
「会話も笑顔も増えたんだよ」——寡黙な職人たちの変化を生んだ製造現場の振り返りミーティング

2021年に株式会社シンドーに入社。入社当初は生産部にて運搬を担当し、2023年からは自身の希望で製造部に異動。金属の加工や、ロボットを使った溶接の段取りやプログラム作成を行う。現在、製造部内でのエンゲージメント活動を、課長とのタッグで行っている。

2018年に株式会社シンドーに入社。2023年より商品管理課にて、梱包・出荷グループの主任を担う。現在、梱包・出荷グループに加え、準社員で構成されるマルチタスク班のエンゲージメント活動を牽引している。

2018年に新卒で株式会社シンドーに入社。2024年に新設されたデザイン経営事業本部で、エンゲージメント活動の事務局として全社的な推進活動を担当している。
金属加工メーカーの株式会社シンドーでは、「働く社員の心を豊かにしたい」という現・デザイン経営事業本部 部長の相場さんの想いから、2022年にエンゲージメント活動がスタートしました。活動3年目となる現在では、部門ごとに選出された「コアメンバー(エンゲージメントアンバサダー)」が中心となり、それぞれの職場での推進を担っています。今回、そんなコアメンバーのお二方と事務局の小林さんにお話しを伺いました。
※取材時(2025年7月)の部署・役職になります。

寡黙で手を止めない「職人」だからこそ感じた課題
—エンゲージメント活動の推進を担うデザイン経営事業本部としては、組織へどんな課題感を持っていたのでしょうか?
小林(岳): 「何を言っても無駄だ」と、社員が対話を諦めてしまっている雰囲気に対しての課題感を持っていましたね。自分の考えを表に出すことがあまりなく、一人ひとりが自分の仕事だけに集中している状況でした。
そもそもエンゲージメント活動をスタートさせたきっかけが、「社員が活き活きとしていない」と部長の相場が感じたことだと聞いています。同じような気持ちを、活動がスタートした当時は私も抱いていました。
また、弊社は人とその心を重んじる理念を掲げているからこそ、さらに人と心が通い合う会社にしたいと感じています。また、そのような風土だからこそ学習する組織が育ち、変化の激しい時代を生き抜いていく力になるという期待感もありました。
—コアメンバーのお二人は、それぞれ製造部と生産部に所属されていますが、どのような業務を行う部署なのでしょうか?
大澤: 製造部では、主にステンレスワイヤーの材料切断、製品加工表面処理までを一貫して行っています。その中で私は、金属の加工や、ロボットを使った溶接の段取りやプログラムの作成を行っています。
小林(秋): 生産部では、製品の発注から出荷まで、広範囲に渡り業務を行っています。私はその中で梱包・出荷グループに所属し、製品の梱包と出荷を担当しています。
—エンゲージメント活動を始めた当初、どのような課題を感じていましたか?
大澤: 製造部でエンゲージメント活動を始めた際に感じたのは、「興味を持ってもらえない」という課題感ですね。シンプルに「エンゲージメントって何?」という声や、「それで生産性は上がるの?」という声が上がっていました。
私もそうですが、モノづくりの現場で長く働いている職人たちは、モノを作ってなんぼという考え方を持っています。なので、目の前の作業の手を止めて何かをすることに価値を感じにくいんですよね。そのため、エンゲージメントスコアを見て話し合いましょうと働きかけた当初は、あまり良い反応はもらえていませんでした。
小林(秋): エンゲージメントが浸透しづらい、生産部でも感じていました。製造業では生産量に応じたノルマもあります。現場を離れ、手を止めてエンゲージメント活動する意味を感じてもらうことには、かなりハードルがありましたね。

部ごとにカスタマイズした「振り返りミーティング」を実施
—そのような課題もある中で、具体的にどのように活動を進めていったのでしょうか?
大澤: エンゲージメントの重要性をいくら言葉で伝えても限界はあるので、まずは経験してもらうしかないと思っていました。そこでまず始めたのが、製造部の3つの工場それぞれで行う毎週の「改善ミーティング」と、毎月全工場が合同で行う「振り返りミーティング」です。
改善ミーティングでは、現在欠けている事務用品の話から、製品検査方法の見直しの必要性など、日々の仕事で流れがちな小さな気づきを共有し、改善に繋げていきました。
また振り返りミーティングでは日々の改善ミーティングの内容を相互に共有しつつ、毎月行っているエンゲージメントサーベイのアンケートの内容や、スコアの共有をしています。
自分たちの職場での改善行動がスコアとして数字に現れるのを実感できたことで、徐々に活動に興味を持ってもらえていると感じています。

