
「本当にみんな幸せに働いてる?」――新潟県燕市の金属加工メーカーが自らの手で進める“楽しいボトムアップ型の組織づくり”

人材サービス企業の営業職を経て、2021年、シンドーに入社。以来、営業部にて営業活動に従事。OEM商品や自社商品の営業・販売を主に担当するとともに、エンゲージメント向上プロジェクトを立ち上げ、エンゲージメント活動を推進している。
新潟県燕市にある株式会社シンドーは、創業77年目の金属加工メーカーで、従業員数は約90名。理念経営を行う同社は2022年10月にWevoxを導入し、エンゲージメント活動をスタートしました。活動の成果や取り組み内容について、推進チームを立ち上げ、活動を牽引している相場さんに伺いました。
経営理念が根づいた組織をつくりたい
―御社は2022年10月からWevoxを利用されています。まずは、導入の背景から教えてください。
弊社は理念経営を遂行していて、経営理念の1つに「社員とその家族の幸福を支える」を、パーパスに「モノづくりを通して、人の心を豊かにする」を掲げています。また、社長も「社員の心と心を繋ぎたい」といったことを常々話しています。私自身はそれらの理念にすごく共感する一方で、「社員はみんな、本当に幸せなのだろうか?」「お客様の心を豊かにするのはいいことだけれど、自分たちの心は豊かなんだろうか?」と感じるところがありました。
というのは、2021年に入社して最初に感じたのが、会社全体が暗いということでした。今振り返ると、業績が苦しくなってきたタイミングにコロナが追い打ちをかけてきた時期で、会社の事業や組織の過渡期でもあったと思います。当時の私は、理念経営と実態のギャップを感じました。
そこで、経営側から一方通行に発信するだけではマズいという危機感を感じ、現場側の声も聞いて実態と向き合いながら、理念経営の実践に向けた新たな文化を再構築していく必要性を感じました。その手段の1つになり得るのがエンゲージメントサーベイではないかと思い、経営陣に導入を提案しました。

―Wevoxを選ばれたのはなぜだったのでしょうか?
契約面での縛りの少なさと、カスタマーサクセスによるサポートがある点などからです。
無料トライアルがある、初期費用不要、1アカウントあたりの費用が業界的に安め、契約期間の縛りなし。こうした条件は、エンゲージメントへの知識が浅く、導入してみないと効果的かが分からないという中小企業にとって導入しやすいものでした。
また、私のリソースに限界があり、相談できる相手がいないと厳しそうだとも思っていたので、一定数以上の利用でカスタマーサクセスさんがサポートについてくださるのも心強かったです。
「振り返り会」で課題を発見し、具体的なアクションを検討
―Wevoxの導入後は、どのような狙いで、どのような活動をされていますか?
導入の目的として掲げたのは、シンドーらしい会社をつくることです。経営理念が飾りのようにあるのではなく、現場に根ざし、現場で活きている会社をつくりたい。そのために、いい仕組みや環境、いい組織や個人を、Wevoxを活用しながらつくってくイメージです。
例えば理念の成就を目指し、仕組みや環境をより良くするためには、課題の発見と解決が必要ですし、組織や個人をより良くするためには、率直な対話や素直な自己対峙が必要です。これらを推進していくために、プロジェクトチームを立ち上げました。
―どのようなメンバーで構成されているのですか?
メンバー数は12〜13名くらいで、社内の各組織体から2名ずつ、その組織で発言力のある人1名と、今後そういったポジションになることが期待されている人1名に声をかけてメンバーに入ってもらっています。課長・係長クラスが中心ですが、コアメンバーには若手社員5名を据えて動いています。

―どのような活動をされているのでしょうか?
いくつかありますが、1つは、毎月末にサーベイ結果が出た後に、自部門内で行う部門振り返り会とプロジェクトメンバー全体で行う全体振り返り会です。
部門振り返り会は、各組織体の中で、その月のスコアの共有とスコアからの気づきなどを対話する時間です。プロジェクトメンバーは、対話の中で出てきた気づきや、それらをふまえた組織の現状、悩みなどを弊社が作成した振り返りシートにまとめ、シートを持って全体振り返り会に参加します。

