「欲張りに生きて、働こう」転職後の挫折、突然の義足…激動の40代を経て揃う“幸せな組織のピース”

「欲張りに生きて、働こう」転職後の挫折、突然の義足…激動の40代を経て揃う“幸せな組織のピース”

東京計器パワーシステム株式会社
吉田 武氏(CEEP-LV3)
吉田 武氏(CEEP-LV3)
東京計器パワーシステム株式会社
社長付事業推進担当 / 技術2課

高校卒業後すぐに大手電機メーカーに入社し、40歳で東京計器株式会社へ転職。現在は東京計器パワーシステムにて、エンゲージメント活動の旗振り役を担う。社員が誇りとやりがいを持てる組織づくりに邁進中。

「欲張りって、僕はいいことだと思うんです」

そう語る吉田武さんの瞳は、かつて大きな挫折と苦悩を味わったとは思えないほど力強く輝いていました。

40歳の節目に、日本を代表する大手電機メーカーから、東京計器に転職した吉田さん。過去の経験を活かし活躍する中で味わったのは、組織変革での大きな挫折でした。一方、私生活では突如襲った病が原因で義足となり、生活も一変。激動の40代を経て出会ったのが、「エンゲージメント」(活き活きと働ける状態)という考え方でした。

心機一転で通い始めたエンゲージメントを学ぶアカデミーで得られる、「だからダメだったのか」「こうすればいいのか」というパズルのピース。50代を迎え、過去の失敗と向き合い、新たな学びを得ながら、前向きに組織変革に再挑戦する吉田さんに、その原動力について伺いました。

30代で得た最高のチーム体験

現在、東京計器パワーシステムでエンゲージメント活動を精力的にリードし、チームや組織づくりに対して強い意欲と情熱を持つ吉田さん。その原点は、20代後半から30代半ばにかけて、前職の大手電機メーカーで過ごした日々にあります。

「当時、革新的なプロダクトを各国の会社と協力して世に出す、大きなプロジェクトに携わっていました。言葉や文化の違いを乗り越えて、みんなが手を取り合っていた。誰ともなく助け船を出したり、積極的に話し合って落とし所を探ったり。

新規事業だったこともあり、スタートアップのような活気もあって。当時私は技術職だったのですが、直接海外の取引先と交渉するなど、枠を飛び越える経験もたくさんしました。ゴールに向かって、やれることはみんなでやる。そういったチームの一体感というのは今でも忘れられないですし、どうやったらあの体験を生み出せるのかというのは常に頭の中にある気がしますね」

仕事に打ち込み、最高のチームエクスペリエンスを味わった30代。しかし、会社の業績不振を機に自身の人生を見つめ直します。家族との時間や、大好きなサーフィン、バンド活動などの趣味との両立を考えた結果、40歳を迎えるタイミングで東京計器への転職を決断しました。

過去の成功が招いた大きな挫折

転職先でもこれまでの経験を活かし活躍する吉田さん。数年が経った頃、課題を抱える部署の組織変革に自ら手を挙げます。しかし、過去の成功体験が、皮肉にも彼を苦しめることになります。

「『3年間で変えます』と経営陣に言い切って管理職に就いたのですが、結果的にはうまくいきませんでした。前職でうまくいっていた経験を、そのまま強引に当てはめようとしてしまったんです。当時の私は、自分こそが正解だと思っていた。

そうやって、信念を持って引っ張っていくことがリーダーのあるべき姿だと思い込み、メンバーの考えをろくに聞いていなかったんです。彼らの目には『いきなりやり方を押しつけてくるやっかいな上司』と映っていたのではないでしょうか」

3年間で結果を出せず、大きな挫折感を味わいながら、吉田さんはその部署から身を引くことになりました。

突然の病。義足になって気づいた「周りの幸せ」

仕事で酸いも甘いも経験する中、吉田さんの身に人生を揺るがす大きな変化が訪れます。48歳になった年、突然の病により、義足となることを余儀なくされたのです。

「癌が見つかって、くよくよ悩む間もなく足を切断することになりました。足を残す方法もあったのですが、医者に『どっちがサーフィンできますか?』と聞いたら、義足のほうがいいと言われて。じゃあ、義足になろうと。

面白いことに、義足になってサーフィンからSUPサーフィンに転向し、また波乗りを一から楽しめている気がします。波乗りを始めた頃のワクワクをまた味わえていますし、何より義足で波乗りしていると、みんな驚いてくれます。今はこの身体になったことをすごくポジティブに捉えられるようになりましたし、義足も案外悪くないですよ」

