
【Teamwork Sessionレポート】「東宝」という組織にエンゲージメント文化の種を蒔いた一年間の軌跡

エンゲージメント活動とサーベイの導入を発案。現在はワークスタイル企画室にてエンゲージメント活動の事務局と健康経営に関する業務に携わっている。
Wevoxの活用事例を学び合うユーザー参加型イベント「Teamwork Session」。今回は、東宝株式会社の角倉 加奈子さんにご登壇いただきました。同社では、社内にエンゲージメントを浸透させるべく様々な施策を実践されています。今回は、それぞれの施策について詳しくお話しいただきました。
本日のテーマは『「東宝」という組織にエンゲージメント文化の種を蒔いた一年間の軌跡』です。どうぞよろしくお願いいたします。
東宝株式会社人事部の角倉と申します。弊社は1932年に創立いたしまして、従業員数は2024年1月末現在で390名。現在はこの390名を対象に月1回Wevoxのサーベイを行っている状況です。この他にも東宝グループ内で活躍している東宝所属の社員も170名ほどおりますので、総従業員数は500名を超えています。

スライドにあるようなパーパス・バリュー・モットーを掲げ、「Entertainment for YOU -世界のお客様に感動を-」というコーポレートスローガンの名の元に、世界中の方々に良質なエンターテインメントをお届けすべく日々業務に励んでいます。
そんな中、弊社がエンゲージメント活動を導入した理由には2つあります。1つ目は人事領域でエンゲージメントの重要性が高まっていること。2つ目はコロナ禍による社内の揺らぎがあったことです。
映画館や演劇劇場が休館要請を受けたり、各事業やその撮影現場などで特例対応や感染拡大防止策が求められたりと、非常に大きなプレッシャーや業務内容の変化があっただけでなく、働き方と同様にコミュニケーションにも急激な変化が起きたため、不安や不満の噴出につながりました。
そこで人事部内で何ができるのかを話し合った結果、社会と会社の関係性を改めて見直す必要があるのではということで、エンゲージメント活動に行き着きました。この考え方はこの先ご紹介する施策にも関連しており、弊社の活動の核になっている部分です。
コロナ禍をきっかけに様々な施策を開始
弊社の活動の歩みを時系列で簡単にご紹介します。2019年は人事部の中でエンゲージメントの研究が行われていましたが、その後コロナ禍に突入していきます。そこで、弊社にはエンゲージメント活動が必要で、そのためのツールやサーベイが必要なのではないかと、同年夏頃からWevoxの導入に向けて動き始めました。12月に一度経営メンバーの1人に提案をしましたが、実は当時「(当社には労働組合があり、社員の意見を集約する役割を果たしているので)ツールはいらないんじゃないか」と反対を受けたんです。これを受けて、なぜサーベイを導入したいのかを改めて叩き直して経営陣とも議論を重ねた結果、翌年2021年2月に導入が決定しました。
ちなみに、その時反対をした経営メンバーは今ではエンゲージメントの良き理解者になってくれているので、私たちにとってその反対や議論も必要なフェーズだったんだなと改めて思います。この1年は、人事部と会社に何ができるのかという検討を積み上げた1年でした。
続いて導入初年度です。2021年7月の導入を前に、オンライン説明会を全回答対象者に向けて行いました。そして導入後の7月から今まで、月1回のパルスサーベイとしてWevoxを使ったエンゲージメントサーベイを継続しています。初年度は主に事務局メンバーのみがスコアを閲覧し、各部の管理者にフィードバックとヒアリングをするといった流れが中心でした。そんな中、2022年4月に東宝グループの大きな方針である「TOHO VISION 2032」を制定、人材と組織の戦略の中に「エンゲージメントを高める環境整備」という文言が入りました。弊社内で経営戦略とエンゲージメントが結び付き始めた転換点とも言える年でした。
導入2年目からは、サーベイを受けている側に実感を持ってもらうにはスコアを見てもらう必要があるということで、2022年8月に1年間12ヶ月分のデータを基に作成した検証レポートを経営陣に公開し、その時のコメントを併せて全社に公開しました。こちらは非常に反響が大きく、スコアをできるだけ開示し、アクションに繋げる必要性を再認識しました。
また、同月に事務局メンバーがEngagement Run! AcademyというWevoxが提供するアカデミーに参加するようになり、クラスを通じてできた繋がりから得た学びもこの後の施策に影響しました。1年間の検証レポートの課題感から派生して、9月には、2023年の活動方針にも大きく結びつく「チャレンジ・挑戦サーベイ」というカスタムサーベイを実施しました。同年11月からは、コミュニケーションの変容に対応すべく、チーム管理者にもスコアの閲覧権限を付与し、チームでの対話を促進し、挑戦する風土の醸成に注力するという流れが完成しました。
2023年4月には、コミュニケーションツールSlackの全社導入プロジェクトと連携し、より良い社内風土を醸成する有志グループとして、ちょっと昭和なネーミングの「良くし隊」を立ち上げました。また同年6月にはEngagement Run! Academyの講師の方をお招きしまして、役員向けにワークショップ型の研修を実施しました。より経営戦略とエンゲージメントが連動しやすい環境を作るため、この研修以降は役員に全部門・全組織のスコア閲覧権限を付与しています。同年8月からは挑戦する風土醸成のための全社企画として、「TOHO CHALLENGE AWARD」という施策もスタートしました。
「挑戦する風土」には対話と承認が必要不可欠
ここからは施策の詳細をご紹介します。
2022年8月に公開した1年間の検証レポートでは特に「挑戦する風土」に大きな伸びしろがあるとわかりました。そこに対する経営陣のインパクトが非常に大きく、全社からの反響もあったことから、「挑戦する風土」を掘り下げたカスタムサーベイを翌月に行い、その結果を施策につなげていくことにしました。

