トップと管理職の積極的な関わりで製造現場のエンゲージメントを高める

トップと管理職の積極的な関わりで製造現場のエンゲージメントを高める

日本ゼオン株式会社
渡辺 誠氏
渡辺 誠氏
日本ゼオン株式会社
生産本部 川崎工場 工場長

国内各地の工場の工場長を歴任し、2023年4月に川崎工場に着任。Wevoxの運用においては、工場全体のサーベイ結果のモニタリングと、毎月のフリーコメントに対する回答の発信を行っている。

岩村 哲氏
岩村 哲氏
日本ゼオン株式会社
生産本部 川崎工場 副工場長 兼 総務人事課長

営業、資材調達の部署を経て、2024年4月に川崎工場に着任。Wevoxの運用においては、事務局として毎月のサーベイの配信などを担当している。

五十川 文子氏
五十川 文子氏
日本ゼオン株式会社
管理本部 人事統括部門 人材企画部 エンゲージメント推進グループ グループ長

研究開発職を経て2020年3月に人事統括部門に着任。全社エンゲージメントサーベイを起点とした従業員エンゲージメント強化施策と組織開発を担当している。

日本ゼオン株式会社川崎工場では、工場長と管理職が積極的にWevoxに関わることでエンゲージメント推進に取り組み、3年弱でスコアを約7ポイント伸ばしています。スコア上昇の要因や具体的な取り組み内容について、工場長の渡辺さんを始め活動に携わる3名の方に伺いました。
※取材時(2024年7月)の部署・役職になります。

組織状態の定期的モニタリングと双方向のコミュニケーションのためにWevoxを導入

―川崎工場では2021年に独自にWevoxを導入し、Wevoxを活用しながらエンゲージメント向上に取り組まれています。その背景について教えてください。

岩村:2021年に全社で実施されたエンゲージメントサーベイで川崎工場の結果があまり良くなかったため、改善に向けた打ち手の一つとしてWevoxを導入したと聞いています。

渡辺:川崎工場に限らず、各工場とも軒並み低いスコアでした。そこで、改善のアクションをとるための組織の状態の定期的なモニタリングや、フリーコメント欄を用いた従業員との双方向のコミュニケーションを図りたいという前工場長の考えのもとWevoxを導入しました。

―各工場において全社エンゲージメントサーベイのスコアが低い結果となった要因は何だったのでしょうか?

渡辺:人員不足による忙しさが大きな影響を与えていました。実際、当時の各工場の人員数は近年で最も少ない状態にあり、結果を受けて、経営も「これじゃいかん」と人員をもう少し採用していく方針をとるようになりました。川崎工場の場合、現在は当時よりも10〜15%ほど人員が増えています。その結果、年1回の全社エンゲージメントサーベイにおいて、どの工場でも「人がいなくて忙しい」というところに関連するスコアが少しずつ改善し、全体のスコアも年々上昇しています。

トップと従業員とのコミュニケーションで、職場環境の課題を吸い上げる

―では、川崎工場では、現在はWevoxを活用してどのような取り組みを行っていらっしゃるのでしょうか?

岩村:大きく2つの取り組みを行っています。1つは、毎月、自由回答欄に記入されたコメントに対して工場長が自分の言葉で回答し、全従業員に向けて発信すること。もう1つは、職場単位でのエンゲージメント向上活動です。部課長やグループリーダー(GL)が、自職場のサーベイ結果を見てスコアの変動要因を分析し、必要と思う取り組みを行っています。

管理職のメンバーはエンゲージメントスコアに対する関心が高く、事務局が言わずともPDCAを回しているという非常に嬉しいサイクルができています。事務局からは、川崎工場全体および各職場のスコアの状況や、スコアの改善が著しい職場の取り組み内容を定期的に部課長会やGL会で共有するなど、情報面でのサポートをしています。

