
まずはコミュニケーション量を増やすこと〜DNPグループの製造部門リーダーが実践する、エンゲージメント向上活動とそのコツ〜

1992年入社。シャドウマスク(ブラウン管テレビに使用されていたカラー映像を表示するための金属部材)製造の経験を経て、2004年より光学フィルムのコーティング工程に従事。2019年の課長職就任を機に製造現場のマネジメントと「働きやすさ」に貢献すべく日々悪戦苦闘している。2024年3月まで製造第5本部 製造第2部 製造第2課の課長を務め、2024年4月より現職。

2005年入社。ディスプレイの製造業務に従事したのち、2011年よりDNP高機能マテリアル京都工場、戸畑工場にて12年間、バッテリーパウチの製造に携わる。2023年より現職。エンゲージメント向上活動においては、相互理解を深め、コミュニケーションを大切にし、作業者が安全に気持ちよく働ける、風通しのよい職場づくりに取り組んでいる。

1995年入社。物流業務担当として印刷進行に必要な原紙・材料等の運搬に関わる安全面・効率改善などを担当。2020年より現部署の管理者として、安定生産の管理や業務改善、職場風土向上を目指した活動を推進している。
DNPグループでは、2021年4月に「DNPグループ健康宣言」を策定し、社員全員が前向きに働く「こころの資本」の醸成や、職場やチームにおける心理的安全性の構築により、エンゲージメント向上やチーム力強化を図っています。製造現場においてエンゲージメント向上に取り組み、成果を上げている3名のリーダーの方に実践内容を伺いました。
※取材時(2024年8月)の部署・役職になります。
課長がメンバーとの距離を縮め、相談しやすい環境をつくる
―まずは小松さんから、部署における課題と、課題に対する取り組みについてお聞かせいただけますか?
小松:2024年3月まで管掌していた製造第5本部 製造第2部 製造第2課での取り組みについて話します。エンゲージメント向上活動を行う前は、オペレーター同士、あるいは上長とオペレーターの間であまりコミュニケーションがとれておらず、風通しの悪さを感じていました。
そこで、私が主に取り組んだのが、オペレーターとの1on1と、オペレーターからの改善提案を通じた対話と称賛、そして「相談しやすい距離感活動」の3つです。
―それぞれの取り組みについて具体的に教えてください。
小松:オペレーターとの1on1については、Wevoxの26個の小項目のうち、スコアがベンチマークから低く乖離している項目を毎月1つピックアップし、該当する質問についてどんな思いを抱いているかヒアリングして対処法をアドバイスしたり、改善策を講じたりしています。
例えば、「ストレス反応」のスコアが低く出ていれば、「頭が重い、イライラする等のストレス反応がでていないか」という質問にプラスとマイナスのどちらの印象を持っているか1人ずつヒアリングしていきます。その結果、「ちゃんと仕事をしているのに、やっていないと陰口を言われる」「モニターなどで目を酷使するので頭痛がする」などマイナスの考えを示したオペレーターには、内容に応じてアドバイスをします。また、環境を整えるなどで改善ができそうなものは改善策を講じます。例えば、先ほどの目の酷使についての悩みには、ブルーライトカットのパネルを購入してモニターに取り付けました。
そうして、その月のヒアリングが終われば、出てきた意見とそれらに対するアドバイスや対応策をまとめて朝礼で共有します。1on1で出てきたポジティブな考えや対応も共有することで、「私もそうしてみよう」などと考える従業員も増えていると感じています。
―「オペレーターからの改善提案を通じての対話と称賛」と「相談しやすい距離感活動」についても教えてください。
小松:改善提案を通じての対話と称賛の取り組みは「わたしの提案」と題しています。主に業務上の不都合や問題点に気づき、挙げてくれた改善提案について、詳細をヒアリングした上で関係者と改善の方向性を議論し、改善が完了したものから順次、朝礼で共有して提案・改善に動いた従業員に感謝を示すというものです。また、品質や効率の向上に寄与した提案などは「特出すべき称賛」として皆の前で称賛することもしています。元々、改善提案は日常的に挙がってましたが、本人と話さないまま関係者で改善を進め、完了してもあまり共有していませんでした。改善提案を通じての対話と称賛の取り組みを行うようにしたことで、元々低い傾向にあった「やりがい」のスコアが、今では上昇傾向にあります。
また、「相談しやすい距離感活動」では、管理職の席をクリーンルームの外だけでなく中にも設けたり、ラインを巡回しての雑相活動を始めたりしました。そうして雑談の中から出てくる相談ごとを吸い上げ、改善を行っていきました。

