遊び心で、組織を耕す――ヤマハのボトムアップ型組織開発コミュニティ主催『WAKU WAKU BEE FES 2026』開催レポート
2026年9月18日(金)、ヤマハ株式会社の従業員有志によるボトムアップ型の組織開発コミュニティ「WAKU WAKU BEE」主催の『WAKU WAKU BEE FES 2026』が、本社(静岡県浜松市)で開催されました。
今年のテーマは『PLAYFUL × ORGANIZATION〜遊び心で、組織を耕す〜』。ヤマハグループをはじめ、業界も立場も異なる20を超える企業・団体から約60名が集いました。規模は昨年の約2倍です。
「遊び心」から「関係性」へ、そして「対話」へ。1日をかけて場が少しずつ耕され、人と人との距離が縮まっていく。当日のイベントの過程をお届けします。
オープニング:「うまくやろうとしなくて大丈夫」― みんなの実験の場として
WAKU WAKU BEEは、2025年にヤマハ社内でERG(Employee Resource Group)として承認を受けて活動を始めたコミュニティです。10人の事務局メンバーと40人以上のメンバーが、活動報告会や勉強会、研修づくりなどを通じて学び合い、行動につなげています。
名前に込められているのは、二つの意味です。"WAKU WAKU"は、自分らしくいられる感覚、つながりから湧き上がる気持ち、挑戦への高まり。"BEE(ミツバチ)"は、花から蜜を集めて巣へ運ぶように、ここで得た気づきや学びを職場へ持ち帰り、小さな変化を循環させていく存在の象徴です。
会場に入ると、すでに参加者の皆さんが風船を膨らませたり、壁に紙の花を足しています。準備のように見えていたものが、実はもうイベントの始まりだった――そんな仕掛けで、場は参加者の手によって少しずつ彩られていきました。
オープニングで示されたゴールは、「うまくやろうとしなくて大丈夫。 正解を探さなくて大丈夫。 ここは、みんなの実験の場。 Be Bee! あなた自身の蜜(気づき・学び)を持ち帰ろう!」でした。一人ひとりが自分の"蜜"を見つけに来る場。その宣言から、一日が始まりました。


第1部 PLAYFUL(遊び心):花畑と蜜の瓶 ― 仕事の"鎧"を、ほんの少しゆるめる
第1部のテーマは「遊び心」。チームに別れ、「理想のチーム」をイメージして布の上に"花畑"をつくるワークを行います。絵の具、クレヨン、新聞、雑誌、牛乳パック。素材は自由に選べます。各自がそれぞれの描くチームを形にしていきます。

そして、参加者は首から"蜜の瓶"を下げ、ミツバチとして別のチームの花畑を訪ね、どんな思いでつくったのか、何を感じたのかなど、受け取った言葉や気づきを瓶の中に貯めていく。この瓶はすぐに完成させる作品ではなく、一日を通して蜜をためていくものです。

実際のアウトプットは、各チーム様々。初めて会った同士が一緒に作ったにも関わらず、1つの作品になっているのは驚きでした。

第2部 チームビルディング(関係性):一人の音から、チームのリズムへ
午後の第2部は「関係性」がテーマ。ヤマハらしく、音とリズムを使ったワークショップです。それぞれがパーカッションなどの楽器を持ち、音を奏でました。
こちらのワークショップで目指したのは、演奏が上手になることではありません。役職も所属も、得意・不得意もいったん横に置き、一人ひとりが「ひとつの音」として場に参加する。音やリズムは、説明しなくても「聴く」「合わせる」「待つ」「支える」「自分の音を出す」という関係性を、その場で起こしてくれます。

プログラムは5つの体験で構成されていました。
オープニングドラムサークル:ここにいていい(受容)
ビートコネクション:互いの新たな一面に気づく(つながり)
フォロー・ザ・リーダー:導く/ついていくを行き来する(信頼)
One for All, All for One:一人とみんなの違いを感じる(支え合い)
グランドドラムサークル:全員でひとつのリズムをつくる(共創)

