職員から集めたアイデアを育て、11のエンゲージメント活動を実践

職員から集めたアイデアを育て、11のエンゲージメント活動を実践

愛知県信用農業協同組合連合会
森 修平氏
森 修平氏
愛知県信用農業協同組合連合会
総務部 次長

愛知県下のJAの信用事業(JAバンク)の指導・支援業務に従事したのち、2018年に人事部(現・総務部)へ。現在はマネジャーとして採用、育成、労務などを管掌。エンゲージメント活動の事務局も務めている。

山本 大貴氏
山本 大貴氏
愛知県信用農業協同組合連合会
総務部

2013年入会。農業制度資金に関わる業務、県下JA信用事業の企画・開発業務、総合企画部にて組織の全体統制・管理業務に従事したのち、2024年に総務部へ。人材開発や組織開発を担当するとともに、エンゲージメント活動の事務局として活動の旗振り役を担っている。

石黒 誠氏
石黒 誠氏
愛知県信用農業協同組合連合会
総合企画部

資金証券部にて証券運用を担当したのち、2024年に総合企画部へ。エンゲージメント活動の一環として2023・24年度に取り組まれた「アイデア育て隊」の一員としてエンゲージメント活動に携わっている。

愛知県信用農業協同組合連合会では、2020年に設定した「10年ビジョン」にて「多様な人材がエンゲージメントを高め、働きがいにあふれ、挑戦意欲を持って、個々の力を最大限発揮できる活力ある組織」を経営管理ビジョンの一つに定め、その実現に向けてエンゲージメント活動に取り組んでいます。2023・24年度には、ボトムアップでの活動「アイデア育て隊」に注力。その内容や今後の組織づくりについて、推進者である3名の方に伺いました。
※取材時(2025年2月)の部署・役職になります。

事務局発信の活動から、ボトムアップの活動に挑戦

―御会は2020年にWevoxを導入し、エンゲージメント活動を進めてこられました。まずは、これまでの取り組みの概略を教えていただけますか?

山本:当会では2020年にWevoxを導入し、スコアをもとにしたグループごとの改善活動を進めつつ、2021年度はエンゲージメント活動の意義や目的の理解・浸透に注力し、会内で一定の理解を得ることができました。2022年度は次のステップとして、活動に対する意欲・関心の高い人たちで学び、現場での実践を進めていく「アクティブプロジェクト」という取り組みを進めました。50名くらいを巻き込んだ、参加者の満足度も高い取り組みになりましたが、一方で、現場実践のハードルの高さを指摘する声や、「行動を変えていこう」という事務局の強いメッセージにプレッシャーを感じるという声も挙がっていました。

そこで、2023年度は、現場の職員の視点も取り入れながら施策を考えようと、有志の職員を募集しました。手を挙げて集まったのは、マネージャー2名と一般職員3名の計5名です。この5名と事務局のメンバーとで企画した取り組みが「アイデア育て隊」です。2023・24年度の2年間は、この取り組みに注力しました。

―「アイデア育て隊」は、どのような取り組みですか?

山本:活力ある職場を自分たちでつくっていくために、職員のみなさんから「前向きに仕事に取り組むための活力となるアイデア」を募集し、そのアイデアを有志メンバーが「アイデア育て隊」と名乗ってブラッシュアップして実現していく活動です。月1回、職員に対してアイデアの募集案内をかけ、1年半で44件集まりました。その中でできるものの優先順位をつけ、アイデアをくれた人たちにもヒアリングやすり合わせをしながら計11件のアイデアを実行に移しました。

―「アイデア育て隊」の企画は、どのような意見から生まれたのですか?

