企画フェーズでの動き方とインターナルコンサルタントの価値について

企画フェーズでの動き方とインターナルコンサルタントの価値について

第一三共ビジネスアソシエ株式会社
吉田 美加氏
吉田 美加氏
第一三共ビジネスアソシエ株式会社
人事推進部 主席 キャリアサポート機能統括&(人・組織)ビジネスコーディネーション担当

第一三共人事部での経験を経て、2018年シェアード系グループ会社である第一三共ビジネスアソシエに女性初の管理職として転籍。組織統括の役割を持ちながら、エンゲージメントに関する自社内活動を推進。現在は、人事推進部内の業務も担いながら、社長直轄で活動を推進している。

連載:インターナルコンサルタントに聞くエンゲージメント活動のホントの話 吉田さん編
インターナルコンサルタントとは、社内で組織変革を推進する役割のことを指します。吉田さんは過去から女性活躍推進、中期経営計画浸透のための全社対話会の設計・展開、新規部門立ち上げ時の垂直立ち上げ支援などのテーマでインターナルコンサルタントとして活動をし、現在は自社内でエンゲージメント活動の推進を担っています。社内にいながらコンサルタントを行う特殊な立場だからこそ取り組めたエンゲージメント活動について、その歩みを伺いました。
※取材時(2024年4月)の部署・役職になります。

インターナルコンサルタントの詳細については以下の記事をご参考ください。
今が好機!社内から組織を変える専門家「インターナルコンサルタント」が輝く時代に【連載#1】

自分が組織に対して貢献したかった役割が、結果的に「インターナルコンサルタント」だった

―インターナルコンサルタントという職種に就いた経緯を教えてください。

吉田:私は元々薬学部の出身で、入社から10年以上は、医薬品の発売後の品目担当者といって、市販後の調査や安全性評価、厚生労働省との交渉を行う…などといったヒトよりコトにフォーカスした仕事に携わっていました。その過程で、主任や課長代理といった節目の昇格試験を受ける機会があり、初めて「はて?自分はこれから組織にどう貢献していきたいか…」と考え始めたのが、今の活動に通じているのかなと思います。当時、周囲との人間関係や置かれた環境、付いた上司によって成長実感を得られる人とそうでもない人がいて、成長に差がついていくことに課題感を抱いていたんです。

その課題認識がそのうち確信になって、「一人ひとりの成長の可能性は無限大で環境が整えば必ずもっと成長できるし能力発揮できる!」と思い始めるようになりました。同時に、私自身は、どんな仕事においても、一緒に働く誰もが活躍できるようにしたいと意識するようになったんです。そこから、自分自身が社内でのポジションや役割を考えていく中で、自分の周囲の人たちだけでなく、組織全体に対しても何か働きかけたいと考えるようになっていきました。

そうした思いを持つ中、人事部に異動となり、その後は業務上の関りとしても女性活躍推進プロジェクトのリーダーを務めたり、全社のダイバーシティ推進や組織開発の仕事を担うようになったりと組織に対して働きかける役割を担うようになります。

インターナルコンサルタントという言葉を知るのは人事部に異動してだいぶ後になってからでした。最初から目指したというよりは、なんだかんだと無我夢中で取り組み、必要なことを必死でインプットして身につけていく経験の中で、インターナルコンサルタントとしてのスキルが磨かれていったように思います。結果論として蓄積されたスキルがあり、自分はインターナルコンサルタントなんだと自信を持てるようになっていった、というほうが近いかもしれません。

ー現在はエンゲージメント向上活動の推進を担当しているということですが、これまでに近しい活動はしていましたか?

吉田:エンゲージメントという言葉を知ったのは、2019年にエンゲージメント向上活動の企画をスタートした頃でした。ただ、これまでも2013年に、数名の有志と一緒に社内でコミュニティ活動を立ち上げたことがあったんですね。それは、組織やチームの枠をこえた横の繋がりを育むことができたらという思いや、会社で孤立感を感じる人を救うセーフティネット的な場が作れればという思いからです。コロナで世の中が大きく転換される前までは、月1回のペースで、チームビルディング、健康イベント、経営者たちの志の話、グローバル化や中計理解、社内福利厚生の話など、多岐にわたるテーマで、いずれも対話を促す企画を運営しました。これまでに70回ほど開催し、多いときには100名ほどの社員が参加してくれる回もあり、今思えば、そのコミュニティ活動の取り組みはエンゲージメント向上活動に近かったなと思います。

