
「だって楽しいから!」が原動力に。相互理解ワークショップから始まるチームづくり
近年経営指標としても注目を集めるエンゲージメントは、1つの決まった形があるわけではなく、10の組織があれば10通りの形が存在します。このシリーズでは、エンゲージメントサーベイ「Wevox」と共に組織づくりを行う企業の様々なエンゲージメントストーリーを届けていきます。
今回は、「ヘルスケアの進化をデザインする。」を企業理念に掲げ、臨床検査機器、検査用試薬、ソフトウェアなどの開発・製造・販売・輸出入を行うシスメックス株式会社のエンゲージメントストーリーをご紹介します。同社は全社的にエンゲージメントサーベイを実施していますが、今回取り上げる秘書室ではチーム独自に「Wevox」を導入し、「価値観共有」「相互理解」をキーワードにワークショップを実施。組織長を巻き込みながら組織エンゲージメントの向上を実現しています。今回は、その活動を牽引した4人のメンバーに伺いました。
モヤっとしていた組織の課題を見つけたかった
福田:私たち秘書室が本格的に取り組みを始める前から、社内ではエンゲージメントに着目していましたよね。
平川:エンゲージメントサーベイの実施や、企業風土調査が会社主導で全社的に行われていますし、過去、その結果に基づき秘書室でもいくつかの施策に取り組んでいました。エンゲージメントやチームビルディングについて秘書室の上司から話を聞くこともあり、スコア的には改善されているような説明を受けるわけですが、正直なところ、メンバーとしては全然実感がなかったんです。
福田:何が良くて、何が悪いのかもよくわからなかったので、組織の課題もはっきりせず、チームの中がくすぶっていたというか…。
平川:その中で1つわかりやすい課題としてあったのが、今の上司たちは秘書室業務の経験がない方々で、業務理解や裁量、評価といった部分で現場の我々とちょっとズレがあったんです。そんなことを感じていたタイミングで、秘書室の年度計画としてエンゲージメント向上の取り組みを進めることになり、福田さんと私が任されることになりました。
棚橋:確かに当時は明確な課題があるというよりは、なんだかモヤっとしていましたよね。

鳥越:だからまずは、自分たちの状況を理解しようと。
福田:そう、最初の目的は「課題を見つけること」でしたね。
平川:全社的に実施していたエンゲージメントサーベイは2年に一度の実施で、継続的に定点観測できませんでした。だから、継続して見られるもので、なおかつ費用があまりかからないものをチームで始めてみようと。それが「Wevox」でした。鳥越さんは最初から「Wevoxはすごくやりやすい」とおっしゃっていましたよね?
鳥越:手軽ですよね。質問の数もそんなに多くないので5分もあれば終わりますし。細かい項目ごとにも、職域ごとにも見られるため、その後のヒアリングもしやすいです。
棚橋:私は、それまでと違って毎月の実施なので、中身がどうこうよりは、定期的にエンゲージメントという言葉に触れる機会があるのがいいなと思いました。もちろんスコアの変化を見ることも大事ですが、目に触れることでエンゲージメントについて意識できる機会が毎月ちゃんとあることが重要なんだなあと思っていましたね。
「エンゲージメントを上げるため」でなく、「楽しいから」やる
平川:出てきたスコアに対しての私の印象は、「やっぱり」というものでした。「こういうことが課題だろうな」とうっすら感じていたことが数字としてわかって納得した部分はありましたね。
福田:じゃあその次に何かアクションを、と思ったときに、やっぱり私たちは初心者で、何をしたらいいのかわからなかったんですよね。それでWevoxのカスタマーサクセスに相談をして、できることから始めてみようというのが最初のアクションでした。
棚橋:その流れで、まず実施したのが「相互理解のワークショップ」です。
平川:エンゲージメントをどう向上していくかを、Wevoxカスタマーサクセスの方に教えてもらう中で印象的だったのが、第一段階として「相互理解」が必要で、それをベースに「課題解決」へと向かう方法が有効だという話でした。
鳥越:前提としては、秘書室の「人間関係」のスコアはもともと良かったんですよね。
平川:そうですね。ただ、本当にみんなのことを分かっているのか?と、いったん立ち返って足元をもう一度固めようと思ったんです。それで「価値観の共有」を目的にしたワークショップを企画しました。

鳥越:いざやってみたら、お互いに新しい発見がたくさんありましたよね。違った一面を知れたり、「こういうことを大切にしているんだな」みたいなことがわかったりして。
平川:毎日一緒に働いているのに、知らないことが多いなと思いましたよね。改めて、チームビルディングにおいてはすごく良い経験でした。
鳥越:こうした価値観の共有を踏まえて相互理解に繋げるために、2度目のワークショップを開催し、個々人が目指す組織のイメージを共有するための「こんなチームになりたいんだ!ワークショップ」と、メンバーのどんなことが好きで、どうあってほしいのかを共有する「I Like I Wish ワークショップ」の2つを実施したんです。
棚橋:このワークショップは平川さんが選んだんですよね?
平川:はい。一人ひとりのことは分かったけれど、組織の中でどういう役割を担いたいのか、どういうチームの一員として働きたいのかといった「向いている方向」がズレていたら、すれ違いが起きると思うんです。向いている方向がわかれば、「なんでそういうことを言うんだろう」という場合でもその発言の意図がわかる可能性があるし、もっと理解し合えることに繋がるはずです。ここについても、カスタマーサクセスに相談をしてワークショップの設計を考えました。