―取り組みの結果、課の皆さんにはどのような変化がありましたか?
小松:定量的な変化としては、Wevoxの総合スコアが1年間で6ポイント程度上昇しました。先ほど話した活動によって、風通しの良い職場になってきて、楽しく仕事をできるようになってきたことの表れかなと感じています。
課員と話す機会をどんどん増やすことで、相談や改善提案もどんどん出てきて改善につながったので、まずはコミュニケーション量を増やしたのが良かったのかなと思います。
安全意識向上の取り組みと管理職による職場巡回などにより、一体感ある職場に
―続いて、高戸さんの部署にはどのような課題があったのでしょうか?
高戸:私が管掌する物流推進課は、戸畑第1工場での製造に必要な材料の受け入れと、出来上がった製品の出荷を担当しています。業務にはチームワークが必須ですが、私が着任した2023年時点では、作業者が各自でバラバラに働いているような雰囲気があり、モチベーションも低く、組織全体が暗い印象を受けました。Wevoxのスコアも戸畑第1工場内で最も低く、業務においては品質事故、例えば、フォークリフトの爪を材料や製品に当ててしまうといった品質不良につながる事故が多く起こっていました。
そこで、安全意識を高めることも含めてエンゲージメント向上活動を進めていきました。
―どのような活動をされたのでしょうか?
高戸:安全意識向上のために行っているのは、毎朝、職場ごとのミーティングでその日の作業において安全と品質に関して注意すべき点を話し合い、1人ひとりが自分の作業における注意点を宣言する「私の誓い」活動です。加えて、月1回、KYT(危険予知訓練)活動として、ワークシートに沿って職場に潜んでいる危険を確認し合う勉強会も行っています。また、作業実践会として、月1回、フォークリフトの操作や作業ルールについて作業者同士で共通認識を持つ会を実施しています。
チームワークの向上に向けては、リーダーたちがメンバーの価値観や興味・関心を知っておくことが大事だと考え、価値観ワークシートに取り組んでもらいました。1人ひとり、仕事で重視している項目に◯をつけてもらい、その背景を知るために匿名のアンケートも行いました。それらの結果を私と係長、班長、リーダーで共有して普段の声掛けの参考にしたり、必要なアクションを起こしたりしています。
また、課長、係長、班長による、1日1回の職場巡回も始めました。ここで一番対話が生まれていて、現場の作業者が管理職に話をしやすい、風通しの良い職場づくりにつながっていると思います。
―取り組みの結果、課の皆さんにはどのような変化がありましたか?
高戸:一体感が増したことを感じています。それは、価値観ワークの結果にも表れていて、1回目のワークでは仕事で重視していることの1位が「安全」、2位が「品質」「効率」、4位が「ワーク・ライフ・バランス」「楽しさ」でしたが、2回目のワークでは、1位「安全」、2位「品質」は同じですが、3位に「一体感」が入り、コミュニケーションが取れてきていることが伺える結果でした。
また、日や時間帯によって入荷担当は作業量が少なく出荷担当は多忙であったりと仕事量の差が生まれることが課題でしたが、日ごとに担当別の業務量の見通しを作業者に伝え、忙しい担当のところには応援に行くなど互いに協力してやっていこうと発信するようにしたところ、仕事量が分散されるようになりました。
あとは、日々の会話も増えています。職場巡回の際の対話だけでなく、作業者同士でも出勤時と退勤時のあいさつを大きな声でするようになったことが顕著な変化です。また、現場実践会を行ったことが、個々人の独自のやり方に頼るのではなく、お互いのやり方から学ぶような会話の増加につながっていると感じます。「やりがい」のスコアも1年間で19ポイント上がりました。

メンバー内に「風土向上担当」を設けて、現場の悩み・問題を吸い上げる
―兵後さんの部署ではどのような課題があったのでしょうか?
兵後:私の部署は、建物の床や壁などに使われるシートを製造・印刷したあとの、出荷前の検査を担当しています。エンゲージメント向上活動に取り組む前は、自分が関わる範囲では大きな問題は一切なく、メンバーたちも不満なく気持ちよく働けていると思っていました。
ところが、Wevoxが導入されてサーベイ結果を見てみると、想像よりもかなりスコアが悪かったのです。背景を探るためにメンバー1人ひとりと1on1を実施したところ、自分とメンバーの考えや認識にギャップがあることがわかりました。例えば、自分や課長は、安全を最優先に考えて情報共有などを行っているのに、作業員の皆は「結局は効率を優先させるんでしょ?」と誤解していたり、何でも言い合える関係だと思っていたのは私だけでメンバーたちはそうではなかったり。また、日頃から行っている改善活動においても、達成感を得られていないメンバーがいることもわかったんです。
そのギャップをうめ、また、個々人が1人で働くのではなくチームの1人として助け合って働く風土をつくっていくべく活動を始めました。

