
DMM Boostへの組織改編から1年、“対話が生まれる組織”への進化を目指すサーベイ活用

大学院卒業後、NTTコミュニケーションズに入社。官公庁案件のマネジメントを行っていたが、エンジニアに戻りたいという欲求を抑えきれず、1年後に退職。フロントサイド、サーバサイド、インフラ、ネイティブアプリ開発を含めた全領域を守備範囲とするフルスタックエンジニアとして活動を重ねたのち、2018年、株式会社ハッシャダイにCTOとして入社。2021年12月、株式会社DMM Boostへの社名変更とともに代表取締役に着任。経営・技術方針策定やサービス開発に従事している。

日本に憧れ、2014年にワーホリビザで来日。インバウンド向けのバス会社に入社し、旅客バス運行管理者および経理を担当。より多くの人及び日本企業と関わりたいため、2017年DMM.comに転職。2018年DMMグループ会社‐株式会社ハッシャダイ(2021年12月 株式会社DMM Boostへの社名変更)の経理総務管理担当としてジョインし、労務及び経理業務を行っている。2022年6月から人事業務を兼任。主に採用企画及び社内改善業務に従事している。
LINE公式アカウント自動化ツール「DMMチャットブースト」の開発・運営を事業とする株式会社DMM Boost。前身の株式会社ハッシャダイ時代にコロナ禍により主軸の人材育成事業が大打撃を受け、新規事業としてこのツールを開発。2020年のリリース、2021年12月の組織改編と社名変更を経て、人材育成の会社からテックカンパニーへと組織体制・文化の変革を進めています。ハッシャダイ時代より利用しているWevoxを組織づくりにどのように活用しているのか、代表取締役の横関さんと、人事部の廖さんに伺いました。
組織の改編・拡大による新旧メンバーの融和を目指して
―DMM Boostへと組織体制が変わって以降、どのような目的や課題感を持ってWevoxを活用したエンゲージメント活動に取り組んでいらっしゃいますか?
横関:この1年は、旧メンバーと新規メンバーとの組織文化の融和という全社的な課題と、Wevoxのスコアから見える部署ごとの課題への対策に取り組んでいます。
前者は、急激な組織拡大に伴い生じた課題で、Wevoxの総合スコアにも明確に表れています。以前に比べて総合スコアが3〜4ポイント低い状態が続いており、一時は6ポイントほど低下していた時期もありました。後者は、営業、カスタマーサクセス、マーケティング、開発という各部署の課題がWevoxのスコアから明確になってきているので、部署ごとに対策を講じ、スコアの変化を見て効果検証しています。
―ではまず、旧メンバーと新規メンバーとの組織文化の融和という課題に関しては、どのような取り組みを進めていらっしゃるのでしょうか?
横関:サーベイのコメント欄への記入内容をもとにした、制度や環境の改善です。というのは、旧メンバーと新規メンバーとの組織文化の融和があまりとれていない要因として、コロナ禍によりフルリモート勤務としたために出社していればできていたコミュニケーションができなくなったこと。それから、いわゆる“どベンチャー”から始まった会社であるために制度や環境が整っておらず、そこに対する違和感や改善要望を、特に新しく入ってきたメンバーが言いにくいといったことが考えられました。
特に福利厚生に未整理な部分が多々あったので、コメントから社員の意見を吸い上げて整備・修正していっています。
―具体的にどのような改善をされましたか?
横関:例えば、ある休暇制度について、他社では有休としているところが多いにもかかわらず弊社では欠勤として扱う規定だったものを、就業規則を変更して有休としました。あとは、「人事評価制度が不明瞭」「PCがとても古いので買い換えてほしい」などのコメントを受けて制度を作り直したり、PCを買い換えたりもしています。
廖:他にも、「健康保険をIT健保(関東ITソフトウェア健康保険組合)に変えてほしい」という声があったので対応しました。