山本:エンゲージメント活動をどのようにして盛り上げていけばいいか、有志メンバーで議論した際に挙がってきたのが「組織を良くしていこうという動きに乗り切れなかったり、乗りたくてもハードルを感じていたり、参加しづらい気持ちを抱えたりしている職員も多いのではないか」という意見です。

そこで、より多くの職員が一歩を踏み出せる空気感をボトムアップで作っていけるといいのではないかと考えました。職員自身がアイデアを実現できる機会をもっともっと作っていくことで、「自分もやっていいんだ」という空気が徐々に生まれるといいよね、といった議論をする中で生まれたのがこの企画です。

発案者の思いを重視しながら、職場の活力とコミュニケーションを生み出す施策を実現

―実現された11の取り組みには、どのようなものがありますか?

山本:「お仕事参観日」「スポンジLab」「ゴミ拾いで徳拾い」などが特に反響があった取り組みです。

―一つずつ詳しく教えてください。

山本:「お仕事参観日」は、職場に家族を招待して、仕事の様子や職場の雰囲気を味わってもらうという企画です。家族に自分の仕事について理解を深めてもらう機会にするのと同時に、同僚との交流の起点にできるといいよねというアイデアから、職員の子どもたちを招いて夏休みの時期に2日程に分けて実施しました。

石黒:アイデアを出した職員の思いとしては、同僚の家庭の状況が見えないまま仕事をしていると、チームとしてお互いに配慮することがままならず、関係性の悪化の要因になり得るという課題感があったそうです。もう少し個人の背景を知ることができれば、一人ひとりの人生が可視化されて相互理解が深まり、協力や配慮をして仕事ができるんじゃないかという思いから出てきたアイデアでした。

山本:15家族ほどの参加があり「家族に職場環境を見てもらい、ちゃんとした職場であると安心してもらえて、日々の通勤の大変さを認識してもらえた」「同僚とお互いの家庭に関する会話が増えた。より一層コミュニケーションが図りやすくなった」などの声をもらいました。また、当日は、子どもが職場に来るだけで自然と笑顔になって、非常に盛り上がったイベントでした。

―「スポンジLab」はどのような取り組みですか?

山本:業務の効率化や生産性向上に寄与する工夫や外部の取り組み事例を収集するコミュニティをつくり、そこで得た知識や取り組みを会内に共有できないかという企画です。コミュニティメンバーには、12名の有志が集まりました。3か月間の取り組み期間で、会内ツールのナレッジや行動や姿勢を意識するものが30件ほど収集でき、その情報展開を会内に行いました。実施後、参加者からは「いろんなライフハックが吸収出来て良い経験だった 」「適度な緩さで業務改善にもつながるのがGOOD」「良い情報がたくさんあったのに見てくれていない職員がいたので残念」「小さなことでも合理化・効率化したい、情報発信したいと考えるスポンジ系職員が当会に存在することは間違いない」といった声がありました。このようなちょっとした工夫をオープンに全体に共有していく動きはこれまでなかったので、新たな風を吹き込むことができました。

石黒:実際に、当会で使用するイントラ(組織内の情報通信網)のテクニックだとか、「そんなこともできるんだ!」といった発見があって、すぐに試してみたものが多かったです。実は、このような暗黙知的な情報を一人ひとりが持っていて、それがナレッジとして全体に共有できるともっと効率化にもつながるのではないかと思いました。

―「ゴミ拾いで徳拾い」についても教えてください。

山本:これは、名古屋駅から当会の社屋までの道のりをゴミ拾いをしながら出社するという取り組みです。徒歩20〜30分ほどの距離ですが、歩いて来る職員が多いんですね。その行程でゴミ拾いをしながら出社できると、気分が良くなって、仕事も気分良くできるよねと「良いことをすることで自己肯定感を高めたい」という職員のアイデアから企画が生まれました。仕事をしているとネガティブな事象に直面することも多いので、良いことをして自己肯定感が高まった状態で仕事に臨むことで、良い結果につながるといいよねという思いがあったようです。

―それぞれの取り組みの狙いが達成されたり、発案者の方の思いが叶えられたりした感触はありますか?

