エンゲージメントはなぜ必要? 三井住友銀行の職場発「誠実さと思いやり」で長く活躍する組織づくり

エンゲージメントはなぜ必要? 三井住友銀行の職場発「誠実さと思いやり」で長く活躍する組織づくり

株式会社三井住友銀行
前田 大介氏
前田 大介氏
株式会社三井住友銀行
新宿西口法人営業第一部 副部長

ベトナム・ハノイ支店の日系課長を4年間勤めた後、2023年に新宿西口法人営業第一部のグループ長に着任。2024年より現職。2023年度より同部のエンゲージメントアンバサダーを務めている。

嶺井 伸也氏
嶺井 伸也氏
株式会社三井住友銀行
新宿西口法人営業第一部

2016年入行。以来、法人営業に従事し、3店目となる現部署には2023年より在籍。2024年度の1年間、同部のエンゲージメントアンバサダーを務めた。

株式会社三井住友銀行では、2020年から社員のエンゲージメントに着目し、各部署や支店の「エンゲージメントアンバサダー」が中心となり職場活性化に注力しています。

中でも、新宿西口法人営業第一部では、意欲的な活動を展開しています。この活動の背景にある考えを紐解くため、同部署の2人のエンゲージメントアンバサダーに「そもそもなぜエンゲージメント活動に取り組むのか?」という根源的な問いを投げかけました。

組織づくりにおけるエンゲージメントの意義や価値を、彼らはどう捉え、行動に移しているのか。そして、社員一人ひとりが輝き、最高のパフォーマンスを発揮できる組織は、どのようにして生まれるのか。そのヒントを探ります。
※取材時(2025年5月)の部署・役職になります。

三井住友銀行新宿西口法人営業第一部のエンゲージメントアンバサダーは、チーム間の壁を越えたコミュニケーションを活性化するため、多岐にわたる施策を実施。若手のキャリア形成支援や個々の価値観に合わせたアプローチが、組織全体の「同じ思い」を育み、結果としてエンゲージメントの一体感に繋がっています。意見を吸い上げるだけでなく、改善・解決に繋げる管理職層との連携が重要であり、誠実さと思いやりが継続的な成果を生む鍵だと語られています。

エンゲージメントサーベイの活用を軸に、各拠点でエンゲージメントアンバサダーの選定と育成を実施。サーベイによる組織状態の可視化だけに留まらず、その後の対話、改善行動といったサイクル(「可視化」⇄「対話・振り返り」⇄「改善行動」)を回すことで、組織の活性化を目指している。こうしたサイクルを回していく上で、エンゲージメントアンバサダーが改善施策の企画・実行、サーベイ活用の推進、対話機会の創出などの旗振り役を担っている。

チームを超えたコミュニケーションを活性化し、部全体で成果を高めていく

—お二人は、エンゲージメントアンバサダーに任命された当初、エンゲージメントについてどのように捉えていましたか?

前田: 言葉は知っていましたが、定義まで含めてちゃんと理解していたわけではありませんでした。「やりがいとか達成感を得ると、それがエンゲージメントに繋がるのかな」と、 漠然としたイメージでした。

—それが今、エンゲージメントアンバサダーを3年連続で担当されているのですよね。何かきっかけがあったのでしょうか?

前田: 新宿西口法人営業第一部に着任した2023年度から、自らの意思で担当させていただいています。それは、この部署に赴任する前の部署、ベトナムのハノイ支店での4年間の経験がきっかけです。

ハノイ支店では、日系課長(日系企業のベトナム現地法人担当)として、メンバー30名中25名がベトナム人女性という、特殊な環境下で、キャリアにおいて初めてのマネジメント業務を経験させていただきました。在任中の2020年と2021年は、ちょうどコロナ禍であり、特にベトナムは非常に厳格な外出制限があったことから、1年間まったく会えない部下もいるような状況下で、マネジメントしていく必要がありました。そうした中で、どうすれば業務を円滑に進めながら、KPIも達成することが出来るのかを、非常に深く考える機会が数多くありました。そのため、そこで得た経験を、エンゲージメントアンバサダーとして部店運営という側面で活かしたいと思い、手を挙げさせていただきました。

