「トップ層自らが動けば組織は変わる」DNPグループの本部長が語る、サーベイを起点としたエンゲージメント活動の実践

「トップ層自らが動けば組織は変わる」DNPグループの本部長が語る、サーベイを起点としたエンゲージメント活動の実践

大日本印刷株式会社
井上 正和 氏
井上 正和 氏
大日本印刷株式会社
情報イノベーション事業部 第1CXセンター第2本部 本部長

顧客や生活者のCX最大化のためにマーケティング事業、BPO事業、セキュア事業、ICT事業などDNPの強みを組み合わせて新たな価値を提供する情報イノベーション事業部にて、金融、旅行、大学、メーカー、流通など幅広い業界を担当する営業企画部門の本部長を務める。

大畠 一人 氏
大畠 一人 氏
大日本印刷株式会社
ファインオプトロニクス事業部 生産技術革新本部 本部長

半導体やディスプレイ向け製品の製造・販売を行うファインオプトロニクス事業部にて、各地の工場のDXを推進するための技術開発・導入を手がける生産技術革新本部の本部長を務める。

榎本 繁 氏
榎本 繁 氏
ICTシステム本部 本部長

2015年にDNPおよびDNP情報システムと資本業務提携したDNPメトロシステムズにて、DNPグループの社内サービスの開発・運用を行うICTシステム本部の本部長を務める。

組織のエンゲージメント向上においては、部課長のみならず、事業部長・本部長などトップ層のエンゲージメントへの理解が重要な鍵を握ります。2021年11月からWevoxを全事業部門に導入したDNPグループの組織づくりについて、3人の本部長に伺いました。メンバーとのコミュニケーション、理念浸透、社員の成長機会など本部長の視点で語られるエンゲージメント向上のポイントとは?

3人の本部長が実践する、ビジョン実現のための組織づくり

―御社は2021年よりWevoxを段階的に導入されました。導入当時、組織の課題や目指す姿とのギャップをどのようにとらえていらっしゃったでしょうか? そして、その課題やギャップの解決のために、どのような取り組みをされましたか?

井上:情報イノベーション事業部とその営業企画部門である第1CXセンター第2本部は、複数の部門が統合されてできた組織です。異なる経験・才能を持ったメンバーが互いの知見をかけあわせ、新たな価値を生み出すのが組織統合の意図でした。ところが、同時にコロナ禍に入り、リモートワーク中心の働き方になったため、顔も見たことのない、話をしたこともないメンバー同士の融合という非常に難しい舵取りがこの2年強続いています。

メンバーの融合による新たな価値創出という課題に対して、私が取り組んだことは、まずは、我々のありたい姿とその実現のためにやるべきことをメンバーに示すことでした。その上で、それらの浸透のために、次の4つに取り組んできました。

1つめは、5年前から実践しているメンバー全員との面談です。「人を理解しなければ評価や適材適所の人材配置はできない」というのが私の持論で、1人ひとりの個性を理解するためにも、組織の発足後早々に行いました。

2つめは、「宝の山かもプロジェクト」、略して「かもプロ」という取り組みを、部長主導で実践してもらっています。これは、攻めきれていないポテンシャルのある顧客を「宝の山」とし、事業拡大に向けた取り組みを行う際に自らの強みを発揮したいメンバーを手挙げ制で募り、もともとの担当者と一緒に活動してもらう取り組みです。やる気のあるメンバーを確実に引き上げていくための実践の機会をつくる狙いもあります。

3つめは、部課長との業務外の雑談の場づくりです。これまで接点のなかった管理職も多いので、互いの思いや人柄を理解し、信頼関係を築くために定期的に実施しています。

4つめは、月1回の本部全員での事例の共有です。さまざまな強みを持ったメンバーの、多様な得意先での、幅広い領域の受注事例を取り上げ、個人のモチベーションアップと組織への水平展開を目的としています。

(井上さん作成資料)