—他にも行っている活動はありますか?
大澤: 朝礼で、様々なアクティビティを実施しています。これまで行っていたラジオ体操や経営理念の読み合わせの代わりとして、ストレッチやフリートーク、ベトナム人実習生の日本語学習を兼ねた本読みなどを行ってきました。朝礼の内容は、交代制の朝礼担当が自由に決めています。
また、朝礼で話せなかったメンバーには、自分から声をかけてコミュニケーションを取りにいくようにもしています。そのかいあってか、今は製造部のメンバーと、ささいなことでも話せるような関係性になりつつありますね。
—小林(秋)さんは、どのような活動をされましたか?
小林(秋): 生産部でも毎月の振り返り会を行っています。生産部では、事務所、倉庫、梱包部屋と個々の作業場所がバラバラなこともあり、コミュニケーションが生まれ辛い状況にありました。そのため、各々が改善したいことや困っていることも表面化してこなかったんです。
そこで、みんなで話せる振り返り会をきっかけにコミュニケーションを促進し、気持ちよく働ける環境づくりを目指そうと考えました。
とはいえ上手くいくことばかりではなく、振り返り会においても小さな課題に何度か直面しました。
たとえば、質問をしてもメンバーが返事に困ってしまい、会話が続かない、などです。その際には、セミナーなどに参加して自身の問いかけ方から学び直すことをしました。
「やりがいは何?」といった質問を、「どんな時に活き活きしていると感じる?」「仕事が楽しい瞬間はどんな時?」など、職場でイメージしやすい質問に変えてみることで、メンバーもどんどん話してくれるようになったんです。
また、振り返り会が愚痴を言い合う場になってしまったケースもありました。その時は、一度意見を否定せずに受け止めるように心がけ、その後で改善策をみんなで話し合うようにしました。それによって、以前より建設的な意見が出やすくなったと思っています。
建設的な意見が出ることで、身近な業務からの改善に取り組むことができました。当たり前にやっていたチェック作業の一つが無駄な業務だということに気づき、大幅に時間を削減できた事例がありました。

これは一例にすぎませんが、こうした気づきを平等に伝え合える関係作りが実績にも結びついていくんだという手応えを感じ始めています。
最近では、コンセンサスの重要性を体感する「NASAゲーム」を試してみました。振り返り会を通じてコミュニケーションはとても取りやすくなり、仕事が終わらない時にも、お互い助け合える関係性になってきています。
月に2回行っている目標の進捗確認をするMTGでも、会話がしやすくなったことで会社の方針や目標への納得感も深まり、皆が自分事として捉えて団結力が高まっていると思います。
例えば、メンバーが今までよりも自発的に行動してくれるシーンが増えました。私たちの部門は経費を削減することが売上貢献へのアプローチになりますが、その経費削減に向かって皆が使命感を持って取り組んでいて、結果に結びついた時にはおのずと今まで以上の喜びを感じ合えています。
エンゲージメント活動を経て受けた、子供からの嬉しい言葉
—活動全体を通じて、どのような変化がありましたか?
小林(秋): 元々パートさん(準社員)で構成されるマルチタスク班のエンゲージメントスコアが全社的にも低かったのですが、この2ヶ月で10ポイントほどスコアが上昇しました。雰囲気が非常に良くなっているのを体感しています。
以前は仕事に対して後ろ向きな発言が出ることも多かったのですが、今はその日の梱包予定数が達成されたら、みんなで喜び合ったりするようになりました。この雰囲気は以前はなかったものだなと思っていますね。
今は、私の代わりにパートリーダーが振り返り会を主導してくれています。今もし生産部の採用募集があったら、「良い雰囲気だよ!入って!」と胸を張って言えますね。会社との重なりが深い人材が増えたら楽しく働けるし、社員に長く働いてもらえるような選ばれる会社になると思います。そうなればパフォーマンスもどんどん上がっていくと思うんです。そんな組織を作れるように活動を盛り上げていきたいですね。
大澤: 製造部では、エンゲージメントスコアがあることで、「ここってこんなに上がったけど何だったんだろうね」「こんなに下がったけど何があったんだろうね」といった会話ができるようになりました。モノづくりに関わる人は、数字を重視する傾向があるので、見える化されることで関心が持ちやすくなると考えています。
また、単純にコミュニケーションの量が増えたこともあり、ささいなことも話し合えるような関係性に変わりましたね。
例えば、自分の子供の話、食べ物やお酒の話、休日の予定など、個人的な会話も以前と比べて増えました。そうした雑談の中で、「今日これがうまくいっていない」とか「終わらなかった」といった仕事の悩みも自然に出てくるんですよね。毎日顔を合わせ共に過ごす仲間と良い関係性が築けているのは、自分としても嬉しいことです。
今まではそういった会話が自然にされる空気がありませんでした。業務においても、小さな気づきや改善案が出た際はそれがうやむやになってしまい、「何を言っても変わらないじゃないか」という考えが根付いてしまっていたと思います。
声が出しやすい環境になったうえで意見を出し合って、それをみんなでちゃんと実践していくことによって「自分たちの職場を自分たちでよくしよう」という意識が上がってきました。
実際に、意見に出た道具の買い替えや検査方法の見直しを行ったことで生産性や品質の向上に繋がっています。活動の中で仲間から必要とされているし支えられているという実感が私の原動力になっています。
元々、子供や妻に「下を向いて会社に行く姿を見せたくない」という想いがありましたが、おかげさまで子供から「パパ、楽しそうに会社行くよね」と言ってもらえています。
小林(秋): 私もEngagement Run!Academyで学んだことや、エンゲージメントのことを娘に話していた際に、「なんかママ、かっこいいこと言ってるね!」と嬉しい言葉を言ってもらったことがありました。
振り返ってみると、エンゲージメント活動を通して自分の仕事により価値を感じられるようになったことで、娘にも色々と話すようになったのかなと思っています。

