
Wevox Boardはチームづくりをどう変える? 開発チームが語る“つまらない会議”を巡る哲学と未来

2016年からWevoxに在籍し、長年デザインを担当。現在は新規機能開発を主導しつつ、既存のWevox Boardの企画・運用にも継続して関与。プロダクトマネージャーと共にプロダクトの方向性を定める役割を担う。

2021年4月に入社。木下と同じく新機能開発チームに所属し、インフラからフロントエンドまで領域を問わず横断的に開発を担当。要件定義から実装まで、開発プロセス全般に幅広く貢献している。

2023年4月に新卒で入社。Wevox Boardの開発に初期から携わり、リリース後は新規プロダクトの創出に注力。新たなプロダクトのアイデアを出し、企画提案を行うなど、主にプロダクトマネージャーとしてその能力を発揮している。
「会議をもっと面白くしたい」——こうした思いから生まれたオンラインホワイトボードツール「Wevox Board」。そのカラフルでポップな見た目とは裏腹に、開発の過程では「なぜ日本の会議はつまらないのか?」という問いと、人間の脳のキャパシティにまで踏み込んだ興味深い仮説がありました。本記事では、開発チームが語るWevox Boardの哲学と、その先に見据えるチームづくりの未来に迫ります。
普段は開発に勤しみ、よりよいプロダクトづくりに集中している彼ら。「Wevox Boardに興味を持ってもらい、使うきっかけになる話を」と取材を始めたところ、セールストークは一切せず、ひたすらに奥深い洞察と、よりよいチーム/組織づくりを巡る対話が繰り広げられました。
この記事を通じて、チームづくりへの新しいヒントや刺激と共に、「こんな人たちがWevoxの開発をしているんだ」ということを知ってもらえるとうれしいです。そして、もちろん、Wevox Boardにも興味を持ってもらえると幸いです。
それでは、自己紹介からのスタートです。
プロダクトを進化させる、三者三様の開発者たち
—「Wevox Board」がリリースされてから1年以上が経ちました。今回は、改めてWevox Boardの開発背景や思想、1年を振り返っての感触や今後の展望についてお伺いしたいと思います。まず、皆さんが現在どのような役割で、Wevox Board開発にどう関わってきたのか、自己紹介を兼ねて教えていただけますか。
木下: デザイナーの木下です。2016年からWevoxに在籍していて、ずっとデザインを担当しています。現在は新しい機能の開発に携わっていますが、Wevox Boardの新機能の企画や運用も継続して行っています。チームでは、PdM(プロダクトマネージャー)と一緒にプロダクトの方向性を考えたり、デザインを作成したりするのが主な役割です。
森: フロントエンドエンジニアの森です。2021年の4月に入社しました。私も木下さんと同じ新機能の開発チームに所属しており、エンジニアとしてインフラからバックエンド、フロントエンドまで、必要とされる領域を横断的に担当しています。要件定義から実装まで、幅広く開発に関わっています。
丸山: エンジニアの丸山です。丸ちゃんと呼ばれています。2023年の4月に新卒でアトラエに入社し、最初からWevox Boardの開発に携わってきました。リリース後は、Wevox Boardのようなプロダクトを他にも作れたら面白いという話になり、現在もさまざまな新規プロダクトに関わっています。新しいプロダクトのアイデアを出し、「これを作ったら面白いかもしれない」と提案するのが私の役割の一つです。主にPdMとして携わることが多いです。
きっかけは「会議はつまらない」という声から
—ありがとうございます。では早速ですが、Wevox Boardが生まれた経緯からお伺いします。過去にnoteで触れられている部分もあるかと思いますが、改めて、どのような思いや狙いがあって開発が始まったのでしょうか。
木下: 大前提として、Wevoxは長年「サーベイツールに留まらない価値を生み出す」ことを大きなテーマとして掲げてきました。しかし、サーベイ以外の価値を明確に打ち出すことができず、いい組織を生み出すプロダクトとして、何か新しいものを作らなければならないという状況が続いていました。
そんな中、最初のきっかけをくれたのが開発責任者の森山です。「真面目すぎて面白くない会議を経験している人が多いのではないか。もっとみんながワイワイできる状態になった方がいい」と、あるミーティングで彼が話してくれたんですよ。私自身も、Miroのようなホワイトボードツールを使うと、会議の雰囲気がガラッと変わる面白さを実感していました。その「場の空気が変わる感覚」をプロダクトで実現したい、という思いが原点にあります。
当初は、エンゲージメントサーベイから得られたインサイトを元に、みんなで対話できるようなプロダクトを考えていました。しかし、開発を進めるうちに、インサイトとの連携部分よりも、ホワイトボード機能そのものが持つ「面白さ」や「価値」にフォーカスが当たっていきました。「これ単体でも面白いものが作れそうだ」という手応えを感じ、現在のWevox Boardの形に繋がっていったんです。
—なるほど。出発点はエンゲージメントサーベイに関わる機能の延長線上というより、純粋に「会議を楽しくしたい」という思いからだったのですね。
木下: そうですね。森山さんが当時、「会議が面白くない」と真剣に話してくれたのが印象的でした。ただ真面目に話すだけではダメなんだと。そこから生まれたアイデアなので、エンゲージメントと結びつけるという発想は、後から文脈を整理する中で出てきた側面もあります。結果的に、まずはWevox Boardというツールそのものの価値を追求することに集中した、という経緯ですね。

