
確信できる改革ゴールづくりに必要なスキル【連載#6】

大学卒業後、芝浦工業大学大学院 工学修士課程修了。日本能率協会コンサルティングにて企業・組織の改革・改善活動の支援に関わる。専門は、研究開発、商品開発、新規事業開発、事業改革など企業・組織内での「新しい動き」をつくる活動を中心とする。また人と組織の力を最大限に引き出す支援として、キヤリアビジョン開発、コーチング、ファシリテーション、リーダーシップ、社内コンサルタント養成などのヒト系ソリューション事業を開発してきた。2009年独立。現在までエグゼクティブ・コーチング、職場開発(チームスキル)、社内改革推進者養成や内製化など企業や団体の改革を支援している。2012年一般社団法人チームスキル研究所を設立。その後、Wevox組織・人財アドバイザー、一般社団法人経営支援機構 技術顧問などを兼務。現在に至る。
連載:新時代で輝く組織開発の専門家インターナルコンサルタントのススメ
「社内で組織開発を推進していく人材『インターナルコンサルタント』の存在価値は、今が一番高い」
そう語るのは、多くの企業の組織開発を支援し、リーダーの育成も手掛けるチームスキル研究所の田中信さん(通称マコさん)です。マコさんは、インターナルコンサルタントのトレーニングプログラムを自ら構築し、長年講師を務めてきた第一人者。インターナルコンサルタントがなぜ、今の日本企業において重要なのか、そしてどのようなスキルが必要なのか…。これからの時代において、重要な役割となるインターナルコンサルタントのエッセンスを紐解きます。
こんにちは、チームスキル研究所の田中信です。
前回は改革(※)の企画段階(フェーズ)でインターナルコンサルタントに求められるスキルについて「立上げ時」、「企画活動中」、「改革構想づくり」の3つのうち「立上げ時」、「企画活動中」の2つについてみてきました。
今回は「改革構想づくり」についてみていきます。
※このコラムでは、インターナルコンサルタントが扱う「変える」ことの表現として主に「改革」という表現を用いて説明します。実際には「改革」のほか「改善」、「変革」、「革新」、「革命」などが変える対象に含まれます。
1. 改革構想づくりのスキルを考える際に知っておきたい6つの視点
改革構想づくりのスキルは、企画をまとめる段階で必要となります。改革構想づくりを考える視点には6つあります。それぞれの視点について説明します。
視点1. 「改革ゴール」を明らかにする
まずは「改革を通じて実現したいことは何か」、「目指す状態や結果」について検討する視点です。
改革構想を検討する際、アウトプットイメージのお手本として参考になるものに、行政機関の策定する各種計画(※)があります。ここでは改革ゴール例として以下に農水省の「食料・農業・農村基本計画の目指す姿」を示します。
※詳細は農水省WEBサイトの「食料・農業・農村基本計画の概要」を参照

