
離職票の基礎知識|発行手続き・目的・注意点を徹底解説
「離職票」は、会社を辞めた人が失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取る際にハローワークへ提出する、極めて重要な公的書類です。正式名称は「雇用保険被保険者離職票」で、「離職票-1」と「離職票-2」の2枚から成り、退職理由や賃金、雇用保険の加入期間などが詳細に記載されます。人事・管理職の皆様は、退職手続きを円滑に進めるため、離職票の基本的な意味、必要となる場面、平均10日~2週間で発行されるまでの流れ、そして注意点を深く理解することが不可欠です。本人の希望に関わらず発行義務があるケース、記載内容の正確性、電子交付の活用など、適切な対応で退職者をサポートし、会社の信頼性を高めましょう。

新卒から人事畑ひとすじ23年、制度設計から採用、育成、労務、果ては部下の恋バナ相談まで(?)幅広く経験。前職では人事部長として"長く活躍できる組織"を目指し、社内外から「人事の相談役」と呼ばれるように。現在はアトラエで"エンゲージメントプロデューサー(自称)"としてクライアントの組織づくりを支援しつつ、自社のエンゲージメント向上にも燃える毎日。牛丼を食べながら組織の未来を考えるのが至福の時間。口癖は「ごめんごめん、実はさ...」。ちなみに最近の悩みは「Z世代との絶妙な距離感」。
離職票の基礎知識
離職票とは、会社を退職された方が、失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取るためにハローワークへ提出する、重要な公的書類です。正式名称は「雇用保険被保険者離職票」といい、通常は「離職票-1」と「離職票-2」の2枚で構成されています。この書類には、退職の理由や、在職中の賃金、雇用保険に加入していた期間などが詳細に記載されており、ハローワークが失業保険の給付資格があるかどうか、またいくら、いつまで受け取れるかを判断する際の基準となります。
失業保険の申請に不可欠な書類
離職票の最も重要な役割は、会社を退職された方がハローワークで失業保険(正式には「雇用保険の基本手当」と申します)の申請をする際に、受給資格があることを証明する書類として提出することです。失業保険は、働く意思と能力があるにもかかわらず仕事が見つからない場合に、生活の安定を図るために支給される制度です。離職票がなければ、ハローワークで失業保険の申請手続きを始めることができません。退職者が安心して次の仕事を探せるよう、会社側は適切な時期に発行する責任があります。
正式名称は「雇用保険被保険者離職票」
離職票の正式名称は「雇用保険被保険者離職票」といい、具体的には「離職票-1」と「離職票-2」の二つの書類を指します。「離職票-1」は、退職者の氏名や住所、マイナンバー、離職理由などを記入する用紙で、失業保険の振込先口座などを記載します。一方、「離職票-2」は、退職者の離職理由の詳細や、退職前6ヶ月間の賃金支払状況などが詳しく記載された書類です。特に「離職票-2」は、失業保険の給付額や給付期間を計算する上で重要な情報が詰まっています。
どのような場面で離職票が必要になるのか
離職票は、会社を退職された方が今後の生活や次のステップに進む上で、特定の目的のために必要となる書類です。その主な目的は、やはり「失業保険」の申請ですが、間接的に他の手続きで必要となる場面もゼロではありません。人事や管理職の皆様は、退職者がどのような目的で離職票を必要としているのかを理解し、適切に手続きを進めることが求められます。特に、会社都合での退職や、自己都合でも失業保険の受給を希望するケースでは、離職票が不可欠となります。
失業保険の受給を希望される時
離職票が最も必要となるのは、会社を退職された後に失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取りたいと希望される時です。ハローワークで失業保険の申請を行うためには、この離職票が必ず提出書類として求められます。失業保険を受け取るには、単に退職しただけでなく、「働く意思と能力があるにもかかわらず、現在仕事に就けていない」という条件を満たす必要があります。離職票に記載された離職理由や雇用保険の加入期間に基づいて、給付の有無や期間、金額が決定されます。
退職後の健康保険・年金の手続きで提示を求められることも
離職票は主に失業保険の申請に用いられますが、退職後に加入する国民健康保険や国民年金の手続きの際に、役所から「退職したことを証明する書類」として提示を求められることがあります。これは、離職票が退職日や退職理由を明確に記載している公的な書類であるためです。直接の提出書類ではないことが多いものの、手続きをスムーズに進める上で役立つ場合があります。会社は、退職者がこれらの手続きで困らないよう、迅速な離職票の発行を心がけることが大切です。
離職票の発行までの流れと期間
退職者からすると、「いつ離職票が届くのか」は、失業保険の申請や次の生活設計に直結するため、非常に気になる点です。会社側(人事・管理職)としては、離職票の発行に関するルールと手順を正確に理解し、滞りなく手続きを進める責任があります。発行が遅れると、退職者の生活に影響が出たり、会社への不信感につながったりする可能性もあるため、特に注意が必要です。発行の義務と期間をきちんと把握しておきましょう。
会社からハローワークへ、そして退職者へ郵送される流れ
