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対話を通じて、「納得の鍵」を見つける 【Weコラム-みんなで考える組織づくり- #16】

対話を通じて、「納得の鍵」を見つける 【Weコラム-みんなで考える組織づくり- #16】

平井 雅史
平井 雅史
Wevoxカスタマーサクセス/Engagement Run!Academy講師

エンゲージメント向上に必要なスタンスやマインドセットを得るための学び/クラスを主に担当。「組織開発の悩みの多くは適応課題である」という考えのもと、テクニックに頼らない組織開発の考え方や、エンゲージメントの高め方などを参加者との対話を重視したセミナーによって伝授していく。大手企業を中心に企業研修も多数手がける。

このコラムでは、Wevoxやエンゲージメントをテーマに、これまで私達が蓄積してきた知見や考えを皆さんに伝えます。ぜひ、チーム作り・組織づくり・組織開発の際の参考にしてください!

なぜ「対話」が必要なのか?──自分の鍵をつくるという視点

Wevoxカスタマーサクセス/Engagement Run!Academy講師の平井です。

企業研修の現場や、組織開発のプロジェクトを通じて、「なぜ対話をするのか?」という問いに向き合うことがあります。私がよくお伝えしているのは、「それぞれが自分の“鍵”をつくるために対話をするのだ」ということです。

この“鍵”という表現は、聞く側にとってもイメージしやすいようで、実際に多くの方から「なんとなく腑に落ちた」「その感覚はわかる」といった反応をもらいます。最近は比喩を用いることで、対話の本質が少しずつ伝わる実感が湧いています。

では、「鍵をつくる」とはどういうことでしょうか? その出発点は、「私たちは機械ではなく、人間である」という当たり前の事実に立ち返ることです。多くの企業がエンゲージメントの向上を目指して、制度や仕組み、施策を取り入れています。しかし、それらが“うまくいかない”ことは珍しくありません。うまくいかなかったからといって、施策の質が低かったわけではなく、むしろ「本人たちがそれを受け入れられる状態にない」ことが問題だったりします。

人の数だけ、鍵穴の形がある

Illustration by Freepik Storyset

「人にはそれぞれ異なる“鍵穴”の形がある」という表現を使っていますが、これはつまり、「心が動くポイント」や「納得の形」は人それぞれ違うということです。どれだけ汎用的な成功事例であっても、すべての人に効くわけではありません。なぜなら、その“鍵”が相手の“鍵穴”の形に合っていないからです。

たとえば、スポーツに熱中して育った人には、スポーツを例にした話の方が響くかもしれません。逆に、学問を中心に過ごしてきた人にとっては、論理的な構成や理屈に基づく話の方がしっくりくるでしょう。これは、その人の「受け取り口」が異なるからです。

実際、研修でグループワークやブレイクアウトセッションを実施すると、同じ成功事例や施策案を聞いても「すごく心に残った」という人もいれば、「なんだかよく分からなかった」という人も出てきます。その反応の違いを見るたびに、「やっぱり鍵穴の形が違うんだな」と実感します。

Illustration by Freepik Storyset

また、もうひとつ重要なのは、「自分の鍵穴の形を一番知らないのは、自分自身も同じ」ということです。

何が自分の中で腑に落ちるのか、何に対して動かされるのか。自分の言葉で話してみたり、人の話に触れたりする中で、少しずつ「自分の輪郭」が見えてきますし、それを探すしかありません。

これは簡単なことではなく、だからこそ、ただ「教える」「伝える」だけでは足りません。必要なのは、「一人ひとりが自分の納得の鍵を見つけ、自分の手で鍵を回すこと」です。そして、そのプロセスを支えるのが“対話”です。

対話とは、自分の鍵を探し、回すための営み

なので、私が対話を大切にする理由の一つはここにあるということになります。つまり、対話とは、他人の答えを鵜呑みにすることでも、正解を見つける競争でもありません。それは「自分の鍵穴の形を知り、自分だけの鍵をつくるための営み」なのです。

誰かと話すことで、自分の中の考えが言葉になっていき、誰かの言葉にふれることで、「あ、これだ」と思えるヒントが得られる。そうした対話の積み重ねが、やがて自分だけの“鍵”となって、心の中の扉を開けていくというわけです。

Illustration by Freepik Storyset

合わせて重要なことは、このプロセスには「主体性」が不可欠です。なぜなら、どれだけ周囲がアドバイスや支援をしても、「自分で自分の扉を開けよう」という意思がなければ、それは意味を持ちません。

私はいつも、「あなたの鍵穴の形を知っているのは、あなただけです。でも、そのあなただって、最初はよくわからないことがある。だからこそ、対話が必要なんです」と伝えています。

極端な話、誰かが用意したアドバイスや施策は、他人の鍵でしかありません。自分の中に納得がなければ、それらはただの“外から与えられたもの”に過ぎないのです。納得感を持って進んでいくためには、自分で自分の内面と向き合い、自分なりの言葉で、考え方で、経験の蓄積で、“鍵”を見つけていくしかありません。

(なので、自分の鍵穴を見つけようとしない人には、「それは、最終的には、周りの人にはどうしようもないことですよ」と伝えるようにしています。)

このように考えると、対話の目的は単なる情報交換ではなく、「自己発見」や「納得の創出」そのものです。だからこそ、私は組織やチームの中で、もっと多くの人が“対話”の力を信じて、自分の可能性とつながる機会を持ってほしいと思っています。

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