「東映をもっともっと好きになれるように」サーベイから導かれた課題と打ち手を軸にしたエンゲージメント活動による変化

「東映をもっともっと好きになれるように」サーベイから導かれた課題と打ち手を軸にしたエンゲージメント活動による変化

東映株式会社
西岡 桂氏
西岡 桂氏
東映株式会社
人事部 人事戦略室 兼 人材開発室

2022年6月に東映に中途入社したのち、人事戦略室にて採用や異動を、また、兼務として人材開発室のエンゲージメント関連業務を担当。サーベイの運営や経営層・従業員の巻き込みなどに携わっている。

飯田 友都氏
飯田 友都氏
東映株式会社
人事部 人材開発室

人材開発室にて、教育や評価、エンゲージメント関連業務を担当。サーベイの配信から結果の集計、レポートの作成、社内への発信、および、経営層や従業員の巻き込みなどに携わっている。

東映株式会社では、2022年12月よりWevoxを導入し、人事部が事務局となり、組織のエンゲージメントの状態の可視化とエンゲージメント向上に向けた取り組みを推進しています。具体的な取り組みについて、事務局を務めるお二人に伺いました。
※取材時(2024年2月)の部署・役職になります。

「エンゲージメントって何?」という状態から、従業員への浸透を図る

―まずは、御社がエンゲージメントに着目した経緯を教えてください。

西岡:2022年夏ごろ、新しく着任した人事部長から「エンゲージメントサーベイをやりたい」と提案を受けたことがきっかけです。

これまで弊社は、従業員満足度調査等のサーベイを導入したことがなく、従業員の現状をデータで見ることがありませんでした。この状況と、従業員の働きがいや働きやすさを実現していきたいという人事部長の思いから、エンゲージメントサーベイという提案が出てきたと理解しています。また、ちょうど東宝さんがWevoxを導入された時期で、弊社の上層部が東宝さんと意見交換をした際にも話題に挙がったようです。

そして、私が前職でエンゲージメントサーベイを担当していたこともあって、適したサーベイを検討するようにと話が来ました。

―2022年12月からWevoxの利用を開始されましたが、Wevoxを選ばれたのはどのような理由でしょうか?

西岡:まず、回答者にそれほど負担をかけずに、パソコンからでもスマホからでも数分で答えられる気軽さがいいなと思いました。また、社内で使用しているSlackと連携してサーベイを配信できるという、従業員の使いやすさと事務局側のアナウンスのしやすさも魅力でした。そして、多様な業界の企業さんが利用されていることも理由の1つです。映画業界は社数が少ないため、比較・分析の材料として様々な業界の企業さんの情報を参照できることは魅力的でした。

―Wevoxの導入は、社内にどのように周知されましたか?

飯田:まずは、導入の目的やエンゲージメントについての説明会を数回実施しました。

西岡:想像はしていましたが、皆さん「エンゲージメントって何?」という状態でした。Wevoxの資料をカスタマイズして、会社と従業員との繋がりがエンゲージメントで、それをスコアとして可視化するのがWevoxであること。スコアが可視化できれば、それを根拠に経営陣も人事も従業員も様々な施策や取り組みができること。そして、最終的には会社と従業員との繋がりを強くできれば、双方にとってもいいことであることなどを伝えました。

―その後は、どのようにエンゲージメント向上に向けた取り組みを進められましたか?

西岡:2022年12月から月1回サーベイを行い、2023年2月までの3カ月分、そして、2023年3月〜8月分の2回に分けて、アトラエさんに「経営レポート」を作成していただきました。経営レポートには、スコアを起点とした組織の状態、課題などがまとめて記載されています。そこで明らかになった課題に対して手を打っていったのが2023年度です。

経営レポートで明らかになった課題一つひとつに対して、施策を推進

―経営レポートからは、どのような課題が見えてきましたか?

飯田:大きく分けて3つの課題が見えてきました。1つ目は、経営からの発信に対する課題です。経営レポートから、経営からのメッセージや施策と従業員の認識に乖離があることがわかりました。

2つ目が、組織長のマネジメントに対する課題です。これは、上司・メンバー間を中心としたチームでの支援・関係性・連携の質が同業界と比べて低い傾向にあることから浮かび上がってきました。

3つ目が、中堅社員のエンゲージメントの低さです。勤続年数12〜20年目で30代後半にあたる、中核を担う社員層のスコアが低迷していることから明らかになりました。

―これらの課題に対して、どのような取り組みをされたのでしょうか?

