チームビルディングとは?組織力を高め目標達成に導く秘訣
VUCA時代に求められる組織力強化の鍵「チームビルディング」を徹底解説。個々の能力を最大限に引き出し、共通目標へ向かう強いチームを意図的に作り上げる戦略的取り組みです。コミュニケーション活性化、モチベーション向上、生産性アップ、イノベーション創出、人材育成といった具体的な効果に加え、心理的安全性を育む1on1や効果的な目標設定、研修活用など実践的な手法を紹介。チームの成長段階を把握するタックマンモデルの活用法や、失敗を避けるポイントも網羅し、人事・管理職の皆様が直面する課題を解決。持続可能で成果を出せるチームを築き、企業の成長を加速させる秘訣がここにあります。

新卒から人事畑ひとすじ23年、制度設計から採用、育成、労務、果ては部下の恋バナ相談まで(?)幅広く経験。前職では人事部長として"長く活躍できる組織"を目指し、社内外から「人事の相談役」と呼ばれるように。現在はアトラエで"エンゲージメントプロデューサー(自称)"としてクライアントの組織づくりを支援しつつ、自社のエンゲージメント向上にも燃える毎日。牛丼を食べながら組織の未来を考えるのが至福の時間。口癖は「ごめんごめん、実はさ...」。ちなみに最近の悩みは「Z世代との絶妙な距離感」。
チームビルディングとは?いま組織に求められる理由
チームビルディングとは、個々のメンバーが持つ能力や個性を最大限に発揮し、共通の目標に向かって協力し合える強いチームを意図的に作り上げていくための様々な取り組みを指します。単に仲良くなることだけが目的ではありません。メンバー一人ひとりが主体的に考え、行動し、互いに支え合いながら成果を出すための土台を築くことが真の狙いです。
現代社会では、事業環境の変化が激しく、一つの部署や個人だけで解決できない複雑な課題が山積しています。また、テレワークの普及により、メンバー間の偶発的なコミュニケーションが減少傾向にあり、意識的にチームとしての繋がりを強める必要性が高まっています。だからこそ、チームビルディングを通じて生産性の向上、社員のモチベーション維持、そして組織全体の目標達成を目指すことが、今、非常に重要視されているのです。
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佐藤:弊社では、2022年にWevoxを導入して以来、サーベイの実施と社内への結果報告を続けてきました。ただ、結果を分析して見えた課題を周知し、その課題に対してアクションを起こすまでには至っていなかったため、2024年から勉強会や社員の皆さんが参加できる施策にも着手していくことにしました。その一環で行うことにした施策の一つが、チームビルディング活動です。
活動中に様々な方法での対話によりチーム運営が円滑に進んでいくのを参加者が体感し、最終的に自分たちが働きやすいチームになっていくことを狙いとしました。加えて、チームビルディングに関するナレッジを得ることも出来ますし、取り組みによってチームにポジティブな効果があったことが、経験者の声として社内に広がっていくことも期待しました。
チームビルディングが組織にもたらす具体的な効果
チームビルディングを行う最大の目的は、「個」の力を「チーム」の力へと昇華させ、組織全体のパフォーマンスを最大化することにあります。これを実践することで、組織やメンバーは、競合にはない強みを獲得し、以下のような具体的なメリットを享受できます。
コミュニケーションの活性化と強固な信頼関係の構築
: メンバー同士が互いを深く理解し、安心して意見を言い合えるようになります。これにより、情報共有がスムーズになり、建設的な議論が促進されます。
エンゲージメントの飛躍的な向上
: チームへの貢献意識が高まり、「自分もチームの一員だ」という強い帰属意識が芽生えます。これが仕事への意欲を向上させ、組織全体の活力を生み出します。
革新的な問題解決能力とイノベーションの創出
: 多様な視点から意見が出やすくなり、単独では生まれなかった画期的なアイデアが創造されやすくなります。困難な問題に対しても、チーム一丸となって多角的に解決策を探す力が格段に高まります。
生産性の向上と確実な目標達成
: メンバーそれぞれの強みが明確になり、最適な役割分担が可能になります。これにより無駄が減り、業務が効率的に進むことで、設定された目標をより確実かつ迅速に達成できるようになります。
人材育成と定着率の向上
: メンバーが成長できる機会が増え、チームへの愛着が深まることで、従業員のエンゲージメントが高まり、結果として離職率の低下にも繋がります。
実践!組織力を高めるチームビルディングの具体的な手法
チームビルディングは、特別なイベントだけではありません。日々の業務やコミュニケーションの中に様々な手法を取り入れることで、着実にチーム力を高めることができます。ここでは、明日から実践できる具体的な手法をご紹介します。
心理的安全性を育むコミュニケーション施策
