ひとつの原体験から生まれた「想い」が起点に。全社ではなく、事業部単体にこだわりエンゲージメント活動に取り組む理由

ひとつの原体験から生まれた「想い」が起点に。全社ではなく、事業部単体にこだわりエンゲージメント活動に取り組む理由

クラシエ株式会社
佐藤 彩香(さとう あやか)氏
佐藤 彩香(さとう あやか)氏
クラシエ株式会社
薬品カンパニー ヘルスケア事業部 ヘルスケア事業企画部 係長

2017年に新卒入社。支店にて4年間、OTC医薬品の営業を担当し、2021年に現部署へ。新入社員向け研修の企画・運営等を担当するとともに、2023年からはエンゲージメント活動の推進担当としてWevoxの導入や活用を牽引している。

彌永 智徳(やなが とものり)氏
彌永 智徳(やなが とものり)氏
クラシエ株式会社
薬品カンパニー ヘルスケア事業部 カンポフルライフ部 課長

2011年クラシエ製薬(当時)にキャリア入社。医薬事業部にて医療用医薬品の営業や企画を担当したのち、クラシエグループのビジョン浸透を担うクラシエホールディングス(当時)CRAZY創造部へ異動、その後クラシエ製薬(当時)経営企画部を経てヘルスケア事業部へ。2025年12月までヘルスケア事業企画部の課長として佐藤氏とともにエンゲージメント活動を推進してきた。2026年1月より現職。

職場から経営層に提案してエンゲージメント活動を始める際、経営層とのコミュニケーションや承認プロセスに悩むケースは少なくありません。

クラシエ株式会社 薬品カンパニー ヘルスケア事業部は、1人の社員の発案から、経営層や各部門との調整を経てWevoxの導入とエンゲージメント活動に事業部単体で取り組んでいます。そのプロセスや事業部内への浸透施策について、導入と取り組みを牽引した2名に伺いました。
※取材時(2026年3月)の部署・役職になります。

「365日前向きに働くのは難しい」。営業時代の原体験とエンゲージメントとの出会い


—始めに、ヘルスケア事業部 ヘルスケア事業企画部の業務内容について教えてください。

彌永: ヘルスケア事業部は、漢方薬を中心としたOTC医薬品を取り扱う事業部です。その事業部内で、ヘルスケア事業企画部は主に事業の戦略立案・計画策定から始まるPDCAサイクルの推進及び管理、それに伴ったリソース構築・運用を主業務としています。その為、人材育成や組織風土醸成に大きく関わる部署でもあります。

—どのような経緯からエンゲージメント活動を始められたのでしょうか。

佐藤: 今回の取り組みの原点は、私の営業時代の個人的な経験にあります。入社後4年間、OTC医薬品の営業を担当していましたが、自分自身、仕事への取り組み姿勢にどうしてもムラや波があると感じていました。そしてそれは、自分に限ったことではないような気もしていました。

—どのような時にその波を感じていたのでしょうか。

佐藤: 例えば、コロナ禍で風邪薬が全く売れなかった時期がありました。どんなに頑張っても数字に繋がらないと、どうしてもやる気が削がれてしまいます。また、上司や同僚の異動、担当企業の変更など自身を取り巻く環境は日々変化するので、楽しく働ける時もあれば、反対に辛さを感じる時もありました。

市場や働く環境の変化は当然起こるものですが、それらに影響されて個人の意欲も上下するということが組織の様々な場所で起こってしまう。他方で、楽しく活き活きと働けている時は、自然と成果が出て、お客様への貢献も実感できる。この良い循環こそが理想の姿だと思う一方で、365日、前向きに働くことの難しさを痛感していました。

—その原体験が、今の活動に繋がっているのですね。

佐藤: そうです。2021年に現部署に異動となり、組織の改善提案もできるこの部署で自分は何をしたいか?と考えた時に改めて認識したのが、「みんなで前向きに活き活きと働きたい」という想いでした。そして、そのためにできることを考える過程で出会ったのが、「エンゲージメント」という言葉とその状態を可視化するサーベイ「Wevox」の存在です。まずは彌永さんに、事業部内にサーベイを導入し、エンゲージメントを高める取り組みをしていきたいと提案しました。これが2023年のことです。

