
「1日の生産数も上がりました」製造部門全300名の毎月1on1!DNP 戸畑工場で育まれた、助け合いの文化

2010年にDNPグループに中途で入社。その後2013年に株式会社DNP高機能マテリアルへ異動する。2024年からは、生産革新推進室の室長を務め、工場内の安全、品質、効率、原価の管理を担いながら、工場全体のエンゲージメント向上に取り組む。

2002年にDNPグループに新卒で入社。千葉の研究所や、福岡の工場、三重の工場での勤務を経験し、これまで4つの工場立ち上げに参画する。現在は製造第2課第2係の係長と戸畑第1工場生産革新推進室を兼任し、自チームに対してのエンゲージメント向上にも取り組む。
エンゲージメント向上の取り組みの一環として、工場の全社員300名と毎月1on1を実施している、DNP 戸畑工場。
活動を継続する中で、部下から「1on1をやってください」と声が上がるようになったり、生産数量が向上するといった、喜ばしい変化が起きています。
しかし、元々は1on1の認知度も広がっていなく、そもそも時間を確保することも難しかったとのこと。そこからいったいどのようにして、1on1を浸透させていったのでしょうか。
工場だからこその課題をいくつも乗り越えながら、エンゲージメント向上に取り組み続けるお二方に、お話を伺いました。
※取材時(2025年8月)の部署・役職になります。
「ラインが止められない」「シフトが合わない」——1on1実施を阻む、工場ならではの壁
―さっそくですが、お二人の仕事内容から教えていただけますでしょうか?
中野: 生産革新推進室では、戸畑工場の主力製品であるバッテリーパウチ(※)の製造や物流部門を対象に、効率化や品質向上を目指す取り組みを広く行っています。
主な仕事は、安全、品質、効率、原価といった指標の数値を分析し、業務の“ムリ・ムダ・ムラ”の改善を促したり、コストダウンを推進することです。エンゲージメント向上の取り組みも、その一環で行っています。
※バッテリーパウチ……リチウムイオン電池の外装材であり、外部からの衝撃や圧力から電池本体を保護し、内部の構造を安定させる役割がある。(参考記事:地球への想い、フィルムに重ねて。│DNPの一面! DNP FUTURE PRESS)
新屋: 私も生産革新推進室の所属ですが、同時に製造第2課第2係の係長として、1on1をはじめとする部下の指導や育成を行っています。また、業務の進捗管理や工場内のリスク管理なども担当しています。
工場全体のエンゲージメント向上の取り組みをしながら、工場内では係長として、自分が決めた活動を実践している形です。
―DNP 戸畑工場では、全社員300名を対象に毎月1on1をされていると伺っています。
中野:はい。当初は、課長が課員に対して1on1を行う形でしたが、課題が多かったため、現在は体制を変更して実施しています。
―そもそも、工場での1on1 はどのような経緯で始まったのでしょうか?
中野: 生産革新推進室の中で「1on1を実施することで、エンゲージメント向上に繋がるのでは?」という仮説が生まれたからです。
そもそも工場ではどうしても個人作業が多く、コミュニケーションが少なくなる傾向がありました。それでは、チームという感覚も生まれないので、まずコミュニケーション量を増やす施策として、1on1を取り入れようと考えました。

―毎月の1on1を実現しようとする中で、どのような課題がありましたか?
中野: やはり、ただ「1on1を実施してください」と伝えるだけでは、うまくいきませんでした。実施できるチームと、そうでないチームが出てきてしまい、現場によって実施状況にばらつきが出てしまいました。
そのときに改めて、じゃあどうやって全員に実施してもらえるか、という話になったんです。
新屋: その当時、工場内での「1on1」という言葉の認知度も低かったです。面談といえば、内示や人事評価の時に行うものという認識がありました。結局何をすればいいのか?というのは私も含め、多くの人が感じていたことかと思います。
中野: 「1on1」の認知度の低さ以外にも、実施を難しくしている課題がありました。
それは、製造部門はシフト制であるため、特に土日シフトや深夜シフトの社員と、管理職のメンバーが時間を合わせるのが難しかった、という点です。平日の昼間に実施しましょう、と簡単にはいかず、実施できないチームが出てきていました。
また、社員が一番多い課は80名いるので、課長が全課員一人ひとりと話すには、時間が足りませんでした。
新屋: 他にも、工場だと1人が抜けてしまうと、その1人が担当していた装置を止める必要が出てきてしまいます。そうすると他の作業も進まなくなってしまい、生産性も落ちてしまうんです。
装置を止めないためには、代わりに別の装置を担当していた人が、抜けた人の仕事も兼任する必要が出てきます。負担が増える部下に対して、そのことを納得してもらう必要もありました。