部門振り返り会で使用しているシート
全体振り返り会は、各部門の振り返り会の内容のシェアと、問いかけを設定しての対話を行っています。2〜3部門×4テーブルくらいに分かれて、おのおのがまとめてきた振り返りシートの内容をシェアし、他組織から見た感想や意見を率直に言い合います。こうして知の集積と、プロジェクト全体の質感の向上を狙っています。
対話では、私から問いかけを提示し、個々の経験などをもとに対話を行っています。これまで「人の心を豊かにするチームってどういうチームだと思いますか?」「このプロジェクトを通じて、今期末までにどういうチームを作りたいですか?」「エンゲージエントの必要性を聞かれた時、あなたはどう答えますか?」などについて話し合いました。
―問いかけを設定しての対話は、どのような狙いがあるのですか?
一番は、「自分」はどうしたいのか?「自分」はどう考えるのか?といった、自分軸を養うという狙いがあります。根っこの部分の自分の価値観や考えが表れ始めると、自然とエンゲージメントも向上していくと思います。上から言われたから~という一方通行だけであったり、思考停止の状態ではなく、「自分はどうしたいか」に基づく空気感をつくることが、社員の幸福感や、理念経営の実践に近い状態だと考えています。
そこで、まずは全体振り返り会の中で、先ほど挙げたような問いかけを行うことで、個々人の内発的なものにスポットライトを当てたいという考えで行っています。

相場さんが参考としている書籍『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(安斎 勇樹著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
―なるほど。では次に、プロジェクトメンバーの皆さんを中心とした、各組織での取り組みについて教えてください。振り返り会で出てきた気づきが改善やアクションに繋がった事例などはあるでしょうか?
例えば、「健康」や「人間関係」のスコアが良くなかった部署がありました。その部署ではプロジェクトメンバーが、コミュニケーションを図る事でもっと会話も増え、その事によりお互いが本音や相談しやすい雰囲気作りへと結びつける事ができるのではないかと考え、毎週末の終礼に業務とは関係のないテーマで雑談をする時間を設けました。
すると、普段、同僚には話せなかったことや、これまで見えてこなかった同僚の一面をお互いが見れるようになり、部の雰囲気が柔和になったのか、「人間関係」「健康」どちらのスコアも向上したんです。今では「ひと言タイム」という独自の活動として継続しているようです。
また、Wevoxの導入当初、社内で最もスコアが低かった別の部署では、部門内の振り返り会で「一人ひとりが仕事を抱え込んでいて、それを共有し合えずにストレスになってしまっている」という気づきを得ました。そこで、担当している業務とその状態を一人ひとりホワイトボードに可視化し、必要に応じてサポートし合えるようにしたんです。それだけが理由ではないでしょうが、今ではいろんな意見が出やすくなり、スコアも全社の中でトップクラスに高くなっています。こういった事例が、今ではたくさんありますね。
キーワードは「楽しい」。月1回、社内メディアで情報を発信
―他に、プロジェクトチームで取り組まれていることはありますか?
エンゲージメントに関する情報と、社員の日常を垣間見られるような情報を発信する社内メディア『クリエーション』を立ち上げ、月1回、メール配信と社内に複数ある掲示板への掲示を行っています。
というのは、Wevoxの導入とエンゲージメント活動は、どちらかというと経営の動きとして語られがちで、実際に現場には「また何か始まったよ」といった雰囲気も正直ありました。その雰囲気を打破する方法を、若手のコアメンバーで検討していて出てきたのが、「楽しい」というキーワードです。「楽しい」という感覚からであれば、エンゲージメントの考え方に親近感を持っていただきやすいのでは?ということで、社内報的なツールで情報発信することになりました。
―どのような情報を発信されているのでしょうか?
例えば2023年8月号だと、ペライチの半分のスペースでWevoxのスコアや現場への感謝の言葉を、もう半分のスペースで、「健康チャレンジヒーローズ」という企画を立てて、社員数人の健康への取り組みを紹介しました。今、弊社では社員の健康を重視した取り組みを行っているので、それに関連して立てた企画です。これらの内容が、社内に笑顔や癒し、活気など、楽しめるからこそ生まれるポジティブな影響に繋がることを期待しています。
あと半分のスペースでは、経営陣の動きや考えなども適宜伝えるようにしています。例えば、今年は現場の暑さ対策に大型クーラーを購入しました。そういった経営の「社員の働きやすい環境をつくりたいから~」という行動の意図は、意外と現場まで伝わらないことがあるため、そこを『クリエーション』で発信するようにしています。こうした発信を続けて、経営陣と社員の心と心を繋ぐ架け橋の1つになるのではと思っています。

