
「組織成長のためにピラミッド型やめる?」− おかんがフラットな組織体制に変えたワケ
階級や上司・部下といったヒエラルキーを構築しないフラットな組織体制。ホラクラシーやティール組織と呼ばれるそうした組織体制は、2018年1月に発売された書籍「ティール組織」(英治出版)が大ヒットするなど、最近注目度を高めています。そんな中、法人向けぷち社食サービス「オフィスおかん」などを手がける株式会社おかんは、2018年5月にこれまでのピラミッド型の組織体制から、リーダーを置かないフラットな組織体制に変革を行ったそうです。その狙いや、変革に至るまでの過程を従業員のエンゲージメントや組織文化を向上させるEXチームの前田さんに伺いました。「組織課題に徹底的に焦点を当てた結果の、フラットな組織」と語るその真意は?
重要な課題から優先順位をつけていく
ー おかんは2018年5月、ピラミッド型の組織体制からフラットな組織体制に変更したそうですね。
はい。それまではオーソドックスに各チームのリーダーが経営陣とともに意思決定する、というピラミッド型組織でした。しかし、ある組織課題にぶつかり、紆余曲折を経てチームリーダーを置かないフラットな組織体制に変更しました。
ー ある組織課題とは何でしょうか?
CEOの沢木と話していたときに「意思決定のスピードが遅くなってきている」という話題になったんですね。事業が成長して、組織も拡大している中で、小さな組織にもかかわらず「部門間の分断」が一定数発生しており、以前と比べて意思決定のスピード感が落ちてきていると感じていたようです。
ー 規模が大きくなるに連れて判断スピードが落ちるのは、多くの組織がぶつかる課題でもありますね。 その原因を根本から考えたんですね。考える過程では、ピラミッド型の組織体制が問題なんじゃないか、ということも当然考えました。でも、判断スピードが落ちる本当の問題は組織体制じゃなかった。もっと「根幹的な部分」がおろそかになっている、という結論に至ったんです。その考えを沢木にも伝えました。

ー 沢木さんはなんとおっしゃったんですか?
「ナパ会議」というリーダー会議の場に参加してくれ、と言われました。それが2018年の3月ぐらいの話です。私はリーダーではなかったのですが、ナパ会議に参加して、部門間の分断から各課題について、他のリーダーと正面からまっすぐに話しました。
ー 反応はどうでしたか?
最初、各リーダーの意見は分かれましたね。「長期的な観点から課題を考えるのがいいのではという意見や、今はまだ短期的な業績に注力した方がいいのでは」という意見も出ました。沢木からは「視座を高くしよう」と声かけがあって、みんなで議論をしながら最終的にいくつかある「根幹的な課題」の優先付けをして解決のための人的リソースを割り当てようと決まったんです。
ー そこから、どのようにフラットな組織につながっていくのでしょうか。
人的リソースの分担にあたって会社のことをよく知っているチームリーダー以上の人間を割り当てた方がいいだろうとなりました。それで、チームのリーダー数人が担当することが決まった。そうすると「そのチームからリーダーが抜けることになるから、新しい人をリーダーにしなきゃね」となりますよね。
ー 人事配置を変えなきゃいけません。
「誰をリーダーにする?」っていう話になり、一旦は「ピラミッド型の組織体制」で組み直しもしました。しかし、他のチームリーダーが抜けた穴を新しくアサインしたり、兼任で埋めるというのがベストかというと違った。その他の領域のスピード感が落ちてしまう可能性がありますから。選択と集中という意味で、「特定の事業、業務を止める」ということも考えました。
ー 事業は急成長しているからこそリソースの選択と集中が必要。ベンチャーの宿命ですね。
それで、「じゃあ、いっそのことリーダーを置かないで、チームの意思決定はテーマごとに得意なメンバーが意思決定者として立ち、決断していく体制をとっては?」という意見が出たんです。

