
企画段階でインターナルコンサルタントに求められるスキル【連載#5】

大学卒業後、芝浦工業大学大学院 工学修士課程修了。日本能率協会コンサルティングにて企業・組織の改革・改善活動の支援に関わる。専門は、研究開発、商品開発、新規事業開発、事業改革など企業・組織内での「新しい動き」をつくる活動を中心とする。また人と組織の力を最大限に引き出す支援として、キヤリアビジョン開発、コーチング、ファシリテーション、リーダーシップ、社内コンサルタント養成などのヒト系ソリューション事業を開発してきた。2009年独立。現在までエグゼクティブ・コーチング、職場開発(チームスキル)、社内改革推進者養成や内製化など企業や団体の改革を支援している。2012年一般社団法人チームスキル研究所を設立。その後、Wevox組織・人財アドバイザー、一般社団法人経営支援機構 技術顧問などを兼務。現在に至る。
連載:新時代で輝く組織開発の専門家インターナルコンサルタントのススメ
「社内で組織開発を推進していく人材『インターナルコンサルタント』の存在価値は、今が一番高い」
そう語るのは、多くの企業の組織開発を支援し、リーダーの育成も手掛けるチームスキル研究所の田中信さん(通称マコさん)です。マコさんは、インターナルコンサルタントのトレーニングプログラムを自ら構築し、長年講師を務めてきた第一人者。インターナルコンサルタントがなぜ、今の日本企業において重要なのか、そしてどのようなスキルが必要なのか…。これからの時代において、重要な役割となるインターナルコンサルタントのエッセンスを紐解きます。
前回の記事は↓

こんにちは、チームスキル研究所の田中信です。
前回は「改革の企画段階で大切になること」について考えてきました。
今回は、改革(※)の企画段階(フェーズ)でインターナルコンサルタントに求められるスキルについて「立上げ時」、「企画活動中」、「改革構想づくり」の3つのうち「立上げ時」、「企画活動中」の2つについて考えてみたいと思います。
(※このコラムでは、インターナルコンサルタントが扱う「変える」ことの表現として主に「改革」という表現を用いて説明します。実際には「改革」のほか「改善」、「変革」、「革新」、「革命」などが含まれます)
1. 企画活動の立上げ時から必要なスキル
改革の企画づくりを進めて行く際に、早い段階から必要となるスキルとして「プロジェクトマネジメント」「文献調査」「人脈開拓」が挙げられます。

「文献調査」のスキルを用いて、改革テーマに関連する学術的な研究や理論、行政や調査機関などの統計的調査データ、企業における実践事例、有識者にに関する情報などを入手し改革企画を進めるための基本情報として利用します。
「プロジェクトマネジメント」と「人脈開拓」については第4回コラム「企画フェーズで大事にすべき3つのこと」でも触れているのでおさらいだけしておきます。
「プロジェクトマネジメント」のスキルを用いて、早いタイミングで企画活動を具体化することで、活動をマネジメントできる状態をつくります。
文献調査や知人からの紹介などを通じて有識者との「人脈を開拓」し、改革に関する知見を直接得られる状態をつくります。
2. 企画活動を進める上で必要となるスキル
企画活動を進める過程では、各種調査スキルを用いて現状把握や改革構想づくりにつながる情報を入手します。ここでは、3つの調査(資料、インタビュー、アンケート)について考えてみたいと思います。
「社内資料調査」により、改革に関連する定量・定性データを入手・分析します。この調査を通じて、改革関連の情報がどの程度掴める状態になっているかを把握します。改革を企画するための情報に不足があれば、「インタビュー」、「アンケート」などにより補足する必要があります。
「インタビュー調査」は(1)アンケート調査の実施前に設問項目を設計/検証するために行う場合、(2)アンケート調査を実施後、具体的な声を入手するために行う場合があります。
インタビュー調査を通じて、改革推進協力者(※)を発掘することも重要です。
(※改革推進協力者とは、「① 改革活動を推進することで力を発揮できるようになる人物」、「② 改革内容を既に実践している人物」、「③ 活動へ関心を持ち、協力が得られる人物」の3者のことを意味します)
「D&I」、「エンゲージメント」、「ウェルビーイング」などの改革テーマでは、「インタビュー」は調査手法であり、かつ有効なソリューションとしても機能します。インタビュー調査については、別の機会に詳しくみていきたいと思います。
「アンケート調査」では、改革の企画に必要な情報(定量・定性)を入手します。