当時はエンゲージメント向上を意識していたわけではなかったのですが、“みんなにかけがえのない居場所が一つ増えるといいな”という風には思っていました。私自身、会社という居場所があり、上司や周囲との関係性の中で自分を活かせているという実感経験があったので、今は何らかの原因で実力をうまく発揮しきれていない人も、元気を取り戻して前向きな気持ちで仕事に向き合える環境を整えたかったんです。

部長層以上の意見をまとめ、中期経営計画の一つに「エンゲージメント向上の推進」を

ーエンゲージメント向上活動がスタートしたのはどのような経緯ですか?

吉田:2019年頃、2021年度からスタートする第5期中期経営計画を作成するタイミングがありました。当時はまだ私自身は部長ではありませんでしたが、組織開発担当の経験を買われ、部長層以上での対話の場のファシリテートをしてくれと言われ、その場にファシリテーターとして参画する機会を頂きました。その時、「社員が活き活きと働いているようには見えない」とか「組織としての活力が足りていない」といった話が課題としてあがったのです。

私も日頃から感じていたことではあったので、部長たちの意見をまとめながら「組織の活力が足りなくないか?」「活力が上がらなければビジネスの成果にも繋がりにくいし、結局中計も達成できないよね?」といった話をし、ゆるやかに組織課題として取り込む流れに持っていきました。この話し合いをきっかけに、中期経営計画達成のための3本柱の一つとして「社員エンゲージメント向上」が示されることになりました。

当時の経営陣も「もっと元気やエネルギーがほしい」という課題感を持っていたので、そうしたみんなの中にあるぼんやりとした課題感が、「社員エンゲージメント向上」という言葉として表出したのかなと思います。2019年当時は、ちょうどエンゲージメントという言葉が日本に持ち込まれて注目されていたタイミングというのは大きかったです。そうでなければ、従業員満足という受身社員の増産の方に流れてしまっていたかもしれないですから。

ー現場と経営層の間にいる、インターナルコンサルタントである吉田さんならではの動き方ですね。

吉田:そうなのでしょうね。その後、2019年度の1年間を通じて、中期経営計画達成のための3本柱をそれぞれ検討するために、3つのPJが立ち上げられました。その際、私は、迷うことなく3本柱の一つである「組織活性化・エンゲージメント向上」の検討メンバーに入りました。このプロジェクトを「エンゲージメント向上PJ」と称して、活動をスタートします。2019年度の1年間を通じてエンゲージメント向上活動について様々な角度で仮説検証をしながら、本当に中期経営計画に入れ込む価値のある企画、プランができるか?と試されるようなプロジェクトでした。

こうした検証やプランニングを行う期間を、インターナルコンサルタントの活動においては「企画フェーズ」と呼んでいます。例えば、外部コンサルタントが組織に変化をもたらそうとする場合も、まずは調査や仮説検証から入ると思います。インターナルコンサルタントは、社内にいながら、組織を客観的に見つつ、各職場にも入り込んで、こうした調査や仮説検証を行っていくのが特徴の一つです。

多様なメンバーで思いを共有し、地道に信頼を積み重ねていく

ー企画フェーズでの活動を進めていく中で、工夫したことがあれば教えてください。

吉田:調査や仮説検証のプロセスであっても、なるべくいろいろな部署や年代からの声を反映し、多くの社員に関心を持ってもらい、関わって頂きたかったので、PJチームメンバーの多様性を意識しました。当初は各部署から代表者をPJメンバーとしてアサインするという短絡的な発想の人選だったので、こちらから名指しで各部署と交渉し、若手・中堅・ベテランや、プロパー社員・複数企業経験社員、男・女、帰国子女か否か、といった観点で多様な経験を持つ人に入ってもらえるようにしました。

その後も、2年1期として、半数ずつメンバーが入れ替わるようにしながら、これまでの取り組みの伝承と、新しい視点や意見が出やすい状況が両立するように活動は進めています。そうした工夫で、現場の世代や部署それぞれの課題感をカバーすることにも繋がっていると思います。

