両利きの経営 加藤雅則氏と人事が「組織の悩み事」について対話! エンゲージメント向上の鍵を握る「組織課題の捉え方」 【Engagement Run!公開イベント書き起こし 前半特別公開!】
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両利きの経営 加藤雅則氏と人事が「組織の悩み事」について対話! エンゲージメント向上の鍵を握る「組織課題の捉え方」 【Engagement Run!公開イベント書き起こし 前半特別公開!】

加藤 雅則 氏
加藤 雅則 氏
株式会社アクション・デザイン 代表取締役

日本興業銀行、環境教育NPO、事業投資育成会社を経て現職。2000年~2007年まで、日本におけるコーチングの紹介と普及に取り組む。2000年以来、上場企業を中心とした人材開発・組織開発に従事する。経営陣に対するエグゼクティブ・コーチングを起点とした対話型組織開発を得意とする。 「両利きの経営」の提唱者であるオライリー教授(スタンフォード大学ビジネススクール)の日本における共同研究者であり、オライリー教授が会長を務めるコンサルティング会社changelogic社(https://changelogic.com)の東京駐在も兼務する。大手企業を中心に、人材育成・組織開発・後継者育成に関するアドバイザーを多数務める。

2022年1月に開催されたエンゲージメント向上の専門知識が学べるオンラインアカデミー『Engagement Run!』の特別講座『エンゲージメントに関わる「課題」の捉え方とは?』。両利きの経営でおなじみの株式会社アクション・デザイン代表取締役加藤 雅則氏が登壇し、アカデミーメンバーのお悩みに対話形式で解決の糸口を探っていきます。様々な角度で問われる「組織の課題」について、どのような糸口が見つかるのでしょうか…?本記事では、特別講座の前半部分を書き起こしで特別公開します!

組織の問題は2つしかない

平野:こんにちは、司会の平野です。最初に加藤さんから、エンゲージメント向上のための課題の捉え方について、解説をいただきます。よろしくお願いします。

加藤:はい、お願いします。組織の課題をどう捉えるか、によって打ち手、アクションが変わってきます。ですので、どう課題を捉えるかは非常に重要なポイントになってきます。この組織における課題の捉え方について、提唱したのがハーバード大学ケネディスクールのロナルド・ハイフェッツ先生という方です。この方が、組織の問題は本質的に2つ、「技術的問題(テクニカルプロブレム)」「適応課題(アダプティブチャレンジ)」だと喝破したんですよね。

技術的問題(テクニカルプロブレム)は、答えがある問題です。もう誰かがすでに経験していたりするので、専門家がいれば解決する問題ですね。ただ、みなさんがエンゲージメントにおいて悩んでいるのは「答えがない問題」ですよね。それは、どこかから答えを持ってくるのではなく、問題を解くあなたたちそのものが変わらないと解けない問題になってくるんです。そういう意味で、適応課題、アダプティブチャレンジと読んでいます。自分たちが変化に適応しないとこの問題は解けないんだと。

結論を先に言うと、こうした適応課題の解き方をハイフェッツ先生はこう言うんです。「Get the work back」。つまり、本人たちにその問題を戻しなさい、と言うんですね。つまり外部の人間が専門家面して何か言って解決しちゃ駄目だと。問題を本来担うべき人に戻しなさい、と言うんです。ここがすごく面白いところなんですよ。

別の言い方をすると、誰もが問題の当事者であり、問題の一部だってことです。誰かの問題ではなくて、あなたも問題の一部ですよ、と。

経営者の方たちは「なんでうちの人たちは、うちの連中は…」と言いますが、いやいやそうさせているのは、あなただからっていう話です。そういったことを言うのが、私の大事な仕事でもあります。

誰がこの問題を引き受けなきゃいけないのかを見極め、その人に問題を戻していく。これが、組織開発においては非常に大事なポイントになります。その人が変わらない限り、変化を起こさない限り問題点を解決できません。これが、適応課題の考え方のベースにあります。ぜひ、この点は覚えていただきたいな、と思います。

質問1:エンゲージメント推進活動のいい伝え方とは?

平野:ありがとうございます。それでは、事前に、Engagement Run!の会員の皆様からいただいたご質問を加藤さんと探っていきましょう。まず1つ目のご質問です。

質問1:エンゲージメント推進活動において、イノベーター理論など推進リーダーとなりうる人やチームからのポジティブな伝播がカギになってくるとはもちろん思うのですが、一方で、興味のない層や批判的な層が周囲に与えるネガティブな伝播も心配しています。事務局としての見せ方・伝え方に改善の余地はあると思うのですが、アプローチする際、どのような観点をもつと良いでしょうか?

