
「毎日の朝礼が伝わっていないとは……」中小企業の経営者が初めて“本当の社員の心”を知ることで生まれる変化

愛媛県今治市出⾝。神⼾⼤学⼯学部生産機械工学科卒業。2023年6⽉よりWevoxを本格導⼊。⼊社後20年以上毎⽇朝礼を続け、社員に対する思いは熱い。10年後にスコア80以上を⽬指す。
工場用環境装置、船舶用機器メーカーである株式会社コンヒラでは、社員が辞める「なぜ?」を探るという目的で2023年よりWevoxを導入。Wevoxのスコアを全社員に公開し、精力的にエンゲージメント活動を進めています。その思いと活動内容について、代表取締役社長の山本 太郎さんに伺いました。
次々と社員が辞める「なぜ?」を探るためWevox導⼊
―なぜエンゲージメントが必要と感じたのか、経緯を教えてください。
⼭本:3年前くらいに社内のエンジニアが次々に辞めるという事象が起きました。何が不満なのか、辞める前に相談してくれたら良かったのですが、エンジニアから事前に相談をしてくれることはなく、気がつくとサプライズ退職ということが続いていました。本⼈に辞める理由を聞いても、明確な説明してくれない、あるいは説明ができないというのも大きな課題でした。
私なりに社員が働きやすいよう、給料やボーナスを増やしたり、残業を減らしたり、年間休⽇も増やしたりしてきたのに、なぜ会社を辞めるのかが不思議でした。その時に思い浮かんだのが「働きやすさ」ではなく「働きがい」に問題があるのではないかと。つまり、福利厚生や待遇面での問題ではなく、「⼼」の問題ですね。
待遇条件ではなく⼼の問題で辞めていくことが多いのだと気づき、「働きがい」でいろいろ調べたところ、エンゲージメントという心理状態を可視化できる「Wevox」に辿り着きました。それがきっかけですね。
―Wevoxの導⼊はスムーズでしたか?
⼭本:社内ではものすごく抵抗されました。社内の不満をアンケートであぶりだしてどうするのだと。特に経営幹部は社員の不満からは⽬を背けたいからなのか、今でも抵抗は強いですね。
でもこれほど抵抗するのは、社内に不満があることを知っていて、それと向き合うのが怖いということの表れではないかと。不満がないなら導⼊しても怖くないはず。健康状態が悪い⼈が健康診断を受けたがらず、余計健康を悪化させてしまうのに似ているなと思いました。
こんな状況だからこそ、絶対にWevoxを導⼊しなければならないと思いました。
―そこまでして導⼊したかったのはなぜでしょうか?
⼭本:単純なことなのですけど、嫌なことに⽬をつぶると必ず同じことが起きるからです。どうせ起きるなら、しっかりと向き合って対応したい。そうすれば、⼆度目が発生する確率は大きく減る。だからどんな嫌なこともほったらかさずに、Wevoxでエンゲージメントを可視化し、組織の課題と向き合っていこうと考えたんです。結果同じ課題が起きにくい体質に変わることができるからです。
以前ある人から、すごくきれいに見える、波のない透明な湖も、実際は大きな⽯をドボンと投げ入れると、下から見えなかったヘドロや、隠れていた⽣き物が次々出てきて見えるようになる。だから静かに見える組織でも、あえてゆすることで問題を顕在化したほうが良いよと⾔われたことがあるんです。Wevoxって、サーベイを通じて組織をゆする状態を生むサービスだと思っていて、そこがいいかなと思っています。Wevoxがないと気付けないことがある。でも、無闇にかき乱して組織を混乱させることはしない。それが、ゆする状態のイメージです。
あと、課題が出てきたとしても、徹底的に議論すれば良いという考え⽅でした。今はまだ50⼈の会社なので、今のうちにそれをやっておかないと組織のDNA(風土)が今のまま更に固くなってしまう。このまま組織が⼤きくなると、意見を言いづらいままの会社のままなので、更に風土を改善するのが難しくなるのだろうなというのもありました。3歩進んで、2歩下がることがあったとしても、社員の意見がたとえ⼀部であっても、なにかしら少しずつ実現されていく社⾵にしたいなと思っています。

―エンジニアが次々と辞めていった原因はわかりましたか?
