
念(おも)いを伝え合う対話がプロジェクトを前進させる〜日本ペイントグループの社内イベント成功への道のり〜

営業内勤、秘書業務に携わった後、取締役会事務局や指名委員会事務局を担当。社長秘書業務中に感じた「なぜトップと従業員の想いはすれ違って、歩み寄れないのか」という疑問を解消するべく、現在はD&I活動推進やエンゲージメント施策を通じて、経営も社員も当社で働くみんなが輝ける会社を目指して挑戦中。 23年より、社内エンゲージメント活動(有志)EFEの事務局として参画。

1992年日本ペイント株式会社に入社し、17年間、工業用塗料、汎用塗料、表面処理剤の営業として既存顧客の拡大や新規顧客の開拓に携り、その後、人事部に異動。分社化を経て、日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社にて人事総務部の責任者として業務に従事し、2024年度からグループD&I事務局として、新たな使命を受ける。

人事部、経理部を経て希望していた営業職に従事。工業用塗料の営業として奮闘中。 さらに社内のエンゲージメント向上プロジェクトに参画し、社員皆が前向きに働ける環境づくりに挑戦中!

技術者として新規技術開発、自動車顧客対応に従事。2022年よりEFEに参加。D&I活動を通じて、社員のエンゲージメント向上に取り組んでいる。

2020年中途入社。入社後、各種人事制度企画・設計、人件費管理、人材育成など幅広く人事領域を担当。2023年よりD&I推進活動に携わっている。

一般事務、環境色彩カラーコーディネーターを経て、現在は色の知識を活かしながら、 営業マンとしてマンション大規模修繕工事への塗料スペックインの為、顧客推進営業活動に取り組む。同時に、EFE参加&社内プロジェクトメンバーとして「エンゲージメント向上」に挑戦中!
毎年3月14日の創業記念日に記念式典を開き、経営陣から従業員に向けてメッセージを発信している日本ペイントグループ。2024年は、記念式典に代えて従業員発案の創業記念イベント「NIPPE Day」を開催し、500名以上の参加を実現しました。その成功の裏にあった実行委員の対話によるチームビルディングなどについて、実行委員と事務局の6名に伺いました。
※取材時(2024年5月)の部署・役職になります。
「この会社で働く自分」をモチベートする、大規模な創業記念イベントを企画
―まずは、NIPPE Dayの内容を教えてください。どのようなイベントを実施されたのでしょうか?
浦辻:近年、経営陣から従業員に発信しているメッセージの一つである「挑戦」を体現している従業員を、ポスターセッションによって紹介するイベントです。東京と大阪の2拠点で開催し、ポスターセッションの応募に応じてくれた合計44名の従業員が、27のポスターセッションブースを出展し、各自の「挑戦」について話してくれました。
西岡:募集は、「わたしはこんなNIPPEにしたい!」「NIPPEの魅力!発信!」「私の挑戦!」「NIPPEのワクワクさんを探せ!」の4つのテーマで行いました。最も応募が多かったのは「NIPPEの魅力!発信!」で、自部門の商品や技術について話す人が多かったです。次に多かった「自分の挑戦」では、仕事上の挑戦だけでなくダイエットなどのプライベートでの挑戦について話す人もいました。また、「NIPPEのワクワクさんを探せ!」は、面白枠を作りたいということで設けたテーマですが、好きなプロ野球チームの応援への熱の入れ方を話す人、学生時代のブラジルのバナナ農園での経験を話す人、自分自身についてアピールする人など、多様な発表を聞くことができました。

―どのような狙い・課題感からNIPPE Dayを企画されたのでしょうか?
浦辻:日本ペイントグループは、国内に8社、国外を加えると100社以上からなるグループで、これまで合併や分社化、持ち株会社体制への移行などを経験してきました。グループがより良くなっていくための変化ではありますが、従業員としてはその変化にやや対応しきれておらず、本当に良くなっているのか半信半疑な部分がありました。
そんな折、2023年度にダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)推進の一環として、今日取材を受けている西岡、小堀、宮川、そして私も含めたグループ内48名の次世代女性リーダー候補が集められた研修が、D&I推進の分科会という形で行われました。内容は、「当社グループで働く多様な人材が、仕事・キャリア・成長により一層前向きになり、イキイキと活躍している状態にするためには何が必要か」という課題に対し、班ごとに企画を立て、経営に提案するというものでした。結果、私がいた班も含め、複数の班で社内イベントの提案が出てきたのです。
そこで、例年、創業記念日に経営メッセージを聞く場として開かれている創業記念式典を従業員が自らNIPPEと向き合う場「NIPPE Day」に変え、NIPPEを知り、NIPPEを好きになって、NIPPEで働く自分をモチベートできる時間にしたいと経営陣に提案しました。問題なく承認を受けられましたが、これが2023年10月で、この時点ではまだイベントの具体的な内容までは決めていませんでした。

