
リファレンスチェックとは?採用を成功に導く知識と活用法
採用活動における「リファレンスチェック」とは、候補者の同意を得て、過去の職場の上司や同僚から、職務能力、人柄、実績などの客観的な情報を確認する身元照会です。履歴書や面接では見えにくい「働く上でのリアルな姿」や「信頼性」を多角的に把握し、採用ミスマッチを防ぐことが最大の目的。経歴詐称などを調べるバックグラウンドチェックとは異なり、入社後の活躍に直結する人物像を深掘りします。
個人情報保護法や職業安定法を遵守し、同意を必須とするなど、適切な実施が重要です。企業は採用リスクを低減し、候補者は自身の強みを客観的に裏付けられるため、双方にとってより良いマッチングを実現し、採用を成功に導くための有効な手段となります。

新卒から人事畑ひとすじ23年、制度設計から採用、育成、労務、果ては部下の恋バナ相談まで(?)幅広く経験。前職では人事部長として"長く活躍できる組織"を目指し、社内外から「人事の相談役」と呼ばれるように。現在はアトラエで"エンゲージメントプロデューサー(自称)"としてクライアントの組織づくりを支援しつつ、自社のエンゲージメント向上にも燃える毎日。牛丼を食べながら組織の未来を考えるのが至福の時間。口癖は「ごめんごめん、実はさ...」。ちなみに最近の悩みは「Z世代との絶妙な距離感」。
リファレンスチェックとは?採用を成功に導く知識と活用法
採用活動において、候補者のスキルや経験は履歴書や面接から把握できますが、実際に職場でどのように活躍する人物なのか、その人柄や潜在的なリスクまでは見えにくいものです。そこで重要になるのが、リファレンスチェックです。
この記事では、人事や管理職の皆様が知っておくべきリファレンスチェックの全てを、その定義から具体的な実施方法、注意点までわかりやすく解説いたします。候補者と企業の双方にとって、より良いマッチングを実現するためのリファレンスチェックの有効な活用方法を理解し、貴社の採用活動を成功に導きましょう。
リファレンスチェックの基本:目的と応募者のメリット
定義:応募者の「信用」を多角的に確認する身元照会
リファレンスチェックとは、企業が採用候補者の同意を得た上で、その候補者の以前の職場の上司や同僚といった第三者から、勤務状況、職務能力、人柄、実績などに関する客観的な情報を確認する身元照会のことです。履歴書や面接だけでは見えにくい、候補者の「働く上でのリアルな姿」や「信頼性」を多角的に把握することを目的としています。この調査によって、候補者の自己申告内容が事実と異なっていないかを確認したり、入社後に活躍できるかどうかの判断材料を得たりいたします。
企業がリファレンスチェックを行う目的
企業がリファレンスチェックを行う最大の目的は、採用におけるミスマッチを未然に防ぎ、入社後の定着と活躍を促すことにあります。面接で得られる情報は限られているため、過去の職場での具体的な働きぶりやチームでの協調性、困難への向き合い方などを第三者の視点から聞くことで、より客観的で深い人物像を把握できます。これにより、候補者が貴社の企業文化やチームにフィットするか、期待される役割を遂行できるスキルとポテンシャルがあるかを見極め、採用リスクを低減し、採用の質を向上させることができます。これは単なるリスク回避に留まらず、貴社の組織全体の生産性向上にも繋がる、戦略的な採用投資です。
応募者がリファレンスチェックを受けるメリット
リファレンスチェックは企業にとって有益であると同時に、応募者にとってもメリットがあります。まず、自身の強みや実績を客観的な証拠で裏付け、自己アピールを補強することができます。面接だけでは伝えきれなかった仕事への姿勢や貢献度を、信頼できる第三者が具体的に証言してくれることで、企業からの評価を高める効果が期待できます。また、企業側が候補者の人物像を深く理解しようとしている姿勢は、入社後のミスマッチを防ぐことにも繋がり、結果的に応募者自身が納得のいく転職を実現するための有効なプロセスとなります。
バックグラウンドチェックとの違い
リファレンスチェックと混同されがちなものに「バックグラウンドチェック」がありますが、これらは目的と内容が異なります。リファレンスチェックは、候補者の「職務遂行能力」や「人柄」、「職場での振る舞い」といった人物像に焦点を当て、過去の職場関係者から直接情報を得るものです。対してバックグラウンドチェックは、学歴や職歴の詐称、犯罪歴、破産情報、訴訟歴などの経歴や事実関係に問題がないかを公的記録や公開情報に基づいて確認する、より広範な身辺調査を指します。どちらも採用リスクを低減する目的は共通していますが、確認する情報の種類と深さが大きく異なります。
リファレンスチェックの具体的な実施方法と成功のポイント
実施プロセスの全容:同意から情報共有まで
リファレンスチェックは、通常以下の流れで進行します。まず、企業は候補者に対し、リファレンスチェックを実施する旨を説明し、書面または電磁的な方法で必ず同意を得ます。次に、候補者からリファレンス先となる人物(推薦者)の氏名と連絡先を提供してもらいます。企業は、提供された情報をもとにリファレンス先へ連絡を取り、質問票を送付するか、直接電話などでヒアリングを実施します。収集された情報は、個人情報保護法や職業安定法に則り慎重に管理され、採用判断の材料の一つとして活用されます。結果は、採用担当者や必要に応じて役員など、限定された関係者のみで共有されます。
リファレンス先(推薦者)の選び方と依頼のコツ
