
AIも活用した分析で管理職を支援し、一人ひとりがより本気で仕事に向き合える信用金庫に

1984年入庫。営業店、浜松商工会議所への出向、融資部経営サポートチーム、支店長、秘書室長、総務部長などを経て、現在は総務部と人事部を所管する常務理事を務めている。
浜松いわた信用金庫では、2023年6月よりWevoxを導入し、管理職を中心にWevoxのスコアを活用したエンゲージメント推進に取り組んでいます。その詳細について、人事部・総務部を担当する常務理事の半場さんに伺いました。
※取材時(2024年11月)の部署・役職になります。
管理職を中心にコミュニケーションの活性化を促す
―まずは、御金庫がエンゲージメント推進活動を始められた背景からお聞かせください。
当金庫における組織課題と、人的資本経営を重視する世の中の動きなどが重なり、解決策として浮上したのがWevoxの導入とそれを活用したエンゲージメント推進です。
まず、2019年1月に浜松信用金庫と磐田信用金庫が合併して当金庫ができた際、新しい金庫の旗として掲げたのがSDGsでした。ユニバーサルバリュー宣言(SDGs行動宣言)を制定してSDGsへの貢献を経営の根幹に置くことをメッセージとして打ち出し、職員はSDGsの考え方に則って社会に貢献していこうということを求心力として働かせたのです。
そして、SDGsへの貢献の切り口の一つに据えたのが、健康経営です。社会に貢献し続ける持続可能な組織であるためには、働いている人が心身ともに健康で、やりがいを持って働ける環境が必要です。その尺度の一つとして、経済産業省が認定する健康経営優良法人を目指すこととしました。その際、認定項目の一つにあるワークエンゲージメントを測定・評価する体制を整える必要がありました。
また、同時期に、金融庁からも「金融機関においてもこれからは人的資本経営が欠かせない」というメッセージが出され、金融庁との対話の機会をいただいたこと、また、退職者の増加やメンタルヘルスに不調をきたす職員が出てきていたことなどもあり、これらの解決のツールとして浮上したのがWevoxでした。
このように、当金庫の組織課題と、人的資本経営を重視する世の中の動きなどが重なり、解決策として浮上したのがWevoxの導入であり、それを活用したエンゲージメント向上の取り組みへとつながっています。

―Wevoxを選んでいただいたのは、どのような理由からでしょうか?
3〜4社とやり取りをさせてもらいましたが、決め手になったのは、事務局担当者の使いやすさです。直感的に使うことができそうだなという感触がありました。加えて、予算面や、やり取りをさせてもらったWevoxの担当の川本さんの人柄などもふまえて総合的に判断しました。
―Wevox導入後はどのようにエンゲージメント推進活動を進められましたか?
2023年6月から3カ月に1回、サーベイを配信していますが、まず行ったのが、アトラエさんに依頼しての経営レポートの作成と経営会議での報告です。第1回のサーベイ結果をもとに行っていただきました。
目的は、役員や部門長といった意思決定層への、当金庫のエンゲージメントスコアと、事務局がやろうとしていることの周知です。サーベイ導入にあたっては、職員の理解を得ることが重要になるだろうと考え、まずは部門長や支店を統括する支店長たちの意識から変えることが最優先だという課題感が背景にありました。
さらに、12月には、管理職を対象にエンゲージメントサーベイの実施目的や活用方針を説明する勉強会を実施し、Wevoxを支店内のコミュニケーションの活性化のためのきっかけにしてほしいということを伝えて意思統一の場としました。
こうして2023年度の1年間、計4回サーベイを実施する中で、管理職を中心に理解と活用が広まりつつあるという手応えを得ました。そこで、2024年度からは次の段階に進むべく、それまで利用していたベーシックプランからスタンダードプランに切り替えてサーベイを行っていきました。
―スタンダードプランに変更後は、どのような取り組みを進められましたか?
2024年6月に、改めて管理職にWevoxの活用について知ってもらう機会として、アトラエさんに依頼して新機能の説明会を実施していただきました。スタンダードプランに切り替えた目的にはAIサポートやWevot(※)の活用があったので、これらの機能を周知しつつ、再度活用を促すことをねらいとしました。
(※)AIにチャット形式で組織づくりにおける様々な内容を相談できる機能

