非認知能力とは?現代ビジネスで必須の「見えない力」

非認知能力とは?現代ビジネスで必須の「見えない力」

人材育成・キャリア開発
サマリー

非認知能力とは、テストでは測れない心の持ち方や性格、人間的特性全般を指します。目標達成に向けた「GRIT(やり抜く力)」や、失敗から立ち直る「レジリエンス(回復力)」、周りと協力する力、好奇心などが含まれます。VUCA時代と呼ばれる変化の速い現代社会では、AIでは代替できない「答えのない問い」に立ち向かい、新しい価値を生み出す能力が不可欠であり、個人のパフォーマンス向上や組織の活力に大きく影響するため、近年注目されています。

心理的安全性の高い環境で、挑戦的な機会や具体的なフィードバックを通じて育むことで、社員の成長を促し、組織全体の力を高めることができます。

栗山ミキオ
解説者:栗山ミキオ

新卒から人事畑ひとすじ23年、制度設計から採用、育成、労務、果ては部下の恋バナ相談まで(?)幅広く経験。前職では人事部長として"長く活躍できる組織"を目指し、社内外から「人事の相談役」と呼ばれるように。現在はアトラエで"エンゲージメントプロデューサー(自称)"としてクライアントの組織づくりを支援しつつ、自社のエンゲージメント向上にも燃える毎日。牛丼を食べながら組織の未来を考えるのが至福の時間。口癖は「ごめんごめん、実はさ...」。ちなみに最近の悩みは「Z世代との絶妙な距離感」。

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変化の時代に求められる非認知能力

現代社会は技術革新やグローバル化により、予測困難な時代(VUCA時代)に突入しています。このような状況で企業が持続的に成長し、競争優位性を確立するためには、従来の学力や専門知識だけでは不十分です。今、注目されているのが非認知能力です。これは、テストの点数や資格では測れない、個人の心の持ち方や性格、人間的な特性全般を指します。具体的には、目標に向かって粘り強く取り組む力、周囲と協力する力、失敗から立ち直る力などが含まれます。数値化が難しいとされるため、これまで見過ごされがちでしたが、個人のパフォーマンス、人間関係、ひいては組織全体の活力に大きく影響する重要な要素であると認識されています。

AIやロボットがルーティンワークを代替する中で、人間には、新しい価値を生み出す力、複雑な問題を解決する力、そして多様な人々と協力し困難を乗り越える力がより一層求められます。これらの力を支えるのが非認知能力であり、人材育成や組織開発の鍵として、その重要性が高まっているのです。

非認知能力の定義と主な要素

非認知能力は多岐にわたりますが、ビジネスシーンで特に重要とされる代表的な要素をご紹介します。

  • GRIT(グリット):目標達成に向けた「やり抜く力」です。困難な状況に直面しても、諦めずに粘り強く努力し続けることで、長期的なプロジェクトの成功や高い成果につながります。

  • レジリエンス(回復力):失敗や逆境から立ち直る力です。仕事でミスをしたり、望まない結果が出たとしても、精神的な打撃から早く回復し、次の行動に活かすことができます。

  • 協調性・共感力:他者の意見を尊重し、協力して物事を進める力です。チームメンバーとの円滑なコミュニケーションを促し、チーム全体の生産性向上や良好な人間関係の構築に貢献するだけでなく、新たなアイデアやイノベーションの創出にも繋がります。

  • 自己肯定感:自分自身の価値や能力を肯定的に捉える力です。自信を持って新しい挑戦に臨み、困難な状況でも主体的に考え、行動する原動力となり、リーダーシップの発揮にも影響します。

  • 好奇心:新しいことや未知の事柄に対し、積極的に学び探求する意欲です。変化の激しい時代において、常に新しい知識やスキルを習得し、自己成長を続けるための基盤となります。

ビジネスシーンで発揮される非認知能力の効果

非認知能力は、個人の能力を最大限に引き出すだけでなく、組織全体のパフォーマンス向上にも寄与します。

  • 生産性の向上: GRITや好奇心が高い社員は、自ら課題を見つけて解決策を探し、目標達成に向けて粘り強く取り組みます。これにより、業務の効率化やプロジェクトの成功確率が高まります。

