4つの壁と「暗黙の条件」を知り、みんなに挑戦機会がひらかれる組織へ【DEIBイベントレポート】

4つの壁と「暗黙の条件」を知り、みんなに挑戦機会がひらかれる組織へ【DEIBイベントレポート】

2026年7月14日(火)、WevoxではDEIB(Diversity、Equity、Inclusion、Belonging)をテーマにしたワークショップ「DEIBは、組織をどう変えるのか」を開催しました。

本イベントでは、Wevoxが実施した「DEIB指標とエンゲージメントの関連分析」をもとに、前半はデータサイエンティストによる解説、後半は参加者同士で「挑戦機会がひらかれる組織」について考えるグループワークを行いました。

過去にもWevoxでは、DEIBを"自分ごと"として捉えることを目的に、参加者同士が他社の事例や取り組みをシェアする交流会を開催してきました。今回のイベントでは、さらに一歩踏み込み、DEIBを「多様性を増やすこと」だけではなく、誰に挑戦機会がひらかれているのかという組織構造の問いとして扱いました。

1. データが示したもの——女性管理職比率とエンゲージメントの関連

前半は、Wevox/R&Dの芝原より、上場企業の人的資本データとWevoxのエンゲージメントデータを企業単位で統合した分析結果を紹介しました。

分析から見えてきたポイントは、大きく3つです。

1つ目は、DEIB関連指標(女性管理職比率・男女の賃金格差・男性労働者の育児休業取得率)のうち、エンゲージメントと明確に関連していたのは女性管理職比率のみだったこと。
2つ目は、その関連が賃金や制度といった待遇面ではなく、「挑戦する風土」「事業への誇り」「経営への信頼」といった組織文化・経営の要素に表れていたこと。
3つ目は、提示されている業種・企業規模・平均年収・平均年齢・売上高成長率など企業属性での影響を統制※してもなお、この関連が3年間(2023〜2025年)一貫して確認されたことです。

※「統制」とは、比較したい要素以外の条件の違いが結果に与える影響を、統計的に取り除くこと

あわせて分析では、職位が上がるにつれて女性比率が下がっていく構造が、業種を問わず今も残っていることも示されました。意欲や力の問題ではなく、昇進のそれぞれの段階に、何かが「届きにくくなる場所」があるのかもしれない——このデータは、後半のワークで扱う「扉」の問いにもつながっていきます。

ここで大切なのは、「女性管理職比率を高めればエンゲージメントが上がる」と単純に結論づけることではありません。
この分析だけで因果関係を示すものではありませんが、女性管理職比率という指標が、「誰に対しても挑戦機会がひらかれている組織であるかどうか」を映す一つのシグナルになっている可能性は考えられます。

つまり、問いは「女性を増やそう」に閉じるものではありません。

むしろ、
自社では、挑戦機会が誰にひらかれているのか。
そして、誰の手前で止まっているのか。

その問いこそが、今回のワークショップの出発点でした。

▼分析の詳細は、芝原によるnote記事(前編・後編)をご覧ください。

2. 挑戦機会とは、昇進や抜擢だけではない

後半のグループワークでは、DEIBを「挑戦機会が、自社の中でどうひらかれているのか」という構造的な問いとして捉えました。

ここでいう「挑戦機会」とは、昇進や抜擢のような大きな機会だけを指すものではありません。

たとえば、新しいプロジェクトへの参加、重要な会議への同席、顧客との商談、改善提案を任されること、社内で発表する機会、他部門と協働する経験など。
日々の小さな経験の積み重ねも、本人の成長や次のキャリアにつながる大切な挑戦機会です。

ワークではまず、参加者一人ひとりが自社の中にある「成長や抜擢につながりやすい挑戦機会」を1つ選びました。スライドでも、新規プロジェクトへの抜擢、管理職登用、重要顧客の担当、全社横断プロジェクト、経営会議での発表、海外案件、新規事業提案、社内登壇などを例として示しました。

