
「与える」から「ともにつくる」組織へ。3回のマネジメント合宿で起きた劇的な変化とは?

2018年6月に入社。新卒入社した会社では営業を4年程経験。その後、人事へ。エナリス入社後は人事部にて、エンゲージメント活動の推進をはじめ、企業理念の推進、社内研修や組織開発、人材開発などの業務に携わっている。
組織に関するデータの活用法は、多くの企業にとって課題になっています。エンゲージメントサーベイの測定結果をどう組織づくりに活かしていくか、頭を悩ませている担当者も多いのではないでしょうか。
株式会社エナリスでは、測定結果をもとに実施する「組織単位のディスカッション(対話)」をエンゲージメント活動の軸と据えています。そのうえで、ディスカッション、および、サーベイの分析を踏まえた経営層へのレポート、管理職向けの研修・合宿など、組織課題の解決に向けて、エンゲージメント活動のサイクルを回しています。
サーベイをどう活用し、エンゲージメント活動をどのように社内に浸透させているのか。その取り組みを先頭で引っ張る大友美佳さんに、聞きました。
※取材時(2026年5月)の部署・役職になります。
満足度調査からエンゲージメントへ。「与える」から「ともにつくる」組織へ
—エンゲージメント活動を始めた背景を教えてください。
以前「従業員満足度調査」を実施していたのですが、「満足度」というと、「会社が社員に与える」という一方向のイメージがありますよね。そうではなく、社員自らが組織をつくり上げていく意識を持ってほしい。その考えから、従業員満足度ではなく、エンゲージメントを測定しようということになりました。
メンバーが主体となって企業理念の推進活動を取り組んでいるのが一例ですが、当社はボトムアップを大事にしています。そのため、エンゲージメントの「社員自らがつくり上げていく意識」は親和性が高いと感じています。
最初に、ある別のシステムを導入したのですが、運用面でいくつかの課題がありました。大事なデータをより安心して管理・運用したいと判断し、2023年11月からWevoxに移行しました。Wevoxのエンゲージメントサーベイは、トラブルなく安心して利用できています。UIの分かりやすさ、使いやすさも大幅に改善されました。

—サーベイの結果を、どのように組織づくりに活用しているのか伺いたいです。測定結果をどのように分析するのでしょうか。
エンゲージメントは経営課題の一つである一方で、「経営層だけが取り組むこと」ではありません。ですので、トップダウンとボトムアップを組み合わせるというのが、エンゲージメント活動全体に対する基本的な考え方です。
トップダウンの観点では、当社では組織(本部)ごとにHRビジネスパートナー(HRBP)を配置しており、サーベイの測定後、HRBPが各本部長にアポを取り、課題を抽出し、結果にどう向き合うかを話し合って分析します。その際、年2回作成している経営層向けのレポートを活用しています。
また、並行して、社長、副社長、CFOと結果の検証を含めた意見交換の場も設けています。年に2回行われる全社集会では、経営層からおよそ300人の全社員に向けて、エンゲージメントの課題や数値の推移について伝えてもらっています。
一方、ボトムアップの観点では、課→部→本部という単位でそれぞれ結果をもとに対話を行い、その声を吸い上げながら、本部長以上が集まる場でディスカッションを行っています。
—サーベイの結果をもとにした具体的な取り組みを教えていただけますか。
測定結果をもとに実施する「組織単位のディスカッション(対話)」をエンゲージメント活動の軸と据え、組織づくりに活用しています。
そのディスカッションの中で、エンゲージメントスコアが伸び悩んでいる組織があるという相談が入りました。そこで、人事としても現場に伴走すべく、私も直接話し合いの場に参加し、課長・部長と対話を重ねました。すると、その部署は「できて当たり前」の業務が多く、ミスがないのが前提というプレッシャーのある環境で仕事をしていたという背景がわかったんですね。
そこで、メンバーがどのような思いで仕事をしているのかを可視化しようと、3回シリーズのワークショップを提案しました。強みを診断するツール「クリフトンストレングス®(旧ストレングスファインダー®)」を活用しながら、それぞれが大切にしていることや、サポートしてほしいことなどを開示・共有する場をつくったんです。すると、徐々にスコアが上がっていきました。
もちろんワークショップだけが正解ではないと思っています。部署長のマネジメントの悩みに伴走することもありますし、対話の場をともに設けることもあります。部署の課題によって手法は様々です。お困りごとがある部署から人事に相談してくれる機会が多いので、一緒に課題を整理しながら、どんなアクションを取るべきか考えていきます。

管理職の意識が大きく変わった合宿での対話
—管理職向けの研修を実施しているとお聞きしました。どのような内容なのか教えていただけますか。
導入当初は、Wevoxの使い方やエンゲージメントの基本についての研修を実施しています。導入から2年が経った昨年は、なぜ当社でエンゲージメントに取り組むのか、その背景と理由について企業理念や人材マネジメントポリシーに紐付けた研修を行い、改めてエンゲージメント活動への参画を促しました。すると、同研修が、エンゲージメントについて考える良い結果になったとの声が挙がり、メンバー向けの研修の実施へとつながりましたね。
—企業理念や人材マネジメントポリシーに紐付けた研修とは?
エンゲージメントの肝となる「主体性」と「共同体感覚」は、当社の企業理念や人材マネジメントポリシーにリンクしているんです。例えば、「主体性」は、当社の企業理念のValueの1つである「プロフェッショナルパートナー」、「共同体感覚」は同じくValueの「協奏マインド」と親和性がありました。つまり、エンゲージメント活動というのは何か新しいことではなく、会社が大事にしていることを体現するための取り組みであるのだと。それをアトラエ社の講師の方からお話しいただいたことで、管理職の皆さんにも納得感を持っていただけたのかなと思っています。

