「インシデント」とは?定義・影響・管理法を解説

「インシデント」とは?定義・影響・管理法を解説

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サマリー

「インシデント」とは、業務が計画通りに進まない、あるいは進む可能性があった「予定外の出来事」や「問題の兆候」を指します。まだ具体的な損害が生じていないものの、将来的なリスクをはらむ情報セキュリティ上の脅威やシステムの一時的な不具合などを幅広く含みます。既に損害が発生した「アクシデント(事故)」とは異なり、インシデントは問題の芽を摘み、被害を未然に防ぐための警告サインです。これを放置すると、顧客満足度の低下、企業の社会的信用の失墜、金銭的損失など、組織に深刻な影響を及ぼす可能性があります。この記事では、インシデントの定義から似た言葉との違い、企業への影響、そしてリスクを最小限に抑え、業務改善に繋げるインシデント管理の具体的なステップまでを解説。組織の安定運営のために、インシデントへの理解を深め、適切な対応力を高めましょう。

栗山ミキオ
解説者:栗山ミキオ

新卒から人事畑ひとすじ23年、制度設計から採用、育成、労務、果ては部下の恋バナ相談まで(?)幅広く経験。前職では人事部長として"長く活躍できる組織"を目指し、社内外から「人事の相談役」と呼ばれるように。現在はアトラエで"エンゲージメントプロデューサー(自称)"としてクライアントの組織づくりを支援しつつ、自社のエンゲージメント向上にも燃える毎日。牛丼を食べながら組織の未来を考えるのが至福の時間。口癖は「ごめんごめん、実はさ...」。ちなみに最近の悩みは「Z世代との絶妙な距離感」。

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インシデントとは?定義を分かりやすく解説

「インシデント」とは、業務が計画通りに進まない、あるいは進む可能性があった出来事全般を指します。簡単に言えば、「予定外の出来事」や「問題の兆候」のことです。 これは、システムが一時的に不安定になった、顧客からの問い合わせが増えた、情報セキュリティに不審な動きがあったなど、「問題が発生した、または問題に発展しかねない状況」を幅広く含みます。 まだ具体的な損害が生じていない段階でも、将来的なリスクをはらむものはすべてインシデントとして捉えられます。これにより、小さな問題が大きな事故に発展する前に食い止め、組織への影響を最小限に抑えることを目指します。

インシデントと似ている言葉、何が違う?

インシデントを理解する上で、よく混同されがちなのが「アクシデント」や「ヒヤリハット」といった言葉です。これらは非常によく似ていますが、それぞれ異なるニュアンスを持っています。これらの違いを明確にすることで、事態の把握と適切な対応に繋がります。

アクシデントとの違い

インシデントとアクシデントの最も大きな違いは、「損害の発生有無」にあります。 アクシデントとは、既に発生してしまった、具体的な損害や被害を伴う「事故」を指します。例えば、システムが完全に停止して顧客にサービスを提供できなくなった、情報が外部に漏洩してしまった、製品が実際に破損した、などがアクシデントです。 これに対しインシデントは、アクシデントに発展する可能性のある「事象」や「出来事」の段階を指します。つまり、インシデントが放置されたり、適切に対処されなかったりすると、アクシデントへと深刻化してしまう危険性があるのです。インシデントは、アクシデントを防ぐための「警告サイン」と捉えることができます。

ヒヤリハットとの違い

「ヒヤリハット」とは、もう少しで事故になりかけたが、実際には被害がなかった出来事を指します。例えば、重い荷物が頭上から落ちそうになったがギリギリで避けられた、システムの誤操作で情報が消えかけたがすぐに元に戻せた、といった状況です。 ヒヤリハットは、インシデントの一種として分類されます。特に、「具体的な損害には至らなかったが、潜在的な危険があった」という点でインシデントと共通しています。ヒヤリハットは、その名の通り「ヒヤリとした」「ハッとした」瞬間の出来事を指し、事故を未然に防ぐための貴重な情報源となります。これらの経験を共有し、対策を講じることで、将来的なアクシデントを防ぐことに役立ちます。

あなたの会社でも起こりうる!インシデントの具体例

インシデントは、業種や業務内容を問わず、あらゆる組織で発生する可能性があります。ここでは、人事・管理職の皆様がイメージしやすいよう、代表的な分野での具体例をご紹介します。これらの事例を知ることで、自社で起こりうるインシデントを早期に発見し、適切な対策を講じるきっかけにしてください。

情報セキュリティ分野でのインシデント

現代の企業運営において、情報セキュリティは非常に重要です。この分野でのインシデントは、個人情報や企業秘密の漏洩に繋がりかねません。 例えば、社内ネットワークへの不審なアクセスがあった、従業員のパソコンがウイルスに感染した疑いがある、フィッシング詐欺メールが社内に大量に届いた、といった状況がこれに該当します。これらは、まだ情報が外部に漏れたり、システムが完全に停止したりしていなくても、セキュリティ上の脅威であるため、迅速な調査と対応が求められるインシデントです。

システム障害やITサービスでのインシデント

ITシステムは、業務を支える基盤であり、その安定稼働は企業の生命線とも言えます。 この分野のインシデントとしては、社内システムの一部が一時的に機能しなくなった、顧客向けのウェブサイトの表示が通常より遅くなった、オンライン会議ツールに接続しにくい状況が発生したなどが挙げられます。これらのインシデントは、業務効率の低下や顧客満足度の低下に直結するため、IT部門が中心となって原因を特定し、迅速に復旧作業を行う必要があります。

