成功のカギは「自分(たち)ゴト化」。ホーユーが実践、モデルチームによる自ら考え、動く風土づくり

2018年に新卒入社。総合研究所でパッケージや容器の開発、アレルギーの基礎研究を行う。2024年、人事課へ異動。組織開発、DE&I推進、人事システム運用を担当している。

2017年に新卒入社。総合研究所で毛髪研究などを行う。2025年3月、経営企画課に異動。管理会計や新規事業創出プログラム「コノユビトマレ」の運営業務を担っている。
組織が大きくなればなるほど、トップの考えや組織のビジョンを全体が理解し、日々の業務と繋げることは難しくなります。そのため、大企業では、資本や人材が豊富な一方で、風土を変えることは簡単ではありません。
ヘアカラーや頭髪化粧品の製造・販売を中心とする従業員1000名超の大手メーカーであるホーユー株式会社では、社内で掲げる「挑戦を褒め合う風土の醸成」のために、初めて職場の限定的なチームによるモデルチーム活動を実施。約150ある課の中から7チームが手を挙げ、それぞれの課題を考え、チームづくりに取り組みました。
4カ月間の活動の結果、参加した78%の社員が「チームの良い変化を感じた」と回答。プログラムの具体的な内容と、運営時の工夫を、事務局のお二人に聞きました。
※取材時(2025年11月)の部署・役職になります。
「挑戦を褒め合う風土の醸成」を目的にモデルチーム活動を実施
—今回が初めてのモデルチーム活動だと伺いました。これまでは、どのような組織づくりを行ってきたのでしょうか。
岡本:イキイキ・ワクワクと働ける職場を目指して、以前よりWevoxのエンゲージメントサーベイと、管理職層に向けたエンゲージメント研修は実施してきました。また、エンゲージメントに関する資料提供を全社的に行ってきましたが、あくまで一方通行。全職層を巻き込んだ双方向型の活動は今回が初めてです。
—モデルチーム活動の概要を教えてください。
岡本:今年3月に手挙げ式で募集を開始し、意欲を見せてくれた7チームを対象に5月から約4カ月間、活動を行いました。
チームは課単位で、1チーム平均7人。モデルチーム活動にあたっては課長をリーダーとし、もう一人、課員から推進メンバーを出してもらい、この2人が先頭に立って活動を進めていく形式を取りました。また、私たちはモデルチーム活動を「We る」と名付けています。
—「We る」?
岡本:「自分たちの意志でやってみよう」という意味を込めた「Will(意志)」、「自分たちで活動を回していこう」という意味を込めた「Wheel(車輪)」、そして弊社の「イキイキ・ワクワクビジョン2030」でキーワードとして掲げられている「We」の3つをかけて「We る」という名前にしました。

—たくさんの思いが込められた名前なのですね。どのような背景や課題感をもとに、モデルチーム活動「We る」を始めることになったのでしょうか。
岡本:弊社で定めている「社員彩りビジョン」の重要課題として「挑戦を褒め合う風土の醸成」が掲げられています。私たちが取り扱っているヘアカラーの分野はお客様に対する安全・安心が重視される商品カテゴリーであることもあり、大胆な挑戦よりも堅実な方法を選びがちな空気感があることが長らくの課題でした。
挑戦する組織になるためには、まず社内で挑戦を促進するコミュニケーションをする必要があります。良いコミュニケーションを取れるチームをつくるために、「We る」を実施する運びとなりました。
—4カ月間のプログラムの流れは?

