
「まずは幹部層の腹落ち感を生み出すこと」 営業組織の長自らが牽引する エンゲージメント活動

1992年、第一生命保険相互会社に入社。2012年に福井支社支社長となる。その後、首都圏エリアにおいて支社長を歴任し、社長賞・総合優等賞等、組織経営における数々の社内表彰を受賞。2018年4月より現職に至る。 ※2022年8月取材当時
企業として目指すビジョン「安心の先にある幸せへ。」を実現するために、組織と個人の結びつきを高め、社員のポテンシャルを最大限に発揮することを重視し、2021年よりWevoxを活用したエンゲージメント活動に取り組んでいる第一生命保険株式会社。600名規模の支社のトップとしてエンゲージメント活動を牽引する大宮支社長・坂口さんに現場での取り組みについて伺いました。
生命保険の営業職という仕事においてエンゲージメントの効果を確かめたい
―2021年8月に御社にWevoxが導入されましたが、坂口さんご自身は、支社長としてエンゲージメントをどのように捉え、位置づけられましたか?
大宮支社における課題の1つに、営業現場の生産性と営業職のターンオーバー(大量採用・大量離脱)があります。こうした背景があり、生産性向上とターンオーバー問題の改善に向けて、エンゲージメントの向上は非常に大きな意味があるのではないかと感じました。ただ、社員でありながら個人事業主でもある、営業員(生涯設計デザイナー)に対しても同じように効果があるかどうかは、他社の事例がないためわからない、というのが正直なところでした。
とはいえ、Wevoxは様々な企業に導入されており、生産性向上や離職率の低下、社員の幸福感の高まりなどの実効性が立証されていると認識しています。基幹職に対する効果は期待できるのだから、営業員に対しても、離職率の低下や生産性向上に本当にリンクするのかを確かめたいし、効果を立証するために真剣に取り組みたいと考えました。
このことを現場の営業員を指導する立場である機関長等にも伝えて、「エンゲージメントが向上するとどんな景色になるのか一緒に見に行こう」と様々な場面で伝えています。

―坂口さんご自身は、エンゲージメントの意義をどのように理解されていましたか?
Wevox導入時に、エンゲージメント向上に取り組むメリットやデメリットなど、様々な情報を調べた結果、理解したのは、「関係性の質の向上がすべてだ」ということです。そしてこれは、言葉を変えているものの、昔から言われている「人間関係が大切だ」ということと方向性は同じだと理解しました。過去を否定してまったく新しいことをするわけじゃないということがわかり、腹落ちしました。
加えて、従来のようにトップダウンでも、従業員満足度向上でもなく、会社と社員、上司と部下が互いに歩み寄ることがエンゲージメント向上に繋がり、そして自分自身の変革にも繋がると思いましたね。
活動の浸透には、幹部層の腹落ちが必須
―支社の皆さんへの周知・浸透にはどのように取り組まれましたか?
まずは機関長や支社の幹部層に、エンゲージメント向上に取り組む意義を腹落ちしてもらうことを最重要視しました。大宮支社所属の社員の大部分を占める500名近くの営業員に、エンゲージメントの意義を理解してもらうためには、まずは幹部層が納得し、各拠点の営業員に浸透させていくプロセスが必須だと考えたからです。
具体的な方法としては、従業員満足度(ES)とエンゲージメントの違いについて、何度も説明しました。加えて、関係性の質を向上させることがエンゲージメント向上には重要であること。エンゲージメントによって生産性の向上や、離職率の低下、社員の幸福度の向上が様々な企業で実証されていること。そして、エンゲージメントを高めるツールとして会社が予算をかけてWevoxを導入しているのだから、まずは有効活用してみようということを伝えていきました。
生命保険事業の肝心要は、営業員です。だからこそ、個々の営業員と日々接している機関長が、エンゲージメントの効果と仕組みを理解し、会得することが大切です。それにより、真剣に取り組んでどんな景色になるか見に行こうということを伝えていきました。
―どのような機会にそのメッセージを出していかれたのでしょうか?
例えば、月1回、支社内の機関長と幹部が集まって行う会議で、私自身の言葉で繰り返し落とし込んでいきました。
当初は「なぜそんなことをやる必要があるのか?」「面倒だ」「会社の自己満足ではないか」などの意見がたくさん出てきました。しかし、エンゲージメントはお互いの歩み寄りでやっていくものです。力で「やるんだ」と言うのではなく、腹落ちをさせない限り絶対にうまくいかないと思っていました。ですので、言い回しも様々に用意して「まずは騙されたと思って、自分の持ち場に帰ったときにエンゲージメントを意識してコミュニケーションや行動を変えてみよう」「その結果、翌月のエンゲージメントが上がるのか下がるのか見てみよう」と伝えていきました。

