増えた分、戸惑いが起きてぶつかりやすくなりますし、オンラインコミュニケーションに積極的な方とそうじゃない方がいらっしゃるので、温度感が生まれます。施策を実行する側としても、何を見て何を優先すべきなのか迷いが生じるので、この辺りを根本的に解決する必要がありますし、それには対話を繋いでいくしかないと考えています。

オンラインの壁は人間関係の壁

しかし対話を行ったとしても、対立案が出たり、自分の施策を否定されたりすると、つい相手を敵とみなしてしまうケースもあるかと思います。施策を考えている人には必ず目的や想いの部分、僕はこれを「お気持ち」と呼んでいますが、お気持ちの部分がオンラインの壁の向こう側にあることで見えづらくなっているように感じます。このお気持ちが壁を超えないと、どんな施策を打ってもギスギスとしたものが残ってしまうんですね。

お気持ちを交換すること=施策について対立していた人間関係が同じ課題感を共有すること、つまりは心理的安全性の担保になるかと思いますが、ここをしっかりと作っていかなければなりません。突き詰めれば、オンラインの壁は人間関係の壁でしかないなと思っています。ある意味、現在の環境は人間関係が色濃く見えていて、課題感もはっきりしていますから、ここでしっかり施策を打っておけば、オフラインに戻った時にもより良い人間関係を維持できるはずです。チームの生産性を上げるという意味では、逆に今はチャンスな時期なのではと思います。

まとめますと、お気持ちを出せる関係づくり、対話の文化をいかにつくっていくのかがオンラインの壁を超えるための一番のポイントになってくると考えています。新しい考え方や文化が必要なので、しっかりと組織全体の方針や方向性を合わせて組織全体として対応していくことが非常に重要ですね。成功されている企業様はだいたいトップ層までがしっかり理解されていることが多いのも、こういった部分に帰結しているのではないでしょうか。

各ステークホルダーの視座に合わせて話を噛み砕く

ブイキューブでは、そうした新しい文化づくりにあたり、最初に組織開発の目的やメリットの宣言から始めました。メンバーがそういったものを理解していない状態では、色々と説明しても自分ゴトに捉えられません。相手の視座に届くような言葉遣いをしながら繰り返し話をしていくことが何よりも大事です。それぞれのステークホルダーの視座に合わせて、より噛み砕いて話すことがポイントですね。

その後は、90人のメンバーに対して、2ヶ月かけて1人1時間ずつ話をする時間を設けました。右下にあるのは当時の僕のカレンダーですが、かなりの人数と声が枯れるほど話しましたね(笑)。僕からすると90人の中の1回ですが、彼らからすると1回中の1回なので、その1回でどれだけ誠実に向き合って話をするかということ、そして自分を知ってもらい相手を知るかということに集中しました。

また、その中で聞いた意見を分類してグラフにし、ミッションとバリューの差分を各ステークホルダーに伝えるようにしました。少数の意見が実は組織の本質に気付いている意見だったりもするので、ここを積み上げ式でやってしまうと、そういった意見が排除されやすくなってしまうんですよね。そうすると、施策が本質に向かなくなってしまうので、組織がどういう状況にあるのかについて相対的に話すことを心がけました。とは言え、僕にもバイアスがありますので、そういった部分ではWevoxを活用しました。これまで2年半程運用してデータも溜まっていますので、組み合わせながら自分のバイアスを解いていき、ステークホルダーとの話し合いを続けました。

ブイキューブには、ピープルサクセス室(PS室)と呼ばれるものがあり、一般的に人事と呼ばれる領域を行っています。PS室のメンバーはエンジニア組織というものを自分ゴトとして捉えて話し、相談に乗ってくれる関係性があるので、そこに対してちょっと甘えつつ、お気持ちを交換させてもらっています。また、今でも2週に1回は副社長やCTOと1on1を行っていますし、本部長とは週1回のペースで話しています。普段からコミュニケーションをとっていますが、この1時間だけは成果とかそういったものを一切気にせずに、自分や相手が今考えていること、その時の感情などを中心に話してもらうようにお願いしていますね。

副社長から本音を聞くというものなかなか貴重な機会ですが、これくらいの人間環境をつくっていくことが大事だと思います。ステークホルダー=承認者として身構えがちですが、共に同じ課題に向き合う仲間という関係性が作れているというのは非常に大きなパワーメントですね。前職では、上長だったCIOと最初は意見が違っていたんですが、その時僕が考えたのは、「組織を良くしたいと思っていない人はいない」という前提でした。ですから、言葉で喧嘩をせずに、少しずつ想いの交換をしていくことを半年〜1年かけて続けました。相手の愚痴や今後やりたいことを聞けるような関係性がつくられることにより、組織全体に一貫したメッセージを伝えることができるんだと実感しました。

