
SWOT分析とは?戦略策定の全体像と具体的な活用法
SWOT分析とは、組織や事業の現状を客観的に把握し、今後の戦略を立てるためのフレームワークです。内部環境の「強み」「弱み」と、外部環境の「機会」「脅威」という4つの視点から、自社の優位性や改善点、市場のチャンスやリスクを整理・分析します。この分析を通じて、競争力強化や成長戦略の策定、新たな事業展開の方向性が見えてきます。人事や管理職の皆様が、組織の課題特定、人材育成、部門戦略の策定など、多角的な意思決定に活用できる強力なツールです。

新卒から人事畑ひとすじ23年、制度設計から採用、育成、労務、果ては部下の恋バナ相談まで(?)幅広く経験。前職では人事部長として"長く活躍できる組織"を目指し、社内外から「人事の相談役」と呼ばれるように。現在はアトラエで"エンゲージメントプロデューサー(自称)"としてクライアントの組織づくりを支援しつつ、自社のエンゲージメント向上にも燃える毎日。牛丼を食べながら組織の未来を考えるのが至福の時間。口癖は「ごめんごめん、実はさ...」。ちなみに最近の悩みは「Z世代との絶妙な距離感」。
SWOT分析の全体像
SWOT分析とは、組織や事業、あるいは個人が置かれている状況を、客観的かつ多角的に理解し、今後の戦略を立てるための強力なフレームワークです。具体的には、「強み (Strengths)」「弱み (Weaknesses)」「機会 (Opportunities)」「脅威 (Threats)」という4つの視点から、内部環境と外部環境を整理・分析します。
この分析を行うことで、単なる現状把握だけでなく、将来の方向性を検討し、具体的な行動計画に落とし込むための第一歩となります。特に人事や管理職の皆様が、組織全体の課題特定や人材育成、部門戦略の策定、あるいは新規プロジェクトの成功確率を高めるために、客観的で包括的な視点を得る上で非常に有効なツールです。分析結果を具体的な打ち手に繋げることが、組織の持続的な成長と発展には不可欠です。
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スコアを分析して分かったのは、「同僚からの困難時の支援」「上司との関係」「仕事仲間との関係」などのスコアが高い一方で、「挑戦する風土」「成果に対する承認」「達成感」「成長機会」などのスコアが低いということです。高スコアの項目を維持しつつ、低スコアの項目を改善していくためにはどうすればよいか。SWOT分析などのフレームワークを利用しながら検討した結果を具体的な施策に落とし込み、2024年4月から実際に取り組み始めています。