―部署ごとの課題に対しては、どのような取り組みをされていますか?
横関:毎月、部署ごとにスコアやその推移を見て、特に数値が低い項目について、早急に改善を図るべきか今は優先度が低いかなどを事業フェーズに応じて僕が判断しています。そして、僕や廖が各部署とコミュニケーションをとって具体的な施策を検討・実行してもらっています。
例えば、社名変更当初は、営業組織やカスタマーサクセスの組織の「自己成長」や「職務」のスコアがとても低い状況にありました。当時は重大KPIがエンゲージメント向上よりも売り上げのトップラインを伸ばすことにあったので、まずは売り上げに直結する営業組織の改善から進めました。
具体的には、スコアが低い原因は事業KPIをそのまま評価目標にしていることにあると仮説を立て、行動目標を設定しました。事業KPIは行動目標を達成することによって出てくる結果でしかありませんし、例えば「毎日10件電話しよう」などと行動目標を適切に設定してそれを達成し「じゃあ来月は電話件数を12件に増やすにはどのような業務改善が必要か?」というコミュニケーションをとって行動改善をしないと、社員は成長を実感しないだろうと考えたのです。
結果、営業組織のスコアは少しずつ改善傾向にあります。そして今、カスタマーサクセスの組織状態を改善するため、いろいろと指標を作り変えている段階です。
コメント欄を用いて組織や制度の改善提案を募る
―先ほど話に挙がったコメント欄の活用は、DMM Boostに組織体制が変更されて以降、より注力されていると伺いました。その背景や狙いを教えてください。
横関:最終的に目指したい会社の方向性として、「問題解決ができるか」「内発的動機付け」「不確実性への耐性」があります。これら3つを、社員が働く上で持つべき哲学として浸透した状態にしたいのです。問題のある状況を正確に理解し、根本原因を見極め、効果的な打ち手を導き実行に移し、必要に応じて打ち手を修正していく。

こうした一連の思考プロセスや、業務に強い興味や関心を持ち、自らが主体となって目標を定めて能動的に行動できることに喜びを感じる状態。そして、予想外の事象が起きても、冷静に対処できる素質を社員全員が身につけている状態にし、仮説とデータを持った対話を行う組織にしたい。Wevoxのコメント欄も、これらを育む場の1つと考えています。
―どういうことでしょうか?
横関:Wevoxのコメント欄への記入の仕方も、仮説とデータを持って考え、問題解決にあたる思考を鍛える場になるんです。というのは、我々は、コメント欄を個人の問題や要望を伝える場ではなく、体制や組織に関する提案を伝える場だと位置づけています。だから「休みがほしい」「福利厚生を充実させてほしい」といった漠然とした要望ではなく、例えば「時短勤務制度をつくることでシングルマザーなど、今は採用できていない人を採用しやすくなると思う」といった意見の挙げ方をしてほしいし、こうした思考ができる社員になってもらいたい。ことあるごとに、望ましい組織体制や福利厚生制度を仮説やデータを持ってコメントしてほしいと社員に伝えています。
また、僕が代表に着任して以降、社内のコミュニケーションに使っているSlackにコメントへの返信用のチャンネルを作りました。そして、重要度がより高い回答は月1回の全社会で説明し、そのほかの回答はSlackに記入する形で、すべてのコメントに対して適切な場所で適切な返答をすることとしました。全社会での説明は僕が、Slackチャンネルでの回答は廖が行っています。全社会では、「誰が記入したかは分からないから安心してなんでも書いてください」というメッセージも毎回発信しています。
―なぜすべての回答に返信することにされたのですか?
横関:社員からすると、意見や要望を挙げたにもかかわらずリアクションがなければ、説明もなしに切り捨てられてしまったと感じるでしょう。そこに応えていきたいという考えが1つありました。また、僕としては対応する・しないは根拠を持って判断しているので、説明することで社員の納得度を上げたいと考えています。社員に対しては「データや仮説を持って意見を言ってほしい」と伝えているのに、自分がそれをやらないわけにはいきませんからね。
最近だと、フレックス制度の導入を提案するコメントに対して現状の労務・総務の体制だと事務コストの面などで対応できないため、今はまだ導入できないことを回答したりもしました。これも、説明しないままだと「提案したのに取り上げてさえくれない」と思うでしょうから、一つひとつ説明しています。
―仮説とデータをもとに考え、提案することは、社員に皆さんに浸透してきましたか?
横関:まだまだです。0から1に進んだくらいの感覚で、発展途上の最序盤という認識です。ゴールを100とすると、あと2年くらいかけないとダメだと思います。
ただ、コメント量は増えてきました。以前は各回2〜3件程度でしたが、今は8〜10件くらいが当たり前になっています。それだけ意見を伝えやすくなったという、定量的に分かる変化かなと思います。