続いて、チームでの対話の促進についてです。チームでのコミュニケーションは比較的取れている方だと思っていたのですが、コミュニケーションの変容に対応するには積極的な相互理解が必要だと考えました。そこで、より自分たちの組織に目を向けることを目的に、2022年11月にスコア閲覧権限の付与と同時に対話の促進も行いました。その際には、スコアはみんなの”キブン”を話し合うためのツールであることと、エンゲージメント向上サイクルをどんどん回していく必要があることを、皆さんに理解してもらうことに注力しました。

そして2023年のチャレンジ元年に入っていきますが、対話の促進と並行して、4月に先ほどご紹介した「良くし隊」を始動させました。Slackはオープンコミュニケーションを行うツールで、エンゲージメントとの親和性は非常に高く、相乗効果を生むのではないかという狙いから、Slackの導入プロジェクトと共に立ち上げました。
強制や指名での割り当てでは効果が生まれないかもしれないと考え、良くし隊では手挙げ式を採用しており、現在はSlack上でテキストベースでの意見交換やランチミーティング、エンゲージメントのワークを試す会、などの活動を行っています。
また、2023年を通じてWevoxの項目の中から「挑戦する風土」に注力することを決め、3つの施策を行いました。

1つ目は、挑戦を賞賛して失敗を責めない風土を作ることを目的に、社長による風土醸成宣言を社内イントラに全文掲載しました。人事部だけが仕切っていると「人事部がやりたい施策」と捉えられてしまいがちですから、全社を上げて取り組むテーマであると社長自身の言葉で語ってもらうことで、チャレンジ施策の核となる取り組みとなったと思っています。
2つ目は、先ほども紹介した、全社を巻き込んでの挑戦しやすい風土作りを目的としたTOHO CHALLENGE AWARDの立ち上げです。
そして3つ目には、挑戦する風土を支えるには人間関係・承認へのアプローチも必要と考え、弊社のコーポレートスローガン「Entertainment for YOU」を少しもじった「Thanks for YOU」という施策を行いました。これは、Slack上で専用のチャンネルを開設して、人からの気遣いや手助けに対する感謝の気持ちを文字にして伝え合うものです。あえて他の人の目に触れる場所に称賛の履歴を残すことで結び付きを強くしようという目的もあり、良くし隊のメンバーを中心に協力をいただきつつ、今も細々ながら継続しています。
社内アワードを隠れたチャレンジ発見のきっかけに
TOHO CHALLENGE AWARDの詳細についてもご紹介します。この施策の目的は、「挑戦する姿勢を認め合い、埋もれたチャレンジに光を当てること」です。一般的に、チャレンジ・挑戦と言われると、何か新しくて大きな成果を生むようなことに取り組まなければいけないんじゃないかと思われるかもしれません。ですが、この施策は普段の業務などの中にもチャレンジが潜んでいるのではないか、という視点を持ちながら部門ごとに業務を振り返り、そのチャレンジを選出してもらう機会を作るための施策です。実際に弊社でも「新しい挑戦をしなければいけない」という思いで構えてしまった人がいたので、このような目的設定を行いました。