そういった対話と並行して、伝えていくコミュニケーションラインの分析も行いました。これは、コミュニケーションをざっくり4象限で表したものですが、情報共有やボトムアップの場が足りなかったので、そこに施策を打ち、ポッドキャストや噛み砕きのセミナーなど、相手の視野に合わせたセミナーを実施し、Topメッセージをわかりやすく伝えるようにしました。あとは年1回ビジネスコンテストがあるので、異職種間での対話の場も設けました。こうして想いを繋いでいくことで共感してくれる方たちが増えていくので、そこにしっかり称賛をかけるのが非常に大事なポイントだと思います。

施策を始めるのに遅すぎることなんてない

施策は信頼関係なしではできません。特に別の部署にお願いをする時などには、「施策を投げただけ」とか、「相手の部署がやってくれなくてダメだ」という話になりがちですが、その前に、信頼関係をつくる対話をすべきです。その上で「あなたが言うならやってあげるよ」と言ってもらえる状況になると、相手も動いてくれます。自分が信頼関係の起点になることを意識しながら動くのがポイントですね。

企業や組織の最少単位は人ですので、人が違えば施策は違ってきます。自分の環境にフィットする施策を探すよりも、最適な答えは組織にあると信じて、それを生み出す源泉を掘っていくことが大事だと思いますし、施策が本当に浸透するのは年単位どころか、僕の中では3〜5年のスパンで組織を見ています。5年後は恐らくオンオフのミックスが当たり前の時代になっていると考えると、今から始めても全然問題はありませんし、遅いなんてことはないはずです。

価値提供・他社との差別化のためにそれぞれの工程でできることを最大限にやるというのがバリューチェーンだと思いますが、組織もこれと同じです。どうやって対話を広げていくかに着目し、質の良い対話によって組織にいる人たちの「使う言葉」を変える。そういう小さな変革を意識しながら積み重ねて行くことで、組織が望むべき方向に変化していく、そして従業員の皆さんにも良いキャリアを積んでもらえると信じています。変革には必ず最初の1人がいますから、その最初の1人をしっかりと支え、自らもその会社の人になると言う気持ちで、今後も組織開発を続けて参ります。

―ありがとうございました。渡邉さん一推しの事例についてもご紹介いただけますか?

信頼関係をつくっていく上で自分の考えを伝える場所って意外と少ないですし、押し付けになってしまうことがあるので、僕の考えを知りたい人がいつでも知れるように残しておく、という目的でポッドキャストを始めました。週に1回15分で、基本は1人語りですが、副社長やCTOにもゲスト参加してもらっています。その時の内容は、副社長の考えるエンゲージメントを大切にする理由や、CTOの考える技術戦略などを砕いた言葉で話していただきました。あとは、Zoomを使ってエンジニア同士で技術や組織のことについて話し合ったりもしています。前向きに話してくれる仲間達なので笑いも絶えないですし、非常に良い関係性ができているので、これを広げられればと思っています。

―質の高い対話を組織に浸透させるために、現在工夫されていることはありますか?

地道につくる・話すしかないと思っています。自分の受けた良いコミュニケーションを他の人にしたがるのが人間だと思うので、どれだけコミュニケーションで良い経験をしてもらうかがすべてなのではないかと。ですから、時間はかかりますね。

―良い経験が、それをさらに広げたいという気持ちに繋がっていくんですね。ありがとうございました。ではここからは質疑応答へと移ります。

Q. 弊社にもあまりコミュニケーションが得意でない社員がいるのですが、渡邉さんはそういった場合どうされていますか?

A. 「想いを繋ぎたい、共感性を持ってほしい」というメッセージを、入社後時間が経ってから言われた方は拒否反応が出てしまう場合はあるかな、と思います。そういった人たちはスルーをするか反旗を翻すかだと僕は考えていて、反旗を翻すならちゃんと話をして納得するようにしています。スルーはスルーのままでもいいです。組織開発の一番の問題は、みんなが仲良くなることよりもチームの生産性を最大化していくことだと思うので、生産性がすごく高い方なのであれば、それがその人にとって最適な働き方なんだと思います。一方で、正社員と業務委託など、会社へのコミットによって働き方・契約を変えていくという流れもありますから、その場合にスルーの方をどう扱うのかは制度の問題になってきますよね。人事とは、そこも含めて話をしたりしています。