廖:コメント一つひとつに回答しているからか、「対応ありがとうございます」などの感謝のメッセージの記入も増えました。
―コメント欄のほかにも、Wevoxの機能で活用されているものはありますか?
横関:「データ解析」の「影響度分析」ところは見ていますね。「仕事の意欲への影響度」の分析結果を見て、改善推奨項目の改善を図っています。
―パルスサーベイがあることで、組織づくりにどのようなメリットを感じていますか?
横関:組織や社員について直感的に思っていることを定量化してくれるので、社員とのコミュニケーションがしやすくなります。例えると、健康診断のようなツールだと思っています。
廖:人事としては毎月のスコアの変化を見ることで、その月ごとの課題が見えてきますし、社員は匿名でコメントできることで組織の課題の解決に向けた案を出しやすいのではないかと感じています。
横関:我々のように発展途上の未成熟な企業には、匿名でなければ意見を言えない人もいます。サーベイもコメントも、匿名で回答・投稿できる安心感というのは大きいと思います。
ただ、もっとエンゲージメントが高まり、心理的安全性も高まれば、匿名ではなく直に言える組織になってくると思っています。そのフェーズに入れば、個々が責任を持って発言するオープンな場を作った方が組織がより良くなるでしょうし、Wevoxの役割も変わってくると思います。フェーズに応じてWevoxは使い分けていきたいと思っています。
社員全員が経営課題や組織課題を俯瞰して見られる組織に
―ほかにも、今取り組んでいらっしゃる施策はありますか?
横関:今まさに始めているのが、理念・戦略の策定と周知・浸透です。実は社名変更から今まで、企業としての理念・戦略や組織風土の整備は置いて目の前の事業をグロースさせることに全力を注いできました。おそらくそれも全体のスコアが低下していた要因の一つで、「理念戦略」のスコアも低い状態が続いていますが、仕方のない痛みとして対応は後回しにしてきました。

それがようやく理念・戦略をまとめられるところまできたので、誰が読んでも解釈がブレない文章と、短くキャッチーな社内向けのコーポレートメッセージをつくり、12月に全社員に向けて発表したんです。それとは別で、社外向けのコーポレートメッセージも作り、最終的な表現は3パターンから皆に投票してもらい決めました。これも狙いがあって「ミッション、ビジョン、バリューは社員と一緒に作った方が、社員のエンゲージメントが上がる」と何かの書籍で読んだので、僕たちも実践しました。
これらにより、社員のエンゲージメントがどのように変化していくか、Wevoxのスコアを通じて見ていきたいと思っています。
―改めて、今後の組織づくりの見通しを教えていただけますか。
横関:先ほども話した、仮説とデータをもって対話できる社員を増やすというところに向かって、必要な取り組みを行っていきます。
人が「仕事がうまくいかない・やりにくい」と感じるとき、その原因は個人ではなく組織体制や業務フローなどにあり、そこを改善すれば解決できることがほとんどだと僕は考えています。
ですので、「この人とは仕事をしにくい」ではなく、「この業務フローっていけてないよね」など、仕組みや組織に対して意見を出して改善できる社員をどんどん増やしていきたいです。経営課題や組織課題を俯瞰して見られる社員が増えれば、組織の文化もすごく良くなるでしょうし、事業の改善にも、Wevoxのスコア上昇にも繋がると期待しています。

―では最後に、他社の経営層の方々に向けてエンゲージメント活動やサーベイ活用のアドバイスをお願いします。
横関:偉そうなことは言えませんが、1つお伝えできるとすれば、注目する項目・スコアを決めて、現状のスコアの要因を分析し、打つべき施策を打っていくのが良いのではないかと思います。
その際に大事なのが、効果の見極めだと考えます。例えば、スコアが低迷している項目に対して打つべき施策を複数考えたとすると、それぞれどのくらいの期間で効果が出そうかを見通すのです。そして、まずはすぐに効果が出そうな施策から実行し、スコアに変動がなければ自分の仮説が間違っていたと認識して次の施策に切り替えます。効果のない施策を意固地になって続けても無駄なので、スコアの変動状況を参考に効果が見えなければ次の施策にトライすることを意識するのがいいのかなと思います。そういう意味でも、サーベイの活用は経営において重要な取り組みだと実感しています。