⼭本:次々と会社を辞めていく2年前ぐらいに導⼊した待遇改善のための⼈事評価制度に問題があったことがわかりました。というのも、設計をする人は、⾃分が昔設計して販売した新開発の装置が半年とか1年後に初期トラブルになることがよくあります。設計は想定される不具合を潰しながら設計しますが、それでも、全てのトラブルや機械の不調を想定して設計することは不可能です。しかしながら、販売後に起きたトラブル解決をその設計者⾃⾝が一人で対応しないといけない状態が続いていました。そうなると、元々⼈事評価で設定した⽬標設定を全部ストップして、トラブルシューティングに集中しないといけなくなります。
ところが当時は最初に⽬標設定したことに対する達成度でのみ⼈事評価をしていたので、他の社員の⽀援や緊急クレームに対して、⾃分がトラブルシューティングで動いていたことが評価対象にならないということ、かつトラブル対応に⼿を取られ、予定していた⽬標設定に⼿がつけられず評価されなかったたことが多発し、辞めてしまったようです。
相談してもらったらよかったのですけど、そこがトップの僕が把握できていなかったということです。こうした問題を繰り返さないためにも、サプライズ退職される前に、社内の課題を可視化したいという思いがWevoxの導⼊につながります。
毎朝、社員に話していたことが、ほぼ伝わっていなかった
―Wevoxを導⼊したことで、何か気づきはありましたか?
⼭本:サーベイ結果を見て、「事業に対する誇り」や「経営理念」に対するスコアがとても低いことに気がつきました。それまで毎朝、朝礼で伝え続けていたつもりでしたが、ほぼ伝わっていなかったのです。この気づきは、衝撃でしたね。
⾃分では毎⽇社員に話しているから伝わっているだろうと思い込んでいたのです。これだけ⾃分と社員の間にギャップがあるのだなと気づかされました。また、世代別とか等級別とか、サーベイ結果の切り⼝を変える機能がありますよね。全体を均して⾒たスコアと、切り⼝を変えたスコアでは⾒え⽅が全く違うことに気がつきました。組織状態を多様な視点で見られるということ自体が大きな気づきでしたね。
―結果を踏まえて、何かアクションを起こしましたか?
⼭本:まず、大きなところでは経営理念を変えました。今の経営理念は、社員からのアンケートをもとに作っています。社員が多く会社を辞めた後にアンケートを取ってわかったのが、社員の多くは会社には⾃分⾃⾝と家族のために働きに来ているということでした。
私だけが会社のために働くのだと思っていて、それを社員に押し付けていたのです。そのギャップもまた社員が離れていく原因だったのだと。そこで経営理念の第⼀条に「全社員とその家族の物⼼両⾯の成⻑と幸福を追求します」という⽂⾔にしました。社員が⾃分⾃⾝や家族の⽣活のために働いている。その給料はどこから出ているのか?会社が給料を払っているのではなく、給料の原資はお客様・取引先からいただいたものです。
ならばお客様・取引様に喜んでいただくことが、結果として社員や社員の家族のためにもなる。そこで経営理念の第⼆条に「取引先の物⼼両⾯の成⻑と幸福を追求します」という⽂⾔にしました。ただこれだけだと⾃分たちだけ幸せになればいいと⾒えてしまうのと、新卒採⽤時に学⽣から社会貢献について聞かれることが多いので第三条の「社会への貢献を追求します」を付け⾜すことにしました。経営理念が、社員に理解されず浸透していなかったことがわかっただけでも、Wevoxを導⼊した成果はあったと思います。会社の根幹ですよね。
またWevoxで「事業に対する誇り」のスコアも低かったので、これに関する解説は朝礼でするようにしました。創業時から諸先輩⽅がゼロから開拓して⽣まれ、だから今、朝来たら注⽂書が来るのだと話を説明しました。今は当たり前のように動いている事業が、立ち上げ時はどれだけ苦労してきて修羅場があったかなどを説明しながら、毎⽉のスコアで反応を確認するようにしたんです。そしてスコアが低かった給与も毎年上げていきました(もちろん事業採算をバランスをとりながら)。
また他の施策としては、エンゲージメントとは⼼なので、その⼼と⼈事評価にあるコンピテンシーの項⽬をどうやって紐づけて⾏こうかなと考えはじめました。本来、⼼と⼈事評価はくっつけてはいけないはずだと考えていました。たとえば、ものすごく能⼒がある⽅が職種や部署を超えて能⼒を提供するような価値観は、良い部分も悪い部分もあるというのが私の経営者としての考え方としてあったんです。でも実際は仲間を助けるような⼈と⼀緒に働きたいというコメントがアンケートにとても多く出てきたので、それを⼈事評価のコンピテンシーの項⽬に⼊れていくというキャッチボールはしました。

コメントには最短1ヶ月以内に具体的なアクションを行う
―Wevoxの導⼊に社内の抵抗があったと聞きましたが、今、社内でWevoxの理解を得るために⼯夫されていることはありますか?