―自由回答欄のコメントに渡辺さんが回答する取り組みについて、詳細を教えてください。

渡辺:前任者から継続している取り組みになります。毎月10件程度入るコメントに対して、私の考えを回答して全従業員に公表しています。多いのは職場環境の改善要望で、例えば、「ヘルメット置き場を入口に設置してほしい」などの要望があれば、関係部署に対応を依頼するなどして改善可能なものは改善に動き、その旨を回答しています。また、「連携を深めていきたい」といったポジティブなコメントに対しては共感や後押しの言葉を返しています。コメントに答えれば答えるほど、記入してくれるという良い循環が起こっています。

岩村:「フリーWi-Fiを入れてほしい」という要望なども含め、2023年度は10件以上、職場環境の改善提案を受けて手を打ってきました。確かにこれは必要だよねという要望には、適宜手を打っています。

―2つ目の職場単位での取り組みには、どのようなものがあるのでしょうか?

岩村:1on1や⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠対話会など、何かしらの対話の機会を設ける取り組みを行う職場が多いですね。事務局としても、何か「おおっ」と驚くようなことをするというよりは、地道な対話を継続することが一番かなと感じています。

渡辺:スコアの変動に対する取り組みとして最近私の目を引いたのは、スコアが他課に比べて低迷している課で行われたワークショップです。これからどんなふうになっていきたいか?やりたいことはあるか?などについてグループ単位で対話したことで、これまで別々に取り組んでいた業務を互いに協力してやっていこうと、仕事のやり方を変え始めてくれています。

岩村:あとは、業務でもそれ以外の活動でも、しっかりと取り組んでいる人は褒め称えようという考えで工場として褒賞制度を設けているのですが、職場単位で独自に取り組んでいる職場もあります。また最近、ある職場の管理職から、Engagement Run!Academyに参加したいとの希望をもらいました。我流ではなく体系的な知識や理論に基づいたアプローチをしたいとのことで、申し込みなどを進めています。

―管理職の皆さんが自ら積極的に活動されていることが特徴的ですね。

渡辺:弊社の中長期計画では、全社のエンゲージメントサーベイにおいて、”社員の意欲”を表す指標である「従業員エンゲージメント」のスコアを、2030年には世界好業績企業の平均値である75%にするという目標を設定しています。目標達成に向けて頑張ろうという意欲を持っているということが、部課長たちが自ら積極的に活動している背景に挙げられるのかなと思います。

岩村:「心理的安全性」という言葉を使う人が多いのも特徴で、「心理的安全性を高めるには対話によってコミュニケーションを取らないといけない」ということを自分ごととして感じている人が多いと感じています。「従業員エンゲージメント」のスコアを2030年に75%にするという目標の下、1on1導入の手引きの発行やセミナーの実施などの施策を打っているので、その土壌の上にできてきた雰囲気なのかなと思います。

五十川:対話しやすい人員規模であること、また、川崎工場が担う事業は変化に対応する必要性が高いものが多く、それが変化や改善を受け入れる素地になっているのではないかと外から見て感じます。

―Wevoxのスコアの上昇だけでなく、定性的な変化として、この1年で感じることはありますか?

渡辺:「この取り組みをしているからスコアが上がった」とスパッと言えるものはありませんが、サーベイ結果をふまえて部下との対話を重ねていかなければ良い職場にはならないということが管理職側の意識に根づき、実際に部下との対話が広がっていることは感じますね。

管理職による小さな取り組み・対話の積み重ねが良いスパイラルを生む

―これまでの取り組みをふまえて、従業員の皆さんのエンゲージメントを高めていくために重要な要素は何だと感じていらっしゃいますか?

岩村:まずは工場長自らがエンゲージメントの重要性を前面に出して発信していることではないかと思います。製造部門でまず重視するのは安全・安定生産で、不良率や生産効率など、生産に直結するところにどうしても目がいきがちです。もちろんそれは大事なことですが、それだけでなく、工場長自らが、エンゲージメントという目に見えづらいものを重視し、職場、環境、風土あるいは心理的安全性のための様々な施策を全面的に重視していることを発信している。その結果、部下にもその意識が浸透し、良い形で取り組みを進められているのかなと感じます。

