
【連載#5】これからの管理職の重要ツールパルスサーベイをフル活用しよう【輝くチームの6エッセンス】

大学卒業後、芝浦工業大学大学院 工学修士課程修了。日本能率協会コンサルティングにて企業・組織の改革・改善活動の支援に関わる。専門は、研究開発、商品開発、新規事業開発、事業改革など企業・組織内での「新しい動き」をつくる活動を中心とする。また人と組織の力を最大限に引き出す支援として、キヤリアビジョン開発、コーチング、ファシリテーション、リーダーシップ、社内コンサルタント養成などのヒト系ソリューション事業を開発してきた。2009年独立。現在までエグゼクティブ・コーチング、職場開発(チームスキル)、社内改革推進者養成や内製化など企業や団体の改革を支援している。2012年一般社団法人チームスキル研究所を設立。その後、Wevox組織・人財アドバイザー、一般社団法人経営支援機構 技術顧問などを兼務。現在に至る。
変化の時代において、チームをマネジメントする難易度や複雑さは増す一方。そんな中で、ビジネスの第一線にいる管理職にはどのようなマネジメントが求められているのでしょうか。本連載では、数多くの管理職に「チームスキル®」を伝授してきた田中信さん(マコさん)が、「輝くチーム」を生み出すための6つのエッセンスをお届けします。悩める管理職必読です!
第四回のふりかえり:様々な観点での対話が重要
こんにちは。チームスキル研究所の田中信です。第4回では職場のメンバー同士がチームについて知る機会づくりについて、代表例として「チームスキル・メンバーチェックリスト」を用いたスケーリング型対話をご紹介しました。

この対話ワークを実践すると、同じ職場にいるメンバーでかつ一緒に仕事をしているにも関わらず、人によって「職場をどう見ているか」に大きな違いがある事に気づくことができます。職場やチームの状態をよりよいレベルに高めていくためには、このような対話を様々な観点で行うことが重要です。
参考までに「チームスキル・メンバーチェックリスト」に載せていない対話テーマ例を以下にご紹介します。
●「私はワークライフバランスを最適化するために必要となる情報を職場メンバーと共有し、活用できている」
●「メンバーはお互いの負荷状況を知っており、必要に応じてサポートしあう環境が整っている」
●「メンバーは、各自のお互いの組織貢献度合いについて的確に把握しており、適時・適切なフィードバックができている」
●「私の部署では、業務の最適化について、お互いの役割や立場を越えて、意見を出し合い改善できている
●「私の部署では、マンネリ化しているコミュニケーション方法や仕事のやり方についてメンバーから疑問や問題の提起ができ、かつ職場で対応策の試行ができている」
●「私の部署では、期の節目で職場・チームの運営方法についてメンバー全員で振り返りを行い、よりよい職場にするための打ち手にチャレンジできている」
対話テーマ(質問内容)の捉え方はメンバーに任せる
質問を用いた対話ワークを実施する場合、管理職がメンバーから「この質問の意味はどう捉えたらよいですか?」と訊ねられることがあります。このようなとき「部下を正しくリードしなくてはいけない」という使命感の強い管理職は、メンバーが回答しやすくなるように自分なりに質問を解釈して説明します。
しかし、このサービス精神をガマンして「質問の解釈はメンバーに任せる」ことが実は大切なのです。その理由は、メンバー各自の「質問の解釈の違い」から来る意見の相違からも、職場・チームとして学ぶことがあるためです。
管理職による詳細な説明をすることで、せっかく職場のもつ多様性が表現される機会を逸してしまいます。質問内容の解釈のバラツキが大き過ぎる場合は、改めてテーマを絞った設問をすればよいのです。管理職からの説明は最小限にして「まずは質問を読んで思ったままに回答してみて」と返事をしてあげることをお勧めします。

