
【Teamwork Sessionレポート】“挑戦を楽しむ”社員の想いを応援したい!カゴメ人事部が語る、組織風土づくりへのチャレンジ

大学院修了後、カゴメ株式会社に研究系総合職として入社。2年間、食品安全研究の仕事に携わったのち、人事部へ。人事部では新卒採用・中途採用を5年間担当。1年間の産休・育休を経て、2021年から主に人材育成・組織風土開発を担当し、「よりよいチームづくりのための対話実践プログラム」「キャリア採用者を対象としたオンボーディング」「ダイバーシティ推進」等の実務を推進している。
Wevoxの活用事例を学び合うユーザー参加型イベント「Teamwork Session」。今回ご登壇いただくのはカゴメ株式会社人事部の大原麻友美さんです。2020年にWevoxの導入を開始した同社における組織風土づくりとエンゲージメント向上活動について、実際の事例を交えながら詳細をお話いただきました。
本日のテーマは「“挑戦を楽しむ”社員の想いを応援したい!カゴメ人事部が語る、組織風土づくりへのチャレンジ」です。どうぞよろしくお願いいたします。
カゴメ株式会社人事部の大原です。人事部は複数の業務チームで活動をしています。私はその中の教育チームに所属し、エンゲージメント関連やダイバーシティ推進関連など、主に組織風土に関する仕事を行っています。キャリアとしては2013年に新卒で入社し、最初は微生物を制御する研究に取り組んでいました。その後人事に異動し、採用チームでの業務経験を経て今に至ります。
続いてカゴメのご紹介です。1899年創業のカゴメは、全国に事業所があり、海外にも連結子会社があります。Wevoxの対象は、カゴメの社員、嘱託社員、契約社員、協力社員(パートタイマー)、そして海外も含め社外に出向しているメンバーを含めた約2200人です。
カゴメの企業理念は「感謝、自然、開かれた企業」、そしてブランドステートメントは「自然を、おいしく、楽しく。」です。企業理念は2000年、ブランドステートメントは2003年に発表されました。カゴメの創業から見ると最近の出来事に感じられますが、私の実感としては、企業理念・ブランドステートメント共に社内にかなり浸透していると思っています。カゴメが創業以来大切にしてきた価値観を改めて言語化したものと感じており、この企業理念とブランドステートメントに共感して入社を決めた人が多いということも背景にあるかもしれません。
続いてカゴメの事業のご紹介です。野菜ジュースやトマトケチャップ等の商品の他にも、農事業と呼ばれる、生のトマトやベビーリーフそのまま販売している商品もあります。また、ホームセンターでも販売しているトマトの苗やトマトを育てる専用の土、大きい袋に入ったトマトソースといった業務用商品など幅広く展開しており、最近は国際事業の売上構成比も伸びてきています。
先ほどカゴメの創業は1899年とお話しましたが、トマトの芽が発芽した日を創業の日と定めています。カゴメは最初から製造をやっていたわけではなく、最初は農家から始まった会社です。当時トマトや白菜といった西洋野菜は、全く馴染みがなく、家庭では食べられていない野菜だったそうですが、創業者の蟹江一太郎が軍隊時代の上官の言葉をヒントに、西洋野菜の栽培を始めました。しかしながら、トマトだけが売れ残ったため、それをなんとか食べてもらおうということで、トマトソースに作り替え、トマトソースの使い方や食べ方も一緒に普及させていきました。農からスタートしたという部分も、社内では共感のポイントとなっています。
カゴメでは、農から価値を作ること、そのためのバリューチェーンと企業価値の向上をメッセージとして掲げています。2024年版の統合報告書では、「カゴメの人」に関する言及が増えているのも特徴の一つです。
働きがいの見える化を追求するうちに辿り着いたエンゲージメントの概念
ここからは、社内におけるエンゲージメント関連活動の位置付けについてのお話です。カゴメでは2014年頃から働き方の改革に着手しています。2016年にはダイバーシティ委員会を発足して、働きやすく、働きがいのある会社を目指して今も歩みを続けている最中です。2016年当時のダイバーシティ委員会では、多様な視点が生かされ、機能し、組織パフォーマンスの最大化に貢献することを目標に掲げていました。当時の重点テーマは女性の活躍でしたが、今のエンゲージメント活動とかなり近しいものだと感じます。ダイバーシティ委員会はどちらかというと風土を育てるためのものでしたが、風土だけではなく制度もしっかり充実させていこうということで、時間・地域・場所、キャリア思考や個人の様々な価値観に柔軟に対応できるように、2017年頃からはテレワークやフレックスタイムなどの制度を次々と導入していきました。このような流れを経て、働きがいの見える化のため、2020年からはエンゲージメントサーベイを導入しています。働きがいはどう見える化ができるのだろうかと考え、エンゲージメントという概念にたどり着きました。その後、2021年からは心理的安全性の概念に注目し、これは現在も継続しています。翌年には具体的に心理的安全性をチームに浸透させるための取り組みを行っており、この活動には私も関わっています。
弊社がエンゲージメントや心理的安全性の概念を大切にしている理由には、カゴメのトップのメッセージが関係しています。弊社には、四半期に一度出している「カゴメ通信」という社内報があり、その通信の中で、カゴメの持続的成長に必要となるイノベーションを創出するためには心理的安全性が必要だというメッセージを社長の山口が繰り返し発信をしています。
また、統合報告書では、測定したエンゲージメントのスコアや心理的安全性のスコアを社外公表しています。心理的安全性向上策として、組織向け、役員向け、管理職向け、全従業員向けに展開している施策も掲載しています。

