24時間365日フル稼働の介護現場で、職種の垣根を越えた連携が生まれるワケ

24時間365日フル稼働の介護現場で、職種の垣根を越えた連携が生まれるワケ

パナソニック健康保険組合 松下介護老人保健施設 はーとぴあ
志場 正照氏
志場 正照氏
パナソニック健康保険組合 松下介護老人保健施設 はーとぴあ
経営企画担当部長

パナソニック株式会社で営業や総務の業務に従事。55歳で早期退職した後、パナソニック健康保険組合に再就職。2019年1月から、はーとぴあで働き、2022年10月より現職。組織改善など、経営に関わる業務全般を担っている。

松浦 和孝氏
松浦 和孝氏
パナソニック健康保険組合 松下介護老人保健施設 はーとぴあ
ヘルスケアサービス部副部長/リハビリテーション課課長/介護サービス課課長

2000年4月、松下電器健康保険組合(現・パナソニック健康保険組合)に入社。施設開設から現在に至るまで、はーとぴあの全てを知る。2023年、ヘルスケアサービス部副部長に就任。エンゲージメント活動にも携わっている。

24時間365日フル稼働の介護現場。常に利用者さんへの対応が求められ、職員同士のコミュニケーションは希薄になりがちです。そのため、エンゲージメント活動への取り組みは他の業界に比べても難しいのが実情です。

そんな中でも、パナソニック健康保険組合の松下介護老人保健施設「はーとぴあ」では、よりよいチームをつくるべく、Wevoxを活用。コミュニケーションを活性化させ、職種間での連携強化につなげました。

多忙な現場でどのようにサーベイを活用したのでしょうか。組織改善の仕組みづくりを担う経営企画担当部長と、現場リーダーのヘルスケアサービス部副部長のお二人に聞きました。
※取材時(2026年1月)の部署・役職になります。


「職種間の連携強化」のために、エンゲージメントサーベイを活用

—はじめに、はーとぴあの業務内容を教えてください。

松浦:はーとぴあは「老健」と呼ばれる介護老人保健施設で、利用者さんの自立と自律を支援することが私たちの役割です。具体的には、医師と看護師による健康管理、理学療法士や作業療法士などによるリハビリテーション、日常生活全般を支援する介護業務などを行っています。老健は在宅復帰を目指す施設ですので、生活機能を維持、できれば向上して自宅に帰っていただくことを重視しています。

—業務の中で、チームでの連携が求められるシーンはありますか。

松浦:あらゆる場面で連携が必要なのですが、特に重要なのが職種間での情報共有です。必要なケアや今後目指していく方向性は、利用者さんそれぞれによって異なります。お一人おひとりにあったサービスを提供するためには、チームで意識を統一することが不可欠です。

老健には医師、看護師、リハビリの専門職、介護職、支援相談員、管理栄養士、事務職など、たくさんの職種が在籍しています。それぞれの職種で情報共有がうまくいかずバラバラの対応をしてしまっては、良い結果が生まれません。しっかりと連携して意識を統一することがとても大切です。

—2024年2月からWevoxをご利用いただいています。どのような経緯で導入に至ったのでしょうか。

志場:エンゲージメントサーベイを意識調査として活用したいというのが導入理由です。私は2019年に当施設に来て、初めて介護業界で働くことになりました。イメージしていたより明るく元気な職場でしたが、組織としては、どうもギクシャクしている。それが当時の第一印象でした。

現場をよく観察してみると、職員一人ひとりは真面目で、一生懸命仕事をしていました。ミクロでは、職種間での連携も取っていこうという意識が見られたんです。しかしマクロで見ると、情報共有ができていないように感じられました。組織としての目標は掲げられているのですが、その目標のためにはどういう取り組みをする必要があり、現在の進捗状況はどうか、ということが職員一人ひとりに共有されていませんでした。