意見がまとまらないところから価値観・念(おも)いの共有を経て具体的内容を決定
―その後、どのように内容を詰めていかれたのでしょうか?
浦辻:まず、実行委員を立候補制で募り、集まったのが、今日ここにいる西岡、小堀、宮川、私の4名です。そして、事務局として杉本と清水にサポートに入ってもらいました。
小堀:ただ、そこから企画を具体化するところで大きくつまずきました。皆、それぞれにやりたいことのイメージは持っていましたが、考えが完全に一致しているわけではなかったのです。また、どの程度自分たちがやりたいことを推し進めていいのか、あるいは、できるだけ経営方針に従った方がいいのかなどについて迷いがあったりもしました。会社や経営陣からの見え方を気にしたりして、なかなか意見がまとまらなかったのです。それぞれが異なる拠点で働いていて、直接会うことなくオンラインでコミュニケーションをとっていたことも影響していたと思います。
―その状況は、どのように打開されたのでしょうか?
小堀:最終的には、グループ内でエンゲージメント活動を行う有志コミュニティ「Engagement for Employee(EFE)」の事務局メンバーである細山田にファシリテーターを依頼し、実行委員全員が一堂に介して半日間、チームビルディングとブレストをして企画をまとめました。これが2024年2月初旬でした。
浦辻:私たち実行委員だけで進めることもできたとは思いますが、ブレストの場に第三者として客観的に見られる人を置くことで、メンバー同士では出てこない、第三者に対してだからこそ話せる念いや言葉が出てくるのではないかと考えました。そこで、私自身もEFEの事務局のメンバーで、NIPPE Dayの構想に関して以前より細山田から助言をもらっていたこともあって、ファシリテーションをお願いしたんです。
―ブレストはどのように進められたのでしょうか?
小堀:まず、「なぜNIPPE Dayを実施したいのか?」について、各自の念いや価値観を自由にホワイトボードに書き出していくという時間を長くとりました。そうして共通する価値観の輪郭を皆である程度理解した上で、D&Iの分科会のキーワードでもあり、NIPPE Dayを経て目指したいゴールでもある「ワクワクしながら仕事をしたい」に向けてどのように紐づけられるかをブレストしていきました。
そこで新たに出てきたキーワードが「楽しい」「満足感」「つながり」です。これらを充足するために何が必要かを話し合ったところ、「コミュニケーションの活性化」と個々人の「モチベーションアップ」の2つに一旦集約されました。
次に、「コミュニケーションの活性化」と「モチベーションアップ」の2つを社内に広め、浸透させるにはNIPPE Dayをどのようなイベントにするといいかを議論しました。
「モチベーションアップ」についてですが、モチベーションは「やる気」という言葉で表現できます。挑戦している人たちを知ることが、「やる気」だけでなく、「やれる気」を生み出すことにも繋がるのではないか。「やる気」と「やれる気」があれば、経営陣が私たちに日頃伝えている「挑戦」というメッセージに繋がるのではないか。その2点の考えから、「やる気×やれる気=挑戦」をキーワードに、社員の「やる気」「やれる気」を向上するイベントを実施しようという結論に至りました。
浦辻:お互いの共通する価値観の輪郭を皆で理解できたので、ここからは、何かつまずくことがあっても共通理解に立ち返ることができるようになり、意思疎通が一段深まりました。

プレゼンター44名、参加者500名超のイベントに
―企画の詳細が決まってから1カ月強でイベントを実現されたとお聞きしましたが、その間ご苦労されたことはありますか?
西岡:難しかったのは、社内への告知です。ポスターセッションのプレゼンターの募集と、イベントの開催告知を行いましたが、プレゼンターの応募が少なく、最終的には、協力してもらえそうな方に個別に声をかけていきました。予想を超える人数のOKをもらえたので結果的にはよかったですが、「何をするのかよくわからなかったから手を挙げなかった」という方や、そもそも告知を知らない方もいたので、次回の課題として考えています。
あとは、経営陣からすごく後押しをしてもらいましたが、その分期待を感じ、実行委員としては「成功させなきゃ」というプレッシャーが大きかったです。リーダーの浦辻がそれを一番感じていたと思います。
浦辻:そうですね。今回のイベントは次世代女性リーダー候補の集まりからの企画ということで、私自身、これまで「女性活躍」という言葉の下に社内の女性が集められて立ち上がるも、なかなか継続してきていないことも後輩の立場で見て感じていました。なので、社内から「また女性社員が集まって何か言ってる」と思われるのはすごく嫌でしたし、良いものをつくって続けていけるようにしたいという念いがありました。経営陣も同様に思っているからこそ今回はいい形でプレッシャーを与えてくれましたが、経営陣に限らず、賛同者からも、反対する人からもさまざまな声をもらったので、プレッシャーはありました。また、今回のNIPPE Dayに手を挙げてくれた44名のプレゼンターに大きな感謝の気持ちがありました。きっと勇気を出して手を挙げてくれたと思います。どんどん応募数が増えていった時の喜びと感激は忘れられません。この人達のためにも、絶対に“やって良かった“と多くの従業員に思ってもらえるイベントにしたかったです。
―イベント当日は、500〜600名の参加があったとのことですが、参加者の皆さんの反応はいかがでしたか?
杉本:プレゼンターからは、「普段関わらない人と知り合えた」「気づかなかった提案をもらえた」など、前向きな感想を多くもらいました。また、参加した従業員からも、「こんな活動してるんだ!」「こういう取り組みをしていいんだ!」などのポジティブな反応がありました。開催前はイベントに対して後ろ向きだった参加者からも、「すごいことをやってる!」「参加者は全員参加してよかったと思ったはず」などの前向きな意見をもらいました。経営陣も、従業員の熱意や会社に対する想い、好きなことや得意なことで輝く姿に直接触れ、「感動した!」とおっしゃってくださいました。
経営陣からも従業員からも、「今までの創業記念日のなかで一番良かった」という言葉をもらい、「なぜ自分がこの会社で働いているのか」「この会社で働く意義や誇りは何か」などについて一人ひとりが感じる、考える時間が必要だったのだと改めて感じました。