Q. 組織開発の目的とメリットを宣言し、メンバーの視座に届くように工夫したと仰られていましたが、メンバーに届けるにはどのような工夫をされたのでしょうか?

A. キャリアには需要と供給があると思っているのですが、需要がないキャリアに価値がなくなってしまうというのが結構あると思うんですね。逆に、社員が供給していきたいと思うものがずれているかどうかは、需要がはっきりしないと分からないと思うので、そういう部分については会社・組織が求めているものをちゃんと伝えています。その中で、メリットとしてはちゃんと目標設定ができるようになったり、会社でキャリアを積む方向性が見えたりするということを噛み砕いて話すようにしています。ただ、トップダウンの時間は月に1時間取れたら良い方なので、1on1やポッドキャストも利用しています。先ほどお話ししたように、スルー層はスルーと決めているので、それ以外の困っている人たちにどう届けるかということだけに集中して、「ここにあるから聞いてね」「じゃあもっと話そうか」というようなことを繰り返しています。とにかく自分の足と時間を使って話し続ける、僕ができない時は信頼できるメンバーに任せる、を繰り返していると仲間が増え、より広範囲に行えるようになります。

Q. ITツールはリアル・リモートに関係なく組織開発に有効なツールなのでしょうか?

A. Zoomや、弊社のブイキューブミーティング、オンラインセミナー等、様々なツールがありますが、組織開発にとっては、あくまでも対話する場作りでしかないと考えているので、何かを助長したり後押しをすることはないと思います。ただ、これがなければコミュニケーション量がゼロになるので、そこを担保するために使うべきツールだと理解しています。また、今後オンオフmixの状況が当たり前になった場合に、オフラインの方達のオンラインリテラシーがどれだけ高いかが重要なポイントになると思います。これはブイキューブに戻ってきて強く感じている点ですが、オンラインが当たり前で、オンラインの方たちとのコミュニケーション方法を知っている人たちばかりでオフライン側が構成されていると、オンラインがとてもやりやすいんです。というのも、オンラインの方たちと会話のスピード感に合わせるということを意識せずに自然と行えているので。今は全員がオンラインを経験できる状況ですから、この機会にリテラシーを高めていくことが、これまでの組織開発にはなかったもので必要になってくる部分だという捉え方をしています。

Q. 活動の規模感はどの程度でしたか?また、どうしてもやりたい人とスルーする人の分断が深まることを懸念しているのですが、この辺りはどう進められていますか?

A. 規模は90〜100名程度ですが、やはり分断は起きました。これに関しては、ベクトルをどこに合わせるのかを決めることが大事だと思います。チーム活動の最大化を捉えた時、1人で仕事をしている方が楽だし最低限のチャットだけでやりたいと考える人もいるんですよね。そういう人たちに会社に対する共感性を持たせることは、悪い言い方をすると時間の無駄になってしまいます。

それよりは、共感性の高い人を伸ばし、分断する人たちは邪魔しなければそのままでいいと考えています。組織文化は、最終的にはその会社にいるかいないかのボーダーだと思うので、逆にそこに共感性の高い人を入れていくという採用をセットにして考える必要がありますね。正社員なのか業務委託なのかといった契約形態によって会社へのコミット率を変えている企業様もいらっしゃるので、なかなかそこに踏み込むのは大変ですが、視野に入れなければいけないと思っています。

Q. 共感してくれる人を増やそうと進めていく中で、なかなかついて来ない人がいて、みんながスルーする側に回ってしまうという傾向もありますが、この辺りは意思の問題でしょうか?

A. 僕も何度もそれで挫けそうになったので、お気持ちはよくわかります。そういう時は、ステークホルダーの皆さんと合意形成を取ることが大事だと思いますね。少数でも共感してくれる人達をひとりぼっちにせず、称賛することですね。会社によって形は違うと思いますが、表彰制度があると良いかもしれません。ご参考までにですが、弊社ではPS賞というものを作っていて、従業員全体で投票を行い、表彰するんですね。「会社のバリューに沿った行動が取れている方」等といったテーマを決め、周りからの称賛の声を拾うのも大事なことだと思います。

―ありがとうございます。最後に、渡邉さんから皆様にメッセージをお願いいたします。

これまでに僕も、繰り返し怪我をしながら進んできたところはあります。ただ、1人の人間が諦めずに進めていくと、これだけのことができるんだということも実感しました。想いを持たれている皆さんも本当にしんどいことがあると思いますが、勇気を持ってやるということが何よりも大事です。メンバーにはよく、今はまだ山を登っている途中だけど、登った者にしか見えない景色は絶対にあるから一緒に見よう、という話をよくしています。皆様はまさに先導を切る方々だと思いますので、ぜひ諦めずに、一緒に良い組織づくりを続けましょう。Twitterもやっていますので、良ければ気軽にDMや情報交換をしながら、1人じゃないと思いながら、お付き合いしていただければと思いますので、ぜひ今後ともよろしくお願いします。

【編集部コメント】

対話の大切さを存分に感じられるプレゼンでした。自社でも実践できる内容があれば、ぜひ積極的に取り入れてみてください!

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