会議がつまらないのは「脳の容量不足」?開発裏の意外な仮説
—「つまらない会議を楽しくする」という出発点から生まれたWevox Boardですが、開発を進める中で、チームとして目指すビジョンはどのように形成されていったのでしょうか。
木下: Wevox Boardが目指すビジョンは、開発の過程で少しずつ変化し、深まっていきました。当初は「組織の対話を活性化させる」という目標でしたが、今ではそれも内包しつつ、より「汎用的な道具」としての側面が強くなっています。リリースから1年が経ち、ユーザーの方々が私たちの想定を超えて、思考整理や情報共有など会議以外の目的で使ってくれているのを見て、その可能性を実感しているんです。
丸山: このビジョンの根底には、私たちが抱いていたある問いがあります。それは、「なぜ会議はつまらなくなるのか?」という問いです。その答えを探る中で、「人間の機能は、会議中にほとんど使われていないのではないか」という仮説に行き着きました。
木下: やや小難しい仮説が出てきましたが、何度も、真剣に「なぜだ?」というのは話しましたね。
—もう少し解説してもらいましょうか。人間の機能が使われていない、とはどういうことでしょう?
丸山: 特に日本の会議では、コミュニケーションが「聞く、話す」だけに偏りがちではないか、という話が出てきたんです。思い返せば、体を動かすのはうなずく時くらいで、ジェスチャーもあまり使いません。冗談を言うこともあまりない。
なぜかと言えば、脳が、耳から入ってきた情報を処理し、それに対して正面から口で返答するという作業にリソースの大半を奪われてしまうからです。
つまり、聞く、話す以外のアクションが生まれないのは、脳のキャパシティが限界に達しているからではないか。会議の中で、ユーモアを交えたり、身振り手振りを加えたりする余裕がなくなっているのではないかと考えたのです。
—ポップな印象を受けるWevox Board開発の裏側で、そんな深い議論がされていたんですね。
丸山: そうなんです。もう少し続けると、この脳の負荷を軽減するために、私たちは「目」という、人間が最もよく使う感覚器官を会話中に使うのがいいのではないか、と考えました。それが、Wevox Boardをホワイトボードツールとして開発した大きな理由の一つです。情報をビジュアライズし、視覚的に共有することで、脳の負荷を分散させ、より豊かで創造的な対話が生まれる土壌を作りたかったのです。

「話す」だけが会議に参加する方法ではない
—非常に興味深い視点ですね。脳のキャパシティという観点からコミュニケーションを捉え直した。単に、既存のホワイトボードツールのコピーをしようとしたわけではなく、「なぜ会議がつまらなくなるのか」を突き詰めていった先に、ホワイトボードツールがあったと。
木下: そうですね。アイデアの一つとして、ホワイトボードツールは初期段階からありました。ただ、実際の開発に進むにあたっては、今丸ちゃんが話したような議論を深めていく中で、ホワイトボードツールにしよう、と確信を持って決めることができました。
—脳のキャパシティを補助しつつ、会話を楽しくするツールとして、Wevox Boardにはどのような特徴がありますか?
森: 私は、Wevox Boardを会議を楽しくすると共に、「対話を通じて相互理解を促進するツール」としても捉えています。会議を楽しくするには、良い人間関係を築くことが必要で、それには相手の立場や文脈を理解することが不可欠です。しかし、リアルタイムの会話では、そこまで意識を向けるのは難しい。Wevox Boardは、そのハードルを下げることができます。
例えば、「キモチ付箋」という機能があります。これは、相手の発言が書かれた付箋に、自分の感情(喜び、驚きなど)を示すアイコンを付けることができる機能です。これによって、言葉にはなっていないノンバーバルな反応を、意識せずとも伝え、受け取ることができます。