というご質問ですが、こちらに関して補足をいただけますでしょうか。

質問者:弊社は約300人規模の組織でして、2年前くらいからエンゲージメントサーベイを開始しています。当初は現場主体の改善取り組みということで、スコアを活用してチームの改善を推進してきたのですが、結局やらされ感や抵抗感、あとは負担感などにつながり、結果として単発に終わってしまいました。そこで令和3年度は、まず興味のある人から巻き込むことを目標に、全従業員の希望者向けに勉強会やワークショップを開催するなどして、事務局主導で改善活動に対する理解浸透に注力してきました。その結果、理解度・共感度は深まってきていると思うのですが、共感してくれる層とそうでない層のギャップが大きくなっていると感じています。

反対意見を受け入れ、Weのストーリーを作っていく

加藤:なるほど、とても努力されているんですね。職場を変えていくときは、最初の種火になるような人、核になってくれる人が必ずいて、そこからだんだん浸透して広がっていくというのは、僕自身の本でも書かせてもらっています。ですから、最初の取り組みとしては良いですよね。困ってる人、興味ある人からスタートするのが王道だと思います。

批判的な人に関しては、そういう人もいるから組織が成り立つという大前提があります。不平不満があるということは、こうなってほしいという暗黙的な理想があるから反対している、と僕はトレーニングされました。理由があって反対しているので、それを尊重してそこに興味・関心を持って対話を行うことが、組織を動かしていく大事なポイントというわけですね。対話というのは説得ではなく、お互いの現在地や前提、主点を確認し、違いを認め合うために行うものです。そういう意味では、エンゲージメントに反対だという人がいても良いんでしょうし、反対意見もまずは受け入れていくプロセスが必要なのかなと思います。その上で、あなたは○○なの?私は○○なの、じゃあ私たちどうしたらいいんだろうね、と言った感じに「You, I, We」の主語で進めていくんですね。

Weを主語にしたストーリーを作ると、What(何をやるのか)の話になるし、Whatの話をすればWhy(何のためにやるのか)という話になっていきます。つまり、Whatレベル、さらにはWhyレベルといったように目的レベルで握り合えれば、多少のアプローチの違いは乗り越えられます。なぜこんなことを言うかというと、組織はある目標を達成するために集まっているからです。組織という箱が存在しているのではなく、活動を潤滑にするための組織活動があるだけなんです。

綺麗事から、リアルな活動への転換期

どういう組織活動が今の我々には必要何だろうか、と考えていくと多少のアプローチの違いは乗り越えられるんじゃないかと思いますね。ですから、現在の御社の状態は、単なる研修や勉強のレベルからよりリアルな部分に入ってきたサインなのではないでしょうか。そういう中で対話を進めていくのがとても大事ですが、ここには組織のリーダーの価値判断が必要となります。何を良しとして何を悪いとするのか。極端に言うと、反対が有害なものであるなら人事断行をしないといけません。取り組みというのはここまで見据えてやらなければいけないもので、対話だけでは研修になってしまうんですよね。

組織開発は最終的に事業開発につながらないと意味がありませんし、人材開発だけやっていても自己満足に終わってしまいますから、事業のためにどうつながっていくのか、そして最終的にそれがみんなの働きがいにどう繋がるのかを見据えて取り組んでいかれるのが良いと思います。現在は、障壁というよりも一つの新しいテーマが出てきて本格化したという段階ですから、それを受け入れ、反対意見を持つ人たちを巻き込みながらやっていくと、いよいよ綺麗事じゃないリアルな活動になっていかれるんじゃないかなという印象を持ちました。

人間は理屈だけでなく感情も伴って活動している

これは大学院の授業で使用しているスライドですが、組織開発は3つのレイヤーで捉えるのがいいと思います。事業方針と組織は両輪で動いていますから、その両方を見据えてやっていく必要がありますが、やはりそこには理屈があるので、これをきちんと整理することが大事なことだと思います。

レイヤー1は理屈の世界ですが、人間は理屈だけでは動いておらず、感情が伴うので、その感情に耳を傾けなければいけません。組織感情に向き合うには対話が大事ですが、その先にあるのが組織力学です。先ほどお話しした、必要に応じて人事断行しなきゃいけないというのはレイヤー3の話ですね。難易度も高いですし権限がないと出来ないので、何でもかんでも3のレイヤーで取り組む必要はないですが、今自分たちがどのレイヤーに取り組んでいるのかを認識しておくのは良いと思います。

質問2:カルチャーをつくるために必要な視点とは?

平野:ありがとうございます。では2つ目のご質問です。

質問2:Wevoxの項目の中で、挑戦する風土に全社で着目しており、失敗の許容度をあげていきたいと考えています。トップから役員やマネジメント層への投げかけや、各事業体の中での対話がなされ始めており、また、失敗をいかに価値につなげているかなどの好事例発信の施策も考えています。カルチャーを行動様式と捉えるならば、全体推進する際に、どのような視点や観点を持つと良いでしょうか。

こちらに関して補足をいただけますでしょうか。

質問者:弊社の事業体は大きく分けて4つなのですが、その中で変革への挑戦や、事業のポートフォリオの変更に向けた動きを進めています。様々な施策を考えている中で、全体として他にどのような視点を持てばいいか悩んでいます。

組織と戦略は常にセットで考えていく

加藤:カルチャーというのは当然、社風や風土といった組織の当たり前みたいな部分もあるし、価値観や行動規範みたいなのもありますが、定義してもマネジメントの対象にはなりにくいんですよね。ですから、どういう仕事のやり方をするのかとか、組織行動・組織活動みたいな捉え方をされるのが良いと思います。そうなると、組織カルチャーそのものを変えようとしがちですが、組織だけ変えようと思っても無理だということがここでの大事なポイントです。