継続的に職場の状態をモニタリングする
職場・チームを多様な観点で見ていくことと同時に重要なのは、「継続的に」モニタリングしていくことです。理由は職場・チームは、外部・内部環境の変化に応じて日々刻々変化してくためです。チーム状態の変化を継続的にモニタリングすることで、変化に対応できる組織づくりができるようになります。
近年、Wevoxなどの管理職が職場状態を週単位(最短)でモニタリングできるパルス・サーベイも充実してきました。チームスキル・チェックリストの進化系として、パルス・サーベイの結果や設問を活用しながら職場対話を行うことで、メンバー各自の状況を共有したり、職場品質を高めるための打ち手を試行錯誤することが可能になります。
このようなモニタリング・ツールは具体的にどのように活用できるのでしょう。
(まだ、パルス・サーベイを利用されたことがない方は、無料トライアルなどを用いて職場メンバーと体験してみることをお勧めします)
これまで〝管理職の感性まかせ〟になっていた組織状態の把握
エグゼクティブ・コーチングや管理職トレーニング、職場向けの組織開発ワークショップなどのご支援を通じて感じるのは、部下の捉え方が管理職によって大きく異なることです。部下を自部署の目標を達成するための単なる道具として捉えている人がいる一方で、部下一人ひとりを現在及び将来において組織の中で能力を最大限に発揮する可能性をもつビジネスタレントとして捉えている人もいます。
このような人の捉え方の違いは人・組織の状態を把握する観察力の違いとして現れてくるようです。このコラムの第2回でご紹介した「職場でメンバーの人的側面仮説インタビュー」を実施した感想を管理職に聴くと、どのような人の捉え方をする人なのか、その傾向をある程度は掴むことができます。
人の気持ちや組織の状態を観察することが不得意な管理職の多くは、上長や人事から「もっと部下の気持ちに寄り添えるようになってほしい」「メンバーがもっと活気ある状態の職場にしてほしい」などのフィードバックを受けています。しかし本人はビジネス成果を出すことへ関心は高いものの、人の気持ちや組織の雰囲気には余り関心がない。このような人の気持ちや組織状態に関心を示しにくい管理職たちに、「もっと人の気持ちに敏感になれ」「職場の雰囲気をもっとよくする方法を考えて」とフィードバックしても、なにをどうすればよいのか分からないで困ってしまうことでしょう。
組織状態の把握が不得意な管理職にも見える化でサポート
組織状態を見える化するモニタリング・ツールは、ビジネス成果重視の管理職たちにも、自分達の職場状態を定量的に把握する機会を提供してくれます。今まで「人の気持ち」「職場の雰囲気の観察」といった曖昧で感覚論的な印象だった領域が、定量データで把握でき「管理の対象」として認識できるようになります。
実はこれまでも従業員意識調査や満足度調査などの組織状態を定量化するツールはありました。しかし、この分野の「調査」は実施頻度が一、二年ごと1回であり、実施から報告書のリードタイムに一定期間かかり、設問数が多く、管理職へのデータ開示や結果の解釈が難しいなど、第一線の管理職が自身の組織状態をモニタリングするツールとして活用するためには限界や障壁がありました。
近年のモニタリング・ツールの良さは、「パルス・サーベイ」と呼ばれるように、短い期間であれば一週間おき、長くて1ヶ月毎に組織状態の変化を把握できることです。そして、パルスサーベイの主たる利用者は管理職と職場メンバーであることが大きな違いとなります。
管理職とメンバーが、自分たちの職場状態についてメールで送られてくるアンケートに回答すると、結果はサーベイ・ツールにより定量化されます。その結果を管理職とメンバーが一緒に見ることで、自分たちの職場・チームをよりよくしていくためのチャレンジ&振り返りをする事が可能になるのです。