西岡:2023年度に取り組んだのは、中長期VISIONディスカション、組織長のマネジメントスキル向上、Toei Career Action Programの導入、D&Iプロジェクトの4つです。

―それぞれの詳細について教えてください。まず、中長期VISIONディスカションとはどのような取り組みでしょうか?

西岡:中長期VISIONは2023年2月に「東映NEW WAVE2033」として発表されました。この東映NEW WAVE2033について、役員と従業員が「それぞれの目線からVISIONに向けて何を目指し、どう動けるのか」を意見交換するという取り組みです。従業員を部署横断で等級だけ揃えた十数名のグループに分け、2023年5月〜7月に役員が全国の拠点を回ってグループごとに意見交換しました。

経営レポートで経営からの発信が課題の1つであることが示されたタイミングが、ちょうど東映NEW WAVE2033の発表から間もない時期でした。それもあって、経営戦略部がVISIONの説明行脚を計画しておりましたが、経営レポートの報告の結果を見た会長の「これは行脚してVISIONの説明をやらなきゃダメだよ」の一言で、さらにスピード感を持って実行されたと感じています。

―取り組みの手応えや効果はいかがでしたか?

西岡:自分とは異なる業務や役割を持つ人の、中長期VISIONへの考え方を知る機会になったと感じています。自分だけでは持てていない視点を得ることができました。ある拠点では、ディスカションの前に東映NEW WAVE2033の読み合わせをしたそうで、「ディスカッションがなければあんなにしっかり読み込まなかったと思う」という声を聞き、実施した意義を感じました。

また、経営側は、書面で発信するだけでなく、従業員とちゃんと距離を縮め、背景にある想いを話すことがこれからも大事なんだと思いました。

―組織長のマネジメントスキルの向上については、どのような取り組みをされたのでしょうか?

西岡:組織長(部長、室長)に向けてEngagement Run! Academyの特別公開クラス 「スコア読み解き道場」を案内しました。弊社は、Wevoxを利用する同業種・同規模の会社さんと比較した際に、「自己成長への支援」「成果に対する承認」「発言・意見に対する承認」のスコアが低い傾向にあります。これらのスコアを改善するための1つの打ち手として、マネジメントスキルを向上する目的で、13名の組織長に受講してもらいました。

経緯としては、この課題が経営レポートで明らかになった際、経営陣が「自分たちは褒められた経験が少なく、どうやって褒めればいいのかわからない」とアトラエさんに質問したことがきっかけの1つです。アトラエさんからは、褒め方や承認の仕方にもいろいろあり、チャットでの発言にリアクションを送るだけでも承認になることなどをご説明いただきました。そのやり取りを見て、マネジメントのポイントをEngagement Run! Academyで学べるといいのではという考えが浮かんだんです。そうして経営会議参加者にEngagement Run! Academyの存在を伝え、参加希望のアンケートをとったところ、「参加したい」「チームでスコアを見るミーティングにアトラエさんに入っていただきたい」などの反応が思いのほかあったことから、実施するに至りました。

飯田:私も西岡さんも、2023年8月からEngagement Run! Academyに参加してたくさん学びを得ていたので、組織長にも同じ体験をしてもらいたいと考えていました。また、参加することで、エンゲージメントを自分ごと化し、今よりも一歩メンバーに寄り添うことができれば、マネジメントスキルの向上に繋がるはずという思いもありました。

―参加された皆さんからの反響はいかがでしたか?

飯田:片手間に聞けるようなプログラムではないことを、新鮮に感じた人が多かった印象があります。Engagement Run! Academyでは、ただ講師の話を聞くだけでなく、自分がどう考えているか、どう感じているかなど積極的に意見を出すことが求められます。役員が様子見で覗いて、受講者の方が活発に自分の意見を言っていることに感動していました。そうした自分の意見を出し、相手の意見を聞く場に身を置くだけでも変わるのではないかと思っています。

西岡:ただ、参加後のアンケート結果を見ると、「具体的にどのようにアクションに移すといいのかについて、もう少し知れるとよかった」といったコメントもあり、物足りなさを感じた人が多い印象を受けました。その後、Engagement Run! Academyの2週間のトライアルに希望して参加した組織長も3名ほどいます。その3名の感想もふまえて、できれば今後は数カ月〜半年程度の期間を決めて、組織長を対象に希望者は皆で一緒にEngagement Run! Academyに参加する取り組みを実施できればと思っています。今はまだそのための情報を集めている段階です。

―では、3つ目のToei Career Action Programとはどのような取り組みですか?

