
参加者90%の主体性が高まった「エンラボ」に学ぶ、社内コミュニティを育てる6つの工夫

人事担当。2025年7月のWevox導入以降、「エンラボ」運営の中心を担う。メンバー全員のコメントに必ず返信するなど対話を大切にし、誰も置き去りにしない場づくりを意識。エンゲージメント活動の鍵を一言で表すなら「愛」と語る。

人事担当。エンゲージメント活動を推進し、エンジニア中心の組織文化に合わせた工夫を重ねてきた。エンラボメンバーと組織責任者の連携づくりに力を入れ、現場発の「自走」を目指している。
組織づくりのために立ち上げた社内コミュニティをどう盛り上げていけばいいのか。こうした課題と向き合い、着実に社内コミュニティを育てているのが、ミラクシア エッジテクノロジー株式会社です。
エンゲージメント向上に向けた活動をスタートして、ちょうど1年。ミラクシア エッジテクノロジー株式会社では、いま「エンラボ」という社内コミュニティの名前が社内の共通言語になりつつあります。
「エンラボもありますし」「エンラボでやってます」——社員が自然と口にするようになったこの社内コミュニティは、どのようにして生まれ、育っていったのか。人事の尼﨑さん・堀江さんに、その舞台裏を聞きました。掛け合いの中から見えてきた、社内コミュニティを育てるためのヒントとは?
始まりは職場の雰囲気への意見
— まず、エンゲージメント活動をスタートした背景として、どのような課題感があったのでしょうか?
尼﨑: 経営層に最初にこの活動の話を持っていった時は、退職者や休職者が一定数発生していた時期でした。退職する社員から職場の雰囲気についてネガティブな意見を言われることもあり、心理的な安全性が低いんじゃないか、という課題感がありました。
堀江: 昔からの組織風土として、「ここができてないよね」みたいな減点思考の文化が根強かったんです。新しいチャレンジをしようとしても「ちゃんと検討したの?」となってしまう。あとはエンジニアが9割の会社なのもあってか、オフィスが本当にシーンとしてるんですよ(笑)。みんなカタカタとキーボードを打ってるだけで、雑談したいけどきっかけがない、みたいな状態でしたね。
尼﨑: 従業員満足度調査を前からやっていたんですけど、結局「取るだけ」で現場には何も反映されていなかった。だったら、社員と会社がちゃんと繋がる仕組みを作ろう、という話になり、Wevoxを導入しエンゲージメント活動をスタートさせました。

— サーベイの開始だけでなく、社内コミュニティ「エンラボ」も同時に立ち上げた狙いを教えてください。
尼﨑: 一番は、"やらされ感"のある活動にしたくなかった、というのが大きいです。会社が一方的に旗を振るのではなく、社員自身が「自分たちの職場をよくしていく」当事者になれる場をつくりたいと思っていました。
堀江: 押し付けにしたくない、というのは最初からずっとあって。「組織の責任者ではなく社員が主体的に動ける活動にしよう」という想いから、各チーム1人、約20人の社内コミュニティとして立ち上げたのが「エンラボ」です。
— エンラボの活動の全体像はどうなっていますか?
尼﨑: 4ヶ月に1回のWevoxのサーベイと、各職場での対話会、そしてエンラボという3つを組み合わせたものが基本的な活動となっています。エンラボは職場での対話会の前後に設定していて、サーベイ結果や対話会の内容についてシェアしています。
堀江: あとは、社内チャットにエンラボのチャンネルを作り、そこで対話会の感想を投稿してもらったり、情報交換を行っています。私たち人事部は定常的にエンラボメンバーの活動をサポートし、Wevoxを活動のアシスタントのような存在として、活用しています。

— エンラボはどのような影響を組織に与えていますか?
尼﨑: 2025年度のメンバーに取ったアンケートでは、約90%のメンバーがエンゲージメントへの意識が高まった、チームのために自ら考え行動する主体性が高まったと答えてくれました。「同じ組織に属している意識が強まった」「上司も含めて本音で語れるいい活動」「もっと長い目で、継続的に行ってほしい」といった意見もいただいています。
堀江: あとは、「今日エンラボだから」「この前エンラボで話したんだけど…」と、エンラボが社内でも共通言語として広まっているのも実感しています。エンラボをきっかけに、職場でのエンゲージメント活動が活性化しているのは間違いないですね。

— 社内コミュニティが1年でそこまで定着するのは簡単なことではないと思います。ここからは、どのようにエンラボの活動を育てていったか、ポイントをお聞きします。
尼﨑: はい。少しでも、他社のみなさんの参考になれば幸いです。
ポイント1:「委員会」から「ラボ」へ ― ネーミングと雰囲気づくりで"やらされ感"をなくす
— 企画当初はエンラボではなく、「エンゲージメント向上委員会」という名前だったそうですね。
堀江: そうなんです(笑)。社内では「〇〇委員会」と名付ける古き良き日本企業的な文化があったので、最初は自然とそうした名前になっていました。でも社長から「エンゲージメントを上げようと経営側が言い過ぎるのはどうなんだろう」「職場から活動が生まれてきてほしい」という声があったんです。
尼﨑: それで「エンラボ(エンゲージメント・ラボ)」に名前を変えました。研究所とか実験室って、なんかこう、自分たちで試してみる感じがするじゃないですか。エンジニアの会社なので、そのニュアンスがしっくりきたんですよね。