岡本:参加する7チームにはキックオフまでの事前準備として、リーダー・推進メンバー間で課題を話し合ってくることと、Wevoxのエンゲージメントサーベイを実施することをお願いしました。
キックオフミーティングでは、Wevoxの講師の方に「エンゲージメントの基本」「エンゲージメント活動に臨むにあたっての主体性と共同感覚のスキル」についてお話をしていただきました。その後、事前に話し合ってきてもらったチーム課題について、他のチームとも共有してもらいました。
課題を解決するための活動は、各チームがより良いチームとなるために取り組みたいことを優先して各チームで設定してもらい、キックオフから1カ月後と2カ月後に相談会を実施。活動の進捗を7チームで共有し、講師の方からフィードバックをいただきました。2回目の相談会の後、追加のフォローが必要だと判断し、チームごとに個別の相談会を行いました。
その後、再度サーベイを行い、最終報告会を実施。各チーム、用意してきたスライドをもとに、活動成果を報告してもらい、プログラムは終了です。最終報告会のプレゼンテーションは当初3~5スライドほどを想定してテンプレートを作っていたのですが、たくさんのチームが想いの詰まった大作のプレゼンテーションを持ってきてくださり、胸が熱くなりました。



7チーム中4チームが「やりがい」をセンターピンに
—各チームはどのような課題を設定したのでしょうか。
岡本:サーベイの小項目の中から最も改善したい項目を選んでもらい、それをチームのセンターピンに設定してもらいました。7チーム中4チームが「やりがい」をセンターピンに指定。そのほか、「ストレス反応」「部署間での協力」などが課題に挙がりました。
—センターピンの改善に向けて、どんな取り組みを?
岡本:チームによって多様な活動が生まれましたね。チーム内でメンバー同士の1on1の機会を作り、対話やコミュニケーション機会を増やしたチームもありましたし、業務を依頼するときや受けるときに、背景まで踏み込んで伝えたり聞いたりすることで、意味や意義を理解してやりがいが感じられるようにしたチームもありました。他にも、弊社はフリーアドレスの部門があるのですが、あえてチームで固まって仕事をすることでコミュニケーションを促進するとか。
—事務局として、プログラムを運営する上で工夫した点は?
橋本:キックオフまでの期間に、いろいろな仕掛けを施してプログラムの設計ができたと思います。例えば、Wevoxチームが提供しているワークシートのフォーマットを、弊社に合うように一つずつ修正してブラッシュアップしていきました。
また、キックオフ前に各チームの課長に15分程度のヒアリングを実施。事前にチームの困りごとを把握するなど、入念な準備を行いました。
岡本:それから、それぞれのチームで活動にかかる時間を最小限にすることも意識しました。今回のモデルチーム活動は弊社では初の試みで、社員の多くは「何をするのかよく分からない」「どれだけ大変なのかも見えない」という不安や懸念を感じていたと思います。
参加するみなさんの負担をなるべく減らしながらも、一定の成果を持ち帰っていただくにはどうすればいいのか。その点を事務局で練りながら、プログラムを設計しました。
—一方で、苦労した点もあったのでしょうか。
橋本:キックオフ後の伴走期間は、正直もう少しチームのみなさんに貢献できることがあった気がしています。各チームのメンバーが自分たちで課題を設定し、自分たちでそれに取り組むことが重要だということもあり、事務局がどの程度アクションするべきか、さじ加減が難しかったです。
岡本:私たちが接するのは、課長と推進メンバーの2人が中心でした。他のメンバーの姿はなかなか見えてこないため、活動があまりうまくいっていないチームに対して、どのような働きかけをしたらよいかという点や事務局としてどのようなスタンスでいるべきかについては最後まで悩み続けていましたね。
参加者の約8割が良い変化を実感
—4カ月間の活動によって、ポジティブな変化は生まれたのでしょうか。
岡本:正直なところ、活動の成果はチームによって差が出た部分があったかなと思います。めちゃくちゃうまくいったチームもあれば、もう一歩先まで取り組んでほしかったチーム、残念ながら時間が足りなかったチームもありました。
それでも、活動終了後のアンケートでは、参加した78%の社員が「チームの良い変化を感じた」と回答いただけました。「質問や相談がしやすくなった」「メンバー同士でのサポートやフォローをする(してもらう)機会が増えた」などの意見が寄せられました。全体としては概ね満足度は高く、ここから次の活動につなげてゆくための手ごたえを感じました。
—振り返ってみて、成功のポイントはどこにあったと考えていますか?
岡本:各チームがこの活動を自分(たち)ゴト化してくださった点だと考えています。We るに自ら手を挙げ、自分たちでどうありたいかを考え、自分たちでできる行動をしていった。こうして、各チームが自ら取り組みをしてくれたからこそ、うまく行ったのだと思います。
我々としても、各チームがより良いチームとなることを目指していたので、事務局側の目標である「挑戦」という言葉は出さないようにしていました。
—「挑戦を褒め合う風土の醸成」が会社の課題だったわけですよね。なぜ「挑戦」を前面に出さなかったのでしょうか。
岡本:「挑戦を促進するコミュニケーションを取れるようになる」ことは当然、中長期的な目標ではあります。しかし、この4カ月間は「より良いチームをつくるためのきっかけをつかんでもらう」ことをそれぞれのチームの目標に設定しました。
「挑戦」をキーワードとするべきかどうかについて、事務局内で議論を重ねた結果、事務局の目的よりも、チームの皆さんの問題に思っていることを重要視しようという結論に至りました。「これを改善したい!」と自分たちが腹落ちした課題に取り組んでもらうのがベストではないかと。
橋本:私は、挑戦を褒め合う風土の醸成が目的の施策なのだから「挑戦する風土」の項目を一律でセンターピンに設定すべきではないか、と事務局のディスカッションの場で主張しました。
実際に活動が始まってみると、7チームもあるので、それぞれ状況は違います。そもそも業務が忙しく、みんなで話し合う場を持つことが難しいチームもありました。それに、若手メンバーが多く、仕事の目的や意義をまだ明確に見出せていないチームもありました。それぞれに色々な課題があるのだなと。
結果的に一律で課題に設定しなかったのは良かったと思っています。それぞれのチームが自分たちの課題を解決していければ、自然と「挑戦を褒め合う風土の醸成」にも結びついていくのだと感じました。