3つの調査に共通して求められる「仮説の設定・検証力」
上述した3つの調査に共通して求められる能力として、第4回コラムでも触れた「仮説の設定・検証力」があります。
「1. 企画活動の立上げ時期から必要となるスキル」で示した「文献調査」や有識者との意見交換などを通じて改革の仮説を構築し、その仮説を3つの調査を用いて検証していきます。
「改革仮説をつくる」ことと「検証すること」は、実際の作業では「鶏が先か、卵が先か」といった「因果性のジレンマ」的な性質をもちます。そのため完全な検証項目を完成させてから調査を開始しようとすると、調査開始時期がどんどん後ろにズレこんでしまいます。調査は早めにかつ小さく始めて、短期の仮説検証サイクルを複数回します。早い段階で調査をスタートさせる事が大切です。
3. 企画活動中の対人関係で必要となるスキル
改革の企画活動の中で必要な対人関係スキルとして「傾聴力」、「活動経過の共有力」、「巻き込み力」、「交渉力」があります。
「傾聴力」は、相手の話を聴く力です。よい聴き手の能力を磨くことで、改革企画に必要な情報を獲得できるだけでなく、相手との信頼関係や連携関係を構築することも可能です。よい聴き手は、それだけで相手にとって価値ある存在となり得ます。
また、改革の企画活動を進める過程において、各種調査や改革構想づくりなどの作業を進める中で、「これだ!」といった改革を進める上での確信となる事柄が明確になるには時間がかかることがあります。そのため企画活動メンバー以外への情報発信が疎かになる傾向があります。関係者への情報共有が遅れると、せっかくよい改革コンセプトやシナリオが構築できても、企画内容と相手の考えているこの間のギャップ大きすぎて「なぜ、そのような企画になったのか?」、「そもそも、、、なぜ改革が必要なのか?」といった抵抗感の強い疑問を持たせてしまいます。また既に出来上がった企画を提示されることに抵抗感をもつ人も居ます。逆に、企画が明確になっていないと意見を言わない事も居ます。そのため、改革の関係者には相手の特性を考慮しつつ活動経過を随時共有する、「活動経過の共有力」が求められます。関係者一人ひとりの特性を把握するための手段として、ハーマンモデル、DiSC®、クリフトンストレングスなどの個人特性の理解を支援してくれるツール(※)がありますので活用することをお勧めします。
(※ハーマンモデルについては、ネッド・ハーマン著の「ハーマンモデル」、東洋経済新報社を参照。DiSC®、クリフトンストレングスについては各社ホームページを参照)

関係者に改革の検討過程を共有することは、改革企画や推進に関わるメンバーを巻き込む効果もあります。最初は関心のなかった人も、調査活動の過程を何度もインプットしてもらうことで関心がでてきたり、調査活動の話を聴いているうちに、自分なりの問題・課題認識が生まれてきたり、企画活動への提案アイデアを思いつく経験やそれを発言する中で、自分でも気づかないうちに活動に巻き込まれていく人が出てきます。
改革に前向きな人がいる一方で、後ろ向きの人も居ます。後ろ向きの方には1回の説明機会で説得しようとしないことが大切です。一度に長く説明するより、短時間の活動経過説明を都度実施することで相手の関心を高め易くなります。
このような活動経過の共有過程を通じて、関係者一人ひとりの「利害得失」がどのようなものか、改革を進めるためには、各人に対してどのように説明するのが効果的か、また連携の取り方はどのように進めたらよいか?などについて知ることで、関係者一人ひとりに対し、改革推進の協力を得るための交渉力を高めていくことも必要になります。
次回は、企画段階で必要となるスキルのうち、「改革構想をつくる上で必要となるスキル」について考えてみたいと思います。
※本連載は一般社団法人日本能率協会の情報サイト「KAIKA」にて掲載されていた田中信氏の連載「インターナル・コンサルタント養成のススメ」を一部編集して掲載しています。
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