上司の立場から、エンゲージメント活動を後押しした3つの理由


—佐藤さんから提案を受けた際、上司である彌永さんはどのように感じられましたか。

彌永: 私はマネージャーとして佐藤さんの提案を検討する立場にありましたが、提案の背景などを詳しく聞いて「これはやるべきだ」と確信しました。理由は大きく3つあります。

1つ目は、佐藤さん自身が現場での原体験として得てきた「みんなもっと躍動的に仕事ができるはずだ」という肌感覚と熱い想いです。この実体験に基づく動機が何より重要であり、起点になると感じました。

2つ目は、クラシエが掲げる「CRAZY KRACIE」というビジョンとの合致です。このビジョンは社員が躍動的に活動し、良い化学反応が起こっている状態を指しますが、まさにエンゲージメントが高まっている状態に近いと解釈しました。

—会社の目指す方向性とも一致していたのですね。3つ目の理由は何でしょうか。

彌永: 社会背景です。その頃ちょうどギャラップ社が公開した2022年度の調査データにおいて、日本の「エンゲージメントのある社員(※)」の割合はわずか5%で、データが公表された125カ国の中で最低値であるという結果が出たところでした。エンゲージメントはヘルスケア事業部だけの課題ではなく、もはや日本全体の喫緊の課題であり、そこにいち早く想いを持ってアクションをしていくことは、大変意義のあることだと感じました。そこで、佐藤さんを中心に、組織長や部門上長にも「ヘルスケア事業部として絶対に有意義なことなのでやらせてください」と交渉したところ、スムーズに賛同を得ることができました。

(※「エンゲージメントのある社員」の割合の判定基準は、ギャラップ社独自の質問票(12項目)に対する回答から算出されたもの。出典元:Gallup, "State of the Global Workplace: 2023 Report")

佐藤: ヘルスケア事業部は180〜190名ほどの規模ですが、組織長も部門上長もメンバー1人ひとりのことをよく把握し、現場や個々のメンバーに様々な課題や悩みがあることを肌感覚で知っているので、共感を得られたのではないかと思います。

全社ではなく、事業部単体で取り組むことにこだわった理由


—Wevoxの導入やエンゲージメント活動を始めるにあたり、苦労された点はありましたか。

佐藤: 全社を管轄するコーポレート部門から、「同じように会社全体でエンゲージメントを高める取り組みを検討しているので、一緒にやらないか」と打診がありました。私たちとしては事業部単体で取り組みたかったので、その調整に時間を要しました。

—事業部単体での取り組みにこだわったのはなぜでしょうか。

佐藤: 課題感の起点がヘルスケア事業部にあったからです。クラシエは各カンパニーや事業部によって、扱う商材や携わる市場、営業スタイルなどが異なります。コロナ禍においても、売上への影響、その程度やタイミング、営業活動の状況などは異なる部分も多かったですが、それらは平常時も同様です。そのような違いの中で、実態とメンバーの回答を結び付けながら仮説検証を行うことは難しいと予想しました。こうした理由から、事業部の具体的な課題に対して具体的に手を打っていくには、事業部単体で取り組むのが一番だと考えました。ゆくゆくは全社で、各事業部に合った形で展開していけたら良いと個人的には思います。

彌永: 全社を管轄する部署にて広い視点で取り組むことも大切ですが、今回のような現場起点の取り組みとなると、管轄事業の中でシームレスにスピーディに現状を把握して課題の根っこを見つけ、具体的なアクションを起こしていく必要があり、その為には現場により近い事業部単独で取り組む必要があるのではないかと考えました。こうした考えを説明し、最終的には理解してもらうことができました。

—経営層の承認はスムーズでしたか。

彌永: コーポレート部門との調整を終えた後にマネージャー層、経営層への答申を行いましたが、当然、「なぜヘルスケア事業部単体でやるのか?」「他の全社的な調査と何が違うのか?」という声は挙がりました。ただ、先述したような事業部単体で取り組む意図を説明したところ、納得してもらえました。