福田:やっぱり、もともとチームのメンバー同士の仲が良かったので、言いたいことは言えていると思っていたじゃないですか。でも今回のワークショップを通じて、どこかで「自分が悪者になるのでは」みたいな気持ちもあって、言い切れていない部分もあったんだなあと感じましたね。
平川:その意味では、価値観の共有や相互理解を通じてお互いがオープンになることができ、結果としてチームワークの向上は間違いなく感じましたよね。
棚橋:ポイントは、ワークショップ自体が「楽しかった」からだと思います。過去に社内でも「血液型占い」とか「動物占い」、真面目なところだと「ストレングスファインダー」などをやって、「これは誰の結果でしょう」なんてクイズ形式でワークショップをやったことがあったじゃないですか。あれがすごく楽しかったので、その経験から「相互理解のワークショップは盛り上がる」というイメージを持っていたのも大きかったというか。
福田:すごく盛り上がりましたよね。
棚橋:だから、相互理解ワークショップが開催されると聞いただけで、「間違いない、絶対に楽しい!」みたいな雰囲気があったというか(笑)。もちろん事務局は大変だと思いますが、参加する側としては楽しいのがわかっているので、テンションが上がるというか、参加したくてしているというか。
鳥越:そう、「エンゲージメントを上げるために参加する」のではなく、純粋に「楽しいからもっとやりたい」、そんな感じでしたよね。

福田:付け加えるなら、ワークショップを通じて相互理解を固める中で、こうやってお互いを理解したり対話できる関係づくりを求めていたことに気付いていった、そんな感じだと思います。
ワークショップを通じて初めて知った、上司の熱い思い
鳥越:今年の2月に実施した2回目のワークショップについては、組織のトップも含め部課長も全員に参加してもらいましたよね。
棚橋:実はここは大きなチャレンジだったと思っています。1回目については、あえて上司は呼ばなかったんですよね?
平川:そうなんです。先ほどお話ししたように、上司たちと現場とのズレが課題の1つであることが「Wevox」を実施する中でも見えてきて、そこは何か取り組む必要があると思っていました。ただ、初回のワークショップから本部長、部長に参加してもらうと、愚痴や文句を言うような場になってしまったり、うまくオープンになれないのではないかと危惧したんです。そこで第1回は課長以下を参加メンバーとし、開催しました。
棚橋:現場のメンバーが上司と話す準備ができてない、という感じ?
平川:そうですね。それで実務メンバーのみで1回目のワークショップをやってみて、まずはそのメンバーで相互理解が深め、チームの雰囲気も良くなったときに、さらに次にいくには上司としっかり向き合って話をしたいなって思ったんです。
福田:私たちが疑問に感じていたことについて、どういう意図があるのか、その考えを理解したいと思ったんですよね。

平川:やっぱり上司も含めたいち組織として改善していきたいと思いましたし、だからこそ課題を共有したい、上司のことを分かりたい、私たちのことを分かってもらいたい、そんな気持ちにメンバーもなっていったと感じました。
鳥越:ここはすごく印象に残っているのですが、相互理解の活動を積み上げたことによって、「理解することから始める」のが大事だと気付けたことですよね。メンバー同士のやりとりを振り返っても、最初の頃は「ここが嫌だ」とかそういう話が多かったのですが、途中から「なんでそういう発言や行動をするのか」を理解したいと思うようになっていったんです。つまり、相互理解を積み上げた結果が、僕らの行動変容にも繋がった。
棚橋:本当にそうですね。秘書室は社内では結構クローズドな部門で外から何をやっているのかわかりにくいところがあるのですが、上司の思いを聞いてみたら「秘書室員や秘書室が社内からもっと評価してもらえる組織にしたい」と思っていることが、今回のワークショップを通じてわかったんです。そういう思いがあることを知れたら、お互いの気持ちの通じ方は変わりますよね。