— 資料の作り方にもこだわったとか?
尼﨑: エンゲージメント活動について全社説明会用に資料を作った時、最初は結構ロジカルな、当社らしい真面目な資料だったんです。でも人事部内で見せたら「なんか、全然楽しそうじゃないね」って意見があって。
堀江: 何回か作り直しましたよね。
尼﨑: エンジニアってゲーム好きな人が多いので、「ワクワクしながら働いてますか?」みたいな、ゲームに例えた入り方に変えたんです。ロジカルさは残しつつ、楽しそうな雰囲気も出す。そのバランスをかなり意識しました。

ポイント2:メンバーは若手リーダー中心にし、上長の伴走体制を構築
— エンラボのメンバーはどうやって選んでいるんですか?
堀江: あえて組織の責任者ではなく、職場の若手リーダー層くらいの人たちにお願いしています。組織責任者がその場をリードするんじゃなくて、職場に近い人たちが自分たちでいい職場を作っていく。そんな狙いがあります。ただ、選ぶのは我々ではなく、組織責任者の人に、エンラボメンバーとなる若手リーダーに声を掛けてもらうようにしました。
尼﨑: 組織責任者が進めてしまうと、どうしても「上が言ってるから」という空気になりがちです。近いレイヤーの人たちが主体的に進める方が、周りも協力姿勢になりやすいんじゃないかな、と思っています。
— とはいえ、エンラボメンバーが孤立してしまうリスクもありそうですが。
堀江: そこは結構気をつけました。組織責任者にも事前に説明会を実施して、エンラボメンバーを職場でしっかりサポートしてもらうようにお願いしています。どういう狙いでこのコミュニティがあるのか、どういうサポートをしてほしいのか、どういうメンバーに声をかけてほしいか…といったことを丁寧に説明しました。

尼﨑: その成果もあってか、実は1年目にすごく嬉しかったことがあります。年度末にエンラボメンバーにアンケートを取ったとき、「組織責任者からの協力が得られなかった」という項目の回答が、まさかの"ゼロ"だったんです。それだけじゃなく、協力が得られたことで対話会がうまくいった、組織責任者との信頼関係も作れた、という声もありました。意図していなかった副産物でしたね。
堀江: 組織責任者の人たちが、しっかりとサポートしてくれた証拠でもあり、感謝していますね。職場に完全にまかせきりにするのではなく、誰に、どのようなサポートを求めているか、丁寧にコミュニケーションを取るのも大切なのだと学びました。
ポイント3:今ある仕組みに"乗せる"
— 「職場対話会」は、もともとあった「職場懇談会」を活用しているそうですね。
堀江: はい、「職懇」って呼んでるんですけど、課やチーム単位で毎月集まってお菓子を食べながら雑談する仕組みが社内には元々ありました。それを年3回分は、エンラボメンバーが旗を振り、エンゲージメントについて話す場として活用させてもらっています。
尼﨑: 新しく何か機会を作ると、それだけで現場の負担になってしまいます。今ある仕組みの中に組み込むことで、負担も軽減できるし、進めやすくもなる。ここは結構意識して話し合いましたね。
— 負荷の調整という意味では、参加のスタイルも柔軟にされているとか。
堀江: 受託の仕事だと工数がそのまま収益構造に関わってくるので、1時間でも現場の時間をもらうのは実は結構コストが大きいんです。なので、たとえば2025年10月のエンラボは必須参加ではなく任意参加の「エンラボ・ライト」にしています。職場での対話会を自分たちで進められる人はそのまま任せて、不安な人だけ参加してもらう、というように調整しました。
ポイント4:反応する・拾い上げる ― 100%レスポンスというこだわり
— 定着のために続けている習慣はありますか?
尼﨑: エンラボメンバー用のチャットグループがあって、対話会の感想などを一人ひとり投稿してもらうんですが、それに100%、必ず返信するというのを自分の中のルールにしています。
堀江: 忙しくてもそこだけは絶対にやる、ってやつですよね。
尼﨑: はい。20人ちょっといるので結構な数になるんですけど、一人ひとりの内容をちゃんと読んで、その人がどんな気持ちで対話会に臨んだのかを自分なりに解釈して返す。ここは結構、気持ちを込めてやっている部分です。
堀江: こういった活動って、誰からもレスポンスがないというのが一番やってて辛いんですよね。「これって何の意味があるの?」と少しでも疑念が生まれると、活動がどんどん収縮していってしまう。私たちのような運営メンバーが積極的に反応をすることで、活動を盛り上げていくのはとても大切なポイントかと思います。