そして、10月には再びアトラエさんに6月のサーベイをもとに経営レポートを作成いただき、経営会議の場で私から説明を行いました。
1年半の活動を振り返ると、管理職においてはWevoxの活用が概ね広がりつつあると感じています。一方で、一般の職員に関しては、「少し面倒くさいアンケート」くらいの認識の者がまだまだ多いと感じているので、今後は全職員に対してWevoxの活用について広めていく方策を考えていかなければならないという認識でおります。
対話の重要性の認識が管理職に広がっている
―経営会議の場でエンゲージメントやサーベイ結果に関するお話をされているとのことで、この1年半で、経営陣の皆さんの受け止め方に何か変化を感じていらっしゃいますか?
経営会議メンバーは、かなり高い関心を持ってサーベイ結果を受け止めています。まだ解決策の議論にまでは掘り下げられていないのが現状ではありますが、スコアの高低の差がどこにあり、なぜその差が生じているのか?それを埋めていくためには経営として何をやっていくべきか?という共通認識が生まれてきています。
例えば、スコアの結果を受けて、会長が「現場を見てくる」「そこで働いている職員たちと話もしてくる」と自らその部署に足を運ぶといったこともありました。そのくらい影響力のあるツールになっていますし、意義深いツールだという認識を経営陣の皆が持っています。もちろん、短期的な視点で一喜一憂してはいけないものだろうということも皆認識しています。
―経営陣の皆さんとしては、スコアや経営レポートをふまえて何か取り組みを検討されていますか?
当金庫は、働きやすい環境にはあるけれどやりがいや働きがいを感じられない、また、経営理念が伝わってこないといった厳しい結果が出ています。そこに何かしらの手を打っていかなければならないという経営陣の共通認識から、支店長の立候補制や、社内公募のような制度などの具体的な人事施策の導入を進めています。また、今年度初めには、数回に亘って理事長から全職員に中期経営計画の説明を直接行う対話の場を設けました。
―管理職の皆さんについては、2024年度からスタンダードプランに切り替えたことで何か変化はありましたか?
まだ各種サポートツールの活用が全部課店に浸透しているとは言えない状況ではありますが、いくつかの店舗からは、サーベイ結果について「これってどういうこと?」「こういうことってWevotに聞くと教えてくれたりする?」といった問い合わせが来ていて、コミュニケーションの改善に活用しようとする動きがうかがえます。
そして、そういった店舗は実際にスコアが高いです。どんな取り組みをしているのか支店長にヒアリングすると、日頃から会話や対話をとても大事に思っていることがうかがえます。「対話を大事にする」と言うのは簡単ですが、それを実践するのはなかなか難しいものだと思います。しかし、こういった店舗の支店長は、Wevoxの結果から何とかしてうまい対話の仕方を模索していることが伝わってきます。
―そういった店舗では、どのような工夫や意識で対話をされているのでしょうか?
常日頃からのコミュニケーションを大事にしている様子がうかがえます。仮に本部から「対話しなさい」と言ったとすると、「月1回、1on1ミーティングをしよう」などと義務的なミーティングを設定しがちですが、そうではなく、常日頃から対話というよりも何気ない会話の機会を大事にしているのです。
具体的には、声掛けをしっかりとするなど基本的なことを実践しています。何か特殊なことをしているというよりも、変化をキャッチするためのコミュニケーションをもっと考えてやっていきたいという思いがあるのかなと感じています。

