
4年でマザーズ上場×少人数1部上場! 最強チーム経営者のエンゲージメント経営対談【後編】
2018年、創業からわずか4年という圧倒的スピードでマザーズ上場を果たした、スマートフォンアプリ事業とIoT事業を手掛けるand factory株式会社。wevoxを導入し、エンゲージメント経営にも注力する同社は、年間売上を前年比2.5倍に伸ばす(2017年7月と2018年7月時点の比較)など急激な成長を続けています。同じく2018年に約40人という少人数での東証1部上場を果たした株式会社アトラエ。エンゲージメントを重視し、目覚ましい活躍を続ける2社の代表が、エンゲージメント経営への思い、会社の成長の本質、現代の経営者に求められる姿勢などを語り合います。今回はその後編をどうぞ!
エンゲージメント経営における、事業計画の考え方
小原:上場に対しては、どのように考えていましたか? 我々は起業する時点で、上場を目指して動いていました。というのも、and factoryはベンチャーには珍しく、既婚者が40%を超えているんですよ。マネジメントレイヤーもほぼ全員既婚者。子供がいる人も多い。だから、安定して働ける環境を経営者としては早急に用意したかったのです。上場をすることで、財務体質を安定させるのは、経営者としては全体にやらなきゃいけない責務だと思っていました。
新居:アトラエは創業から12年で上場をしたので、最初から目指していたわけではなく、オプションの1つとして捉えていました。会社のビジョンをどう実現できるかを考えていったときに、そろそろ上場というオプションを使うタイミングなんじゃないか、と思ったんです。
小原:どういう考えから、上場というオプションを選んだのですか?
新居:私は、上場を“高速道路”だと思っているんです。自分たちのビジョンがゴールだとしたら、そこに向かうまでの高速道路。当然、未上場で“下道”を走っていくやり方もある。下道だったら、ガソリンスタンドにすぐ寄れるし、自分たちのペースで進められる。だけど、スピードは遅いし、遠くまで行くのはすごく大変。一方、高速道路は一旦乗り始めたらなかなか止まれない。事故ったら、市場から撤退させられる可能性もある。でも、スピードを出せるし、遠くまで進めます。その分、性能が良くてガソリンたっぷりの状態じゃないと乗らないほうがいい。そういった違いを念頭に、マクロ的な環境タイミングと、自分たちの車の性能、つまり会社の状態を踏まえた上で、高速道路に乗ったほうが圧倒的に早くビジョンにたどり着けると判断したんです。
小原:そういう考え方もあるんですね。上場するうえで、決裁の仕組みづくりには、すごく頭を悩ませました。ガバナンスという意味では必要だし、健全な財務状況の維持にはなくてはならない。でも、管理しすぎるとこれまでのカルチャーが壊れてしまうかもしれません。居心地のいい会社でありながら、どうやって決裁の仕組みを作っていくのかはすごく考えました。
新居:ガバナンスと会社の自由な風土をどう両立するか、はすごく大切ですよね。私もそこは頭を悩ませました。自由度を損なわない上場のために、何度も意見をすり合わせましたよ。
小原:そういう苦労もあったんですね。
新居:会社が大きくなる上で、一定のガバナンスはもちろん重要です。とはいえ、これまでの日本企業の慣例に則った、too muchなガバナンス体制は敷きたくありませんでした。バランスが大事で、最終的には自分たちの納得のいく管理体制で上場ができるように、何度も戦って勝ち取りました。
小原:すごい。
新居:あと、上場によって経営者が向き合わなければいけないのが“予算”ですよね。事業計画を描く必要がある。ここも、エンゲージメント経営という観点では、これまでの発想から変えていく必要があると思っています。つまり、トップダウンで予算目標を落とすという発想じゃない、事業計画の考え方。
小原:どうやって考えているんですか?