— エンラボのチェックインでも同じようなことをされているとか。
尼﨑: そうですね。エンラボの冒頭で「最近嬉しかったこと、褒めてほしいことは?」とチャットに書いてもらって、1人ずつ拾って返していくんです。「〇〇大会で優勝しました」って書かれたら「何の大会ですか!?」って食いついて、聞いたら麻雀大会だった、みたいな(笑)。
堀江: 活き活きしてますよね、その時間の尼﨑さんは。
尼﨑: 正直、仕事の中で一番楽しい時間かもしれません。誰も置いていかない、全員が楽しく参加している場にしたいと思っています。来たけど一言も話さずに終わる、というのだけは絶対に避けたい。そのための雰囲気づくりは大切にしていますね。

ポイント5:運営サイドも、チームで支え合う
— 運営の中で難しさを感じるのはどんなところですか?
尼﨑: 僕個人としては、「思いはあるんだけど、それを効果的に伝える」のが難しいなと感じています。伝えたいことをバーッと資料に書いてから見返すと、「あれ、これ本当に今回いる?」ってなることも結構あります。自分が伝えたいことと、相手(エンラボメンバー)が今求めていることのバランスを取るのは、地味に難しいところです。僕はどちらかというと想い先行で突っ走るタイプで(笑)。
堀江: そこは尼﨑さんのいいところでもあるので、私は一歩引いて「それ本当にいる?」って冷静に見直す役割になることが多いですね。お互いにフィードバックし合いながら、資料1つとっても丁寧に作っています。
— 伝え方をどうするかは、やはり気を使うところですよね。
尼﨑: はい、それとはまた別に、経営層の理解促進は正直まだ難しいと感じています。職場ではしっかり火が灯ってきている実感があるんですが、その熱量をどこまで経営層に伝えられているか、自分の中でまだ納得できていません。
堀江: 職場サイドでも、アクションが継続しきれなかったり、数字にすぐ反映されなかったり、という課題は正直あります。「株価と一緒」という言葉を読んだことがあるんですが、まさにそうで。すぐに目に見える成果を求めたくなるけれど、腰を据えて取り組むしかない部分もありますよね。
尼﨑: 継続性が大事だからこそ、我々のような人事やコミュニティを運営する側も「チーム」で取り組むことが大切かと思います。私1人だけだったら、長く続いていないでしょうね。
堀江: 尼﨑さんは私にないものを持っていますし、逆もしかりかと思います。人事といっても全てを完璧にこなすことは無理なので、お互いの強み弱みを理解し合いながら、チームで取り組むことが長く続けるコツかなと思いますね。
ポイント6:エンゲージメント活動で最も大切なのは「愛」
— エンゲージメント活動において最も大切なことは何だと思いますか?
尼﨑: これ、難しいですね……(笑)。ずっと2人で「ワクワク、ウキウキ」とか言い合っていたんですが、あえて一言で言うなら、僕は「愛」だと思っています。

— 「愛」ですか。
尼﨑: はい。この活動は、愛がないとできないと思っています。愛着でもあるし、愛情でもある。心から社員のことを好きじゃないと、たぶん嘘だと見抜かれてしまう気がするんです。偽りのない、本気の向き合い方が必要な活動だなと。
堀江: 資料を作っている時も「これ、あなたの気持ちがちゃんと反映されてる?」「これ、つまんないと思って作ってるでしょ?」って、お互いにツッコミ合ってますね。
尼﨑: 「そこに愛はあるんか」って、本当に常に問いかけてます。
目指すのはエンラボが自走すること
— 今後、エンラボをどうしていきたいと考えていますか?
尼﨑: 最終的には「自走」ですね。この先もずっと人事が介在し続けるのではなく、職場が自分たちでエンラボを回していける状態を目指しています。
堀江: そのためにも、エンラボメンバー同士で、もっと直接コミュニケーションを取っていけるようにしていきたいですね。今はどうしても尼﨑さんが仲介する形になりがちです。「こういうアクションで困ってます」「それなら前にこんなアクションが良かったですよ」って、エンラボメンバー同士で会話が生まれる状態が理想です。
尼﨑: 実は6月のエンラボで、その兆しがちょっと見えたんです。チェックインで、いつも僕が拾って返すところに、他のメンバーから「それ、何が面白いんですか?」ってツッコミが入ったんです。普段は会わない、ほとんど初対面同士のメンバーなのに、そういうやり取りが自然に生まれていました。すごく嬉しかったですね。
堀江: そういうコミュニケーションが増えていくのが理想ですね。とはいえ、一朝一夕では実現しないのも、この1年を通じて実感していることです。しっかりと継続して続けていく、そして私たちの気持ちが資料や言動の一つひとつにしっかりと乗るようにしていく。そうやって、エンラボがこの会社でずっと続くコミュニティに育っていくようにしたいですね。
尼﨑: そうですね。愛を込めて、これからもエンラボを育てていきます!