連携が取れた組織をつくるために重要なのはコミュニケーションです。そしてそれを補完するのに意識調査は必要です。方針や目標、様々な業務改善の考えや取り組みが実際、現場でどれくらい浸透し、機能しているのかを、職員への意識調査で把握したいと考えました。以前は弊施設では意識調査を実施していたのですが、数年前にそれが終了することになり、代わりに何らかの調査をしたいと考えていたところ、Wevoxを紹介いただいた次第です。

組織づくりの主体者が、5人→20人に。職種間の支え合いも増加

—Wevoxをどのように活用いただいているのか、詳しく知りたいです。

志場:サーベイを正職員約60人に対して実施。結果が出たら、事務局がフィードバックをまとめます。エンゲージメントスコアが高い項目ベスト3と低い項目ベスト3を職種ごとにピックアップ。前回のサーベイから大きな変化があった項目についても整理した上で、これらのデータを各部署にお伝えします。

その後、各職種の責任者や主任などに議論してもらいます。これまでの取り組みの効果は出ているのか。もし出ていないとすれば、次はどのような施策を打つのか。データを見た上で、改善策をまとめてもらいます。その取りまとめの結果を、各職種の責任者が集まる責任者会議で発表して、各部署で取り組みを実践してもらう。この試行錯誤をこれまでに4回ほど繰り返しています。

—サーベイの活用で工夫している点は?

志場:1つ目はサーベイを半年に1回のサイクルで運用していること。通常は1ヶ月ごとに実施するとお聞きしましたが、私たちの組織では、6ヶ月に1回がベストだと判断しました。意識調査は、ただやるだけではダメです。調査の結果をフィードバックし、それをもとに議論し、改善するための取り組みを考える。現場でその取り組みを実践し、その結果がどうなったかを次の意識調査で確認する。このサイクルを回していくことがとても重要です。

医療・介護の現場は多忙で、かつシフト制の職員が多いため、コミュニケーションを取る機会がどうしても少なくなりがちです。そのため3ヶ月ごとの実施では、議論して改善策を考えたり、取り組みを現場に浸透させて実践したりする時間が足りず、結果的にただ調査をしているだけ、になりかねません。しっかりと効果を出していくためにも半年に1回のサイクルを採用しました。

2つ目は調査結果のフィードバックをする対象を広げたこと。以前は、組織として取り組んでいくことについては、それぞれの職種の責任者だけで決めることがほとんどでした。つまり、5名程度で組織の方向性を決めていたわけです。しかし、エンゲージメントサーベイの活用をきっかけに、責任者だけでなくその下の主任職、マネージャー職にまで範囲を広げました。

今では全体で15〜20名ほどが数字を見て、課題を見出して、打ち手を考えるようになりました。主体者となって取り組むメンバーが増えたことはとても良かったと思っています。

—2点とも素晴らしい工夫だと感じました。介護現場でサーベイを実施する上で、課題はありましたか。

志場:サーベイはパソコンで回答していただくわけですが、介護現場ではアナログ業務が多いため、デジタル化への対応が課題になると思います。「はーとぴあ」では数年前からデジタル化に取り組んでいました。

職場に多くのパソコンを用意し、使いたいときに使える環境にした上で「パソコンでできることはパソコンでやろう」という方針を打ち出しました。たとえば、会議室の予約。それまでは会議室の前に貼ってある紙に時間と名前を書いて、アナログで予約していましたが、パソコンで予約システムを使うようになりました。また、他の職員へ連絡する手段として、紙のメモを多用していたところを、デジタルのメモソフトへと移しました。

当初はパソコンを全く使ったことのない職員もいて、戸惑いもありましたが、サーベイを導入する頃には問題なく使えるようになっていました。また、デジタルが得意な職員が「よろず相談」チームを組んでいて、苦手な方をサポートする仕組みもできています。一般的な介護現場では、デジタル化の環境と人材のスキルアップが課題になるかなと。弊施設では、これらがある程度整っていたため、スムーズにサーベイの導入ができたと感じています。

—エンゲージメントサーベイを活用して約2年。チームにどのような変化が生まれたのでしょうか。

志場:各職種の責任者だけでなく、主任職、マネージャー職までこの施設をどうしていきたいかということを考えて、議論できるようになったことが一番大きな成果だと考えています。5、6人で決める組織から20人で決める組織へと変わったことで、組織の目標や方針などもすべてのメンバーにより浸透するようになったと感じます。