スケジュールはご覧の通りで、最も時間がかかったのは8月の概要構築の部分です。初年度ということもあったのですが、施策を進めていく上で構築したものを見直す必要がありましたし、見直しも予測して作業はしたもののなかなか決め切ることが難しく、議論を多く行ったフェーズでした。
9月のエントリーでは、チャレンジ選出のための対話がスムーズにできる部門と、人数や人員構成によってできない部門もあると思い、対話からチャレンジを導き出すヒントになるようなフローを作成して公開しました。また、事務局メンバーを各部門の担当に割り振っていたので、希望があればファシリテーターとして対話に入ったりチャレンジ選出の相談に乗ったりといったことも行いました。
10月には、エントリーされた内容とテーマに基づきながら、事務局の担当メンバーから各部門のチャレンジを掘り下げるヒアリングを行いました。私たちにとっても、ヒアリングをする中で各職場のメンバーがどういったことにやりがいやモチベーションを感じるかに直接触れられる貴重な機会となり、大きな充実感を覚えた工程でした。11月はこのヒアリングを基に、ヒアリングシートを作成しました。このシートは全社に公開し、それを基にオンライン上で社員投票も実施しました。
また、これとほぼ同時期に、社長・副社長・事務局を中心として受賞部門を決定する事務局審査をディスカッション形式で行いました。この審査では、チャレンジの内容や、チャレンジが今年のテーマに沿っているか、未来につながるものかどうかといった様々な点を考慮し、社員投票で最多得票数を獲得した部門も合わせて合計で11部門が受賞する結果となりました。弊社では毎年12月に社員忘年パーティーを開催していますが、23年はその中の1コーナーとして受賞部門の発表と受賞式を実施し、各受賞部門の方たちにはその場でスピーチも行っていただきました。パーティーが終わった後は、受賞の如何に関わらず、全部門に対する社長・副社長のコメントと、社員投票時にいただいた応援コメントを併せてフィードバックしています。
現在は振り返りのフェーズに当たりますので、事務局で振り返りを行った後、全社に対して振り返りアンケートを実施して2024年以降のアワードにつなげていく予定です。また、このアワードは1回限りで終わらせないよう意識して構築しましたので、毎年ブラッシュアップを重ねて、その時の会社の状態に適した運営ができればと考えています。

今までご紹介した施策を振り返ると、対話の促進に関しては、「社内で実施しています」「この前やりました」といった話を聞く機会が多くなり、スコアを活用していただくことも増えてきている感覚があります。ただ、まだ実施チーム数が少なく、うまく仕組み化ができていない部分もありますし、対話を促進することの重要性や目的をどう伝えていくべきか、どう浸透していくべきかを引き続き検討する必要があるなと感じています。
良くし隊は手挙げ式ということもあり、参加してくださっているメンバーのモチベーションが非常に高く、とても助けられています。しかし、その方たちのさらなるモチベーション向上や活躍の場をこちらが充分に用意できていないという反省点も大いにあり、この点に関しては、メンバーの方を通じてよりチームに還元されるような施策や企画を考えるためにも、Slackチームとの打ち合わせ等を進めている最中です。
また、スライド下部のTOHO CHALLENGE AWARD(TCA)欄に記載しているのは、社員投票時のアンケートでいただいたお言葉です。「他の部門の様子を知られて非常に良かったです」「ヒアリングを通じて認められて嬉しかった」という声をいただけたことは非常にありがたいですし、これについては受賞式という形で直接的な従業員同士の賞賛の場を作れたというのも大きかったかと思います。一方で、事務局・部門共に負担感が大きい工程になってしまったこと、そしてここでもうまく良くし隊の協力を仰げなかったことは反省点としてありますので、今後大いに検討を重ねていきたいポイントです。

最後に、これからの展望をご紹介します。事務局では、全員がエンゲージメントを自分ごとにできることを目指しています。それに向けて、全社でのエンゲージメント基礎研修などを実施したいと考えており、エンゲージメントの基本的な部分である主体性・共同体感覚と呼ばれる部分を社内で育むものにできないかと検討中です。また、業務上でのそれぞれ役割とエンゲージメントをどう結びつけていくかを考え、担う役割と関連性のある施策や企画を進めることも視野に入れています。
良くし隊をはじめ、サステナビリティ・人権や研修など、社内の様々なチームと連動しつつ、共通言語としてエンゲージメントを語ることのできる環境と下地作りを続けていきたいと思っています。
私たちもまだまだ手探り状態でして、「ああすれば良かった」と思うことばかりですが、その分学んだこともありますし、少しずつ弊社の中にもエンゲージメントという概念が根付いてきたのかも、と感じる機会が増えてきました。今は種まき・水やりの時期として、その先に花が咲くことを目指しながら、事務局メンバーみんなで引き続き頑張っていきたいなと思っています。
本日のお話が少しでもお役に立てば幸いです。ありがとうございました。
<編集部コメント>
施策を導入するまでのタイムラインや、そのステップを詳細にご紹介いただきました。自社での活動のヒントになりそうな部分があれば、ぜひ取り入れてみてください!