―2年間の取り組みの成果はいかがでしょうか? 融合の度合いなどもお聞かせください。

井上:「かもプロ」は、最近、実際の事業につながる事例が出始めています。例えば、もともとBPOのみ受託していたお取引先からのブランディングの仕事に繋がったり、マーケティング事業に携わってきたメンバーたちがBPO事業を開拓するなど、異なる強みを持った者同士が連携することで、新しい価値を生み出しつつあります。ただ、まだ一部のメンバーに限った話で組織全体に浸透している状況ではなく、道半ばだと思っています。

―ありがとうございます。大畠さんの組織ではいかがでしょうか? 組織の課題や目指す姿とのギャップと、それらに対する取り組みを教えてください。

大畠:私が見ている生産技術革新本部は、事業部のDXの実現をミッションに活動しています。部門の特性上、短期で目に見えた成果が出る業務は少なく、数年先に花開くような業務に取り組んでいるメンバーもいます。そのため、自分の仕事に対する周りからの評価をとらえにくいこと、また、お客さまと直接接するわけではないので外から見た自分たちの立ち位置が見えないことが課題としてあります。

それはWevoxのスコアにも表れていて、2021年度は理念戦略に関する項目のスコアが低めで、部門の方針や目的の理解が十分でないことが見て取れました。

この点を改善するために、2021年度から、月1回、メンバー全員を集めた本部会を開き、会社および事業部門全体の方針や、本部の目標・方針を直接話すことを始めました。加えて、メンバーが働きがいを持てるよう、「健康と安全はすべてに優先すること」「チャレンジする風土を醸成すること」「全員が成長できる組織にしていくこと」の3つを、少しずつ言葉を変えながら繰り返し話しています。

(大畠さん作成資料)

―取り組みの成果はいかがでしょうか?

大畠:Wevoxの理念戦略に関する項目のスコアは少しずつ上がってきていて、部門の方針がある程度浸透してきたと感じています。そこで2022年度は、本部会などで方針を都度話していくことは継続しながら、次のステップとして、私自身がメンバー全員を理解しコミュニケーションを強化していくことに取り組んでいます。

具体的には、8つあるグループ・チームがそれぞれに毎週行なっているミーティングに月1回ずつ参加し、各メンバーの業務内容などを理解する機会としています。

―ありがとうございます。続いて、榎本さんの組織ではいかがでしょうか? 組織の課題や目指す姿とのギャップと、そられに対する取り組みを教えてください。

榎本:私が所属するDNPメトロシステムズICTシステム本部は、DNPグループの戦略的ITパートナーとして、グループの社内サービス開発・運用を通じて事業成果にまで関わる組織を目指しています。

組織の課題として、Wevoxのスコアを見ると、「やりがい」や「誇り」「自己成長」「健康」のスコアが低い傾向にあります。ここに対する取り組みとして何をすべきかを考えるにあたり、組織の成長は個人の成長から始まるととらえていたので、2022年度は、「自己成長」のスコアをKPIにおいて、メンバーがいかに自己成長を実感できるかを重視してエンゲージメント向上に関する方針を立てています。

今までも「エンゲージメント」「ウェルビーイング」「活動成果」に課題感を持っていました。これらを打破するためには、まずは「組織のパーパス」をきちんと定義し、一人ひとりが「組織のパーパス」と共感できる価値観を見つけ、それぞれの強み・持ち味を活かせるようにしていく。この活動を通し成果に繋げていくことで自己成長を実感してもらう。加えて、一人ひとりがエンドユーザー目線でものごとを考え、自分達が与える影響を知っていくことが、より誇りややりがいを持って働くことに繋がるのではないかと考えました。

この考えのもと、まず2022年度の1クォーターに取り組んだのは、一人ひとりの「価値観」「強み・持ち味」を言語化した「個人のパーパス」の作成です。私自身がメンバーと1on1を行って一緒に作成した上で、みんなの「個人のパーパス」をイラスト化し1枚にまとめてメンバーに共有しました。2クォーターでは、「個人のパーパス」と「組織のパーパス」の中にある価値観についてメンバー間で対話しながら、互いに共感できる価値観を見つけてベクトルを合わせ、太くしていくことに取り組んでいきます。

また、「個人のパーパス」の作成と並行して、目標管理制度の中にある「チーム活動(ボトムアップで目標設定し取り組む)」において、「失敗OK!」をキーワードに「早く失敗して次に繋げよう!」というメッセージを発信し続けました。さらに、ちょっとした会話やチャットでやりとりするときなどにも、意識的に感謝と承認、称賛を贈ることを始めました。

(榎本さん作成資料)

―これらの取り組みによって、組織やメンバーの皆さんにどのような変化が生まれていますか?