西岡:入社年次や年齢に応じたキャリアパス構築の機会を提供し、さらにはキャリ自律を支援するプログラムです。個々の制度に一貫性を持たせたいと思っていたので、一連の取り組みの総称として、Toei Career Action Programと名前をつけました。経営レポートで明らかになった「勤続年数12〜20年目で30代後半にあたる、中核を担う社員層のスコア低迷」という課題や、「キャリア機会の提供」「成長機会」などの項目のスコアの低さに対する打ち手として、元々あった制度の対象を見直したり、新たに制度を設けたりしました。

具体的には、4種類の制度を通じて従業員が①「様々な部門の業務経験を積む」②「自己実現に向けて挑戦する機会を創出する」③「キャリアプランの設計とキャリア形成力を育成する」ことを目指しています。

―それぞれ、どのような制度を整備されたのでしょうか?

西岡:1つ目は、入社3年目の従業員を対象とした、手を挙げれば無条件で別の部署へ異動できる「JobTry制度」です。長年、入社2・3年目の従業員を対象に行っていましたが、2年目で手を挙げる従業員が少ない状況だったので、対象を3年目に限定してトライアルで行うことにしました。

2つ目は、30〜40歳くらいの中堅社員を対象とした社内公募制度「キャリアチャレンジ制度」です。中堅社員のエンゲージメントスコアの低さは異動を含めたキャリアを積む経験や自己実現のチャンスが少なかったことが原因ではないかと考え、トライアルで新設しました。異動機会の少なさは、専門性を必要とする業務が多いという事業特性が起因しています。こうした風土を変え、違う仕事で活躍できるチャンス、やりたいことを実現する機会を会社がつくるべく設けた制度です。

3つ目は、主務を持ちながら他の業務にチャレンジできる制度、Toei Multiple Player、略して「TMP制度」を、全従業員を対象に新設しました。

4つ目は、キャリアデザインシートとキャリア研修です。2022年よりキャリアデザインシートを全従業員に書いてもらって人事部とキャリア面談を行うことを始めています。しかし、「キャリアデザインとは何か?」についての理解が十分ではないので、キャリア研修も順次行っていく予定です。

―各制度の公募への応募状況はいかがでしょうか?

西岡:まず、受け入れていいという部署が思った以上にありました。ほとんどの部署がウェルカムという感じで手を挙げてくれたのが意外でしたね。

一方、実際に手を挙げた人は予想よりも少なかったです。「JobTry制度」も「キャリアチャレンジ制度」も今回はトライアルでの取り組みだと案内したので、様子見の人もいそうだなという印象です。選考の結果や対象者へのアンケートなどを見て、今後のことは検討したいと思っています。

―では、D&Iプロジェクトとは、どのようなプロジェクトでしょうか?

西岡:2023年度からお互いの個性を認め合う組織風土の醸成やさらなるイノベーションの創出を目指し、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進に取り組んでいます。D&Iを「自分ごと」として理解・行動できる従業員を増やし、多様な人が活躍できる組織風土づくりや相互理解を深めていくことなどは、エンゲージメントとイコールのところもあるのかなと認識しています。

その一つにD&Iプロジェクトがあります。1年ごとにメンバーを変えてボトムアップで活動していますが、1期生は、東映のD&Iにおける現状把握、課題の洗い出し、従業員アンケート調査、他社事例の研究やD&I推進企業をゲストに招いた講演の実施、経営陣との意見交換を経て、2024年3月にD&Iスローガン「東映BRAVE宣言」を全社に発表しました。“B・R・A・V・E”は、「Be Respectful And Value Empathy(尊重する心を持ち、共感を大切にしよう)」の頭文字を取り、「BRAVE(勇気)」という言葉自体にも、変わる/変わらない勇気、そして相手を受け入れ、新しいことを受け入れるという勇気を持ってD&Iを推進していこうという想いを込めました。2024年度の2期生のメンバーは、1期目のメンバーが明らかにした課題に対する取り組みを検討して、アクションに移すことを目標に活動します。

エンゲージメントやサーベイに対する理解が少しずつ浸透してきている

―活動を開始されて1年半ほどが経過しましたが、大変さを感じる点はありますか?