3つのプログラムでよりよいチームづくりを推進
今回は、この心理的安全性の向上策の中から、組織向けの「よりよいチームづくりのための対話実践プログラム」と、全従業員向けの「ダイバーシティ委員会」、ダイバーシティに関する活動をご紹介します。ちなみに、どちらも私が事務局を務めています。
まず1つ目は、「よりよいチーム作りのための対話実践プログラム」です。社内では頭文字を取ってYTJと呼んでいます。それぞれのプログラムにチーム単位で参加をし、学んだことをチームリーダーがチームの中で実践することを前提としたプログラムです。リーダーと言っても、管理職とか職性上のリーダーでなければいけないということはなく、プログラムに参加するリーダーを各チームで決めることができます。プログラムは上級・中級・初級の3種類で展開しており、それぞれのチームの課題に合わせて選んでもらえるものにしています。
初級と中級では、リーダーはワークショップに参加し、学んだことを職場で実践した後、再度ワークショップに参加するという流れで行っています。ただインプットして終わりではなく、確実に実践までできるようにしている点が特徴です。カゴメのメンバーはしっかり実践してくれる方が多いので、実践率は100%に近い状態です。
YTJ上級のプログラムではアトラエさんのプログラムも活用し、初級・中級のように決まったフレームだけではなく、リーダーが自分でアレンジして職場に持ち帰れるものをイメージしています。まずリーダーにEngagement Run! Academyに参加してもらい、職場で使えそうだなと思った内容を職場で実践いただき、さらに定期的にYTJ参加のリーダー同士で集まって話し合うというサイクルで実施しています。

2022年の下期から半年に1回のペースでYTJを実施したところ、79チームがエントリーして実践してくれたので、全社の約3割の組織がYTJに参加したことになります。アンケートを取ると、9割ほどの方が他の方にも勧めたいと言ってくださって、「気軽な対話ができて良かった」「相互理解がコミュニケーションに繋がった」などポジティブな意見をいただきました。最初は、対話って何の役に立つのだろう、仕事にとって意味があるのかな?といった疑問からスタートしたチームでも、やってみるとお互いの違いを認めることが仕事にも役立つという実感を持ってもらえたようです。また、プログラム参加チームで任意にエンゲージメントサーベイを実施してみたこともあるのですが、エンゲージメントスコアを上げましょうとは伝えていないにも関わらず、支援や人間関係の項目が上昇したので、エンゲージメントにも効果があることが実感できました。
挑戦を楽しむ風土を通じて心理的安全性の定着を目指す
続いて、ダイバーシティ委員会のご紹介です。2016年に発足したこの委員会は、全国の組織に対して任命されたダイバーシティ委員が集まったもので、1期あたり100〜140名ぐらいの規模です。ダイバーシティの推進は経営課題だと捉えているので、社長の山口がダイバーシティ委員長を務めているのが特徴の一つとなっています。元々は多様性の理解と尊重をベースにした活動でしたが、9期目を迎えた頃には、多様な人材が生き生きと働いてそれが組織のためになることはエンゲージメントと一緒だという気付きを得ました。そのため、最近ではエンゲージメントと連動した活動を意識して行っています。
ダイバーシティ委員会では2021年から心理的安全性をテーマに掲げています。心理的安全性がカゴメの文化として定着することをゴールに置き、今年はどんなことが必要かということを行動変容のステージモデルに当てはめながら考えて、毎年のテーマを作っています。今年は行動するフェーズと位置づけて、「挑戦を楽しもう!〜心理的安全性を当たり前に〜」というテーマのもと、活動しています。振り返ってみると、2021年頃は心理的安全性という言葉が浸透していなくて、言葉を知っている人たちの中でも「ちょっとぬるい組織ってことですよね」といったような誤解がありました。そこから、どういう行動が必要かを徐々にインプットしていった結果、今は自分自身が心理的安全性に向けてどう行動するかを考えてもらえるような時期に到達したと思っています。
今年の活動では、挑戦を楽しむために必要なことを4つの要素に分け、この活動要素で好きにやってもらうよう全事業所に伝えました。その結果、各事業所のダイバーシティ委員が独自の裁量で「自分達の事業所ではこういうことやってみたいな」ということを自由に考え、活動しています。
事務局から紹介したツールを活用してもらえることもありました。今年はアトラエさんのバリューズカードを紹介してみたところ、今カゴメの中でかなり流行っています。バリューズカードにはオンライン版もあるのですが、いろんな事業所から「対面版をやりたいからカードを貸して」という問い合わせをたくさん受けていて、カードゲームのように楽しんでもらえています。