—嶺井さんもエンゲージメントアンバサダーの経験があると伺いました。

嶺井: 前の部署でも2年間、エンゲージメントアンバサダーをさせていただきました。コロナ禍での価値観の変化や異動もあり、最初は部内交流は少なく、仕事への意欲もチームによってバラバラでした。それでも、エンゲージメントアンバサダーとして色々取り組んでいくうちに、皆が楽しそうに、活き活きと仕事をするように変わっていくのを間近で見ることができました。

年次や階層を問わず、部署全体が盛り上がっている時は、Wevoxのスコアにも部の成果にもちゃんと現れるという体験もして、エンゲージメントの大切さを実感しました。そのため、当部の良いところは伸ばしつつ、前の部署で良かった点等も参考にしていきたいなと考えました。

—2024年度のエンゲージメントアンバサダーとして、組織の課題をどう捉え、どのような活動をしようと考えていましたか?

嶺井: 2023年度のエンゲージメントアンバサダーから、部署全体のWevoxの平均スコアは高いと聞いていました。一方で、実際の職場をよく見ると一部のメンバーが大変そうにしているのも感じていました。そのため、うまくいっているチームの取り組みを他のチームにも広げられればと最初に考えていました。また、スコアが高くても、実は不満があったり、本音を言えてなかったりしたら意味がないので、皆が意見しやすい雰囲気作りをまず意識していました。

それから、当部は10年目前後の中堅が「正担当」、5年目以内の若手が「サブ担当」で2人1組でお客様を担当して、そこに「事務担当」を加えたチーム制です。基本的にチームごとに分かれて業務を行うので、働き方や業務内容、若手が任される仕事、事務の依頼方法などが、チーム毎に異なります。チーム制故に、若手は他部店の同期対比自身の担当先を持つのが遅かったり、サブ担当期間が長かったり、正担当主導案件はサブ担当は「達成感」を感じづらいといった課題がありました。また、チームをまたいだ相談が少なかったので、もっと社内のコミュニケーションを増やさないと、とも考えていました。

前田: さらに俯瞰した視点として、当部は、営業推進のグループが大きく2つのグループに分かれています。グループ内での担当替えはありますが、グループをまたいで人が異動したり、能動的に連携することは多くは無かったように感じていました。

でも、組織として仕事をする以上、グループ間の壁もなくしてコミュニケーションを強化することが重要じゃないかと考え、エンゲージメントアンバサダーでいろんな施策を打ち出しました。

—具体的にどのような施策に取り組まれたのですか?

嶺井: 大きく3つの目的で施策を行いました。

1つ目は、みんなの本音や意見を集めて、働く環境を良くするための施策です。ミドル層・若手・事務担当に分かれる「階層毎座談会」や、チームをまたいだ「クロス座談会」「クロス1on1」、「I like/I wish」、あとは従業員組合と連携した「階層毎業務カイゼン打ち合わせ会」などです。

2つ目は、若手のキャリア形成のための施策です。グループ長が講師を務める「キャリア座談会」や、ミドル層が若手時代の失敗談を包み隠さず話す「みんなの若手時代」などです。

3つ目は、部員の成功体験や達成感を後押しする施策です。部長席含め部員同士で試したWevox新機能「個人特性診断」「相性分析」や、若手の注力担当先にチームをまたいで先輩部員でアドバイスする「担当者クロス戦略会議」などです。

—ありがとうございます。各施策については、もう一つの記事で詳しくお伺いできればと思います。これらの施策に前田さんは副部長という立場で、どのように関わりましたか?