新居:私は、“現場の頑張り”に予算の線をミートさせていく、という考え方です。現場の各チームに「今期はこれくらいサービスを成長させたい。導入社数をここまで伸ばせたら、もっとワクワクするし、チャレンジにもなって面白そう」という発想で目標を考えてもらうんです。そうやって考えてもらった目標に対して、経営陣が「じゃあ全体としてはこのくらいの線を引けそうだな」と計画を立てる。それで、目標が低くなるかと言えばそんなことはありません。結果的にできる計画は、トップダウンで考えるのと変わらなかったりするんですよ。
小原: いやぁ、すごいですね。私はまだそのレベルまでいけてないです。ただ、高い目標を掲げる以上、社員が達成できる環境を用意することはかなり意識しています。自分たちで「達成したい」と思えるような仕組みを作ったり、成長を支援する。むしろ、私はそれだけをやっていると言ってもいいぐらい。結果的には、月次で見ても一度も赤字にはなっていませんので、社員が本当に頑張ってくれていると感謝しています。

社員の安心感、納得感を生み出す経営者としての姿勢
新居:アプローチが違うだけで、考え方は似ているように思います。エンゲージメントを高める環境づくりのために、小原さん個人が心がけていることはありますか?
小原:代表としては、ちゃんと会社の中に入って関わることは大事にしています。だから、社長室はないですし、一生作るつもりもない。人が増えているので、自分の席がどんどん変わるんです。「新しい人が入るので、あちらに移動して下さい」と言われて、「はーい」と言いながら移動しています(笑)。
新居:いい関係性が構築できているのが垣間見えるお話ですね。確かに、距離感はすごく大切です。
小原:昔勤めていた会社は、社長が何やっているか分からなかったんですよ。全然社長と話さず、会社の方向性とかビジョンが全く分からない状況だった。そういう会社にはしたくないと思って、できるだけ社員とは近い距離にいてコミュニケーションが取れるようにしています。そうすると、色々と良いところとか、不満に感じているんだろうなというところが見えてくる。
社員にとっては、心理的安全性にも繋がります。コミュニケーションを密接に取ることは、「何があっても、しっかり向き合うから大丈夫だぞ」というメッセージを間接的に伝えているのと同じだと自分は捉えています。誰だって「何かあったら、この会社は自分のことを切るんじゃないか」と怯えていたら、いいパフォーマンスなんて発揮できないですから。
新居:すばらしいです。
小原:それに、経営判断に納得感を生み出す効果もあります。そういうのは、一人ひとりの内側から醸成されるものなので、日々経営側としての考えを伝え続けていくことが大事なんです。その積み重ねで、会社と社員が同じ方向を向けるようになる。会社が成長するって、そういうことの積み重ねだと思うんです。新居さんはどのように社員と接しているんですか?
新居:アトラエは、社長かどうかとかはあんまり関係なくて、ただの役割の違いで、イメージとしては大家族に近いです。今、どんどん若い子が入社してきてくれるので、私はグランドファーザーみたいなものですね(笑)。
小原:ええ、もうそんな感じですか(笑)。
新居:役割として一番大事にしているのは、個人の方向性と会社の方向性にズレが生じたときに、折衷案を一緒になって考えること。まさに、今小原さんが「納得感を醸成する」とお話しされていたのと同じです。社員にはそれぞれ、個人としてやりたい仕事、キャリアの方向性がありますよね。でも、会社全体の合理性を考えて、個人の考えにはそぐわない仕事をしてもらう必要性が出てくる場合もどうしても出てきます。そうなったときに、一緒に折衷案を探す役割です。「大至急、人を探すからその間だけお願いしたい。見つかったら、元に戻っていいから」というような話をしていく。
小原:ちゃんと話し合うのが大切ですよね。
新居:トップダウンで「こう決まりました」と伝えるだけでは、エンゲージメントを大きく下げますし、会社のことだけしか考えてないコミュニケーション方法です。個々人の思いは、ちゃんと聞かなければいけない。一方で、個人の利益だけを優先させすぎると、チームとしての強さを損ねることもある。そういう結果を望むメンバーは、アトラエにはいません。個人的な思いは持ちながらも、チームや周りのメンバーに迷惑はかけたくないと考える人たちばかり。だから、本人が納得のいく着地点を何度もすり合わせて探っていくのです。トップダウンで物事を決めてきたこれまでの会社は、そういうコミュニケーションを怠ってきたように思います。