リファレンス先は、候補者の業務をよく理解し、客観的に評価できる人物を選ぶことが重要です。一般的には、直属の上司やプロジェクトリーダー、協働していた先輩・同僚が適しています。企業側は候補者に対し、複数の選択肢を提示してもらうよう依頼し、候補者自身が事前にリファレンス先へ依頼内容や連絡がある旨を伝えておくよう促しましょう。推薦者への依頼時には、企業の目的や候補者の応募ポジション、質問の意図を丁寧に説明し、推薦者が安心して協力できるよう配慮することが、質の高い情報を得るための大切なポイントです。
質問内容の具体例:貴社にフィットする人材を見極める視点
リファレンスチェックの質問内容は、候補者のポジションや貴社が重視する点によって調整しますが、一般的には以下の項目が含まれます。「勤務状況(勤怠、責任感)」、「職務能力(課題解決力、専門知識)」、「人柄(協調性、コミュニケーション能力)」、「対人スキル(リーダーシップ、チームワーク)」、「実績と貢献度」などです。
特に、貴社の求める人物像や企業文化に合致するかを見極めるためには、具体的なエピソードを交えて回答してもらえるよう、「どのような状況でどのように貢献しましたか?」「課題に直面した際、どのように対応していましたか?」といった行動特性に焦点を当てた質問を心がけましょう。個人的なプライバシーに関わることや差別につながる可能性のある質問は絶対に避け、あくまで職務遂行能力と人柄に焦点を当てる必要があります。
実施のタイミングと一般的な傾向
リファレンスチェックを実施するタイミングは、企業によって異なりますが、最終面接後や内定出しの直前に行われることが最も一般的です。これは、候補者の最終的な評価に役立てるためであり、選考の早い段階で実施すると、多くの時間とコストがかかるためです。また、リファレンスチェックの実施率は企業規模や業界によって異なり、特に外資系企業やマネジメント層・専門職の採用では高い傾向にあります。近年では、候補者の多様な働き方や転職活動の一般化に伴い、日本企業においても採用プロセスの精度を高める手段として活用が進んでいます。
リファレンスチェック実施における法的・倫理的注意点
応募者への配慮:プライバシーと公平性
リファレンスチェックは、候補者の重要な個人情報を扱うため、プライバシー保護に最大限配慮することが不可欠です。必ず候補者本人の同意を得てから実施し、同意なしに行うことは絶対に避けてください。また、候補者が現職にリファレンスチェックの事実を知られたくないと考えることも多いため、その意向を尊重し、現職以外の人物に依頼するなどの配慮が必要です。不採用の判断に至った場合でも、その理由をリファレンスチェックの結果のみで判断するのではなく、他の選考要素と総合的に評価し、公平性を保つことが求められます。
企業が遵守すべき法規制と倫理
リファレンスチェックを行う際は、個人情報保護法と職業安定法を遵守しなければなりません。個人情報保護法に基づき、取得した個人情報は適切な管理と利用目的の範囲内でのみ使用し、不正なアクセスや漏洩を防ぐ対策が必要です。また、職業安定法では、思想・信条、本籍地など、応募者の差別につながるおそれのある個人情報の収集は禁じられています。質問内容がこれらの法規制に抵触しないよう細心の注意を払い、倫理的な観点からも、不適切な質問やプライベートな領域への踏み込みは厳に慎む必要があります。
「ほぼ内定」ではないことを明確に
リファレンスチェックの実施は、最終選考の段階で行われることが多いため、「ほぼ内定」と捉えてしまう候補者も少なくありません。しかし、リファレンスチェックはあくまで選考プロセスの一環であり、内定を確約するものではないことを、企業側は候補者に対して明確に伝える必要があります。もしリファレンスチェックの結果、懸念事項が明らかになった場合は、候補者に対して丁寧にフィードバックを行い、誤解や不信感を与えないよう配慮することが、企業の信頼性を保つ上で重要です。
応募者がリファレンスチェックを拒否した場合の対応
応募者がリファレンスチェックを拒否するケースも考えられます。拒否の意思表示があった場合、企業はこれを強制することはできません。拒否された場合は、まずその理由を丁寧にヒアリングすることが重要です。現職に知られたくない、適切な推薦者がいないなど、様々な理由が考えられます。もし妥当な理由であれば、推薦者の代替案を提示する、あるいはリファレンスチェック以外の方法で人物像を確認するといった柔軟な対応を検討しましょう。ただし、正当な理由なく一貫して拒否する場合、企業側は採用判断において慎重にならざるを得ない可能性もあります。
まとめ:リファレンスチェックを最大限に活用するために
リファレンスチェックは、履歴書や面接だけでは見抜けない候補者の多角的な人物像や仕事ぶりを明らかにし、採用ミスマッチを防ぐ上で極めて有効な手段です。人事や管理職の皆様は、その定義や目的、具体的な流れ、そして法規制や倫理に配慮した正しい実施方法を理解し、貴社の採用活動に賢く取り入れることが求められます。
候補者への丁寧な説明と同意の取得、適切な推薦者の選定、そして貴社にフィットする人材を見極めるための具体的な質問内容の工夫を通じて、リファレンスチェックはより質の高い採用へと繋がるでしょう。単なる「身元調査」ではなく、貴社の企業文化に貢献し、長期的に活躍する人材を獲得するための戦略的ツールとして、最大限に活用していきましょう。
記事監修者

2013年からライターとして活動。DIOの立ち上げ時から企画・運営を担当。300社を超えるWevox導入企業への取材を通して、エンゲージメントや組織づくりのストーリーを届けている。「わたしたちのエンゲージメント実践書」(日本能率協会マネジメントセンター)のブックライティングも担当。