:参加したメンバーは狙いを達成できたと感じています。また、事務局として、各企画において最も大事にしていたのが、コミュニケーションが広がっていくことでした。実際に、参加者間でのコミュニケーションが円滑になっていることを感じています。例えば、「ゴミ拾いで徳拾い」では、「今日はこんなゴミがあった」「今日は傘が多い日だ」といった他愛もないコミュニケーションでしたが、そういった何気ない会話も真面目なテーマを設定して語り合うのと同様に大事なもので、職場のコミュニケーションの円滑化につながっていくと感じました。

石黒:すべてのイベントが部署横断的に参加者を募るものばかりだったので、これまで話したことのない人と話す機会を持てたのかなと思います。業務で他部署に聞かないと進められないような場面で多少は聞きやすくなったかなと思いますし、何より、職員のアイデアを吸い上げて実施した企画であることを皆が知っているので、「会内にはこんな声や意見があるんだ」「こんなことを考えている人がいるんだ」といったことを各職員が認識することができた面もあるかなと思います。それだけでもこれまでとは異なる変化ではないかと思います。

―他にも、貴会の中での変化を感じていらっしゃることはありますか?

石黒:イベントごとに興味を示してくれる人が異なっていたので、参加者の裾野が広がっている感触がありました。また、参加せずとも、「このあいだのイベントは誰が来てた?」「別の日だったら行けたのに」などと声をかけてくれる職員もいて、興味のある雰囲気を醸し出してくれる職員が増えていると感じています。

山本:参加者からは、「もっと参加者が来るやり方ってないかな?」「みんながこういったイベントに参加できる環境づくりとしてどんなことができるかな?」といった発言をしてくれる人が増えてきています。皆で取り組んでいる感じが出てきて嬉しかったですね。

―アイデアの募集から企画の実施に至るまで、事務局の皆さんとして工夫された点があれば教えてください。

山本:アイデア募集の際には、よりフランクにアイデアを出せる環境を作りたいというメンバーの意見を踏まえて「仕事に取り組む活力になるものであれば何でもいいです」という形で募集しました。また、募集の文面では「小さいことでも自分たちで変えられることって結構ありますよね」「一緒にやりませんか?」などの言葉で投げかけをしました。

あとは、アイデアを挙げてくれた職員の思いをとても大事にしていました。挙げてもらって終わりにするのではなく、そのアイデアを挙げた背景や職場で悶々としている思いなどを本人に直接ヒアリングして「それならこういう方法はどうですか?」と提案しながら一緒に考え、本人の思いから外れることのないように企画を立てました。

:アイデアを挙げてもらうときに、そのアイデアを実行することでどうなることを期待したいかを書いてもらったんですよね。その狙いをなるべく達成できる企画にすることを大切にしました。

―「アイデア育て隊」の他にも、2023年度、2024年度に注力されたことはありますか?

:役員に対するアプローチの仕方を工夫し始めているところです。というのも、スコアの報告だけでは、抽象度が高く、なかなか役員の中でも自分事化しづらかったり、議論が難しいという状況があります。そこで、これまで定期的にスコアを報告するだけだったところを、部署ごと・項目ごとのスコアの変化など、着目してほしい点を提示しながら「このグループで最近何かありましたか?」と管掌する役員に問いかけるなどして、役員にも考えてもらうきっかけを作るような報告の仕方に変えていっています。

長期的な視点で一歩ずつ活動を進めていきたい

―今後の取り組みについては、どのようにお考えですか?

