
改革手段例を一挙に紹介!企画段階の全体像を俯瞰しよう②【連載#11】

大学卒業後、芝浦工業大学大学院 工学修士課程修了。日本能率協会コンサルティングにて企業・組織の改革・改善活動の支援に関わる。専門は、研究開発、商品開発、新規事業開発、事業改革など企業・組織内での「新しい動き」をつくる活動を中心とする。また人と組織の力を最大限に引き出す支援として、キヤリアビジョン開発、コーチング、ファシリテーション、リーダーシップ、社内コンサルタント養成などのヒト系ソリューション事業を開発してきた。2009年独立。現在までエグゼクティブ・コーチング、職場開発(チームスキル)、社内改革推進者養成や内製化など企業や団体の改革を支援している。2012年一般社団法人チームスキル研究所を設立。その後、Wevox組織・人財アドバイザー、一般社団法人経営支援機構 技術顧問などを兼務。現在に至る。
連載:新時代で輝く組織開発の専門家インターナルコンサルタントのススメ
「社内で組織開発を推進していく人材『インターナルコンサルタント』の存在価値は、今が一番高い」
そう語るのは、多くの企業の組織開発を支援し、リーダーの育成も手掛けるチームスキル研究所の田中信さん(通称マコさん)です。マコさんは、インターナルコンサルタントのトレーニングプログラムを自ら構築し、長年講師を務めてきた第一人者。インターナルコンサルタントがなぜ、今の日本企業において重要なのか、そしてどのようなスキルが必要なのか…。これからの時代において、重要な役割となるインターナルコンサルタントのエッセンスを紐解きます。
(※このコラムでは、インターナルコンサルタントが扱う「変える」ことの表現として主に「改革」という表現を用いて説明します。実際には「改革」のほか「改善」、「変革」、「革新」、「革命」などが変える対象に含まれます。)
前回の記事は↓

こんにちは、チームスキル研究所の田中信です。
前回は「改革活動における企画段階の全体像を俯瞰する」と題して、本コラムの第6回でご紹介した「改革デザイン・マトリクス」を使用しながら、改革デザイン・マトリクスにおける縦軸の「改革活動の実施項目」の各内容について概要をみてきました。今回は、横軸に設定される「改革の手段」についてみていきたいと思います。
「改革の手段」を考える際に必要なこと
本コラムの第6回でご紹介した「改革デザイン・マトリクス」の横軸が「改革の手段」となります。このマトリクスを用いて改革の進め方イメージを検討することができます。

また改革ステップを時間軸に乗せて表現することで、改革マスタープランや単年度のアクションプランを策定することができます。インターナルコンサルタントが改革プランを検討する際、改革アイデアを多角的に発想できるようにするため、「改革の手段」の項目はできるだけ多く挙げることを推奨しています。
以下に、横軸に設定する項目例を示し、各項目の概要についてご説明します。
改革デザイン・マトリクス横軸に置く改革の手段例
A : インタビュー
改革を進めるにあたって、有識者やキーパーソン、仲間を見出し、情報収集や改革実現に向けての関係を構築していくための重要な手段となります。実際のインタビューの進め方や、年々重要性が増している背景などは、本コラム第7回、第8回、第9回の中で詳しく説明していますのでご参照ください。
B : 資料収集・分析
改革に関連する社内外の情報収集、分析に関する行動です。
現状やありたい姿を明らかにするための定量/定性情報や改革課題の設定、改革の方向性、社内外のベンチマーキングなどが含まれます。
C : 観察、同行
インタビューや資料収集・分析から、改革マスタープランや単年度のアクションプランを策定することができたとしても、そのプランを実行する段階で、実際の現場との大きなズレが生じてしまい、企画や計画が机上の空論になってしまう可能性があります。
観察・同行を行って、実際の現場を可能な範囲で、近い距離で把握させてもらうことで、それまで検討してきた改革の視点がリフレッシュでき、新たな視点が加わり、より実現性の高い改革施策を検討できる可能性が高まります。
また、観察、同行の際に得られる現場メンバーとのコミュニケーションは、上述した「A:インタビュー」とは異なる環境での対話機会となるため、より生々しい現実の話や現場ならではの改革視点などを得ることができ、その後の分析の質が高まります。
D : 診断ツール活用
改革の構想段階での課題抽出や、改革の推進段階における進捗状況の把握などを目的として診断ツールを活用できます。
例として「Wevox」をご紹介します。Wevoxは、目に見えない「従業員の心理状態や特性、組織のカルチャー等」を可視化することで、よりよい意思決定や行動のきっかけを組織の中に生み出し、エンゲージメントの高い組織づくりに貢献する組織力向上プラットフォームです。
エンゲージメント研究の国内第一人者である慶應義塾大学 島津明人教授の監修に基づき、蓄積されたビッグデータを解析することで組織ごとの特徴や傾向、課題の特定を可能としています。