⼭本:未だに抵抗している⼈もいるのですが、とにかく集計を⾒せることですね。隠さず全社員に開⽰すること。その上でデータを⾒て、私なりの解釈をかなり細かく伝えています。エンゲージメントが低い部分は、各部署で考えて取り組んで欲しいと伝えています。
―導⼊後、社内で変化はありましたか?
⼭本:以前に比べて、社内での意見の衝突が無くなったように感じます。Wevox導⼊で社内の意⾒が確実に社⻑にダイレクトに伝わっていると感じてもらっているのだと思います。Wevoxに書かれたコメントは全部社内オープンにして、私から全部回答しているのですよ。多少ショッキングな内容もすべて隠さずそのまま公開しています。
コメントでもらった課題を解消するために、まず2週間以内に何か⽅針決定して、早ければ1ヶ⽉以内に、遅くとも半年以内には具体的なアクションを起こすようにしています。それを社員は⾒ているので、「社⻑は意⾒を⾔えばきちんと動いてくれる、回答をくれる、隠さない⼈なのだ」と思ってくれるようになりました。そこは確かに意識が変わったと思いますね。
―会社に対する厳しいコメントを全公開することで社⻑⾃⾝、傷つくことはないのですか?
⼭本:もちろん、ありますよ。ただWevox導⼊企業の経営者交流会に参加すると、他の企業経営者のみなさんもほぼ同じことで悩んでいるのですよ。そうした話を聞くと、⾃分だけじゃないのだなとほっとはします。また、いろいろな課題があったとしても、社内で誰かは味⽅になってくれるということにも気がついたので、その⼈たちで意思決定するよう組織が変わっていけば、絶対よくなるとの確信も得られました。
社内の意⾒が⾟ければ⾟いほど企業にプラスに
―今後の組織づくりの展望について教えてください。
⼭本:Wevoxのスコアを10 年後には80 にしたいです。今は60 前後なのですが、80 のスコアをとっている会社はとても業績が良いとわかったので。
スコアが80になると、例えば、社員⼀⼈ひとりが経営者のような社⾵になるんじゃないかなと考えています。ゆくゆくは社員全員参画経営というか、社員⼀⼈ひとりが個⼈事業主のように考えて、事業主が集まった組織になって、⽣き物のように変化しながら成⻑していく組織にしていきたいですね。
そうなった時、この会社に私は必要ないのかなと。経営する中で、⾃分の能⼒のキャパシティの限界を感じていたりもします。自分よりもキャパシティが⼤きくて能⼒のある⼈にバトンタッチするという意味でも、このWevoxは⼤事だと思っています。Wevoxを指標にスコアをあげて、会社も次のステージにステップアップし、そのステージにふさわしい新リーダーが出てくれば、さらにエンゲージメントは上がり、会社も⾶躍的に成⻑するのだと思うと、今から楽しみです。
―最後に中⼩企業経営者に伝えたいことは?
⼭本:中⼩企業の社⻑さんはWevoxをぜひ導⼊してほしいですね。社内の意⾒と向き合うことが、ものすごく⾟ければ⾟いほど、その先に絶対いいこと、例えば組織のステップアップなどが待っているのは間違いないです。そこに⽬を背けずに向き合えば、必ず会社はよくなります。それを伝えたいですね。