榎本:「個人のパーパス」の作成は、一人ひとりの今までの人生の中にある価値観や強み・持ち味を探り、「自分軸」を言語化するといった内容です。これまでの社会人生活において、人生について深く考える時間をさほど取っていなかったメンバーも多かったので、何かしらの気づきを得たのではないかと感じています。また、みんなの「個人のパーパス」をメンバーに共有したことで、お互いの違いを理解しリスペクトするといったD&Iの理解と浸透や、心理的安全性の向上にも寄与できたのかなと考えています。

チーム活動においては、主体性やスピード感が上がってきています。また、感謝と承認、称賛を贈る取り組みについても、管理職およびリーダーも一緒にやっていて、部内の雰囲気がよくなったという声も聞こえてきました。有償の感謝・称賛を贈り合うサービスもありますが、このようにコストゼロで管理職が意識して感謝・称賛を贈ることはできますし、もらった側だけでなく贈った側も幸福感を得られるので、取り組んでよかったなと実感しているところです。部内の心理的安全性の高まりを感じています。

部課長に対する、組織づくりの取り組みの根付かせ方とは

―本部長というお立場の皆さんが組織づくりに取り組むにあたっては、部長職や課長職の皆さんとの連携が不可欠かと思います。どのように連携し、方針を根付かせていきましたか?

井上:当社では、課長はメンバーに対して1on1ミーティングを月1回以上行うことが推奨されています。課長によってその頻度や質が異なる中、私自身がメンバーと1on1をすることによって、課長が1on1をやらざるを得ない環境ができたのかなと思います。

あとは、本社が開催している価値創造セミナーなど外部から刺激を受けられる機会に積極的に参加するよう管理職に促しています。コロナ禍においては、マネジメント方法を変化させていかなければならず、外部の視点を取り入れ、組織を進化させてほしいという意図からです。そこに呼応する管理職の組織は変化もきちんと見られるし、逆に呼応できない管理職は、Wevoxのスコアに停滞感が見られます。

―時代に合わせてマネジメント方法を変化させていくために、課長職の方にどのようなアプローチをしていますか?

井上:課長としてやることをやれば、スコアは変化します。スコアの良し悪しに一喜一憂せずに、変化の真因を理解し、失敗を恐れずに手を打つことが大切だと日々繰り返し働きかけています。失敗したら素直に認め、見直せばよいことですから。

また、1on1の質が管理職のスキルとして如実にスコアにも表れているので、毎月の全員のスコアを管理職に共有して横並びで見てもらうことで、自分のマネジメントの良し悪しを把握し、改善すべき点はどこか、改善のために何をすべきかを考えるよう促しています。

あとは、変化の激しい時代で学びがない管理職は置いていかれてしまうということを言い続けています。

―大畠さんはいかがでしょうか?

大畠:我々の事業部は、半期ごとに部門別に方針を立てるのですが、その中には「10年後の工場はこういう姿になっている、だから我々は今からこういうことに取り組まなきゃいけない」という方向性を描いて盛り込みます。

その絵を私と部長とで描くにあたり、情報収集の部分、例えば、世の中で流行り始めている技術や注目され始めている技術などの情報を2022年度からは本部全員で集め、整理することに取り組んでいます。それにより、課長以下若手社員に至るまで、将来の見通しを自分ごととして考え、今やるべきことに納得して取り組めるようになることを期待しています。

あとは、管理職以上を対象に、経済紙の中から役に立ちそうな記事を私から毎日発信しています。それがグループミーティングで展開されたり、「うちはもうこういうことをやっていますよ」と反応をもらうこともあったり、そんなやりとりをしながら目指す姿の実現に向けて意識や方向性を揃えることに取り組んでいます。

―榎本さんはいかがでしょうか?