ー実際に、エンゲージメント向上活動の企画はどのように進められたのでしょうか。

吉田:まずはPJメンバー内での目的のすり合わせから始めました。具体的には、それぞれが組織に対して何を課題に思っているのか、どんな状態なら自分はもっと活き活き働けると思うか、エンゲージメントをテーマにしたプロジェクトを通して達成したいことなどは何なのか?といった想いを共有しました。

そのあとは、エンドポイントの執行会議で活動結果を報告できるように、そこから逆算していくつかのマイルストーンを置き、そこに向かうタスクを計画化し、活動を進めていきました。私もメンバーもエンゲージメントについて何も知らない状態からだったので、まずは情報収集から。そして、組織の現状を把握するために過去の各種サーベイ結果を振り返ったり、今後の取り組み方針についても決めていきました。課題管理一覧表を作り、やるべきことを全て見える化し、情報収集や分析などやることの全貌が明らかにできたので、メンバーで分担しながら進めていけたのがよかったです。

ー組織の現状を把握する際に、工夫して取り組まれたことはあるのでしょうか。

吉田:「サーベイの分析」「他社情報の収集」「職場へのインタビュー」と、大きく3つの役割に分けて活動を行いました。

サーベイの分析においては、まず自社のエンゲージメントの状況、組織の課題を抽出するという意味でとても重要なプロセスであったと思います。ここでの分析は、後ほど述べる職場へのインタビューでも活用できます。

また、エンゲージメントへの理解を深めたり、社会的な背景を把握するために他社におけるエンゲージメントの情報を集めることもしました。それらに触れることで「自分たちにとってのエンゲージメントはどういう意味を持つか?」を考えるきっかけになります。

このエンゲージメントサーベイ分析と他社の情報収集は、私以外のメンバーがそれぞれ担当しています。

ー役割分担を行うのも大切ですね。

そうですね。企画フェーズとはいえ、やることはたくさんあります。インターナルコンサルタントが活動の全体像を描き、方向性を示しつつ、それぞれの業務に関しては分担して行うのが理想的です。

私が主に担当したのが「職場へのインタビュー」で、実際の現場感を把握するためにも、部長それぞれに意見をもらう時間をとりました。部長と話をする際には、エンゲージメントサーベイ結果から課題抽出をして、仮説として持っていくようにしていました。そして、それに対して意見をもらったり、部長自身が主観的に見て感じている課題などを2時間程度かけてじっくりと話す時間を取りました。

部署ごとの課題や懸念を聞きとりつつ、プロジェクトの意向も伝える機会になったので、双方の歩み寄りにも時間をかけられたことはとてもよかったと感じています。このように、部長層にじっくり話を聞けるのが、社内にいるインターナルコンサルタントの一つの強みとも言えます。こうしたプロセスを経ずに、いきなり「エンゲージメントを高めましょう」と活動をスタートしていたら、「何それ?」と戸惑ったり、敵対して来る部長も多くいたかもしれません。

私は当初から、現場社員の方々への個別インタビューも行いたいと思ってはいました。別の組織の組織開発の取り組みを支援していた中で行った個別インタビューにはとても効果があると実感していたからです。ただ、今回自社では、当初こうした個別インビューに関しては消極的な意見もあがっていました。例えば、社員の仕事に踏み込みすぎることで「何か問題があると思われているのかな?」と不安を抱かせてしまうかもしれない、という懸念や、個別でのインタビューは不満を誘発するきっかけにもなりうるから控えてほしい、という意見です。そのため上層部からストップがかかりました。その代わり、グループならいいという判断があったので、エンゲージメントスコアの高い組織と低い組織をいくつか抽出して、グループ・インタビューで職場の話を聞く機会は持つようにしました。

思うように進められず葛藤することもありましたが、その場では話が通らなくても、本質を見失わないように継続して働きかけたことがプロジェクトへの信頼にも繋がり、やれることの範囲は少しずつ広がっていったことを実感しています。

ちなみに個別インタビューに関しては、活動が正式にスタートから4年目にあたる2023年度からは、実施を認めてもらうことができました。現在は、2年計画で全社員へのインタビューを試みているところです。