組織と戦略は両輪なので、セットで考えないといけません。カルチャーを支えているものは評価制度や仕組み、そして人材なので、すべてをセットで捉え、また、戦略との両輪で捉える必要があるという考え方を強調しておきたいです。ただそれだけだと、組織がどう機能するのか、業績は出るのかみたいなところに話が落ちてしまいますから、ちょっとつまらないですよね。捉え方の次元にはWhyレベル、Whatレベル、Howレベルがあり、どうしてもHowレベルに行こうとするものですが、その前にWhatレベルで踏みとどまり、何のためなのかを考えます。これを繰り返すと、結果的にHowが独創的かつユニークなものになってくるはずです。

ご質問の内容で言うと、もちろん失敗は目的ではないですし、何のために失敗をするかと言えば、組織学習をしたいからですよね。「何のために」の中には、どういったものを目指しているのかという話がありますが、そういった一連の納得感がないと、カルチャーだけ取り出して変えようとしても形状記憶合金のように元に戻ってしまうと思います。

経営者は大きな文脈を作るのが役割

大きな文脈を作るのが経営トップの役割ですから、カルチャーだけを変えろ、失敗の許容度を上げろと言うのはメッセージの出し方としてはあまり良くないかもしれません。それよりかは「こういうことを目指しているから、今までのやり方ではなく新しいやり方が必要だ、だから誰か例外的な動きをしてほしい」という方が適切でしょうね。

例えば、僕が今関わっている某メーカーとのインタビューの中で、新規事業を立ち上げる副社長さんが「登る山は決めた。だから登れる人から登ってほしいんだ」と話していました。つまり、経営者が方向性は決めたけれども、やり方は俺にもわからないよ、と言っているわけです。

これもカルチャーの話ですが、トップがこういうメッセージを出していくことが必要だなと感じました。既存のカルチャーを変えることは本当に難しいですが、例外を作り出していくことで変わっていくものだと思います。その例外がなぜ必要なのか、何のためなのか、それはどこにつながるのかという大きな希望のストーリーを組織のトップが出していくことがカルチャー変革の入り口になるのかなと。実際、僕自身はそういうアプローチをしています。

質問3:エンゲージメントの重要性をどう腹落ちしてもらうか?

平野:では3つ目のご質問です。

質問3:管理職の中には、エンゲージメントが業績向上に本当に結びつくのか、取り組んでも時間だけ取られるんじゃないのかといった考えの方もいます。この考えの背景には、エンゲージメントの重要性を頭ではわかっていても、まず大事なのは数字で、そもそも従業員が生き生きと主体的に働くことができることについて、さほど重要性を感じていないように見受けられます。どうすれば、こういった人たちに腹落ちして取り組んでもらえるようになるでしょうか。

こちらに関して補足をいただけますでしょうか。

質問者:現在、エンゲージメント向上活動を推進しているのですが、弊社の業績をエンゲージメントの相関を具体的に出せていなくても、それを信じている人たちを集めて活動しているという状況です。一方で、質問の内容にある考えの人たちとも一緒に活動していきたいという想いがありまして、そういった人たちに働きかけをできないものかと悩んでいます。

反対派には「今のやり方で続けられますか?」という問いを投げてみる

加藤:僕は20年以上今の仕事をしていますが、最初にコーチングが日本に入ってきた頃は有名な経営者に「こんなことやってて勝てるのか」と何度も怒られました。当時は僕も若くて経験が足りなかったので、脇汗かきまくりましたよ(笑)。でも今の自分がそう言われたら「お言葉ですが、じゃあこのままだったら勝ち続けられるんですか?」と打ち返すと思います。今はサステナビリティといった文脈も出てきていますから、仮に勝ったとして本当にこのやり方で勝ち続けられるのか?というところは通った方が良いと思います。

要は今のやり方で続けられると思いますか?ということですが、ご質問の中にあった方たちを巻き込んでいく論点としてはとても大事なポイントです。もう一つは、皆さんの組織で確実に起きていると思いますが、雇用の流動性の話ですね……

エンゲージメントと事業成長を実現する「両利きのチームづくり」のカギはミドル×トップの対話【加藤雅則氏×Wevoxユーザーの対話イベントレポート/前半部分特別公開】
エンゲージメントと事業成長を実現する「両利きのチームづくり」のカギはミドル×トップの対話【加藤雅則氏×Wevoxユーザーの対話イベントレポート/前半部分特別公開】
2022年3月に開催されたオンラインイベント『管理職の方必見!自部署のエンゲージメントと事業成長を継続させる両利きのチームづくりとは?』(※)。両利きの経営でおなじみの株式会社アクション・デザイン代表取締役加藤 雅則氏が登壇し、Wevoxユーザーのお悩みに対話形式で解決の糸口を探っていきます。チームの視点で、両利きはどのように実現していけばいいのか? カギを握る「ミドル層とトップ層の関係性」について、様々な対話が交わされました。本記事では、イベントレポートの前半部分を特別に公開いたします! 
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