テレ(リモート)ワーク環境で重要性が高まるモニタリング・ツール
テレ(リモート)ワークの導入が進み、メンバーの働きぶりを目で見る機会が減ってしまい、職場マネジメントに不安を感じている管理職の方も多いと思います。このようなリアルに見えないメンバーがどんな状態にあるのかを把握するためにもモニタリング・ツールを活用できます。
今まで、職場での仕事ぶりや雰囲気を観察しながら、メンバーへの声がけや職場への関わりをしていた管理職にも、モニタリング・ツールを使ってメンバーの状態を間接的に把握することで、現状に見合った職場マネジメントの打ち手を考えることができます。
今後のテレ(リモート)ワーク環境において、職場メンバーの状態を継続的に把握できるモニタリング・ツールの重要性が高まっていくでしょう。
データの変化をみて、職場・チームで何を話題にするかを決める
パルス・サーベイ結果を利用することで新しいアプローチが可能になります。従来の意識調査などで行っていた調査結果をもとに組織の問題・課題を設定しなくてもよくなりました。代わりにパルスサーベイの結果を職場メンバー全員で観ながら対話を行うことで、サーベイ結果で現れた数値の裏にある実態(メンバーが職場をどう見ているか、メンバーの気持ちの変化、どんな困り事や期待があるのかなど)を明らかにしていくプロセスを設定できます。この対話プロセスを用いて、職場・チームをよりよくしていくための話題を具体的に設定していくことができるのです。
パルス・サーベイ活用時の注意点
組織状態のモニタリング・ツールであるパルス・サーベイを活用する場合の注意点をみておきましょう。
(1) サーベイ結果の数値にこだわり過ぎないこと
サーベイ結果は設問領域ごとに数値が出てきます。この数値を単純に比較すると、毎回同じような領域が組織の問題点のように見えてしまいます。領域間の数値比較より、同一領域の経時的変化を重視して観ていくと、組織状態の変化がみえてきます。データ活用は、タテ比較(設問ごとの比較)よりヨコ比較(時系列の比較)と覚えておきましょう。
(2) データ開示度を段階的に上げる
最もよいデータ活用法は、サーベイ回答は記名式、職場のサーベイ結果を職場メンバー全員で見ることができるようにする使い方です。記名式にすることが自分のアンケート回答に責任をもつことを促進します。結果を職場メンバー全員が見られるようにすることで、自分たちの職場・チームを自らよくしていく姿勢づくりが育つ環境を提供します。もちろん、フル開示には抵抗感のある会社もあるので、段階的に情報開示を目指していきます。

図2: パルス・サーベイ結果を用いて、対話テーマを設定した例
(3) 職場・チームのレベルアップ課題を層別化し対応すること
パルス・サーベイの活用では、サーベイ対象職場の管理職とメンバーがサーベイの結果について対話をして、いまの職場のよい点と職場がレベルアップするための課題を抽出します。その際に、会社のしくみや制度についての課題提起だけで終わらせず、メンバーが自分たちで出来ることはどんどん改善することが大切です。ちなみに、我々は課題を、衣服のサイズ表示を模した分頼(※)によって層別化して、解決を促進することをお勧めしています。(※S:Self<自分>で対応する/M: Managerのリードで対応する/L: Labo<部門>で協力して対応する/XL:部門責任者の上長を巻き込む/O:Organization <組織>で対応する、という分類をして職場課題に対応する)
パルス・サーベイの活用は、結果の右肩上がりを目指すと失敗する
従業員意識調査や満足度調査では、結果数値を高めることを前提に運用されているようです。結果として数値が高止まりしたり、「どちらでもない」の回答値に値が集中してしまったりして、その後の運用に苦労している例も見られます。パルス・サーベイでは「結果としてのデータは上下する前提で運用する」ことが大切です。もちろん高い結果になることは悪いことではありませんが、職場の置かれている内部及び外部の環境によって状態は変化し続けているので、その状態変化をモニタリングするためには、数値の上がり下がりに一喜一憂しないことが大切です。
ある程度、数値が高い状況になっている職場では、メンバーの回答の前提について再度対話を行うことで基準を厳しくしてもらうことで、平均値を下げることができます。このような基準を厳しくする過程を繰り返しながら、管理職とメンバーが一緒に職場のマネジメント品質を改善し続け、高めていくことが真の目的となります。
次回(第6回:最終回)は進化し続けるチームづくりについてみていきたいと思います。