実際に主任職、マネージャー職からは、「責任者と"組織やチーム作り"の話ができ勉強になりモチベーションも上がった」という声も聞いております。

松浦:サーベイを始めてから、同僚同士のコミュニケーションが増え、職種間の連携も強化されたと感じています。弊施設は現場職員が2〜4階にまたがっているのですが、フロアをまたいで支え合う取り組みがとても増えました。サーベイを活用する前までは看護は看護、介護は介護、リハビリはリハビリ、といった形で同じ職種の中での支え合いが中心でした。

しかし今では、他の職種との連携が格段に進んでいます。私たちがそのように捉えているだけでなく、実際に現場のメンバーから「他の職種との連携は深まっていると思います」という声をもらっています。


具体例を1つ紹介します。介護の職員の仕事量が多すぎてストレスが増えているという結果が出たことがありました。その結果を受けて、現場で介護職を支え合おうという実践的な取り組みが生まれたのです。

たとえば、利用者さんをベッドから起こして車椅子に移っていただくという場面で、利用者さんの脚に力が入らず、移動が難しいという場面。通常これは介護職の仕事なのですが、ここで、リハビリのスタッフが助けてくれることがありました。

それぞれは専門職ですので、当然ながら自分たちにしかできない仕事もあります。たとえば注射や点滴などは看護師の資格がないとできません。一方で、職種にかぎらずできることもあります。看護、介護、リハビリのそれぞれのスタッフが互いを配慮し、助け合える関係が着実にできてきています。

全員が組織づくりの主役となり、「選ばれる」施設へ

—介護現場におけるいいチームとはどんなものなのでしょうか。お二人が考える理想のチーム像をお聞かせください。

志場:施設としての目標が職員全員に共有され、目標達成に向けて一丸となっているのが、いいチームだと思います。経営的な指標である稼働率だったりもそうですし、個別の行動としてあいさつ運動をしっかりやりましょう、みたいなこともあります。目標を達成したらみんなで喜んで、できなかったら原因を振り返って改善する。それを繰り返せる組織がいいチームではないかなと。

松浦:仕事は人間関係が一番大切だと考えています。特に介護は人が相手の仕事ですので、ぎすぎすした人間関係では、いいパフォーマンスは絶対に出ません。弊施設は多職種の連携が必要な業務ですので、お互いの専門性を理解しあった上で、利用者さんの目指すゴールに向かって協力し合えるのがいいチームだと思います。

—最後に、今後について伺います。さらにいいチームをつくるために、これからどんなことに取り組みたいですか。

志場:サーベイで組織としての課題はたくさん見えてくるわけですが、それを一気にすべて解決しようとしても、結果として「あれ?今、何に取り組んでるんだっけ?」という状況になりかねません。半年の期間に1個か2個まで課題を絞り込み、地道な取り組みを繰り返して徐々にいいチームに近づけていけたらと考えています。

また、組織全体を見渡せる人数を少しずつ増やしていくことにも力を入れたいです。今は20人ほどが目の前の業務だけでなく、組織の方向性について話し合えるようになりました。この輪をまずは正職員全員の約60人に広げたい。いずれは契約職員20〜30人にも加わってもらい、全員の思いが反映された施設をつくっていきたいです。

松浦:エンゲージメントを高めるためには、コミュニケーションの促進が重要だと、サーベイを通して改めて感じました。コミュニケーションが活性化すれば人間関係はスムーズになり、職員の働く意欲が高まったり、ストレス対策になったりといった効果が生まれます。エンゲージメントが高まり、主体的に動く職員が増えれば、利用者さんへのサービスも向上します。そうなれば、より多くの方から選ばれる施設になるでしょう。

この2年でコミュニケーションは促進されました。しかし、まだまだ改善の余地はあります。今後はさらにコミュニケーションを密にし、エンゲージメントを高め、「はーとぴあでずっと働きたい」と思えるような組織にしていきたいです。

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