「現状を浮き彫りにしたい」。回答率95%以上を生み出した丁寧な浸透プロセス


—Wevox導入後は、どのような活動に取り組んでいますか。

佐藤: 2024年3月から月1回、サーベイを実施しています。当初は、まずは結果を分析してヘルスケア事業部の課題の根っこを見つけることを第一としていました。そして、分析結果をふまえて取るべき施策を決め、実行に移したのが2024年の夏頃からです。具体的には、支店メンバー向けの相互理解ワークショップと、部門長を対象としたチームづくりワークショップを実施しました。

—ではまず、Wevox導入当初、事業部内への浸透のためにどのような工夫をされましたか。

彌永: 「ティッピング・ポイント・リーダーシップ」(※)の考え方をもとに、全員に一気に働きかけるのではなく、まずは浸透の鍵を握る社員の理解を得ることから始めました。具体的には、各チームのマネジメントを担うマネージャー陣です。

※組織を動かす際に大きな影響力を持つ要素に資源を集中させることで、短期間かつ低コストで組織変革を実現する手法。

佐藤: 流れとしては、まず、本社のマネージャー陣の会議や、支店のマネージャー陣も参加する会議の場を借りて私から説明しました。その後、実際にサーベイを開始するタイミングで事業部全員を対象にオンライン説明会を実施し、目的や心構えなどを伝えました。

—説明の際にはどのような工夫をされましたか。

佐藤: なぜこの事業部で取り組むのか?ということと、エンゲージメントの重要性を理解してもらうことが最初の課題だと認識していたので、これらの説明を丁寧に行いました。

コーポレート部門や経営層に伝えたことを事業部でも共有し、また、「エンゲージメントとは何か?」「従業員満足度やモチベーションとはどのように異なるのか?」などについてもWevoxチームの資料などを活用しながら一つひとつ説明していきました。

—社員の方々に、心理的な抵抗感などはありませんでしたか。 

佐藤: やはり「回答が評価に繋がるのではないか」「回答を上司に見られるのではないか」といった不安を持つ人がいることが予測できたので、そこは丁寧にケアしました。

具体的には、まず、サーベイの目的はスコアを上げることではなく、事業部の課題の根っこを見つけることだということを伝え続けました。そして、個人の回答の閲覧権限は事務局の限られた人間のみに付与し、直属の上司は見られない設定にしました。

より良い組織になるためにまずは「現状を浮き彫りにする」という、事業部とメンバーのための調査であることを理解していただけたことが大きかったのか、導入以来、継続して95%以上の高い回答率を維持できています。

強い動機は、新たな取り組みを推し進めるアンカーになる

—エンゲージメント活動の立ち上げを振り返って、これから部門単位での活動に挑戦しようとしている方々へアドバイスをお願いします。

佐藤: 今回の取り組みを経て、経験に裏打ちされた想いは個人的ですが、だからこそ時に周囲を説得する際の大きな自信になると知りました。というのは、活動を推進し始めた時に自分の中で支えになっていたことが2つあります。

1つ目は、「楽しく活き活きと働けているときに、いい仕事ができている」という自分自身の原体験に基づいた「エンゲージメント活動は大切だ」という強い確信です。そして2つ目は、普段は違うものは「違う」と伝えてくれる上司たちが、エンゲージメントに取り組みたいという私の提案や想いに対して、自分の想定以上に共感してくれたことです。長年マネージャーとして働いてきた上司も、同じような課題感や想いをもっていると知ったことで「これは私だけの経験や課題ではない」という確信が原動力になりました。そういった自信が、コーポレート部門との調整や事業部内への説明の際に伝わったのかもしれません。

彌永: 新しいことを始める時は、起点となる動機がとても重要です。そして、その動機を信じて、引き続き感覚を大切にしながら、一方で冷静にデータドリブンを組み合わせてやっていけば、必ず何かしらの変化が起きてくる。エンゲージメント活動を推進できたのは、この二つに尽きるのではないかと思います。

強い動機があれば、どんな荒波にも耐えられるアンカー(錨)になります。今回は、佐藤さんの現場での肌感覚というアンカーになり得る強い動機がありました。そして毎月実施しているWevoxサーベイ結果・データを分析し、仮説検証していく。想いを起点にしっかりと方策を練りながら取り組んだことが事業部内の浸透につながったと感じています。

資料を一括ダウンロードする