負担を分ける「手分け式」、認識を揃える「勉強会」
―「話す時間を合わせられない」「負担が大きい」...そうした課題を前に、どのようにして1on1を浸透させていったのでしょうか?
中野: 当初は課長が全員の1on1を対応するという話でした。ですが、先述した通り課長が全社員一人ひとりと毎月話すには時間が足りませんでしたので、課長、係長、班長が手分けして1on1を実施する体制を作りました。
まずは社員のジョブグレード(等級)で1on1の担当を決めた上で、各課の状況に合わせて、それぞれ柔軟に調整してもらっています。例えば、新人社員に対しては班長が1on1を担当し、中堅社員に対しては課長が対応する、といった形です。

中野: また、1on1をすることになった課長、係長、班長の多くが、「部下と1対1で、何をどう話せばいいかわからない」という状況でした。なので、まず基礎知識を身につけることが重要だと考えました。
そこで、戸畑工場の工場長が制作した、1on1の心構えや、聞き手としての役割、テクニックなどをまとめた資料をもとに、勉強会を実施していきました。

中野: 勉強会の効果として、「1on1は部下のための時間で、上司は聞く側だ」という共通認識が生まれました。それまで、部下に一方的に話すスタイルの人がほとんどだったので、1on1でのコミュニケーションの質は向上したと思っています。
新屋: この時点で、1on1で抜けた人の仕事を埋める負荷が部下側に生じる、という課題に対しての具体的な施策はありませんでした。ですが1on1をしていく中での変化によって、徐々に課題ではなくなっていったなと感じています。

1人が抜けてもラインは回り、生産性も上がる
―1on1を実施してきて、どのようなチームの変化を感じているのでしょうか?
新屋:「今日の何時頃なら時間ありますか?」「1on1をお願いします」と、部下から声をかけてくれることが増えてきました。
最初はなかなか声を掛けられることはなかったのですが、「1on1では部下であるあなたが主役なんだ」と伝え続けることで、信頼関係が生まれたり、価値を感じてもらえるようになったのかなと思います。
また、部下同士が自発的に助け合うようになりました。
1on1で抜けた人を埋めるために、それぞれが多能工(1人の従業員が、複数の業務や作業に対応できる技能や技術を持っていること)である必要性を、納得して動いてくれるようになったのだと思います。
1人で2台の装置を回さなければいけない状況に対して不満を言うのではなく、誇りを持って仕事に取り組んでくれています。
その結果として、1日の生産数量も上がっているんですよ。

—現場から抜ける人が定期的に発生する状況で、生産性も上がっているのはすごいですね。
新屋: そうなんです。みんなで助け合い、向上心を持って取り組んでいるところが、本当に素晴らしいなと日々思っていますね。
―1on1を続ける中で、ご自身の変化があればお聞かせください。
新屋: 私自身、部下から学ぶことばかりでした。自分では当たり前だと思っていたことが、実はそうではないと、自分の視野の狭さに気づかされることもよくありましたね。
部下とのやりとりを通して成長していると感じますし、だからこそ今後も部下から出た意見には、真摯に向き合っていきたいです。
世界一の工場へ。トライアンドエラーで、壁を超える
―新屋さんは、1on1を続ける中で、感じている課題はありますか?
新屋: 交代勤務の現場で部下の数も多いので、1on1のスケジュールを確保することにはいまだに苦労しています。
ただ、それに対しては、新しい取り組みを、まずはどんどん試すことを大切にしています。
たとえば、上司1人と部下2人で行う「2on1」を試してみたりもしました。
「失敗もしていいからどんどん挑戦しよう」「挑戦の最初の一歩は大きなものである必要はない」という、北島社長(DNP)の言葉を胸に、今後も壁が生まれるたびに、そのような姿勢で対応しようと思っています。
—中野さんが現在感じている課題はありますか?
中野: エンゲージメントスコアが停滞してしまうと、何をすべきかわからなくなるのが課題です。
それこそ、1on1をしてもスコアが上がっていかない課も出てきています。もともとスコアが高く出ていても、じゃあここからどうやってさらに上げていけばいいのかと悩んでいる課もあります。
新屋さんと同じになりますが、「これさえ実施すれば大丈夫」という正解がないことは活動の中で感じていますので、トライアンドエラーで、様々な施策を試そうと思っています。
―最後に、今後どのようなチームを目指していきたいか、展望をお聞かせください。
中野: 1on1を通して、仕事の相談をいつでも気軽にできる「風通しのいい職場」を作っていきたいです。エンゲージメントスコアを上げることを目的とするのではなく、良い職場環境を作った結果として、自然とスコアも上がっている状態が理想ですね。
新屋: 私は、チームのみんなが誇りを持ち、より高いプロ意識を持って仕事に取り組んでいるチームを目指していきたいです。
まずは上司が部下を、部下が上司を思いやれる。部下同士も相互に助け合える、そんな関係性をより強化していくのが直近の目標です。
いずれは、そんな信頼関係を当たり前のものとして、チームみんなで、世界一の工場を目指していきたいですね。 これも、DNPのブランドステートメントである「未来のあたりまえをつくる。」ことの一つだと思っています。


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