―事務局のお二人は、実行委員の4名をどのようにサポートされたのでしょうか
清水:皆さんが経営に提案した時の意気込みで取り組めるように、杉本と「自分が『楽しい』『これはやりたい』という軸を持って、本当にやりたいことをやりましょう」などと声をかけていました。私自身、人事として経営に近いところで企画をし、多方面からコメントをもらって思い悩んだ経験もあり、「全てを受け入れるのではなく、受け流すところがあってもいいんじゃないですかね」という話もしました。
浦辻:イベントの内容がまとまらず悩んでいた時に、杉本と清水が「いいよいいよ、経営陣が一度やると決めたんだから大丈夫。何かあったら謝りに行こ!」と何気ない一言を言ってくれたりしたのは、ものすごく励みになりました。
会社としてエンゲージメントを高められる土壌を感じた
―実行委員の皆さんは、準備を進める中で特に印象に残っている点はありますか?
宮川:私たち自身としては、やはり、2月頭に細山田を呼んでブレストをして、一人ひとりが同じ方向を見ているようで違うよねという気づきを得たことが良かったです。根底にある同じ目標の言語化をサポートしてもらったことで、4人の中で腹落ちできる形でチューニングできたこともすごく大きかったと思っています。
また、企画が固まってから周知するにあたり、最初はなかなかプレゼンターの応募が増えませんでしたが、締切が近づくにつれて加速度的に増えていく様子を見ていると、意外とみんな自分のやっていることを知ってほしいんだな、と感じました。
これまで、会社として大手を振ってエンゲージメント向上に取り組んではいない印象を私は受けていましたが、そんな中でも、エンゲージメントを高める土壌を持った方がたくさんいるんだなと感じましたし、そういった方が増えていくような仕掛けをNIPPE Dayを通じてやっていきたいなと思っています。
また、自分自身も、最初は「誰かやってくれないかな」とどこか他人事だったところが、いつの間にか「自分がやればいいや。今の社長は『いいよ』と言ってくれるだろう」と、自分ごととして取り組めるようになったかなと思っています。

―次回以降の見通しについては、どのように考えていらっしゃいますか
杉本:NIPPE Dayを継続して、文化にしていきたいですね。
小堀:告知をより早い時期からしていきたいなと思っています。あとは、「開催場所が遠くて行けなかった」という意見が実施後のアンケートで最も多かったので、東京・大阪だけでなく、地方開催も検討したいです。そうして参加者を増やして、挑戦する仲間を増やしていきたいと思っています。
―では最後に、この記事を読まれる他社の方に向けて、NIPPE Dayのような社内イベントを実行する上でのポイントなどがあればアドバイスをお願いします。
浦辻:まず、「一歩踏み出す勇気」を持つことがすごく大事だと思いました。周りからの見え方や、色んな声が気になるかもしれませんが、自分で勝手に「足かせ」を作り、チャレンジしない理由を並べ、それでやらないのはもったいない。チャレンジは怖いです。でも、やりたいと思うことを素直にやってみることはすごく大事だと身をもって感じました。賛同者や熱量の高い仲間は必ずいます。
そして、賛同者やサポーターを増やすことが大事だと改めて思いました。私たちの場合、44名のプレゼンターの賛同者が大きな力となりました。それ加え、杉本や清水、細山田が一歩引いたところから「大丈夫」などと何気ないポジティブな言葉をかけてくれるのがすごく効きました。ポジティブな空気をあえてつくってくれる人にそばにいてもらうのはすごく大事だなと思います。
また、「なぜこれをしたいのか」という念いを表現することも大事です。ロジカルに話ができないとなかなか経営陣も承認してくれなかったり、賛同者が得られなかったりすると思いますが、感情や熱意の伝播も成功の鍵になると感じました。感情や熱意があってこそ、人の心を動かし、賛同者や仲間が増えていくと思っています。
あとは、スタート時は経営陣や上層部の後押しが重要ですが、軌道に乗ったあとは、細かいところは実行部隊に任せてもらえた方が動きやすいと感じました。もちろん、大きな方向性について助言をもらえたり、実行部隊や賛同者を増やすところを支援してもらえたりすると助かりますが、あとはどっしりと構えていてもらえた方が動きやすいと思います。ぜひ、勇気をもってチャレンジしてみてください。