榎本:大畠さんから「自分ごと」というワードが出てきて気づいたのですが、自分らしさを出しながら活動し、充実感を持つことが、自分ごと化につながるのではと感じました。

ですので、一人ひとりの価値観や強み・持ち味を聞いている立場として、メンバーと会話をするときには「こんな価値観や強み・持ち味があったよね」とか「自分らしさを出すとしたらどんなことができそう?」などとコーチング的な関わりを通して、「個人のパーパス」も意識しながら、社員一人ひとりが生き生きと活動できる仕組みづくりに取り組んでいるところです。

本部長が考える、サーベイにより組織状態を可視化する価値

―それぞれにWevoxのスコアを組織運営に活用されていらっしゃいますが、エンゲージメントサーベイにより組織の状態を可視化することは、本部長の立場から見てどのような意義があるとお考えでしょうか?

大畠:組織の課題が可視化されるのは参考になりますし、次のアクションを考えやすいですね。今後もスコアが変動している項目を中心に、部課長と原因や打ち手を話したり、場合によってはメンバー全員で議論したりできればいいなと思っています。

井上:回答しているのは課員であり、課の集合体がたまたま本部だと考えているので、課という最小単位の底上げを最も重視しています。その点で注目しているのが、回答率です。回答率が低い課は、対話が不足しているし、エンゲージメントに対する管理職の関心の低さがメンバーにも伝わっていると感じます。そこについては、課長に対して課題提起は常に行っています。

榎本:導入前は、感覚的に「ここを改善していこう!」「ここらへんはできているかな?」といった話をしていましたが、サーベイによって組織の特性がはっきりと可視化されるので、みんなの共通認識ができ、納得感があるところがいいのかなと思います。スコアがあるので注力ポイントを選びやすくなるのもとてもいいですね。

組織づくりにおけるトップ層の役割とは

―では最後に、組織づくりにおいてトップ層ができることについてどのようにお考えでしょうか?

榎本:弊社の場合、社長から「社員のみなさんに幸せになってほしい!」といったメッセージが、ことあるごとに発信されるので、本部長にも部長にもそうした意識はかなり浸透しています。

加えて、心理的安全性の場づくりという面で、事業部長や本部長にできることは、ビジョン・ミッションを力強く語るのと同様に心理的安全性の向上を行動で示していくことだと感じています。具体的には、繰り返しになりますが、感謝と承認、称賛です。これらを惜しみなく出し続けることが大切だと思います。

大畠:私がコロナ禍の最中に新しい部門に入ったからこそ思うのは、本部長が変化を率先して受け入れ、実践することの重要性です。環境の変化によって変わらざるを得ないとき、上が「こっちだよ」と動くと、組織は変わっていくことを実感しています。

逆に、上がもし「いやいや、今までのままがいいよ」となってしまうと、若い人たちはついてこないですよね。私たちが取り組んでいるDXなんて最たるものです。私たちの事業部では、事業部長自らが「DXを進める」という方針を打ち出しています。その実現のために本部長が自ら変わっていくことをメンバーにもっと示すことが大事なのだろうと、今日お二人の話を伺いながら強く感じました。私自身に変化が足りないことも痛感したので、今後も、変化を恐れずチャレンジしたいと思います。

井上:人が育つ環境をつくることが本部長の一番の役割だと思っています。加えて、メンバーが正しく育っていくために、人格を備えた管理職を育てることが非常に重要だと思っています。管理職次第でメンバーの伸び代を潰してしまう場合もあれば、かなり飛躍させることもできますから。

もともとやってきたことと異なる経験をすることで壁にぶつかり、考え、成長する機会があることは幸せなことです。メンバーに対して、そういった成長機会を積極的につくっていきたいですね。

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