なかでも印象的だったのが、One for All, All for One。全員のリズムから一人だけの演奏へ、そして再び全員へ。周りの音が消えたときの緊張や孤独、仲間の音が戻ってきたときの安心は、職場で仕事を一人で抱え込むときの感覚とどこか重なります。
いい関係性とは、全員が同じ音を出すことではなく、違う音を持ったまま、互いの音を聴けること。最初から一体感を求めるのではなく、安心して自分の音を出すことから始めたからこそ、最後のグランドドラムサークルは、最初とはまったく違う響きになっていました。

※本ワークは、株式会社ビートオブサクセスが主催する「トレーニングビート®」のプログラムを基に構成されています。また、(株)ヤマハミュージックジャパンの協力により、同社が取り扱うREMOブランドのパーカッション製品を活用しました。
第3部 対話(組織開発):アトラエ「智慧の車座」― 問題を"解く"のではなく、"ほぐす"
第3部は「対話」がテーマ。アトラエの魚住が、「智慧の車座」を用いたワークショップを担当しました。「智慧の車座」とは、加藤 雅則著書『自分を立てなおす対話』の中で紹介されている対話手法です。
正論を言っているのに、なぜか物事が動かない。悪い人は誰もいないのに、なぜかうまくいかない。職場で起きる問題の多くは、既存の知識や技術で解決できる「技術的問題」ではなく、当事者の認識や関係性から生まれる「適応課題」です。こうした正解のない問題は、"解決"しようとするほど、こじれてしまうことがあります。
「智慧の車座」は、4〜5人のチームで、30分かけて一人の問題を全員で"ほぐす"対話の仕組みです。相談者(テーマ・オーナー)が問題を語り、メンバーが一つずつ質問を重ね、「私には〜と聞こえた」と印象を返す。そして相談者はいったん議論から抜け、メンバーが自由に、無責任に解決案を出し合う様子を外から聴きます。最後に、相談者自身が宣言をします。
質問に答えながら自分の問題を語りなおすうちに、相談者はいつもと違う捉え方に気づいていく。支援するメンバーにとっても、他者の問題を通じて自分の前提が揺さぶられる時間になります。
午前の遊び心、午後の関係性があったからこそ、初めて出会った人同士でも、本音に近い言葉が自然と交わされていたのが印象的でした。

クロージング:集めた蜜を、言葉にして持ち帰る
クロージングでは、参加者は第一部でつくった花畑へ戻り、一日首から下げてきた瓶を眺めます。
「今日、一番持ち帰りたい蜜は何だろう?」「その蜜を、職場や日常でどう活かしてみたい?」。花畑の仲間と蜜をおすそ分けし合い、最後は会場全体へ。それは"発表"ではなく、"蜜のおすそ分け"として語られていきました。
朝の自分と、今の自分をつなぎ直す。誰かとの対話や新しい挑戦につながり、職場の風景を少し変えていく――ここで終わりではなく、ここから始まる。そんな余韻とともに、一日のプログラムが締めくくられました。

おわりに:遊び心は、組織開発の"対極"ではなく"土壌"になる
WAKU WAKU BEE代表の坂本 竜一さんにとって、今年「PLAYFUL」をテーマに掲げたことは大きな挑戦だったといいます。対話を中心にした、手堅い組織開発の一日にすることもできた。それでも、人事部主催の研修ではなく、仲間と育ててきたボトムアップのコミュニティだからこそ、対話の土台となる「遊び心」や「関係性」にも光を当てたかったという話を伺いました。私自身も感性をフルに使うワークはすごく刺激的で、気づかなかった自分の気持ちに出会うことができました。
遊び心が出てくると、自分や相手の新たな一面に気づく。その気づきが互いへの興味や安心感になり、関係性を育む。そしてその先に、本音を語り合える対話が生まれる。一日を通して描かれたのは、そんな仮説の"実験"でした。
もう一つ印象的だったのは、こういった非日常のイベントを「楽しかった」で終わらせず、それぞれの職場で場をつくるときに持ち帰れる"蜜"として届ける点でした。
組織の文化は、一度の施策で変わるものではありません。けれど、一人の遊び心が誰かの心をほぐし、生まれた関係性が対話を呼び、持ち帰られた小さな蜜が職場に変化を循環させていく。WAKU WAKU BEEの一日は、その循環が確かに始まっていることを感じさせてくれました。
Wevoxはこれからも、組織の内側から生まれる熱と、組織を越えてつながる学びを応援していきます。

執筆:平木 美紀(株式会社アトラエ/Engagement Run!インストラクター)