―どのような活動をされたのでしょうか?
兵後:まず、私からメンバーへ情報共有をする際には意図や背景を丁寧に説明するようにしました。そして、係内に「風土向上チーム」を設けて作業員の中から担当者を選出し、同じ目線で悩みや困りごとを気軽に相談できる存在になってもらうことで、さらなる課題の抽出に取り組みました。また、風土向上チームの担当者とは月1回ミーティングを行って受けた相談内容を共有してもらい、悩みに対しては本人からも話を聞きアドバイスし、職場や業務の不備については改善を図り、スピード感を持って対応していきました。
加えて、独自に助け合いにポイントを置いたアンケートを実施し、班ごとの状態を明らかにしました。すると、班ごとに結果にばらつきがあることがわかったので、メンバーにも共有し、「助け合えるチームになっていくために、自身の行動や発言を見直していこう」「全体のチーム力を上げていこう」という話をしました。具体的な取り組みとしては、朝礼のスタイルを変更しました。これまでは、業務上の共有事項など堅い話から始めてあまり元気の出ない暗い雰囲気のまま終わっていたところを、まずはメンバーがプライベートなどの出来事を順番制で話すフリートークから入ることで、明るく、笑いが起こるような時間にしました。
―取り組みの結果、課の皆さんにはどのような変化がありましたか?
兵後:誤解や不満が解消されましたし、Wevoxの総合スコアも1年前と比べる約20ポイント上がりました。また、独自にとっていた助け合いにポイントを置いたアンケートの結果も改善しています。
そして、皆の改善意欲も増し、職場の環境改善や業務改善を行える風土になりました。結果、業務効率も良くなり、2022年度は月平均15回程度発生していた臨時出勤が、2023年度はゼロになりました。また、もともと風土向上チームの他に「安全チーム」「品質チーム」「効率チーム」などを組織して業務上の悩みや困りごとの解決を行う小集団活動を行っていましたが、そのメンバーに責任感を持ってもらって取り組んでもらえたことも、やりがいに繋がっていると感じています。
コミュニケーションの量が多ければ多いほど、職場は良くなっていく
―これまでの取り組みを通じて、ご自身にとっての学びや気づきにはどのようなものがありましたか?
小松:コミュニケーションの量が多ければ多いほど、職場はどんどん良くなることを感じました。引き続き、組織づくりにおいて最も重要なものとして、コミュニケーションをこまめにとっていきたいと思っています。
兵後:コミュニケーションの向上のために対話+会話を意識して話すようになったというのが、自分の中の大きな変化です。対話は業務に関して互いに意見を交わし合うことで、会話はプライベートな話題も含めた信頼関係を高めるための雑談だと理解していますが、メンバーと対話するにあたってまずは関わりを増やし、小さな悩みにも相談に乗って信頼関係を高めていくことが大事だと学びました。
高戸:同じく、業務に関してだけでなく、あいさつや他愛もない会話も含めて、どんどんコミュニケーションを多くしていくことで、一体感ができていくことに気づきました。

―最後に、今後の活動方針や、目指したい組織のあり方などについて教えてください。
小松:新しい従業員が入ってきたときに、職場の雰囲気が悪かったり、愚痴が多かったりすると、面白くないし、精神的に疲れて辞めていってしまいます。そうならないためにも、エンゲージメント向上活動をどんどん進めていって、楽しくてやる気が出る職場、そして、改善提案がどんどん出てきて、負担がどんどん減っていく職場を、自部署だけでなく、グループ全体でつくっていければと思っています。
兵後:私が目標としているのは、協調性や助け合い心があり、問題に対して誰もが自分ごとと捉えて行動できる最強のチームです。これを実現するには、今、メンバーたちが悩んでいることや、職場に対する不満や不備を解決していくことが必須ですから、解決にあたることはもちろん、その際に個人ではなく全体で考えて協力し、チーム力や助け合い心の向上に繋げていきたいと思っています。
同時に、Wevoxのスコアを分析することで隠れていた職場の問題を明らかにすることや、また、1on1の実施や現場の巡回でメンバーとのコミュニケーションを増やすことなどによって、全員で最強のチームづくりへの挑戦を続けていきたいと思っています。
高戸:自分の仕事に誇りを持てるようなやりがいのある職場を目標にして、Wevoxの結果をもとにエンゲージメント向上活動をさらに進め、コミュニケーションも大切にしながら、作業者が安全に安心して働ける風通しの良い職場づくりを進めていきたいと思います。