―私たちとしても、今お話しいただいた「変化をキャッチするためのコミュニケーション」や、日常的なコミュニケーションの意識の持ち方などを「対話」ととらえ、その重要性を発信しています。
対話のスキルは、管理職に必要なスキルの一つだと思っています。ただ喋ればいいというものではなく、話を聞くことも大事だし、部下の変化や困りごとを言葉だけではなく表情や態度などからも読み取ることも大事です。これらは、誰でもできるものではなく、ある程度のトレーニングや経験を積まなければ、本当に求められている対話には繋がっていかないだろうと思っているところです。
先ほど申し上げた好事例の店舗の管理職は、おそらくそれができているのだと思います。だからこそ我々がこれからやらなければならないのは、こういった取り組みを一部の店舗だけにとどめるのではなく、何とかしてそのノウハウを共有していくことだと認識しています。
―何か具体的な施策は検討されていますか?
2024年7月に行った論文試験(「次長職」への昇進要件として対象者に課している試験科目)のテーマを、「エンゲージメントの重要性と、あなたの考える具体的な取り組みについて述べてください」としました。すると、100人を超える対象者の回答で最も多かったのは、コミュニケーションに関する施策でした。お互いに認め合う職場環境や、褒め合うことが大事といった回答が非常に多かったですね。
そしてもう一つ、360度評価を導入すべきだという提言も多くありました。自分が部下からどう見られているのか?自分の伝えたいことはちゃんと部下に伝わっているんだろうか?といったことに非常に関心がある傾向が見られました。
―コミュニケーションやお互いに認め合うことは、エンゲージメントと向き合う上で重要な観点ですね。そういったエンゲージメントと向き合う上でのコツやポイントについて事務局から何か情報発信をされていらっしゃるのでしょうか?
具体的なスキルに関する発信はまだできていません。Wevoxを支店内のコミュニケーション活性化のきっかけにしてほしいことは伝えていますが、そのための方法は現場で考えて実践してもらいたという考えからです。個人的には、マネジメント能力を高めるための集合研修を行い、そこでエンゲージメントを高めるための考え方やスキル、話の聞き方や言葉のかけ方などのトレーニングを行いたいということを考えていますし、金庫内でも提案しています。
職員の「こうしたい」を実現できる環境を整えるのが経営陣の役割
―1年半の活動を通しての気づきや、エンゲージメントという考え方に対する思いについて、改めて教えていただけますか。
「エンゲージメント」という言葉の意味を調べると、「会社と社員という2者が相互に共通の思いを持つことによってお互いに高め合っていく」といった解説が非常に多く見られます。でも私は、この「会社」って何?と思ってしまったんです。さらに言えば「会社」=「経営者」なのか?という疑問ですね。
というのは、「会社と社員」という並列の関係で2者を捉えてしまうと、社員は「会社に何かしてもらいたい」「会社にこういうことを要求したい」「それがないと自分たちのやる気が上がらない」などと解決を会社に求めたり委ねてしまうことになる気がします。しかし、よくよく考えてみればエンゲージメントも会社も、従業員と経営者が一体となって作り上げていくものではないでしょうか。
なにより理想の組織を作っていくのは従業員自身であるということに気づくプロセスがこのエンゲージメントサーベイであり、従業員が「こういうふうにやった方がいいんじゃないか」と思うことがあれば、それを実現できる環境を整えるのが経営者の役割だと、あらためて気づかされています。
そして、失敗しても咎めず、うまくいった際には称賛する仕組みを作ることも経営陣の役割で、ひいてはそれが、エンゲージメントの高まりに繋がっていくのではなかろうかと思ったりするこの頃です。

―すごく本質を突いたお話だと思います。最後に、今後の組織づくりの展望や、組織づくりとエンゲージメントの関わりに関するお考えなどについてお聞かせいただけますか?
この組織で働く職員みんなが、「地域に貢献しよう」「楽しく働こう」「そのためにはどうすればいいか」といったことを「本気」で考えられる組織になっていってほしいと思っています。
本気でやっていると、必ずそれを見ている人がいて、「協力しよう」となってくれます。すると、その一つひとつが集まり、大きな塊となって、大きなエネルギーやパワーを発揮できるような組織になっていけるでしょうし、それが仕事のやりがいにつながっていくのだと思います。今自分がやっている仕事がどんなに小さなことであっても、本気で取り組める職員にみんながなってほしい。そして、それらを人から言われなくても、自分自身で理解し、取り組んでいける職員の集まりになれば、とても強い組織となって、社会からずっと必要とされ続ける信用金庫でいられるような気がしています。
加えて、たとえ苦しいことがあっても1人に苦しみを背負わせない、周りが助けるような思いやりや優しさ、気配りをみんなができる組織であってほしい。そうしてみんなで楽しく、仕事ができる場所こそがいい組織だと思っています。