あとは、これまでやってこなかった取り組みをしてみることや、やってきたことを強化するといった、細かで地道な取り組みの積み重ねが良いスパイラルを生み出しているのではないかと思います。上司と部下のコミュニケーションの密度を上げることを始め、ちょっとしたことでもいいから改善していこうと意識を高くして、とにかくちょこちょことやってみることが大事だと思っています。

渡辺:別の観点から話すと、時代の変化を受けて、管理職が若手に歩み寄るようになった側面もあると思います。工場という昔からある職場ということもあって、かつては上司に「やれ」と言われればとにかく現場に走って行って処置をしなければいけないという、一般的な企業に比べるとある種軍隊的な部分がありました。それが、時代の変化とともに「それではいけない、対話をしなければ」と管理職側が考えを変え、部下のマネジメントを行うようになっています。自分たちの育てられ方とは異なる、対話による育成を悩みながら頑張っています。

五十川:工場長がちゃんとサーベイ結果を見てフィードバックをしていること、そして、それを管理職がしっかりと受け取って現場に下ろしているという、理想的な形を実現できていることがスコア上昇の一番の要因だと思います。

あとは、これまでであれば何となく「こういうところが課題なのかな」「こういうことができるといいよね」などと話していたものが、Wevoxというツールによって定量的に見られて、かつ、変化も把握できるようになりました。日常的に数値・データの管理を行っている製造部門には、相性の良いツールであったと思います。

スコアという形で数値化されることは、上長が自信を持って施策を展開できる裏付けになりますし、取り組んでいる施策が確からしいことを月次で追っていける点でも、強みや安心感をもたらすものなのだなと思います。

―製造現場のエンゲージメント向上に悩む企業は多く見られます。何か助言があればぜひお願いします。

渡辺:アドバイスをするなんておこがましいですが、サーベイの結果を見ると、必ずどこかに「おや?」と思う点があるはずなので、そこに対して手を打っていけばいいのかなと思っています。

また、私は川崎工場に来る前は別の工場に勤務していましたが、その現場では、人員不足に加えて自分たちの作っているものにいまいち誇りを持てていないようなところがありました。そこで、私からの働きかけとして、「自分たちが製造しているのは未来をつくる製品で、これだけ世の中に使われているんだ」ということはできる限り言うようにしていました。そうして自信や誇りを持ってもらう仕掛けを少しでもやっていくことが大事かなと思っています。

岩村:私は川崎工場に来る前は本社に勤務していたのですが、本社から工場に来ていちばんに思ったのは、皆が同じ職場に来て、顔を合わせて働くことのメリットです。本社ではコロナ禍の影響もあってリモート勤務主体だったこともあり、工場でのコミュニケーションのとりやすさや一体感の出しやすさを強く感じました。

この環境は、そうではない環境にいた人間からすると、ネガティブな面よりもポジティブな面の方が大きいと思うんですね。厚生行事などの一体感を出すための大きなイベントもありますし、うまく活かしていけばもっともっと一体感が出て、ひいてはエンゲージメント向上に繋がるのかなと感じています。

―では最後に、今後の取り組みや組織づくりの展望を教えてください。
渡辺:引き続き、今取り組んでいるような双方向のコミュニケーションや対話を続けていきたいと考えています。

一つ、直近の課題として捉えているのが、Wevoxの自由回答欄が徐々にネガティブな意見をSNS的に記入する場になってきている兆しがあることですが、一方で、従業員は皆、関心を持って私からの回答を見てくれているので、うまく対処・活用しながら、今まで以上にお互いに気持ちがわかる組織をコツコツと作っていければと思っています。

岩村:私は、エンゲージメントサーベイというのは組織の健康診断だと思っています。スコアを上げることが目的ではなく、組織が今、どのような健康状態にあるのかを見ることを目的にサーベイはあると思っています。

だから、何かをすれば、その結果としてスコアがプラスかマイナスに変動するものだという捉え方で毎月のサーベイを見て、何か変動があれば要因を分析して必要な手を打つというサイクルを大事にしていきたいです。あくまで組織の健康のバロメーターを見るための非常にいいツールだという認識で今後も活用していこうと思っています。

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