屈託のない笑顔でそう語る吉田さんですが、この出来事は精神的にも大きな変化をもたらしました。

「義足になってからは、色んな人から助けてもらうことも多くなりました。そうすると、だんだんと『周りの人がどうやったら幸せになるか』という方向に考えがシフトしていったんです。以前経験した組織変革での失敗も重なり、『組織やチームで幸せに働くにはどうすればいいのか』が、自分の中でより大きなテーマになっていきました」

欠けていたパズルのピース「エンゲージメント」との出会い

その後、子会社である東京計器パワーシステムへと移り、事業推進担当として再び組織変革に挑むことになった吉田さん。そこで運命的に出会ったのが、一人ひとりが前向きに仕事や組織と繋がり、活き活きとしている心理状態を指す「エンゲージメント」という考え方でした。

ヒエラルキー型組織の閉塞感を打破し、フラットな空気の中で個々が活躍する、エンゲージメントの高い組織を目指したい。その第一歩として、吉田さんは2026年1月から3月の間、エンゲージメントを学ぶアカデミー(※)に集中的に通い始めます。

Engagement Run!Academy

「社長の理解もあり、短期間の間で思い切って時間を使わせてもらって、できる限り多くのクラスを受けていったんです。3カ月でCEEP(※)のLV3までを取得したのは他にはいないのではないでしょうか。学びを進めるにつれて、『ああ、だからダメだったのか』『こうすればいいのか』といった様々な気づきを得ていきました。何よりも大きな学びだったのが『対話』の重要性です。

まるで、自分に欠けていたパズルのピースが見つかっていくような感覚で、すごく刺激的で面白かったですね。自分がかつて組織変革で失敗した理由を、整理して話せるようになったのは、この学びのおかげです。それと、30代の頃のチームは、目標に向かいそこかしこで対話が生まれていたから一体感があったんだ、というのも理解できました」

CEEP:Engagement Run!Academyが提供する実践認定プログラム

「自分たちってすごいんだ」に気づいてほしい

パズルのピースを手に入れた吉田さんは、2026年4月から東京計器パワーシステムでのエンゲージメント活動を本格始動させます。今はサーベイ結果をもとに、自分たちの組織状態を知る段階。その先に目指しているのは、「自分たちの仕事にもっと誇り、やりがいを持てるようにすること」です。

「弊社は、ダムの開閉や船舶の荷役装置などで使われる油圧ユニットを製造しています。例えば、黒部ダムの開閉システムで使われているのも弊社のものです。数百トンもの水量に耐えるゲートを閉めるには、相当な技術力が求められます。それを実現しているのはすごいことだし、もっと誇りに思っていい。

ただ、社内にいると自分たちの仕事が“当たり前”になってしまい、みんながそのすごさを感じにくくなってしまう。自分たちの仕事にもっと誇りを持てるようになれば、さらに活き活きと働けるようになる。今はそのために何ができるか、メンバーと対話を重ねながら考えているところです」

黒部ダム
黒部ダム

自分の幸せも、周りの幸せも欲張っていい

最高のチームを体験した30代、挫折と身体の変化を経験した40代。そして、正解は自分の中だけにあるのではないと知り、新たなスタートを切った50代。そんな吉田さんが今、大切にしているキーワードが「欲張り」です。

「欲張りって、日本人はあまりよくないって考えがちですけど、そんなことはないと思うんです。義足になってこの先の人生を考えたとき、仕事も、家族も、趣味も、全部満足いくように時間を使おうと決めました。どれかに偏っていたら、絶対に後悔する。ライフもワークも全部欲張る。だから、大好きな趣味にも打ち込みながら、この会社で周りのみんなが『仕事への誇り』をもっと感じられるように、どんどん欲張っていきたいなって」

最後に、同じように組織やチームづくりに悩む人たちに向けて、吉田さんは瞳を輝かせながら、力強くこう締めくくりました。

「チームや組織と向き合っていると、自分を犠牲にしないといけないって思いがちなんです。でも、そうじゃなくって、欲張って、自分も周りの幸せも追い求めればいい。遠慮せず、自己犠牲になるわけでもなく、しっかり欲張っていこうよって。

何かと萎縮してしまうような風潮がある今だからこそ、半径5mの範囲で、自分の幸せも周りの人の幸せも欲張ったって誰も文句言わないでしょう。皆さんもリアルな世界でどんどん欲張って、動き回りながら幸せを広げていってほしいと思います。私も、もっと欲張りながら、対話をしながら、みんなが幸せになれるような、チームづくりを続けていきますよ」


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