図:改革ゴール例(農水省 「食料・農業・農村基本計画の目指す姿」)
改革の企画活動では、早く対策案を具体化したくなるため、目的よりも手段の検討に多くの時間を費やす傾向が見られます。目的が曖昧なまま手段を検討しても得たい成果が得ることができるかは疑問です。そのため常に「何のために改革をするのか?」を問い続けることがとても重要になります。
具体的には、
そもそも改革活動によって何を実現しようとしているのか?
定量的/定性的なゴールは何か?
について繰り返し検討することで、確信できる改革ゴールを設定する力が求められます。
改革活動を意義あるものとするため、インターナルコンサルタントには改革ゴールを以下に示すような多角的な視点を考慮して描くことが求められます。
【改革ゴールを描くための5つの検討視点】
(1)会社(経営層・改革オーナー等)の期待から検討する
(2)自社の経営理念・規範から検討する
(3)外部環境の変化から検討する
(4)内部環境の変化から検討する
(5)将来ビジョン、構想から検討する
改革ゴールの設定後は、その有効性を継続的に検証することが求められます。
視点2. 現状を把握する
改革に関わる指標(定性・定量)の現状について検討する視点です。改革活動の進捗状況や成果を確認するために必要となります。
視点3. 改革テーマ(改革課題)を明らかにする
次は「視点1. 改革ゴール」と「視点2. 現状把握」の差異から、改革テーマ(改革課題)について検討する視点です。具体的には、各種の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・組織/チームなど)を対象にどのような影響を与えることで変えるのか、について検討していきます。
改革テーマ(課題)を明らかにするため、関連する課題を構造化することで課題間の因果関係や「視点5: 重点ポイント検討」をスムーズに行うことができるようになります。課題を構造化するスキルについては別の機会に紹介したいと思います。
視点4. 改革の制約条件は何か?
改革を進める上で制約となる事柄は何か、について検討する視点です。
具体的には、改革の対象範囲や人数、組織の改革に対する順応性、キーパーソンの改革経験の有無や意識の高さ等があります。
視点5. 改革の重要ポイントを明らかにする
5つめは改革を進める上で重視すべき点は何か、について検討する視点です。
はじめて改革構想を検討する場合、施策が総花的(5つから7つ、またはそれ以上)になることがあります。各施策間の因果関係が明らかになっているのであれば5つ程度でも活動の推進は可能ですが、施策の数が多過ぎると経営資源を大量に投入しなくてはならないこと、活動が発散的になり成果が得られ難くなる活動の推進管理が煩雑になること等から、できれば1〜3つの施策に絞ることを推奨しています。
改革の重点ポイントは、視点3.で紹介した「課題の構造化」を用いて明らかにすることができます。一般に組織における全ての課題は蜘蛛の巣のように繋がっています。そのように繋がっている課題の中から重点を決め、経営資源を集中的に投入することで、効果が出易くなると共に、他の課題にも順次影響を与えていくことができます。課題の構造化を通じて、改革プランを実現するための筋道(改革シナリオ)づくりにも活用できます。
改革シナリオ例を以下に示します。

図:改革シナリオ例(経産省 DX加速シナリオ)
視点6. 改革手段を具体化する
最後は「どんな手段を使い、改革を進めていくのか」について検討する視点です。「改革の進め方」について検討する際に有効な手法として「改革デザイン・マトリクス(後述)」の活用を推奨しています。
2. 改革デザイン・マトリクスを使った改革シナリオづくり
改革デザイン・マトリクスでは縦軸に「改革活動の実施内容」を展開します。横軸には「改革の手段」を展開します。改革マトリクスの縦軸・横軸のそれぞれの項目を展開すること自体が改革のノウハウとなります。

縦軸・横軸それぞれに設定する項目例を以下に紹介します。
1)縦軸の項目例 :「改革活動の実施内容」
改革活動の必要性顕在化
現状把握(定量・定性)
改革の可能性検討
仮説立案と検証
改革構想(ビジョン、目標)立案
キーパーソンとの関係づくり
改革マスタープランづくり
推進体制づくり
改革意識づくり
モデル展開による好事例づくりとその展開
職制展開の活動推進
職場対象の活動推進
管理職対象の活動推進
しくみ、制度づくり・改革を対象とした活動推進
変革スキル養成 etc..
2)横軸の項目例: 「改革の手段」
インタビュー
資料収集・分析
観察、同行
診断ツール活用
キーパーソン打合せ
講演会、シンポジウム、フォーラム
説明会
ワークショップ
コーチング
研修、トレーニング
実践支援
社内コミュニケーション(トップ対話会、社内ラジオ、社内報等)
コンテスト、表彰 etc..
上述した縦軸・横軸の各項目を用いて作成した改革マトリクスの交点をマトリクス思考で一マスずつ検討することで改革の進め方イメージを具体化します。
このマトリクスを用いて検討した改革の進め方イメージを時間軸に乗せて表現することで、改革マスタープランや単年度のアクションプランを策定することができます。
今回は企画段階をまとめる「改革構想づくり」のスキルをみてきました。
次回は、改革の企画及び実行の両段階で鍵となる「インタビュー・スキル」についてみていきたいと思います。