木下: 究極的には、会議中に一言も話せなかったとしても、Wevox Board上でステッカーなどでリアクションしたり、付箋を貼ったりするだけで対話に参加できている、という状態を目指しています。話すのが得意な人、書くのが得意な人、図解するのが得意な人。それぞれの得意な方法でコミュニケーションに参加できる。そんな新しい対話の形を作ることが、私たちのビジョンです。
開発者の想定を超えた、ユーザーが生み出す多種多様な使い道
—リリースから1年、ユーザーからのフィードバックを受けながら、機能のアップデートも繰り返されてきたと思います。どのような考えで機能改善の意思決定を行ってきたのでしょうか。
木下: この1年の前半は、実際にお客様にワークショップなどで使っていただき、その反応を見ながら改善を進めていました。一方で、Wevox Board開発を通じて、Wevoxが作るプロダクトの品質基準がある程度確立されたと感じています。
「使っていて面白い」「安定していて壊れない」「自由度が高い」。この基準を他のプロダクトにも展開していこうという判断から、後半の半年からは、新しい機能の開発に重きを置いています。
Wevox Board自体に関しては、特定のソリューションに特化するというよりは、いろいろな用途に使える汎用的な道具としての洗練を目指してきました。例えば、オブジェクトを固定する「ピン機能」や、情報を整理しやすくする「フレーム機能」など、シンプルですが道具としての使いやすさを高める改善を重視しました。
—会議での使用にとらわれない、汎用的な道具を目指しているとのことですが、ユーザーの使われ方で、何か発見はありましたか?
木下: たくさんありましたね。私たちが想定していなかった、創造的な使い方をしてくれるユーザーさんがたくさんいたんです。例えば、同じWevoxチーム内だけでも、個人が思考を整理するツールとしての活用や、デザインレビューで大量の画像を並べて議論する使い方。他にも、書籍の構成整理、タイトル案のブレスト、開発の仕様書の作成に活用しているチームなど、本当にたくさんあります。
こうした使われ方を見ると、私たちが最初にイメージしていた「対話を盛り上げる」という使い方を、ユーザー自身が軽々と飛び越えて、その可能性を広げてくれていると感じます。このワクワク感は、開発者冥利に尽きますね。

丸山: 一方で、開発チームとしては「なぜWevox Boardがここまで受け入れられているのか」という問いをずっと持ち続けています。正直なところ、機能の豊富さでいえば、Miroのような既存のホワイトボードツールに勝っているわけではないんです。
木下: その話もメンバー間でよくしますね。
丸山: 一つの仮説として、「そもそも多くのビジネス現場でホワイトボードツールがまだ浸透していなかったのではないか」というものがあります。もう一つの希望的観測としては、機能が多すぎないシンプルさが、かえって使いやすさに繋がっているのかもしれない、と考えています。付箋を貼る、図形を置くといった基本的な作業が直感的にできれば、ほとんどの用途は満たせるのかもしれません。
木下: この「なぜ使われているのか」という問いの先に、私たちが本当に作るべきもののヒントがあると思っています。「キモチ付箋」のように、ただの道具ではなく、私たちの思想、つまり「感情を表現する」といったテーマを明確に組み込んでいる点に、Wevox Boardならではの価値があるはず。その独自性をさらに伸ばしていくことで、この問いの答えに近づけるのではないかと考えています。

目指すは組織の拡張現実?それぞれが思い描くWevoxの未来
—現在は新しい機能の開発に注力されているとのことですが、それはWevox Boardの未来とどう繋がっていくのでしょうか。今後のWevox全体の展望についてもお聞かせください。
木下: はい。Wevox Board開発で得た知見や確立されたクオリティの基準は、Wevox全体の財産です。その上で、Wevox Boardという一つのツールだけですべてを解決しようとするのではなく、複数のツールを組み合わせてソリューションを提供していく、という戦略にシフトしています。
森: 個人的には、今後の開発で最も重要になるのが、AIの活用だと考えています。AIを用いて、エンゲージメントスコアのデータ活用やWevox Boardを使った対話などがもっと活性化されるように、Wevoxを進化させたいと、いろいろと構想を練っています。
—Wevox BoardをAIで発展させ、組織の活動を支援していくイメージですね。
丸山: はい。これは個人的な考えであり、理想でもあるのですが、私が最終的に目指しているWevoxの世界観は、「拡張現実(AR)」的なツールです。現実の組織活動、例えば会議や日々のコミュニケーションといった社会の中に、Wevoxが自然に溶け込んでいる。そして、見えなかったもの、例えば個人の感情や関係性を可視化したり、より良い行動を後押ししたりする。いつかは、そんな存在になれたらと考えています。
Wevox Boardはその世界を実現するための、ユーザーが実際に手を使ってアクションを起こす中心的な場であり続けられるといいですね。
木下: 私たちが目指す究極のゴールは、一貫して「より良い組織づくりを支援すること」です。そのために、Wevox Boardという対話の土壌があり、将来的にはAIを活用した発展があり、それらが組み合わさって多角的な支援を提供する。この記事を通じて、サーベイだけではないWevoxの新たな可能性や、私たちが描く未来への期待感を感じていただけたら嬉しいですね。
丸山: あと、まだWevox Boardを使ったことがない人がいれば、ぜひ使ってみてほしいです。難しいことを考えなくても、直感的に触って、使えるツールです。まずは議事録代わりなどに使って、何かうれしいことや驚きなどがあればキモチ付箋を貼ってみる……といったシンプルな使い方で構いません。それだけでも、コミュニケーションや相互理解の促進に繋がると思います。
森: そうですね。まず、触ってみてほしいですね。かわいいステッカーもたくさんあるので。
木下: この記事を読んでくれた方で、まだ触ったことがない人がいたら、いいきっかけだと思って、ぜひWevox Boardを触ってみてください。我々開発チーム一同からのお願いでもあります(笑)。よろしくお願いします!