製造業や業務プロセスでのインシデント

製造業や一般的な業務プロセスにおいても、インシデントは日常的に発生し得ます。 例えば、製造ラインの機械が通常とは異なる異音を発している、製品の品質検査でわずかな異常が検出された、従業員が作業手順を誤ってしまいそうになった、社内手続きで書類の提出遅延が発生した、といった状況です。これらは、最終的な製品不良や業務の遅延、さらに大きな事故に発展する可能性を秘めています。初期段階でインシデントとして捉え、改善策を講じることで、品質の維持と業務効率の向上に貢献します。

「インシデント」が企業に与える深刻な影響

インシデントは、単なる「予定外の出来事」では済まされません。適切に対応しないと、企業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。管理職としては、これらの影響を理解し、インシデントへの意識を高めることが重要です。

まず、業務の停滞やサービスの中断により、顧客へのサービス提供に支障をきたし、顧客満足度の低下や機会損失に繋がります。例えば、ECサイトのシステム障害で注文ができなくなれば、販売機会を失うだけでなく、顧客の信頼も失ってしまうでしょう。 次に、情報漏洩などのインシデントは、企業の社会的信用を著しく低下させます。これにより、企業イメージの悪化、株価の下落、優秀な人材の流出など、長期的なダメージを受けることになります。さらに、損害賠償請求や行政指導など、金銭的な損失や法的な責任を負う可能性も高まります。 また、インシデント発生時の対応に追われることで、従業員の残業が増え、精神的な負担が増大し、組織全体の士気低下を招くこともあります。これらの影響は、企業の存続にも関わるため、インシデントへの適切な対応は経営課題として捉える必要があります。

インシデント管理で組織を守る!その重要性と具体的なステップ

インシデントが企業に与える影響の大きさを理解すれば、その発生を未然に防ぎ、万が一発生した場合でも迅速かつ適切に対応するための「インシデント管理」が非常に重要であることが分かります。インシデント管理は、組織の安定性と成長を守るための土台となります。

インシデント管理の目的

インシデント管理の主な目的は、インシデントによる業務への影響を最小限に抑え、できるだけ早く通常の業務状態に戻すことです。さらに、発生したインシデントの根本原因を特定し、再発を防止するための対策を講じることも重要な目的となります。 これにより、同じ問題が繰り返し発生するのを防ぎ、システムの安定性や業務プロセスの品質を継続的に向上させることができます。また、インシデントから得られた教訓を組織内で共有し、将来の予防策として活用する「ナレッジ化」も、インシデント管理の重要な役割です。結果として、組織全体のレジリエンス(回復力)を高め、変化に強い企業体質を築くことに繋がります。

インシデント管理の基本的な流れ

インシデント管理は、以下のステップで進められます。この一連の流れを確立し、組織全体で共有することが重要です。

  1. 発見・報告:

    • インシデントの発生をいち早く察知し、関係者に報告する最初のステップです。従業員からの報告だけでなく、システムによる自動検知なども活用します。

    • 誰が、いつ、どこで、どのような状況でインシデントを発見したのかを正確に記録します。

  2. 初動対応(緊急措置):

    • 報告されたインシデントに対し、速やかに影響範囲を限定し、業務への影響を最小限に抑えるための緊急対応を行います。

    • 例えば、システム障害であれば仮復旧作業、情報漏洩の疑いがあれば一時的な通信遮断などが挙げられます。この段階では、根本解決よりも「現状の悪化を防ぐ」ことに重点を置きます。

  3. 原因究明・恒久対策:

    • 緊急対応で一時的に収束させた後、インシデントの根本的な原因を徹底的に調査し、再発を防ぐための恒久的な対策を検討します。

    • なぜインシデントが発生したのか、その背景にどのような問題があったのかを深掘りします。

  4. 解決・クローズ:

    • 恒久対策が実施され、インシデントが完全に解決したと判断された時点で、そのインシデントを「クローズ」します。

    • 対応の記録、解決策、所要時間などを詳細に残します。

  5. 再発防止策の検討・実施、ナレッジ化:

    • 解決したインシデントから得られた教訓を活かし、今後のリスクを軽減するための予防策を検討し、実施します。

    • この情報は、組織の財産として記録・共有し、類似インシデント発生時の対応や、従業員の教育に活用できるよう「ナレッジ化」します。

まとめ:インシデントへの適切な理解と対策が未来を拓く

本記事では、「インシデント」という言葉の基本的な定義から、アクシデントやヒヤリハットとの違い、そして企業に与える具体的な影響と、その対策としてのインシデント管理の重要性について解説しました。

インシデントは、一見小さな出来事に見えても、放置すれば企業の経営に深刻なダメージを与えかねない、重要なサインです。人事や管理職の皆様には、この「インシデント」という概念を組織全体に浸透させ、「問題の芽」を早期に発見し、迅速かつ適切に対応できる体制を構築することが強く求められます。

インシデント管理のプロセスを確立し、組織的な対応力を高めることは、リスクを軽減するだけでなく、業務プロセスの改善や生産性の向上、さらには従業員のエンゲージメント向上といったポジティブな組織文化の醸成にも繋がります。

記事監修者

長瀬 光弘
長瀬 光弘
DIO編集長/ライター

2013年からライターとして活動。DIOの立ち上げ時から企画・運営を担当。300社を超えるWevox導入企業への取材を通して、エンゲージメントや組織づくりのストーリーを届けている。「わたしたちのエンゲージメント実践書」(日本能率協会マネジメントセンター)のブックライティングも担当。

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