すると、やはり行動すればスコアが上がるんですよね。「ということは、この行動の延長線上でエンゲージメントが高まったときには、生産性の向上や離職率の低下に繋がるのではないか」と伝えたんです。そして、スコアを参考に仮説を立ててPDCAを回していくことを促していくと、それぞれに効果が出てきて腹落ちしていく人がどんどん増えていきました。
そこで、次の段階として、ポーズで取り組んだり、スコアを上げることを目標に取り組んだり、やらされ感があったら意味がないことを伝えていきました。さらに、エンゲージメントの取り組みの効果を実感してもらうために、会議の度にグループを作り、うまくいった事例や所属ごとの取り組みを紹介し合い、いい取り組みに投票を行いました。そうして互いの組織をベンチマーキングして進めてきたのが、ここまでの流れです。
エンゲージメント向上の取り組みは、組織の長が関心を持って発信しない限り、絶対に浸透しないと思います。だからこそ、長の立場にいる人がまずは自分で自分を説得・納得させて進むことに力を入れました。
エンゲージメント向上委員会を立ち上げ、PDCAを回していく
―Wevoxのスコアは、エンゲージメントの取り組みにどのように活用されていますか?
まずは、4年前に大宮支社内に作ったES向上委員会をエンゲージメント向上委員会に組成し直しました。毎月のサーベイ後にエンゲージメント向上委員会を開き、先月打った手によるスコアの影響を検証し、次なる打ち手の仮説を立て、実行し、翌月また検証することを繰り返しています。
メンバーには、スコアの高低ではなく、持ち場で行動を起こすことを求め、その結果、変化があったかどうかを見なさいということを話しています。
―エンゲージメント向上委員会のメンバーは、どのような構成ですか?
機関長と、支社スタッフです。課長職が中心ですが、リーダー職や、営業オフィスで事務を担うサービスクルー(内勤の事務担当者)にも入ってもらっています。
というのは、ES調査を行っていたころから変わりませんが、当社の中でエンゲージメントが低いのがサービスクルーなんです。業務量が多い上に代わりの社員が少なく、在宅勤務もしにくいため、負荷がかかるのが要因です。制度面等で仕方がないところもありますが、自分たちが望んでいることも語りながら、参画意識を持って取り組んでもらいたいと伝えています。
サービスクルーに対しては、月1回のサービスクルーの会議においても、そのときどきの課題を伝えたり、「エンゲージメントは会社に対して文句をいうものではなく、自分たちでもできることを考え、行動に移していくものだと理解してほしい」といった話をしたりしています。
―Wevoxの導入から1年が経過しましたが、どのような効果や変化が見られていますか?
測定できるものがないため断言はできませんが、おそらくエンゲージメントの取り組みの効果であろうと思えるものがいくつかあります。
1つ目は、職場で皆が挨拶をするようになりました。5年前に私が大宮支社に着任したときは、挨拶するのは担当者だけ。他の人は知らない顔をして、パソコンの画面を見ているという状況でした。それが、エンゲージメントに注力する中で、お互いの距離感も縮まったのでしょう。積極的に声を掛け合うようになり、職場が明るくなりました。
2つ目は、マルチプレーヤーが随分増えました。今までも支社の方針として、「私はこの担当なので他のことはやりません」ではなく、「手が空いている人はできる範囲で他の人の業務を手伝おう」、とマルチ化を推進していたのですが、なかなか浸透しませんでした。それが今では、皆、嫌な顔をせずに様々な仕事を自発的に取り組んでくれるようになりました。1つ目でもお話ししましたが、お互いの距離が縮まったことがよい方向に作用したのだと思います。「トライアンドエラーでいいんだよ」という話もしているので、自分たちで検討したことに取り組み、PDCAを回していく中で、やりがい感が醸成されるというサイクルが、随分生まれてきました。

そして、もう1つ大きいのが、コンプライアンス面です。大宮支社は、かつては社内監査(A・B・C評価)でC評価になったこともあるのですが、直近ではA評価という結果となっています。エンゲージメントの醸成が正しい行動に繋がっていたり、上司と部下の人間関係が良好となり、互いの意見を素直に取り入れられるようになったりしたことが、コンプライアンス面での質の向上に繋がっているのではないかと思っています。
活動の浸透と、上司と部下の関係性の質のさらなる向上を目指す―今後の課題や組織づくりについてはどのように考えていらっしゃいますか?
課題はたくさんありますね。まず1つは、個々人にまだまだ温度差があることです。エンゲージメントの取り組みを真っ向から否定している人もいますから、成果がきちんと出ていることを伝えつつ、巻き込んでいければと思っています。
あとは、営業オフィスにおける機関長と部下との関係の質をいかに向上させるかも課題です。1つ、効果を期待しているのは、全社で取り組んでいる支社長や機関長を対象とした360度評価です。360度評価の結果から自分が部下や周囲からどのよう見られているかを知り、自己変革しないとエンゲージメントも上がらないよという話を研修等で伝えています。
―他にも、今後取り組む予定の施策はありますか?
今進めているのは、エンゲージメントの取り組みの効果検証です。エンゲージメントのスコアと、営業実績、離職率との関係を検証するなどして、これまで動いてきた結果を多方面から分析し、指標化していくことで、成果を見える化していきたいと思っています。
また、エンゲージメントの取り組みをお客さま満足向上に応用していくことにもトライしていく予定です。
―どういうことでしょうか?
これまで我々は、お客さま一人ひとりに合わせた、必要な保障をコンサルティングし、備えていただくことが最大の使命であり、社会貢献であるという考えでやってきました。今後は、保険に入ってもらうだけでなく、保険以外のことでもたくさんの価値を感じていただこうと考えています。例えば、すでに行っているのが、連携協定を結んでいる埼玉県上尾市長からの依頼による市内の商店街の応援マップの制作です。「マップを作っているので、ぜひ商店街を活用してください」と地域で配布することで、振興をお手伝いしているんです。そういった取り組みを、もっともっとやっていけたらいいなと考えています。
上尾市での取り組みは、最初は皆「こんなことをやるより保険契約に繋がる活動をしたい」等の発言がありましたが、最近は「保険以外で感謝されたり、褒められたりするとすごくうれしい」と話しています。そうしてお客さまと同じ方向に向かって共生する延長線上で、保険ビジネスに繋がることにも期待しています。
このように、お客さまと社員が歩み寄って1つのものを作り上げるような地域貢献活動を通じて、社員が地域のお客さまのお役に立っていることを実感することでエンゲージメント向上にも繋がり、さらにはその先のお客さま満足向上にも繋がっていく、いわゆる相乗効果を実現させるべく、今後もエンゲージメント醸成に注力していきたいと考えています。