このような診断ツールを用いることで、改革目的に沿って体系的・網羅的に組織状態を把握することができます。Wevoxをはじめ、継続的に測定することで「組織の健康診断」のような使い方ができる診断ツールも多くあります。
E : キーパーソン打合せ
実際の改革企画やひとつひとつの改革手段を推進に協力していただく社内外の方々とのやりとりになります。社内外のキーパーソンに関しては、本コラム第4回の中でも詳しく触れていますので、ご参照ください。
F : 講演会、シンポジウム、フォーラム
社内メンバーが改革へ関心をもつ機会として、また改革の是非を問うことでの「ゆらぎ」を起こすために、部門長や職場メンバーを対象にした講演会やシンポジウム、フォーラムなどの情報発信の場を利用します。
社外コンサルタントへ改革テーマに関する講演依頼をいただく際「社内の改革企画担当者が改革の必要性や進め方について発信しても組織内で期待する反響が得られないため、外部の専門家に他社事例なども含めて話をしてほしい」というご要望をいただくことがあります。
同じ会社の人の話ではなく、外部有識者や他社で改革を推進している方による事例紹介などには、社内メンバーが関心をもって聞いてくれる傾向があり、結果として社内で「改革に関する議論」のきっかけとなる可能性が高まります。
このような講演会やシンポジウム、フォーラムを定期的に開催することで、継続的に改革に対する関心づくりを実施している企業もあります。二部構成として一部は外部講師をお呼びしての講演会、二部は社内での実践事例の紹介やベストプラクティス事例の紹介などを実施しているケースもあります。