海外の工場で働く方からは、作業音も大きく1分単位で仕事をしなければいけない忙しさの中、改めて膝をつき合わせてカードゲームをやることで初めてお互いのことを知れたという意見もいただけました。カゴメ独自のシステムの「サンクスバッジシステム」は、元々営業本部だけで使っていたものを全社に展開したもので、ダイバーシティ委員会で広めた結果、今では1000名ほどの方が活用しています。
また、自由に好きなことやっていいですよと伝えたところ、事業所から色々な活動の報告がありました。例えば、弊社ではメールのシステムにOutlookを使っていますが、アイコンがデフォルトのままではメールがしづらいという声があったので、笑顔の写真にしましょうという働きかけがありました。あとは、週に2回「ざっくばらんタイム」というオンライン会議をつなぎっぱなしにする時間を設定したり、ミーティング中の作法を決めて、発言の一言目に「そうですね」とワンクッションを入れてみたりなど、様々な工夫が行われています。
活動を続けることで見え始めたポジティブな変化
「より良いチーム作りのための対話実践プログラム(YTJ)」と、ダイバーシティ委員会という2つの活動を改めて整理してみると、両方の活動で心理的安全性をベースとしながらも、呼びかけ方法が違うなと思っています。YTJのプログラムでは「どうすれば組織が成果を出せるのかという文脈で参加してみませんか」と私から案内している一方、ダイバーシティ委員会では、「どうすれば個人で仕事を楽しむことができるか」をボトムアップで呼びかけています。挑戦とエンゲージメントが腹落ちし、自分ごとにできる文脈は人によって違っていて、色々な方向から文脈を作っていく必要があるのだろうなと考えています。
こういった一連の活動を通じて、いくつか変化を感じています。ひとつは、YTJのプログラムは半年で終わりますが、その後もチームづくり活動が自走しているケースが見られるようになったことです。
例えば、定例のチームミーティングでのアイスブレイクが習慣化したり、エンゲージメント向上に取り組んでいらっしゃる他社さんと繋がって、人事部が入らなくても部門同士での交流会が実現するようになったり、上司から若手、若手から上司に対してこういうチーム作りやってみたいという提案が行われるようになったケースもありました。
また、最近では実施した活動などをメールで報告してもらえることが増えていますし、実際、従業員に話を聞いてみると、「人事ってちょっと堅いイメージだったけど、だんだん変わってきたと感じます」なんてことも言ってもらえました。まずはやってみようという姿勢で従業員を応援し続けた結果、そのスタンスが伝わったのかもと感じています。
また、私自身にも変化があって、社内の自部署のメンバーから「Willが強くなった」と言われることがありました。言われるまで自覚はなかったのですが、もしかしたらエンゲージメントについて深く考えているうちに、上手く自分の意思を言語化して伝え、自己開示できるようになったのかもしれません。加えて、自分や会社の目的を意識するようになったからか、それとも心理的安全性と言い続けているからか、自分の無知や無能をさらけ出すのがあまり怖くなくなりましたし、自分と他人の意見が異なっていてもいいんだと考え、自分の意見も他人の意見も同じように扱えるようになりました。

最後に、今後の展望についてです。これまで、心理的安全性は大事だということをトップダウンで伝え続けることで、ボトムアップでのプログラム、組織開発のプログラムについてはある程度できてきたと思っています。ですので、今はエンゲージメント向上のために今後何が必要かをもう一度整理して、様々なアプローチを試みるフェーズに来ているのかもしれないと考えています。羅列しているだけで、まだまだ課題化もできてないところではありますが、業績とエンゲージメントの関係を研究できないかなとか、成功事例の共有と展開についてもっとできることがあるのではないかなとか、そんなことをイメージしています。
ーありがとうございました。最後に皆さんにメッセージをお願いします。
私自身もできていないことがたくさんありますし、まだまだ認識の齟齬を感じることがあります。エンゲージメントに関する課題は技術的課題ではなく適応課題なので、しっかりとほぐしてから解決するしかありません。まずはできそうなことから着手していくと、面白いことをやってるなと思ってもらえて、集まってきてくれる人が増えていくこともあると思います。まだまだ道半ばですが、皆さんもそれぞれの場所で頑張られているかと思いますので、引き続き一緒に頑張っていきましょう。ありがとうございました。
<編集部コメント>
挑戦を楽しむ社員の方を応援する姿勢や、大原さんの気持ちがとてもよく伝わるプレゼンでした。自社でも実施できそうな取り組みなどがあれば、積極的に取り入れてみてください!