—管理職の皆さんにエンゲージメントの重要性を伝えることは難しそうに思えるのですが、スムーズに浸透したのでしょうか。
難しさは日々、感じています。ただ管理職の皆さんは協力的で、忙しい中でも研修に参加してくれるので、じわじわと考え方が伝わっている手応えはあります。
特に効果が大きかったのが、初めて実施したマネジメント合宿です。部長職以上の約30人に集まっていただき、2025年度に計3回、対話の場を設けました。
1回目は昨年8月、1泊2日の泊まり込みで「今感じているモヤモヤを全部吐き出そう」という場です。いろんな議論が交わされた結果、表現は様々でしたが、「主体性」と「心理的安全性」という2つのキーワードに集約されました。
2回目、3回目は「心理的安全性」と「主体性」について、それぞれ1日かけてさらに深掘りしていきました。「心理的安全性とはどんなことを指すのだろう?」「主体性とはどういうことか?」と対話を重ねた形です。
様々な議論を踏まえて、当社における「心理的安全性」を言語化し、さらに、主体性は「全社視点」「飽くなき自己変革」「成長に対する支援」「結果への覚悟」という4つのキーワードに整理することができました。
—管理職の皆さんにとって、じっくり対話する機会は貴重だったと思います。参加者の反応はいかがでしたか。
1回目の合宿のアンケートでは「なぜ集められたんだろう」という戸惑いの声が多かったのですが、2回目から徐々にこの場の価値を感じていただいたようで、3回目が終わった後には「マネージャー一人ひとりが主体性を発揮することが大事だと認識した」「対話する意味が分かった」「部門横断で話す機会をこれからも定期的に持った方がいい」といったコメントをいただきました。大きな変化を感じていますので、今年度もまた実施したいと考えています。
エンゲージメント活動においては、「こうすれば正解」というたった一つの答えがないので、「これをやってください」と明確に言えないもどかしさを常に感じています。各組織によって抱えている課題も違いますし、同じような課題であっても、有効なアプローチは違う。一人ひとりに耳を傾けて、一緒に考えていくしかありません。それが難しさでもありますが、エンゲージメント活動の本質でもあると考えています。
—エンゲージメントサーベイを導入してからの変化について伺います。定量・定性面それぞれでお聞かせください。
定量面の変化は2点あり、1つ目はスコアが著しく上昇したこと。これまでのスコアと比較しても上位5%に入る上昇幅だと伺いました。全社集会で経営層からエンゲージメントの重要性を伝えたり、管理職の合宿をはじめ対話する場を設けたりしたことが、スコアアップに寄与したのかなと考えています。
2つ目は、導入2年後に行った意識調査の結果です。「エンゲージメントに対する意識が変わりましたか?」という質問に対し、管理職の約8割、管理職以外でも約半数が「意識が向上した」と回答しました。加えて、約9割の管理職は「組織改善のために具体的行動に移した」と回答しました。エンゲージメント活動開始時に比べると、大きな成果と言えるのではないでしょうか。
また、意識だけでなく、実際の行動にも現れてきているのも嬉しいですね。管理職の皆さんは率先して挨拶するなど、身近なところから行動も起こしています。

目指すのは「健康診断」感覚でサーベイを受けること
—取り組みを重ねてきた中で、エンゲージメント活動の価値が社内に浸透してきたのですね。
正直なところ、まだ全社員と価値を分かち合えている状況とは言えず、これからが正念場だと思っています。サーベイのスコアは順調に上がってきた一方で、ここ一年は横ばいの状態にあります。ここからが本当の勝負です。
エンゲージメントの重要性が社内に広がっていくことで、仕事は単にご飯を食べるためのものではなく、やりがいのあるものなのだと感じてもらう。内発的な動機が生まれ、社員一人ひとりの人生を豊かにすることにつながっていく。そんな状態を目指して、今後も活動を続けていきたいですね。
—最後に、今後の展望をお聞かせください。
サーベイに対する社内の捉え方を少し変えていきたいなと考えています。「スコアを上げなきゃいけない」とプレッシャーを感じるのではなく、健康診断を受けるような身近な感覚で向き合ってもらえる状態を目指しています。
また、今年度はメンバー向けのエンゲージメント研修を実施する予定です。管理職が合宿形式で行ったような対話を、メンバー同士でもやってもらいたいですね。
エンゲージメント活動は人事部だけでできるものではなく、経営層、管理職の皆さんの協力体制があってこそ、成り立っています。皆さんが協力的なことをとてもありがたく感じています。今後も、社内の理解と協力を得ながら、エンゲージメント活動をさらに前進させていきたいです。