メンバーの思いを高めた状態で、活動の「見える化」を意識

ー調査や企画を進める中で大事に思うことがあれば、教えてください。

吉田:エンゲージメント向上活動の推進は、目に見えてわかりやすい成果を示しづらいところもあるので、PJメンバーがこの活動にどれだけ想いを持って自分ごと化して取り組めるかが重要になってくると思っています。「こういう組織でありたいよね」とお互いの理想や志を共有できるメンバーであればあるほど、推進のスピード感や活動の厚みが変わってくるんです。また、特に企画フェーズ段階では、先が見えづらく評価もされにくいわけですが、ネガティブな意見を現場から浴びせられたとしても、その中でもめげずに折れずに進められる強さを持つ人がいるととても心強いなと思っています。

ーインターナルコンサルタントとして企画を進める際に、工夫していたことはありますか。

吉田:先ほども触れた課題管理表は、チームで活動を進めていくうえではとても効果的でした。この課題管理表は、「社員のニーズ把握」や「ミッションステートメントの見直し」など、エンゲージメント向上活動の多くは定性的なものも多いので、大項目・中項目・小項目と、細かく分解してそれぞれの進捗や発生した課題を把握できるリストとなっています。

このような、活動の「見える化」はとても重要だと思っています。一つひとつ進んでいる実感を持つことができるのはもちろんですが、活動を把握しやすくすることで、分担もしやすいし、何より連携を生みやすい状況になるんです。定性的な活動は担当者自身は進んでいるように感じていても、周りから見たら進捗がわかりづらいという側面もあります。活動を通じて生まれた課題に対して、どう対応していったか、ということが一覧化されているだけでも、「ちゃんと取り組んでいるんだ」と自身も実感できますし、周りも進んでいる感を得つつ、一緒に課題に対して向き合うことができます。

こうした効果を生むために、自分たちが何に取り組んでいるのか、取り組む際に何を意識するのか、発生した問題に対してどう対応してきたのかなど、リスト化するのを怠らないよう心がけました。

エンゲージメント推進を加速させる、インターナルコンサルタント

ー企画フェーズの最終的な着地はどのようになったのでしょうか?

吉田:1年間の調査や検証を経て、経営層にも報告をした結果、正式に「社員のエンゲージメント向上」が中期経営計画達成の3本柱のひとつとして入り、2020年から正式に活動がスタートしています。企画フェーズの最終工程として、5年間先までのマスタープランも作成し示しています。

経営層の最終的な判断ポイントとして、エンゲージメントサーベイの分析から出てきた組織課題と、経営層が考えていた課題感が重なりつつも想定よりもネガティブな傾向にあったこと。そして、その課題感を踏まえ、第5期中計を実行するうえで、もっと活力ある組織にならないといけないと意見がまとまったことが大きかったです。当時の社長からは、「切れてしまった、弱くなってしまった繋がり。それは会社と個人(社員)もあるし、社員同士もある。そうした繋がりの弱さが、会社全体に沈滞を招いていると改めて認識した。エンゲージメント向上活動は継続する意味がある」とコメントがありました。

マスタープランとして具体的にどのような計画を立てたか、その後の実行に移るまでの動きなどについては、また次回以降にお話できればと思います。

今日の話では、企画フェーズにおいてエンゲージメントサーベイを用いた組織の状況把握、他社の情報収集、そして管理職層のインタビューが重要なアクションとなってくること。エンゲージメント向上活動のような定性的な活動においては、課題管理表を活用して見える化しながら進捗把握や連携強化を図っていくことが重要。といったポイントを私の経験を通じてお伝えできていればいいなと思っています。

ー吉田さんが思う、インターナルコンサルタントの価値を教えてください。

吉田:エンゲージメント向上に限らず、どんな変革活動においても、やはり進める上での共通するポイントはあると思っていて。そのポイントをおさえて、推進活動をうまく導いていく役割がインターナルコンサルタントだと思っています。現場の社員にどう参画してもらうか、PJメンバーにどう想いを持たせていくのか、組織にとってのメリットをどう意味づけるかなど、組織特性やメンバー特性を把握した上で動けるインターナルコンサルタントのスキルを持った人がいるといないとでは、同じ活動をしたとしても結果が全然違ってくると思います。

あとは、中にいるからこそできること、推進しやすいこともたくさんあると思っています。今日の話も、社外のコンサルタントに依頼しようとすると多くの時間とお金のコストがかかることは想像に難くないかと思います。こうしたインターナルコンサルタントに相応する人が社内に多くいることで、より活き活きとした職場や強い組織への実現に近づきやすくなるのではないかと思います。

資料を一括ダウンロードする