『クリエーション』9月号
―経営陣の方とWevoxのサーベイについて話す機会はありますか?
はい、あります。毎月のサーベイに記入されたコメントをすべて経営会議でシェアし、対応するのか、課題として残すのかといったことを経営陣に1つずつ意思決定してもらっています。
対応できた例としては、週1回のラジオ体操の時間に伴う業務調整があります。毎週2回の朝礼でラジオ体操をしているのですが、同時刻に月2回、海外から40フィートの大型コンテナが入ってくることがあり、受け入れ担当の社員たちは、他の社員がラジオ体操をしている傍らで受け入れ作業をしている状況がありました。「そういうのってうちの会社らしくないんじゃないか」というコメントをもらったことから、コンテナの受け入れ時刻を調整して、全員が同じタイミングで朝礼を迎えられるようにしました。
あとは、弊社では「ワークシェア」という、人手が足りないときに他部署にヘルプを要請して来てもらう仕組みを運用しています。しかし、ヘルプに行った社員から「作業目標が決まっていないためにやりがいを感じない。手伝うからにはやる気を持って取り組みたい」といったコメントをもらいました。そこで、ヘルプに入ってもらうときは作業目標を設計することを全社方針として決めました。
―これらの取り組みを始められて間もなく1年が経とうとしていますが、社員の皆さんの変化をどのように感じていらっしゃいますか?
一社員として私自身は、良い方向に向かっていると感じています。私の所属する営業部は、入社当時に感じたような「暗さ」を感じなくなり、笑顔や明るい声掛けが増えています。また、「よしやろう!」と皆で共通の目標に向かっている感覚を持てるようになってきました。スコアも1年前よりかなり高くなってきました。
全社の動きとしては、社員間で感謝の言葉が増えているようです。各部門の振り返り会を経て「感謝をしよう」という取り組みをしている部署が多く、終礼時に一日の感謝を言い合う取り組みをする部署もあります。自然と感謝することや、仕事をやってもらって当たり前ではない感覚が出てきています。
エンゲージメント活動だけがこの効果を生み出している要因ではないと思いますが、複合的な要因の中に絶対にエンゲージメント活動が入っていると思いますね。
あと嬉しかったことは、プロジェクトメンバーから、「いいことも悪いこともWevoxによって率直に顕在化し、発言すれば解決する場が出てきている」「トップダウンからボトムアップ的になってきている。さらに自分たちで環境を変えていこうと少しずつ考え始めている」といった声が挙がっています。これはやはり、Wevoxを活用していることの効果だと思っています。
―プロジェクトメンバーの皆さんを中心に、前向きに組織を良くしていこうという動きが定着してきている感じでしょうか?
そうですね。定着し始めたかなという感じはあります。
推進チームのメンバーから、エンゲージメントを高めていく
―とはいえ、最初はご苦労があったのではないかと思います。プロジェクトが始まった当初は、メンバーの皆さんの意識やモチベーションはどのような状態だったのでしょうか?
導入時に「エンゲージメントをご存知の方はいますか?」と聞いたときは、ほとんど手が上がらない状態だったと記憶しています。私自身は、前職で組織づくりについて経験がありましたが、プロジェクトメンバーは「また何か始まるの?」という感覚だったのが本音ではないかと思います。