1カ月かけて、全体会議で徹底的に議論
ー そのような議論のプロセスでフラットな組織にする案が出てきたんですね。
一旦は組織図を決めるところまでは進めました。しかし「フラットな組織を決める過程がフラットでなくて、ベストな結論になるのか?」という疑問が発生した。そこで、すぐに「今後の組織体制についてリーダーも新人も含めて全員で話そう。」と決まりました。
ー 全体会議ではどんな話をしたのでしょうか?
最初に「会社として何を最優先にするべきか?」という組織課題や、リーダー会議で議題になった「根幹的な課題」に関して共有しました。そして、フラットな組織体制についてどう思うか、というところまで投げかけました。そこから各々、自由に発言をしてもらって「何が今会社にとっての最優先事項か?」といったことを話し合ったんです。
ー そのような難しい議題を30人が集まって話し合う、というのはすごいですね。
おかんでは、「健全な衝突」を奨励する風土があるんです。これは「あなたのチームは、機能してますか?」(翔泳社)という書籍に書かれていて、おかんではこの本を必ず全員読んでいるんですね。さらに、この本をベースにワークショップも行っています。確かに、難しい議題ではありますが「健全な衝突」に抵抗感を持つ人がいないので、議論は活発に行われました。
ー なるほど。そうした組織としての強さがベースにあるからこその全体会議。その結果、フラットな組織にしていこうとなったんですね。
そうです。でも、1回の会議ですんなり決まったわけではありません。1カ月かけて4回の全体会議を重ねて、ガッツリ議論しました。会議は「ワールドカフェ」形式を取り、グループワーク的に、多くの発言と衝突を、多くの人間が行えるようなしくみにして話し続けました。それぐらい、大きな決断ですから。 その上で、グループごとに「意思決定者」を立候補制で決めました。全員が意見を出しつつも、コンセンサスを取るのではなく、あくまで他の人の意見を聞いた上で、意思決定者が自らの意見としての「ベスト」を提案する。そいうスタンスで、各グループごとに結論を出してもらいました。
そして、グループごとの意思決定者の結論が出揃ったところで、全体の意思決定者が結論を決めるのです。いずれの意思決定者も、リーダーや社長といった立場ではありません。一般の社員です。意見が違う場合には、メンバー同士で最後まで衝突が求められる。そうした過程を経て最終的には、全員が納得しコミットした上で、組織体制の変更という意思決定がされました。
ー 全体会議が、フラットな組織に移行した場合の予行演習のにもなっていた、ということですね。全体会議の結果、どのように組織が変わったのか。これが、組織イメージ図ですね。

左側がこれまでの組織体制のイメージです。標準的な組織体制ですね。右側が新たな組織体制のイメージ。CEOは変わらず意思決定者として上にいるのですが、それ以外は機能的なチームで分かれているだけで、チーム内に階級はなくフラットです。これまでは全てリーダーに報告して物事を決めていたのを、チームメンバーの誰かが決めるというスタイルになりました。ただし、チームの仕事内容に応じて、リーダーを置いているチームもあります。これは、オペレーションが急激に変化して顧客に迷惑がかからないための処置です。
これからの課題は「心理的安全性」の確保
ー 今日お話を伺うまでは、今流行りの「ホラクラシー」や「ティール」型の組織にしよう、というきっかけでフラットな組織体制にしたと思っていました。
違いますね。もちろん、そういった組織体制があるのは知っていました。ただ、それらはあくまで手段でしかありません。そうした手段が、組織課題の解決に適切かどうかを判断するには正確に課題を把握する必要があります。階層型の組織がフィットするタイミングや、状況もあると思っています。
ー なるほど。組織を変更してから、まだ1カ月程度ですが、状況はどうですか?
まだ振り返るには早いタイミングですので、あくまで仮説ですが、意思決定者が増えることで、意思決定スピードの向上につながっていると思います。例えば、「この数値分析の判断はAさんに。この数値だったらBさんに」とそれぞれの得意分野の人が意思決定者となれますから。サービスが急速に成長し、多様な意思決定が必要とされる状況においては、意思決定者の多さが判断スピードの向上につながるはずです。
ーいきなりのフラットな組織。戸惑いはありませんでしたか?
正直、私は最初戸惑いました。前職は大きな組織で、典型的なピラミッド型。意思決定はリーダーがするのが当たり前の世界にいましたから。「こんなに大きなことや、顧客に関することを、僕が判断していいんですか?」っていう感覚は、最初はありました。他にもそういうメンバーは何人かいますし、新しく入るメンバーは皆さん戸惑います(笑)。だから、今後この組織体制をうまく運営していく上での課題は「視座の高さを全員が意識すること」と「心理的安全性」の確保になっていくと思います。
ー 急に判断を任されることへの不安は誰しもありますからね。
これまでよりも一層、ディスカッションが必要になってくるし、自分の意見を言うことが求められてきます。だからこそ、入社直後に「あなたのチームは、機能してますか?」を読んでから行うワークショップがすごく大事で、効いてくるのです。その上で、さらに「視座を高く」し、「心理的安全」が自然と生み出される風土をより強くしていく必要があります。それは、おかんの新たな課題。この組織体制にしてよかった、とみんなが思えるように、これからもいい組織づくりをしていきたいと思います。
ー 「フラットな組織」に変化する過程を伺えたのは非常に貴重でした。まずは、課題の把握から始める、というのは本当に大事なことだと思います。本日はありがとうございました!