SWOT分析を構成する4つの要素
SWOT分析は、内部環境の「強み」「弱み」と、外部環境の「機会」「脅威」という、それぞれ性質の異なる4つの要素で構成されています。これらを一つずつ見ていきましょう。
S: Strengths(強み)
強みとは、あなたの組織が持っている内部のポジティブな要素を指します。具体的には、他社と比較して優位性を持つ技術力、長年培ってきた経験豊富な人材、独自のノウハウ、強固なブランドイメージ、効率的な業務プロセス、社員の高いエンゲージメントを誇る企業文化などが挙げられます。
これらの強みを明確にすることで、何をさらに伸ばすべきか、何を活かして目標を達成するべきかが見えてきます。組織の競争力の源泉であり、成長戦略を考える上で最も積極的に活用すべき要素と言えるでしょう。人事においては、例えば特定の専門性を持つチームの存在や、定着率の高さなどが強みとなりえます。
W: Weaknesses(弱み)
弱みとは、あなたの組織が持っている内部のネガティブな要素を指します。改善が必要な点や、他社に劣る部分、リソース(資源)の不足、非効率な業務プロセス、特定分野の専門性不足、従業員のモチベーション低下などが含まれます。
弱みを認識することは、リスクを低減し、将来の成長を阻害する要因を取り除くための第一歩です。放置すれば、せっかくの機会を逃したり、外部からの脅威にさらされる原因となる可能性もあります。例えば、特定の部署における人材不足や、若手社員の育成プログラムの未整備などが弱みとして挙げられます。客観的な視点で洗い出し、改善策を検討することが重要です。
O: Opportunities(機会)
機会とは、組織を取り巻く外部のポジティブな要素を指します。これは、市場の成長、新しい技術の登場、政府の規制緩和、社会のトレンドの変化、競合他社の動向、顧客ニーズの進化など、組織にとって有利に働く可能性のある状況のことです。
これらの機会を的確に捉え、自社の強みと結びつけることで、新たな事業展開や市場拡大、売上向上といった成長を加速させることができます。常に外部環境にアンテナを張り、潜在的なチャンスを見極める洞察力が求められます。例えば、デジタル化の進展によるリモートワーク需要の高まりや、特定分野の労働人口増加予測などは、組織にとっての機会となりえます。
T: Threats(脅威)
脅威とは、組織を取り巻く外部のネガティブな要素を指します。これには、競合他社の台頭、経済の不況、厳しい法規制、技術の陳腐化、原材料の高騰、自然災害、予期せぬパンデミックなど、組織の目標達成を阻害する可能性のある状況が含まれます。
脅威を早期に特定することで、リスクを予測し、事前に対策を講じることができます。最悪の事態を避けるための予防策や、影響を最小限に抑えるための事業継続計画などを準備することが、組織の安定的な運営には不可欠となります。具体的には、競合他社による積極的な人材引き抜きや、労働市場の需給バランスの悪化などが、人事や管理職にとっての脅威となりえるでしょう。
SWOT分析を具体的な戦略へ繋げる実践的な活用方法
SWOT分析は、4つの要素を洗い出すだけで終わりではありません。最も重要なのは、分析で得られた情報をもとに具体的な戦略や行動計画を立てることです。
人事や管理職の皆様であれば、この分析結果を組織全体の目標設定、人員配置の最適化、効果的な研修計画の策定、部門間の連携強化、あるいはチームのパフォーマンス向上施策などに応用できます。特に、以下のような視点で戦略を検討すると、より効果的な打ち手が見えてきます。
強みと機会を活かす戦略(SO戦略)
: 組織の強みを用いて、外部の機会を最大限に活用する攻めの戦略です。例えば、「独自の技術力(強み)」と「成長する市場ニーズ(機会)」を結びつけ、新サービス開発に人員を集中させる、といった戦略が考えられます。
弱みを克服し機会を活かす戦略(WO戦略)
: 外部の機会を捉えつつ、組織の弱みを改善していく戦略です。例えば、「若手リーダーの育成不足(弱み)」を抱えながら、「多様な働き方への社会的なシフト(機会)」がある場合、外部の研修プログラムを活用して次世代リーダーを育成し、新しい働き方に対応できる組織体制を構築する、といったアプローチです。
強みで脅威に対抗する戦略(ST戦略)
: 組織の強みを活かして、外部からの脅威の影響を軽減する戦略です。例えば、「強固なブランド力と顧客基盤(強み)」を武器に、「競合他社の新製品投入(脅威)」に対抗し、顧客ロイヤルティを高めるプロモーションを展開する、といった対策が考えられます。
弱みを克服し脅威を回避する戦略(WT戦略)
: 組織の弱みを改善しつつ、外部の脅威を回避または最小化する防御的な戦略です。例えば、「特定の業務における属人化(弱み)」があり、「担当者の急な離職リスク(脅威)」がある場合、業務標準化を進めるとともに、複数担当制を導入してリスクを分散する、といった対応です。
これらの組み合わせを検討することで、現状の課題を解決し、未来の成長を加速させるための具体的なステップを明確にできます。定期的にSWOT分析を実施し、環境変化に合わせて戦略を見直すことで、組織の持続的な成長と発展をサポートする強力な羅針盤となるでしょう。
まとめ
SWOT分析は、組織の内部にある「強み」と「弱み」、そして外部環境の「機会」と「脅威」を明確にする強力なツールです。単なる現状把握にとどまらず、これら4つの要素を戦略的に組み合わせることで、人事や管理職の皆様が直面する人材育成、組織開発、部門戦略といった多様な課題に対して、具体的な解決策と行動計画を導き出すことができます。
この分析を通じて得られた洞察は、組織の競争力を高め、将来の不確実性に対応するための羅針盤となります。
記事監修者

2013年からライターとして活動。DIOの立ち上げ時から企画・運営を担当。300社を超えるWevox導入企業への取材を通して、エンゲージメントや組織づくりのストーリーを届けている。「わたしたちのエンゲージメント実践書」(日本能率協会マネジメントセンター)のブックライティングも担当。