  • チーム力の強化: 協調性や共感力を持つ社員が多いチームは、意見交換が活発になり、相互理解が深まります。これにより、チーム内の連携がスムーズになり、より複雑な課題にも一丸となって取り組めるようになります。

  • イノベーションの促進: 好奇心やレジリエンスが高い社員は、失敗を恐れずに新しいアイデアを提案し、挑戦することができます。これにより、組織内に多様な視点が生まれ、イノベーションが促進されます。

  • エンゲージメントの向上: 自己肯定感が高く、自身の成長を実感できる社員は、仕事への満足度や組織への貢献意欲が高まります。結果として離職率の低下にも繋がり、組織全体のエンゲージメント向上に貢献します。

組織で非認知能力を育む実践的なアプローチ

人事や管理職の皆様が社員の非認知能力を育むためには、戦略的かつ継続的なアプローチが求められます。

  1. 心理的安全性の高い職場環境の構築

    失敗を恐れずに新しいことに挑戦でき、率直な意見を言い合える雰囲気作りが、自律的な成長を促します。具体的には、リーダーが率先して弱みを見せたり、部下の意見を傾聴したりする姿勢が重要です。失敗を咎めるのではなく、「次どうするか」を共に考える文化を醸成しましょう。

  2. 個別具体的なフィードバックと対話の機会創出

    個々の社員に対して、目標設定から行動プロセスまでを共に振り返り、強みや改善点を明確にする個別対話を重ねます。一方的な指示ではなく、コーチングの手法を取り入れることで、自己認識を深め、主体的な行動を支援します。特に、成果だけでなく、努力のプロセスやそこから得た学びを具体的に評価する視点が非認知能力の育成を後押しします。

  3. 挑戦的な業務やプロジェクトへの参加機会の提供

    現状維持ではなく、少し背伸びをしないと達成できないような業務や、多様な部署・メンバーと関わるプロジェクトへの参加を促します。この過程で、困難に直面しながらも粘り強さや問題解決能力、協調性などを実践的に養うことができます。挑戦を支援する仕組み(メンター制度など)も有効です。

  4. 非認知能力の可視化と評価への接続

    非認知能力は数値化が難しいとされますが、日々の行動観察や行動特性アンケート、360度評価などを活用し、その発揮度合いを可視化する試みも有効です。完全に数値化できなくても、成長の兆しを認め、評価や昇進の基準の一部に組み込むことで、社員の意識変革と組織全体での育成推進に繋がります。

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嶺井: 部員の価値観って本当に多様だなと痛感したことです。それぞれの価値観に合わせて、仕事の任せ方から伝え方まで考えることがどれだけ重要なのかを思い知りました。

最初は単純に「各自が何か実績を上げ、それが全体で褒められればエンゲージメントは上がるだろう」と思っていました。

それが、Wevoxの「個人特性診断」を受けてみたら、みんなの考えは必ずしも同じじゃないと分かったんです。「ガツガツ働いて実績を上げたい人」、「目立つよりもサポートで感謝されることがやりがいの人」、「過剰に褒められるのは逆効果で本当に何かを成し遂げた時に褒められたい人」など。時には事務担当・若手に任せ切る等の重要性や、些細な感謝の声掛けなどの重要さにも気付きました。様々な価値観に触れることで、各自のエンゲージメント視点でのマネジメントも重要であることを学びました。

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まとめ

非認知能力は、現代の予測困難なビジネス環境において、個人と組織の持続的な成長を支える不可欠な要素です。学力や専門知識だけでは解決できない「答えのない問い」に対し、主体的に考え、多様な人々と協働し、困難を乗り越える力を生み出します。人事や管理職の皆様には、心理的安全性の確保、質の高いフィードバックと対話、挑戦機会の提供、そして非認知能力の可視化といった多角的なアプローチを通じて、社員一人ひとりの潜在能力を引き出し、組織全体の活力を高めていくことが求められています。非認知能力の育成は、未来のビジネスを勝ち抜くための重要な投資となるでしょう。

記事監修者

長瀬 光弘
長瀬 光弘
DIO編集長/ライター

2013年からライターとして活動。DIOの立ち上げ時から企画・運営を担当。300社を超えるWevox導入企業への取材を通して、エンゲージメントや組織づくりのストーリーを届けている。「わたしたちのエンゲージメント実践書」(日本能率協会マネジメントセンター)のブックライティングも担当。

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