—デザイン経営事業本部からの目線で、職場の変化を感じた部分はありますか?
小林(岳): 製造部では何年もボロボロになるまで使われていた工具がようやく買い替えられていたり、小さな改善が進んでいるなと傍目から見て感じています。休憩室にいた際にメンバーから、「会話も笑顔も増えたんだよ」と話しかけられることもありました。
小さなモヤモヤも笑顔も表に出せる職場へと変わっているのだろうなと感じています。
一人ひとりが輝く、活気ある職場を目指して
—最後に、今後どのようなチーム・組織を目指して行きたいかお聞かせください。
小林(岳): デザイン経営部としては、社員一人ひとりが主体的に、より良い方向に向かっていける会社を目指しています。「こんなことをやりたい」という意思を持つ人が増えていけば、みんながより活き活きと働く会社になっていくと思っています。
また、以前社内で行ったやりがいを聞くワークで、「どうせ作るなら美しくしたい」と語る社員がいました。それを聞いて、モノづくりへの誇りが高い人を増やしたいな、とも感じましたね。
誇りが生まれれば、シンドーのプロダクトやサービスの質も上がると思います。それは、お客様はもちろん、社員や会社にとっても良いことだな、と考えています。

小林(秋): 私は、性別、年齢、性格が異なる一人ひとりのメンバーの個性を強みに変えられるチームを目指しています。
言いたいことを言い合え、お互いを尊重し合えると、結果的に生産性も高まると思っています。なので、一人ひとりが自分や自分の仕事に自信を持ちながらも、得意不得意を補い合ってチームとして仕事をする。そんな、みんなが輝ける職場が私の理想です。
仕事を通して自分や仲間の成長を感じることで、仕事に対してとてもやりがいを感じています。私自身も今まで避けて通ってきたことにも挑戦する機会をいただけたことで、前より自分に自信が持てるようになりました。もちろんまだまだ未熟者ですが…
そして会社の向かう方向や理念と自分の理想との重なり部分を大切にして
WIN-WINの関係を作っていければ結果、理念の体現を形にしていけるのではないかと思います。

大澤: コミュニケーションが活発で、機械や作業音が鳴り響く中で、働く人の声も飛び交う活気ある会社を目指したいです。そのために、相手をリスペクトする心を持ったコミュニケーションを広げていくことが必要だと考えています。
ただ、それをメンバーに求めるだけでは広がりづらいと思うので、まずは自分がリスペクトを持って人と接することを実践していきたいです。自分が、よりリーダーシップを持って、言動と行動でチームや組織を引っ張っていきたいと思っています。
そして、これからも、家族や一緒に働く人たちに楽しく働く姿を見せられるようにしたいですね。