小原:先ほどベンチャーにはイベントがたくさん起きる、と言いましたがその度に話合って、すり合わせていくのは本当に大切だと思います。

個人とチームにとっての“良いポイント”をどれだけ重ねられるか
新居:実際にあった話ですが、あるセールスのメンバーが子育てを理由に、一時的に管理職に移りました。しかし、彼女は細かい事務仕事が苦手で、時々ミスも起きていた。もともと人と話すのが好きで得意だったのに、その特性を活かせるポジションではなかったのです。しばらくして彼女から相談を受けて、「どうしようか…」と一緒に考えました。それで、会社の状況と彼女の特性を踏まえて、「広報がベストなんじゃないか」という案が上がったのです。
小原:へぇ。確かに、管理系でありながらコミュニケーション能力は活かせますね。
新居:とはいえ、本人はやったことないし不安がっていました。だから、自分で調べたり、メンバーに聞きながら広報に関する本を5冊買って渡して、「これで、勉強してみて、まずは半年広報の仕事に向き合ってほしい」と伝えたんです。それだけじゃなくて、広報経験者を短期的にアドバイザーで雇って、伴走者としてサポートしてもらいました。
小原:結果的にどうなったんですか?
新居:今は、バリバリの広報として活躍してくれています。他の会社から「アトラエの広報、すごい優秀ですけど、どこで見つけてきたんですか?」って言われたこともあります。「いや、もともとセールスをやっていた子なんです」って言うと、驚かれます(笑)。
小原:それは、驚きますよね。
新居:彼女も、すごく活き活き働いていますよ。コミュニケーション能力を活かして、メディア関係者との人脈もどんどん広げていますし、我々やメンバーからの信頼も厚いです。会社にとって良いこと、彼女にとって良いこと、全部重なったところをうまく探していく。そのための努力は当然必要ですし、私たちも信じて耐えなきゃいけない時期もある。彼女も、相当頑張ったはずです。
小原:すごくいいエピソードです。まさに、そういう積み重ねが会社の成長に繋がっていくんですよね。アトラエさんのチーム力の秘訣を垣間見た気がします。
新居:自分のやりたいことを犠牲にしてまで、会社のために働いてほしくない。一方で、自分のために会社を利用してほしいとも思わない。だから、自分のことと会社のことを一致させる努力を続けていく必要があると思うんです。
小原:バランスですよね。それは、常に考えて、お互いが努力していかなければならないことです。
新居:最後に、今後の展望について教えて下さい。マザーズ上場を果たし、and factoryはこれからどうなっていくのか。
小原:そうですね、上場市場のステップアップは考えていますし、居心地のいい会社の環境を維持したり、アプリとIoTの2事業をどんどん育てていったり、やりたいことは色々とあります。その中で、色々な目標を会社全体の成長と、みんなが満足できる面の両方を常に広げながらクリアしていく企業体であり続けたいです。この会社にいれば、安心して自分も成長できるし、会社が大きくなって自分のやりたいことができる。そんな居心地のいい場所を、不断の努力で作り続けたいですね。新居さんは、どうですか?
新居:会社というのは、結局は関わる全ての人の幸せのためにある仕組みです。働く人が働きたいと思える会社。お客様がサービスを通してメリットを得られる会社。株主が投資して良かったと思ってもらえる会社。このトライアングルをぐるぐると回しているわけです。このサイクルの輪がどんどん大きくなっていって、最終的に“世界中の人々を魅了する会社”になる。そのための努力を続けていきたいと思います。
小原:今日は、非常に濃密な対談で面白かったです。改めて、エンゲージメントの重要性、チームの価値に気付かされました。
新居:こちらこそ、and factoryのような会社の役に立てるサービスを提供し続けなきゃいけないな、と身が引き締まりました。この対談をきっかけにエンゲージメント経営の重要性に気づく経営者が1人でも増えてほしいと思います。本日はありがとうございました。