前田: 各施策の目的や背景、最終的なゴールを部員にしっかり伝えること、あとはエンゲージメントアンバサダーのメンバーに、各施策を進める上での注意点などを助言してきました。例えば、「座談会が、ただの愚痴大会になると意味が無いので、次に繋がる建設的な意見を出し合う場にすること」とか、「出てきた各意見は、ただ聞くだけではなくて、きちんと改善・解決に向けて動かないと逆効果になる」とかですね。

嶺井: 期初に前田さんが言ってくれた「意見をもらうだけだと、逆にエンゲージメントが下がる。意見に対してしっかり取り組んでいくことが大事だ」という言葉が、ずっと印象に残っています。おかげで、座談会を愚痴大会にせず、建設的な意見を放置せずに拠点運営に取り入れ、形にできたと思います。

—その場の対話だけで終わらせずに、組織改善に繋げるために、管理職層とはどのように連携されましたか?

前田: エンゲージメントアンバサダーの定例会議の議事録を、次長以上の管理職全員に紙で回覧していましたし、週2回ある管理職での打ち合わせの時に、議事録の読み合わせをしたりしていました。それから、私は、上田部長(当時)の隣に座っていましたので、適宜議論の状況や内容を日常的にお伝えしていました。

嶺井: 前田さんが小まめに連携を取ってくれていたおかげで、エンゲージメントアンバサダーの活動内容を管理職層にもしっかり伝えられましたし、部員から出た意見もこぼさずに施策に落とし込めていくことができたと思います。

「同じ思い」を抱くメンバーが増加

—それぞれの立場で連携を取りながら組織の活動に繋げていかれたのですね。1年間の活動を通じて、組織にどのような変化が起こっていると感じていますか?

前田: 嶺井さんが話した色々な施策やイベントのおかげで、部内のコミュニケーションがすごく活発になりました。そして、私たちエンゲージメントアンバサダーだけじゃなくて、上田部長以下の管理職も、各担当者も、「同じ思い」を持つ人がすごく増えたと感じています。

私の海外支店での経験も踏まえると、同じ思いを持っている人が多いほど、組織としてのエンゲージメントが高まると考えています。逆に、それを感じられることは、組織が良い方向に進んでいる証拠だと思っています。

—「同じ思い」というのは、具体的にどのような思いでしょうか?

前田: 私たちの部署は、法人営業部ですので、各KPIを達成することは非常に重要です。一方で、目標達成ができれば組織や周りのメンバーのことを考えなくていいというわけではありません。組織を中長期的に考えた時には、やりがいや思いやりを持ち、その上で目標を達成する組織になることが重要になってくると考えています。そうした思いを、管理職含めて部員全員が持てるようになったんじゃないかなと思います。

—嶺井さんは、共通の思いについて何か感じるところはありますか?

嶺井: 私がいるミドル層に関して言うと、この1年、課をまたいでコミュニケーションを取ってみて分かったのが、KPI達成だけでなく、「事務担当や若手にも一緒に達成感や成功体験を経験してもらいたい、そのために手助けしたい」、「管理職層を目指すため経験を積みたい」という思いを共通して持っていることでした。みんな「部全体」や「チーム」をいかに良くできるか考えているものの、「そのためにはどうしたらいいか?」悩んでいることも分かりました。

こうした思いや悩みを、ミドル層同士が話し合うことで、お互いのやり方を真似したり、意見を言い合ったりする場面が増えて、部署の雰囲気が変わっていったんじゃないかと思います。「ミドル層」Teamsに気軽に投稿してなんでも話し合っています。

—それぞれの立場での共通の思いが明らかになっていったのですね。コミュニケーションを活性化させていくうえで、難しさを感じたことはありませんでしたか?

嶺井: 部員の価値観って本当に多様だなと痛感したことです。それぞれの価値観に合わせて、仕事の任せ方から伝え方まで考えることがどれだけ重要なのかを思い知りました。

最初は単純に「各自が何か実績を上げ、それが全体で褒められればエンゲージメントは上がるだろう」と思っていました。

それが、Wevoxの「個人特性診断」を受けてみたら、みんなの考えは必ずしも同じじゃないと分かったんです。「ガツガツ働いて実績を上げたい人」、「目立つよりもサポートで感謝されることがやりがいの人」、「過剰に褒められるのは逆効果で本当に何かを成し遂げた時に褒められたい人」など。時には事務担当・若手に任せ切る等の重要性や、些細な感謝の声掛けなどの重要さにも気付きました。様々な価値観に触れることで、各自のエンゲージメント視点でのマネジメントも重要であることを学びました。

——部長をはじめとしたトップ層の方々は、これまでのエンゲージメント活動についてどう捉えていますか?