―そこからどのようにしてメンバーの皆さんの意識づけなどをされたのでしょうか?
まず1つ、大きな動きとして行ったのが、Engagement Run!Academyの全3回の公開クラス(Wevoxユーザー向けのウェビナー)に、プロジェクトメンバー全員に参加してもらうことです。エンゲージメントについて私なりに工夫して伝えてはいましたが、社内の人間の話を聞くのと、外部の方に話していただくのとでは、質感も、頭への入り方も違います。実際、「エンゲージメントについて理解が深まった」という声を多くの方からいただけました。また、弊社の高い参加率や受講中の姿勢をアトラエ様から褒めていただき、プロジェクトメンバーの意識の高さも感じました。
また、普段意識しているのは、メンバー一人ひとりの中にある「どうしたいか」や「何がいいんだっけ?」といったことしっかりと考え、言葉にしてもらうことです。そのために、『問いかけの作法』など書籍の読書会を行って、周りに対しても自分自身に対しても問いかけをしながら自分や周りの人の中のWillを引き出せるよう働きかけをしています。
加えて、全体振り返り会などで個々のメンバーの内なる声が出てきたときに、なるべく見過ごさないように意識しています。ちょっとした意見やアイデアも「どうしてそう考えたんですか?」と背景を確認したり、素敵だと感じたら率直に「それすごくいいですね」と反応したり、本人のこだわりの部分を聞いたりして、本人の考えがもっと外に出てくるように働きかけています。
あとは、私から定期的に「今、悩み事はありますか?」と問いかけています。皆、推進メンバーとして悩みを抱えているはずです。私自身も暗中模索です。私含めて皆が分かりやすい正解のない中を進んでいます。だからこそ問いかけて悩みを出してもらって、私自身もプロジェクトメンバーから気づきや助言を受けるということをしないと、プロジェクトにおけるエンゲージメントも上がっていきません。
個々のメンバーがどう思っているのか、どうしたいのか、何に悩んでいるのかということをできるだけ教えてもらい、それを判断して、取り入れながら進めていきたいと思ってやっています。
課題や意見をよりリアルに組織の成長に繋げるフェーズに進んでいきたい
―最後に、今後の組織づくりの展望について教えてください。
部署によって濃淡はありますが、多くの部署では、これまで会社や同僚に言えなかったことを言える場や、言える関係や環境ができてきたというフェーズにあると思います。ここから先は、出てきた意見や課題をもっとリアルに解決したり、もっとリアルに自分たちの成長に繋げたりとフェーズを上げていこうと思っています。
そのために、短期的には、Wevoxのスコアの目標値を決めて、今期末までに一度、全社アベレージでクリアすることを目指しています。数値にこだわるのは違うかなと思う半面、目標としてはすごく分かりやすいので設定しています。
中長期的には、いい会社を作ることに終わりはないので、それを探求し続けられるようにしていきたいですね。
―具体的には、どのようなことに取り組まれる予定ですか?
プロジェクトメンバーのスキルを上げていくことと、全社のエンゲージメントへの関心を高めていくことの2点に取り組んでいきます。
プロジェクトメンバーのスキルアップのために始めているのが、他部門の振り返り会へのオブザーバー参加制度です。ファシリテーションに悩んでいるメンバーがたくさんいるため、時間があるときに他部門の振り返り会に参加して、雰囲気や進行の仕方なども含めて知識を収穫してくることが狙いです。参加して得た気づきや知識は、スプレッドシートにまとめてプロジェクトメンバーにシェアしてもらって、知識の蓄積に繋げていきます。

もう1つ、これから始めようと動いているのは、Engagement Run!Academyの活用です。既に9月から、弊社のトップ2である社長と経営企画室長に数クラス参加してもらって、2人から良い反応があれば、他の社員への導入、年内には受講開始をお願いしようと思っています。2人から「あのクラスいいよね」と一言あるだけでも、社員のモチベーションがまったく変わってくると思うので、会社全体を動かすために、社長と室長から後押ししてもらう算段です。
Engagement Run!Academyについては、全社のエンゲージメントへの関心を高めていくために、できる限りプロジェクト外の社員にも公開クラスに参加してもらうことを考えています。エンゲージメントは組織や個人の動力源のようなものだという認識を、もっともっと社内に根づかせていきたいんです。だから大切にしていこう、という空気感が一人ひとりに出てくると、「社員の幸福」や「心豊か」に近い状態になれると考えています。
加えて、全社でもっとエンゲージメントに興味を持ってもらえるように、社内で年1回行っているアワードの賞の1つに、今期から「エンゲージメント大賞」を設けることにもしていただきました。
こうやって、いい会社をつくっていくために、トップラインの底上げと、全社のエンゲージメントへの関心を高めることに取り組んでいければと思っています。

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