離職票の発行には、会社とハローワークの両方が関わります。まず、会社は退職者から提出された「雇用保険被保険者離職証明書」に必要事項を記入し、退職日の翌々日から10日以内にハローワークへ提出します。ハローワークでは、提出された書類の内容を確認し、離職票を作成します。作成された離職票はハローワークから会社へ送り返され、会社はこれを受け取り次第、速やかに退職者本人へ郵送するという流れになります。この一連の流れをスムーズに進めることが大切です。
平均的な発行期間は退職後10日~2週間程度
一般的に、退職者が会社から離職票を受け取るまでの期間は、退職日のおおよそ10日から2週間程度が目安とされています。この期間は、会社がハローワークに書類を提出するまでの日数、ハローワークでの処理にかかる日数、そして会社から退職者への郵送にかかる日数を合計したものです。ただし、会社の処理状況やハローワークの混雑具合、連休などによって、この期間が前後することもあります。もし、この期間を過ぎても届かない場合は、会社またはハローワークに問い合わせてみましょう。
離職票と混同しやすい「退職証明書」との違い
離職票とよく似た名前の書類に「退職証明書」があります。これらはどちらも退職時に発行される書類ですが、目的や発行元、記載される内容、法的義務などが大きく異なります。人事・管理職の皆様は、退職者からどちらの書類を求められているのかを正確に把握し、適切に対応できるように、それぞれの違いをしっかり理解しておくことが重要です。誤った書類を発行したり、情報提供をしたりすると、退職者に混乱を招く可能性があります。
発行元、目的、記載内容、法的義務の違い
項目 | 離職票 | 退職証明書 |
発行元 | ハローワークが作成し、会社を経由して交付 | 会社が直接発行 |
目的 | 失業保険(雇用保険の基本手当)の申請が主目的 | 退職の事実や在籍期間を証明(転職先への提出、国民健康保険・国民年金の手続きなど) |
記載内容 | 退職理由の詳細、退職前6ヶ月間の賃金、雇用保険加入期間など | 退職者の氏名、退職年月日、在籍期間、業務内容など(会社によって異なる) |
法的義務 | 原則として会社に発行義務がある(雇用保険加入期間などの条件あり) | 退職者からの請求があった場合のみ、会社に発行義務がある |
このように、離職票は「失業保険」に特化した公的な書類である一方、退職証明書は退職の事実を証明する会社発行の書類であり、それぞれ用途が異なることを理解しておきましょう。
人事・管理職が知っておくべき離職票の注意点
人事や管理職の皆様にとって、離職票に関する知識は、退職手続きを円滑に進める上で非常に重要です。適切な対応は、退職者との良好な関係を保ち、会社の信頼性を高めることにもつながります。ここでは、特に注意しておきたいポイントをいくつかご紹介します。発行義務や記載内容の正確性、そして最新の制度変更にも目を向け、常に適切な対応ができるよう準備しておきましょう。
退職者の希望に関わらず発行が必要なケース
離職票は、原則として、退職者が失業保険の受給を希望する場合に発行するものです。しかし、中には退職者の希望がなくても会社が発行する義務があるケースが存在します。例えば、雇用保険の加入期間が12ヶ月以上ある従業員が退職する場合や、59歳以上の従業員が退職する場合は、本人の希望に関わらず離職票を発行しなければなりません。これは、将来的な年金受給や高年齢求職者給付金の関係など、特定の制度で離職票が必要となる可能性があるためです。これらの条件に該当する退職者には、忘れずに離職票を発行しましょう。
記載内容に誤りがあった場合の対応
万が一、発行した離職票の記載内容に誤りがあった場合は、速やかに訂正手続きを行う必要があります。特に、退職理由や賃金、雇用保険の加入期間など、失業保険の給付に直接影響する項目に誤りがあると、退職者が適切な給付を受けられなくなる可能性があります。退職者から誤りの指摘があった場合は、まず状況を確認し、必要に応じてハローワークと連携して訂正手続きを進めてください。会社側は、提出する前に内容を十分に確認し、正確な情報が記載されていることを徹底することが重要です。
電子交付も可能に!マイナポータルの活用
近年、行政手続きのデジタル化が進んでおり、離職票もその例外ではありません。マイナポータルを通じて、離職票の電子交付を受けることが可能になっています。これは、退職者がハローワークへ行くことなく、オンラインで離職票の情報を確認できる便利なサービスです。企業側も、電子申請の仕組みを導入することで、紙媒体での書類作成や郵送の手間を削減できる可能性があります。最新の制度変更やデジタル化の流れを把握し、効率的かつスムーズな手続きを推進していくことも、人事・管理職として求められる役割と言えるでしょう。
まとめ
「離職票」は、会社を退職する従業員にとって、失業保険の申請という非常に重要な手続きに不可欠な公的書類です。人事・管理職の皆様は、離職票の正確な意味や、発行義務、発行までの流れ、そして注意点を深く理解しておく必要があります。
失業保険の申請に必須であること
「離職票-1」と「離職票-2」の2枚で構成されていること
平均的な発行期間は退職後10日~2週間程度であること
退職証明書とは目的や発行元が異なること
特定の条件では本人の希望に関わらず発行義務があること
記載内容の正確性が非常に重要であること
これらのポイントをしっかり押さえ、適切な手続きと情報提供を行うことで、退職者が安心して次のステップへ進めます。会社の信頼性向上にもつながる大切な業務なのです。
記事監修者

2013年からライターとして活動。DIOの立ち上げ時から企画・運営を担当。300社を超えるWevox導入企業への取材を通して、エンゲージメントや組織づくりのストーリーを届けている。「わたしたちのエンゲージメント実践書」(日本能率協会マネジメントセンター)のブックライティングも担当。