山本:「アイデア育て隊」の活動は一旦休止して、次の取り組みを検討しているところです。アイデア育て隊は、どちらかというと組織文化の醸成に比重を置いた取り組みで、組織に対して新しい風を送りこめたという点では、意義深い取り組みであったと思います。また、実は職員は部門横断的なつながりを欲していることを把握できたり、職員自身も横断的なつながりの価値を実感できたという点では大きな収穫になりました。一方で、現場単位で仕事への活力を生み出していくというミクロな視点での働きかけはもっとできる感じています。今後は、現場の職員がいかに自分たちの職場単位で働きがいを生み出していくかに焦点を当て、そのサポートを事務局として行っていきたいと考えています。そのサポートの一環として、これまでの取り組みの経験や学びを活かせるとよい良いですね。

:他にも人事全般を見たときに、人事制度というハード面の変革とソフト面の取り組みを両輪で行っていかないと、効果を発揮することができないんだろうなと感じています。

そのソフト面の取り組みの中で重要になってくるのが、マネージャー層の理解です。制度改革の主旨をメンバーに伝え、体現していく、また、エンゲージメントや自身のキャリアについて考えることをメンバーに促す役割のマネージャー自身が、それを良いことだと実感できていない現状があると思っていますので、まずはマネージャー層にアプローチして、メンバーに対して、自分のキャリアを考えていくことは良いことなんだと自信を持って発信できる土台づくりを行いたいです。

―ありがとうございます。では最後に、これから目指していきたい組織像や、活動に対するご自身の思いを改めて教えてください。

:当会は、まだまだ組織が堅いというか、昔ながらの組織だと感じています。金融インフラであり、業務をミスなく着実に遂行することが重要ですので、部署によっては各自の業務範囲がかっちりと決まっています。そのため、「仕事は上から降ってくるものだし、その枠から外れてはいけない」といった考えが、個人差はあれども強めにあったのだろうと思っています。

より多くの人に、自分の能力を使いながら役割を果たす、与えられた仕事を達成するまでやり切る、仕事の楽しさを知ってほしいです。職員みんなが、「自分の仕事によってこれを達成できた」という感覚を持ってもらえるようになるといいなと思っています。そうして、「仕事の責任は管理職にある」ではなく、一人ひとりがその仕事で達成したいことに対して主役として取り組むような感覚を持っている世界になるといいなと思っています。

石黒:山本や森が中心となって活動を進めてくれたおかげで、職員が「エンゲージメント」という言葉を口にする機会が増えています。また、自分や周りの人の言動が組織のエンゲージメントに対してどのように作用するのか、スピード感を持って頭の中で結び付けられる人が増えてきたなと感じています。年数はかかりましたが、歩みが進みつつあるので、今年度で終わりにするのではなく、ずっと続けていくことが大事だなと思っています。

また、ここ数年の新卒の入会職員が社会で働き始めるのと同時にエンゲージメントを知ることになり、いわゆる「エンゲージメントネイティブ」なことに期待も抱いています。「エンゲージメント活動なんて当たり前だよね、頑張ってわざわざやることでもないよね」という感覚がスタンダードになれば、スコアも改善されていくし、一人ひとりの言動ももっと変わっていくのかなと思います。なので、今は職員の中に芽生えた関心度を落とさず、その中でどれだけ「エンゲージメント」を認識しながら仕事ができるかが大事になるかなと思っています。

あとは、Wevoxのスコアについて、項目ごとに「このスコアってどうすれば良くなるかな?」とか、「このスコアとこのスコアの関連はどうなっているのか?」といった分析を今はあまりできていないので、その分析・解析もやりたいなと思っています。

山本:今、石黒の話を聞いて、長期的な視点で考えることや、一緒にやってくれる人たちがいるという事実があることがとても大事だなと思いました。というのは、成果が目に見えづらい活動ですから、最近は「今やるべきことじゃないでしょう?」「腑に落ちないんだけど」などと直接言われることがあり、苦しく思う時もよくあります。でも、長期的に見ると価値が見えてくるのだろうと信じて進めていくことってすごく大事だと思うので、それを忘れずに進めていきたいなという思いです。

あとは、シンプルに、真剣に楽しく仕事ができる環境を作っていきたいなと思いますね。お金だけをモチベーションにして働くのは限界があると思っています。せっかく働くなら、自分や周りに熱意や活力が生み出される瞬間に出会いたいですし、そんな瞬間を、もっともっとこの組織の中にも作っていきたいです。

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