—モデルチーム活動の前後で、エンゲージメントスコアの改善は見られたのでしょうか。
岡本:センターピンのスコアは7チーム中5チームが向上。そのうち2チームは10ポイント以上も改善が見られました。
また、センターピンに指定した小項目に加え、「挑戦する風土」の項目が13ポイントも上がったチームもありました。自分たちから動いてみる。自分たちでできることを始めてみる。そんな意識をもつようになったことで、自然と挑戦をするのだという感覚に変わっていったのだと思います。
—最後に、今後の展望をお聞かせください。2期生の募集も行うのでしょうか。
岡本:2026年の春頃から2期生の募集を開始し、1期生のようなサイクルで進めていく予定です。初回の反省を生かし、より良い運営をしていきたいと思っています。
初めの段階で、活動内容のイメージを持てるようにお伝えしてゆくことは確実に改善できる点です。より良いチームづくりのきっかけをつかんでもらえるよう、今後も事務局として精一杯サポートしていきたいです。2期生の運営においても、試行錯誤を繰り返しながら、良き伴走者になれるよう努力していきます。
また、今回の「We る」の活動を通して「We(自分たち)」という言葉の重要性を改めて実感しました。中長期的には「We」を全社に浸透させ、自分たちから挑戦する風土づくりに携わっていきたいですね。
橋本:今回は初めての取り組みだったため、意欲がとても高いチームにご参加いただきました。次回以降は、イノベーターのようなチームだけではなく、より幅広いチームに参加してもらいたいと思っています。
そのために、募集形式を少し変更する予定です。今回はリーダー(課長)だけに募集案内を出していたのですが、次回は全社員に広報し、課のメンバーからも「We るに参加したい」とリーダーに声を上げられる仕組みにしていきたいです。