福田:まさに相互理解ですよね。
鳥越:その後、ワークショップとは別で上司にメンバーの思いをぶつけられるディスカッションの場を設けたりもして、お互いにオープンにできるようになりましたもんね。
平川:そういう意味では、お互いに考えを伝え合うための情報収集というか、何を伝えたいかを考える過程において、メンバーの「心の膿」みたいなものも出せたのかなと思いますね。
福田:最近はスコアも高くなっているので、そこを維持するための1つの施策である「デトックスミーティング」も役に立っていますよね。日頃の業務の中で出がちな愚痴を、その場ではぐっとこらえてもらい、2週間に1回開くデトックスミーティングの場で一気に吐き出してもらうんです。
平川:それもやっぱりお互いの気持ちを確認し合える場になっているんですよね。私は係長としてそこで出た意見を課長や部長に伝えることで、改善にも繋げていくようにしています。
福田:あとは、部署の次年度に向けた年度計画については、これまではトップダウンが多かったのですが、今回についてはある部分においてはメンバーが主体的に提案して進めていこうという話になっています。今後はそうしたボトムアップの動きが、「裁量」や「成長機会」あたりのスコアにも表れてくるかもしれませんね。
棚橋:トップダウンで上から落ちてくるものだと、落とされた側は「やらされ感」がありますよね。さらに皮肉なのは、年度計画の場合だと、その中にエンゲージメントの課題まで含まれていたりするんです。エンゲージメントを上げることを課題として上から言われ、その課題解決にストレスを感じると。
鳥越:皮肉な話ですね…。
棚橋:本当にそう。これは笑い事ではなく、そんなよくない流れが会社の中にはまだあるんですよ。これについてはマネジメント側の話にもなってきますが、日々の仕事のやらされ感をなくし、自分たちで考えていける環境が増えていけば、それだけでエンゲージメントの向上に繋がるんだということに気付き始めてほしいなと思いますね。少なくとも、我々の取り組みがその1つの刺激になればと思っているんです。
「Wevoxを導入しているからエンゲージメントが上がる」は大間違い!
福田:最後に、エンゲージメントを高めていくために大事なことについて、皆さんはどんなふうにお考えですか?
平川:棚橋さんがいつも言っている「自分たちで築き上げていくことが何より大事」という話が印象に残っていますね。

棚橋:エンゲージメントを「上げられる側」から「上げようと思う側」にスイッチできた経験は、ものすごく貴重なものだと思うんです。よくあるような、上から「エンゲージメントを上げる施策」を考えるように言われ、考えて、ワークショップをやらされて、無事に終わって評価される、そんなサイクルが続く限りは、本当の意味でのエンゲージメントは上がらないと思うんです。
福田:なるほど。
棚橋:だから、全社で実施しているエンゲージメントサーベイと、秘書室でやっているエンゲージメントサーベイは別物として考えないといけないし、だからこそ自分たちで取り組んでいる「Wevox」のサーベイはすごく大事なものだと思います。
平川:ここも「やらされ感」や「主体性」がポイントになりますね。
棚橋:幸い秘書室では、みんなが「自分ごと」としてエンゲージメントを上げよう、組織を良くしようと取り組めていますが、一方で、同じことを他の部署ですぐにできるかというと、そこは簡単な話ではないと思っています。この状況を作り出せたのは、私は福田と平川が長けていたからだと思っていますし、他のチームでの活用を考えたときは、どうやって実現性を高めるかがポイントになると思いますね。
平川:褒めてもらえて嬉しいですが、本音としては「エンゲージメントに関しては全くの素人」がやったのが良かったのかなって思っています。人事部にいたとか、組織づくりに高い関心があったとかではなく、「ゼロベースで一緒にやっていこうよ」としかできなかったのが、結果的によかったのかなと思います。
福田:私個人としては、「秘書室に来たい」という人を少しでも増やしたいという思いがあるので、そういうチームを目指したいんですよ。
棚橋:「周りに認められたい」というのはすごく大事な視点ですよね。
鳥越:振り返って見て、エンゲージメントを「自分たちの力で上げていけるんだ」と思えたことも、大事な気付きではなかったですか?

平川:そうですね。ただ、それについては自分たちでやってみないと絶対に分からなかったです。やってみたからこそ、組織にとってはすごく大事なことだと気づけましたね。最初任されたときはどうしようかと思ったんですが(笑)、すごくいい経験になっています。
福田:あらためて、根本にあるのは「お互いを知ること」だなあと感じています。
棚橋:本当ですね。だから、いっそのこと日常の全部がワークショップになったら面白いなって思うんですよ。毎日、平時がワークショップ中みたいな感じで、「ちょっと1人で集中しないといけないので一度出るわ」みたいな、そんな働き方も面白いなあって真面目に思います(笑)。
平川:そういう、「楽しいからやりたい」は理想的ですよね。
福田:私自身も、楽しい取り組みだからやっていると思うんです。だから、それに対して他の部署が関心を持ってくれたり、「ワークショップってどんなことをやっているの?」みたいに声をかけられたら純粋に嬉しいんです。だから、インフルエンサーじゃないですが、もっと社内に広めていければいいなあと思いますね。
平川:よく秘書室で話すのは、「ベンチャー企業みたいな部門でいよう」ということで、私たちのチャレンジは小さい規模のものだけど、機動力があるのでやりやすいものでもあると思っています。そういう意味では、1つの成功例としてみんなに伝えたいし、もしかしたら幅広く展開できるのかもしれません。
棚橋:そのときに間違ってはいけないのは、「Wevoxをやっているからエンゲージメントのスコアが上がっている」わけではないということですよね。そういうふうに伝わってしまうのはすごく危険だし、それは本質ではないと思います。まずは僕ら秘書室メンバー全員がイキイキと働けていることをもっと知ってもらい、その取り組みの一環の中にこうしたエンゲージメント向上のための活動があるんだということを、うまく発信していけたらいいですね。