G : 説明会(キックオフ会、意見交換会など)
改革の企画・計画段階から、推進段階に移行する際の節目となる活動です。
改革のキックオフ会や説明会の場面で、初めて改革の詳細について知る人が多く出てきます。そのため改革推進に対して、「疑問や反対意見」をもつ人が出てくるでしょう。改革を推進する際には、各段階で関係者からの「疑問や反対意見」が発生することを予め想定しておくことが重要です。このような「疑問や反対意見」の多くは人が新しい事に接した際に心理的に発生する「変化への抵抗反応」が影響しているケースが多く見受けられます。「変化への抵抗反応と対処法」については別の機会に詳しくご紹介したいと思います。
説明会のネーミングについても考慮が必要です。「説明会」としているのはあくまでプロセス上の名目です。実際には、できる限り改革内容や聴き手が関心を持ちやすいネーミングとして実施することが望ましいでしょう(ex:意見交換会、キックオフ会など)。
H : ワークショップ
改革を社内全体に浸透させるためには、キーパーソンの熱量や労力だけに頼るのでは限界があります。社内の一人一人に、いかに当事者意識を持ってもらえるかという点が重要になってきます。それを実現させるためにも、ワークショップという形式を用いて、発言や行動の機会を増やすことは大変有意義なアクションとなります。
また、ワークショップを通して、それまでにインターナルコンサルタント側が検討を重ねてきた様々な計画を試験的に遂行することができます。この試行結果を用いて今後進めていく改革に向けての多くの検証材料を得られる機会にもなります。
I : コーチング
現場を束ねるリーダーから、具体的な改革推進が始まった状況で抱えがちな問題、課題を共有してもらい、解決に向けての問題の解釈や課題への取り組み方を一緒に考えていくための機会になります。
ここでインターナルコンサルタントに必要になってくるのは、当事者の能動的な思考、行動をサポートする役割です。単に「お悩み相談室」にならないように留意しながら、現場の現状に寄り添った視点を持つことが重要になります。
J : 研修、トレーニング
研修、トレーニング改革の具体策をマニュアル化したものを実践していく段階になります。「G:説明会」と同様、ここで初めて、これまで知らなかったことを実践するということに反対意見や拒否反応が生じる場合もありますが、その場で上から威圧的に強制することなく、その都度の状況に見合った対応が求められます。
K : 実践支援
ICが直接的に改革活動の職場実践に関わる手段です。改革テーマを前提とした、個々の職場が抱える課題や問題を解決するために、職場の成熟度に合わせて伴走役を務めることが期待されます。
多くの職場では上司と部下の関係性が固定化してしまい、改革を推進するための柔軟性を失っているケースを多く見かけます。ICはこのような固定的な状態になっている職場に第二者(※)として介入し、職場状態に「ゆらぎ」を起こしつつ、改革に対する職場の効力感を実感できるための支援を行ないます。
(※「第二者」については、連載「新時代で輝く組織開発の専門家インターナルコンサルタントのススメ」第1回を参照ください。)
L : 社内コミュニケーション(トップ対話会、社内ラジオ、社内報等)
改革活動を継続していく中で、どのように改革意識・意欲を維持または高めていくか、は改革推進者が必ず持つ悩みのひとつです。改革意識・意欲の維持や醸成の鍵となるのが社内コミュニケーションです。
重要なのは、トップの改革に対する思いの発信、ならびに社内の改革実践者の生の声や進捗共有が積極的になされていくことです。具体的には、「対話会」「社内ラジオ」「社内報」「社内SNS」などを活用していきます。特に、経営トップとの対話会を行えると、改革意識の醸成に大きく役立ちます。改革実践者の取り組みは、具体的成果で示したり、苦労話を事紹介したりと、実感値が伝わるような工夫が有効です。
トップから発信されるメッセージ(年度方針や幹部会などの定例的なメッセージを発信する機会)の発言の中にできるだけ改革に関する内容を盛り込んでもらうようにすることで、経営幹部層、管理職層に対する課題認識を高め、維持することに役立ちます。そのためには改革推進者がトップと直接コミュニケーションとして改革状況をインプットできる関係づくりが大切になります。

M: コンテスト、表彰 etc..
「改革の推進」を通じて行ってきた社内の改革活動の中で、社内に紹介したい実践事例を対象に表彰制度などを用いて、広く社内に紹介をしていきます。表彰制度などを通じて、会社として「改革の推進」が真に求められていること、どのような「改革内容」が期待されているのか、について全社に普及啓蒙することが期待できます。改革意識の醸成と定着には時間がかかります。長期的な視点で企画・推進することが大切となります。
社内表彰だけでなく、社外の表彰制度、認定制度、事例発表などへの参加も社内への改革に対する関心を高める上で効果的です。改革活動が社外で評価されていることを知ることで、「自分が思っていた以上に大事なことなのかもしれない」「実はこの改革活動は価値のあるものかもしれない」というように改革について再認識する機会となります。社外の表彰制度の例として、CEEP(※)があります。
(※Wevoxが手掛ける、エンゲージメント実践認定プログラム。受講を完了すると、認定証が発行される。)
今回は「改革活動における企画段階の全体像を俯瞰する」と題して、改革デザイン・マトリクスにおける横軸の「改革の手段」の各内容について概要をみてきました。
次回からは改革の推進段階で求められるインターナルコンサルタントのスキルについてみていきたいと思います。
※本連載は一般社団法人日本能率協会の情報サイト「KAIKA」にて掲載されていた田中信氏の連載「インターナルコンサルタント養成のススメ」を一部編集して掲載しています。
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