前田: 上田部長は、本件に限らず何でも部員の意見に真摯に耳を傾けてくださる方で、人と人との信頼感というか、誠実さを非常に大事にされておられました。そういうお考えのもと、エンゲージメント活動へのポジティブなご理解も、隣に座っていて見て取れましたので、私も遠慮することなく、議事録を共有させていただいたり、エンゲージメント活動に関する相談等を適宜させていただいていました。

他者への思いやりや気配り、誠実さが良い組織をつくっていく

―この1年の活動などを踏まえて、良い組織にしていく上で、エンゲージメントがどのような意味を持つと感じていますか?

嶺井: 部員全員が本音を言い合えて、組織目標と個人の思いを達成するために意欲高く働けていることが、エンゲージメントが高い状態だと思っています。エンゲージメントが高まることで、どの階層でも主体的な動き、仕事の活動量やコミュニケーションが増え、組織の成果にも繋がるのだと感じています。

前期の取り組みを通じて、本当にちょっとした声かけや気配りだけで、チームの動き方やエンゲージメントも変わることが分かりました。各自がチームメンバーのエンゲージメント視点を持ちながら働く。それが、組織全体のエンゲージメントを上げ、いい雰囲気で成果を出せる職場に繋がると思います。

前田: 良い組織になっていくには、誠実さや思いやり、周りへの気配りが非常に重要だと考えています。それらを土台にして、お互いへの信頼が成り立っている組織が、エンゲージメントが高い組織なのかなと思っています。

ビジネスの特性上、KPIの達成度合いがお客様の経済イベント等に大きく左右されることがあります。そうした中でも、エンゲージメントが高く、お互い信頼し合っている組織を目指すことで、成果に繋がる可能性が高まると考えています。また、中長期的にも非常に心地よい組織になっていくんじゃないでしょうか。

逆にエンゲージメントが低い組織は、仮にKPIを達成できたとしても、短期的な成果で終わり、長く活躍する組織にはなれないと考えています。

―では最後に、今後どのような形でエンゲージメント活動に携わっていくことを考えていますか?

前田: 私は2025年度もエンゲージメントアンバサダーとして関わっていきます。私以外のメンバーは、全員変わっていますし、部のメンバー自体も人事異動で常に入れ替わっていきます。前期までの活動で、嶺井さんを筆頭にした取り組みの良い点、改善点を踏まえて、何をどこまで取り組むかを考えながら色々なことを試そうとしているところです。

例えば、これまではどちらかというと部内での活動をメインにしてきましたが、部署の外にも少し視野を広げて、隣の部署と何かやってみることも考えています。さらには、近隣の法人営業部の人たちとも何かできないかなと考えているところです。

実際の活動においては、嶺井さんたちの後任のメンバーが入ってきてくれているので、私は少し俯瞰した立場で見ていきたいなと考えています。

嶺井: 私は、SMBCの法人営業部のやりがい・楽しさをもっとSMBC全体に発信することで、「法人営業部で働きたい」という行員を一人でも多く増やしたいという目標を持っています。

幸い、私は前の部署でも今の部署でも法人営業部でメンバーに恵まれ、多くのサポートのおかげで成功体験を積み、チームで達成感を感じつつ、エンゲージメント高く働くことができました。今は、後輩が同じ経験をしてくれることが、自分にとっての一番のやりがいになっています。

「新宿西口法人営業第一部が熱い!」「こんなことができるなら法人営業部に戻りたい!」という声が各部から上がるように、この部署を盛り上げていきたいですね。

そして、我々の取り組みが他の法人営業部にも広がっていけば、法人営業部全体がエンゲージメント高く、より楽しく働ける職場になるんじゃないかなと思っています。そうなれば、法人営業部志望の行員は増えるはず。私自身はエンゲージメントアンバサダーの役割からは離れますが、エンゲージメント活動自体にはこれまで通り積極的に関わっていきたいと思います。

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