西岡:どの施策も走り始めたばかりで、レビューも今後の方針の検討もこれからという状況です。そのため、まだうまくいっている感覚がなく、苦労の連続という気がしています。

飯田:Wevoxの導入初期は、「スコアが高ければいいんでしょ」「自分が組織の一員なんだから、自分が高くつければ全体のスコアが上がるんじゃないか」といった短絡的な考え方をしている人がちらほら見られたのがもどかしかったです。ただ、経営レポートをきっかけに多くの人の意識が少し変わったように思います。組織の現状を知る重要性を突きつけられたことで、エンゲージメントサーベイの結果は試験の点数のようなものではなく、別の視点で見なきゃいけないものなんだと感じてもらえた気がしています。

―そうした変化は、他にも感じていらっしゃいますか?

西岡:毎月サーベイ結果に関するレポートを作って発信していることもあって、エンゲージメントサーベイについて理解している従業員が増えてきたことを感じています。先日、等級別研修として部長クラスの研修を行った際にも、「うちの部のエンゲージメントスコアは…」といった言葉が出ていた部長がちらほらいて、浸透を感じました。

また、ここ半年くらい、「エンゲージメントについて相談していいですか?」と連絡をしてくる組織長が出てきたのも変化かなと思います。私や飯田さんと一緒にスコアを見て、ポイントとなる点を話し合った組織長が何人か出てきました。組織長によって意識に違いはありますが、定期的にスコアを見ている人たちは、「スコアをどう解釈すればいいのか?」「スコアをふまえて何を改善していくのがいいのか?」などと考える段階に進めているかなと思います。

飯田:これまでは、「なんとなく雰囲気が良くないな」などと感覚で捉えていたことについて、スコアで可視化されたことで、「ここを良くするにはどうすればいいんだろう?」と、より疑問が細かく明確になった気がします。

―改めて、組織におけるエンゲージメントの価値や意味をどのように捉えていらっしゃいますか?

飯田:弊社の従業員は、やや受身になりがちな傾向があると感じています。エンゲージメントに向き合う中で、個人個人が自立して、「自分はこうありたいからこの会社にいる」という、Engagement Run! Academyで何度も学んだ「対等な関係」を一人でも多くの人にイメージしてもらいたい。そのために、このエンゲージメントの活動があってくれたらいいなと思っています。

西岡:エンゲージメントスコアに関して言うと、会社をどれだけ好きになれるか、あるいは、会社を好きな人がどれだけ増えているかなどを表すものでもあるかなと思っています。弊社の従業員、特にプロパーの人たちは、この会社に夢を持って入っている人がとても多い印象を持っています。ただ、中にはベテランと若手の間に挟まって業務がしんどく、でも異動などのキャリア機会がなくてモヤモヤしている人もいる。元々は好きで入ってきた人たちが、もっともっと東映という会社を好きになる状態を目指していく。その過程における変化を、エンゲージメントスコアが表してくれるのかなと思っています。そういった点においても、スコアに価値や意味を感じているところです。

あとは、個人のスコアも出るので、内省するとか、自分自身をもっと知るといった意味や価値もあるのかなと思っています。

―では最後に、今後の課題や、取り組みの展望について教えてください。

西岡:今は、エンゲージメントに興味を持ってくれている人と、Wevoxにまったく回答せずにいる人に分かれている印象があります。Wevoxに答えることは自分にとってプラスになるんだということを伝えていけるよう、ちゃんと手を打っていかなければと思っています。毎月地道にレポートを発信して、見てくれる人をどんどん増やしていくことも継続してやっていきたいですね。

また、人事部のメンバー自身が、人事部が行う取り組みや施策はすべてエンゲージメントの高い組織づくりに繋がっていると認識し、一貫性を持って活動内容を発信できるように努めています。しかし、まだ届いていない人もいるので、こちらも続けていきます。

あとは、個人的に、スコアが低い項目やできてないことを指摘するのではなく、良いところを伸ばしていこうという案内にこれから力を入れていきたいと思っています。というのは、会社と従業員との繋がりを強くして、東映が好きな人をどんどん増やしていくことが、エンゲージメントを高めていくポイントの1つかなと思うからです。「私たちの会社や組織にはこんないいところがあって、もっともっとよくなったよね」というようなスタンスで活動したいと思っています。

飯田:私個人としては、スコアが下がっている30代の従業員からエンゲージメントに関わる活動の推進者が出てくるような取り組みも将来的には考えていきたいです。

あとは、今は数字が独り歩きしてしまう可能性を考慮して、自組織のスコアを見られる権限は組織長にだけ付けています。少しずつ社内での理解を深めながら、将来的には、全員がすべてのスコアを見てもいい状態にできれば最高だなと思っています。

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