そのうえで、選んだ機会が社内でどうひらかれているのかを、4つの扉で見つめていきました。

  • 期待される:最初に「この人ならできそう」と名前が上がるのは誰か

  • 知らされる:その機会の情報を早く知れるのは誰か

  • 推される:会議や上司間で推薦されるのは誰か

  • 許される:失敗しても次の機会をもらえるのは誰か

挑戦機会は、突然やってくるように見えて、実はいくつもの扉を通っています。
どこかの扉が閉じると、意欲や力があっても、機会にたどり着けないことがあります。

3. ワークで見えてきた、挑戦機会の「暗黙の条件」

グループ対話では、「その挑戦機会を得るために、明文化されていない"暗黙の条件"は何か?」という問いを扱いました。

すると、どの会社にも、明文化されてはいないけれど確かに存在している条件があることが見えてきました。

参加者の皆さんからは、たとえば次のような声が挙がっています。

  • 「声が大きい人」が挑戦機会を得やすい

  • 出社しているかどうかなど、働き方が暗黙の条件になっている

  • 「任せやすい雰囲気」をまとっている人に機会が集まりやすい

  • すでに実績を出している人、あるいは実績を出しやすい職種の人にチャンスが偏りやすい

  • 空気を読んだり、周囲と調整できる人が選ばれやすい

これらは、必ずしも誰かが意図的につくった壁ではありません。

任せやすい人にお願いする。
経験者に頼る。
早く意思決定したいから、いつもの人に声をかける。
過去に実績がある人の名前が、自然と会議で上がる。

そうした日々の合理的な判断や善意の積み重ねが、結果として、挑戦機会の偏りを生み出していることもあります。

だからこそ、このテーマは「誰が悪いのか」を探す話ではありません。

個人を責めるのではなく、
「今、機会は誰にひらかれているだろう?」
「どこで止まりやすくなっているだろう?」
と、組織全体で問い続けること。

それが、DEIBを現場で考える第一歩なのかもしれません。

4. 「空気を読む」と「空気を読まない」のあいだで

今回のワークで、ひときわ印象的だった"ねじれ"がありました。

暗黙の条件を挙げるワークで、「空気を読んで調整できる人が挑戦機会を得やすい」という声が出る 一方、
「明日からできること」を考えるワークでは、「空気を読まずに、あえて違う意見を言ってみる」というアクションも挙がりました。

組織の中で機会を得るためには、空気を読むことが求められる。
けれど、組織を変えていくためには、空気を読まない一言が必要になる。

この矛盾のようで矛盾ではない両面性に、DEIBというテーマの奥行きが表れているように感じました。

ただし、「空気を読まずに発言しましょう」と言うだけでは、現実には難しさがあります。
空気を読んで黙ることは、本人にとって合理的な判断である場合もあるからです。発言したことで不利益を受けるかもしれない。評価が下がるかもしれない。面倒な人だと思われるかもしれない。そう感じる環境では、人は簡単には声を上げられません。

だからこそ、「違う意見を言う」という個人の勇気だけに委ねるのではなく、違う意見を受けとめ、歓迎できる文化を組織の側に育てていくことが欠かせません。

ここで手がかりになるのが、心理的安全性、自己効力感、そして組織効力感です。

心理的安全性とは、対人リスクを恐れずに発言できる場の状態。
自己効力感とは、「自分ならできそうだ」という感覚。
組織効力感とは、「このチームなら乗り越えられる」という集団としての感覚です。

  • 発言しても不利益を受けないという安心感がある

  •  自分の一言にも意味があると思える

  • この組織なら違いを受けとめて前に進めると思える

この3つが重なったとき、「空気を読まない発言」は、単なる勇気ではなく、組織を前に進める挑戦になります。

5. 誰かを変えるのではなく、"流れ"を変える

今回のワークでは、最後に「誰かを変えるのではなく、流れを変える」という問いを置きました。

「もっと手を挙げよう」
「もっと自信を持とう」
「もっと発信しよう」

もちろん、個人の一歩も大切です。
でも、それだけでは挑戦機会はひらかれていかないかもしれません。

変えられるのは、会議の問い、推薦の仕方、情報の出し方、失敗の扱い方です。
スライドでは、たとえば次のようなアクションを例として示しました。

  • アサイン会議で「候補者を3名出す。うち1名は普段名前が上がりにくい人にする」

  • 推薦時に「なぜその人か」だけでなく「他に可能性がある人はいないか」を問う

  • 1on1で「今後挑戦したいこと」を半年に1回ではなく、毎月聞く

  • 新規プロジェクトの募集を上司経由だけでなく、全員に見える形で出す

  • 失敗経験のある人を"リスク"ではなく"学習済みの人"として扱う

  • 評価会議で「声が大きい人が有利になっていないか」を確認する

どれも大きな制度変更ではありません。
けれど、こうした小さな問いや習慣の変化が、挑戦機会の流れを少しずつ変えていきます。

  • 最近、新しい役割をお願いしたのは誰だったか

  • その人を選んだ理由は何だったか

  •  同じ機会を、別の人にもひらけるとしたら、誰が思い浮かぶか

  •  その人に機会がひらかれていなかったとしたら、どの扉で止まっていたか

「誰に挑戦機会がひらいているか」は、組織文化を映し出す一つの鏡なのかもしれません。

6. 編集後記——明日、どの扉を少しだけ開きますか?

今回のワークショップを通じて浮かび上がったのは、挑戦機会をめぐる"暗黙の条件"は、どの組織にも、それぞれ違うかたちで存在しているということ。

DEIBは、女性管理職比率のような指標や制度に落とし込まれて語られることが多いテーマで、 もちろん、制度は大切な土台です。
しかし、それだけでは現場の腹落ちにはつながりません。

現場への浸透という意味で鍵になるのは、一人ひとりが「多様な人に挑戦機会がひらかれる組織」の担い手として、日々の問いや言葉かけを意識的に工夫していくことです。

「この機会、いつもと違う人に声をかけてみようか」
「その意見、もう少し聴かせて」
「今回は誰にとっての挑戦機会になるだろう」
「この人は本当に意欲がないのか、それとも機会がひらかれていないのか」

そんな小さな問いかけの積み重ねが、暗黙の条件を少しずつ書き換えていきます。

エンゲージメントは、スコアを眺めて終わるものではなく、日々の挑戦機会や対話の積み重ねによって育まれていくものです。

挑戦できる組織とは、挑戦機会が特定の人だけでなく、多くの人にひらかれている組織。
今回の場で生まれた気づきが、それぞれの組織での一言や問いかけにつながっていくことを願っています。

今後もWevoxチームでは、DEIB推進に取り組む皆さまの実践につながるイベントを開催していきます。

執筆:Wevoxカスタマーサクセス 須賀


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