メンバーが「ここでは自分の意見を安心して発言できる」と感じられる環境を作ることが、チームビルディングの土台です。ミスを恐れず、本音で議論できる雰囲気が、イノベーションを生み出す源泉となります。
1on1ミーティングの定期実施
: 上司と部下が定期的に一対一で話し合う場を設けます。業務の話だけでなく、キャリアやプライベートな悩みまで共有することで、
個人の成長を支援し、強固な信頼関係を深めます
。形式的な報告会に終わらせず、部下の「聴いてほしいこと」に耳を傾ける姿勢が重要です。
チームミーティングの質の向上
: 目的を明確にし、誰もが発言しやすいようファシリテーション(進行役)を工夫します。単なる報告会ではなく、
活発な意見交換やブレインストーミングの場
として活用することで、一体感が生まれ、チームメンバー全員が「自分ごと」として課題に取り組む意識が高まります。
リーダーによる率先した弱み開示
: リーダー自身が完璧ではないことを認め、時には弱みや失敗談を共有することで、メンバーは安心して自分の意見や懸念を表明できるようになります。これにより、
心理的安全性が格段に高まり、建設的なフィードバックが飛び交う文化
が醸成されます。
効果的な目標設定と役割分担
チームの力を最大限に引き出すためには、共通の目標への意識統一と、各メンバーの強みを活かした役割分担が不可欠です。
共通目標の明確化と浸透
: チームの
共通の目標を具体的に共有
し、メンバー全員がその目標達成に向けて自分の役割を理解している状態を作ります。目標が曖昧だと、一体感が生まれにくく、個々の努力が分散してしまいます。SMART原則(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)を活用し、目標をより具体的に設定しましょう。
個の強みを活かした役割の明確化
: 各メンバーの
スキル、経験、そして個性的な強み(ストレングス)を把握
し、それに合わせた役割と責任範囲を明確にします。お互いに何を期待しているのかを共有することで、無駄な重複作業を防ぎ、効率的な連携が可能になります。例えば、ストレングスファインダーなどのツールを活用するのも有効です。
チームを成長させる学びの機会
継続的な学びは、チームの成長を促進し、新たな価値創造に繋がります。
研修・ワークショップの積極活用
: チームビルディング専用の研修やワークショップに参加したり、社内で企画したりするのも効果的です。協力して課題をクリアする
ゲームやアクティビティ
は、普段とは違う一面が見え、相互理解を深める良い機会となります。特に、体験型のプログラムは、座学だけでは得られない深い学びと連帯感を生み出します。
建設的なフィードバック文化の醸成
: 良い点も改善点も、
具体的かつ建設的に伝え合う文化
を育みます。フィードバックは、相手の成長を願う「ギフト」として捉え、定期的に、そして双方向で行うことが重要です。これにより、お互いの成長を促し、チーム全体のパフォーマンス向上に繋がります。
チームビルディングを成功に導くポイントと落とし穴
チームビルディングの効果を最大限に引き出し、持続的な成果に繋げるためには、いくつか押さえておくべきポイントと、避けるべき落とし穴があります。
チームの現状を把握する「タックマンモデル」の活用
チームは常に同じ状態ではありません。まるで人間が成長する過程があるように、チームにもいくつかの段階があり、それぞれの段階で異なる課題とニーズが存在します。このチームの成長段階を理解する上で役立つのが、「タックマンモデル」というフレームワークです。これは、心理学者のブルース・W・タックマンが1965年に提唱したモデルです。
タックマンモデルでは、チームが**「形成期」「混乱期」「統一期」「機能期」「散会期」**という5つの段階を経て成長すると提唱されています。
形成期 (Forming)
: チームが発足したばかりの時期。メンバーはお互いを探り合い、役割や目標が不明確なことが多いです。
混乱期 (Storming)
: 意見の対立や衝突が表面化しやすい時期。リーダーシップや役割分担について疑問が生じることもあります。
統一期 (Norming)
: チーム内のルールや行動規範が自然と定まり、お互いを認め合い始める時期です。協力体制が生まれ始めます。
機能期 (Performing)
: チームが成熟し、目標達成に向けて高いパフォーマンスを発揮できる時期です。自律的に問題を解決し、成果を生み出します。
散会期 (Adjourning)
: プロジェクトの終了などにより、チームが解散する時期です。
チームビルディングを行う際は、今、自分のチームがどの段階にあるのかを理解し、その段階に合わせたアプローチを取ることが非常に重要です。例えば、混乱期にあるチームには、対立を乗り越えるための対話の機会を設けることが必要になりますし、形成期には、メンバー同士の相互理解を深めるアイスブレイクが有効でしょう。
避けたい!チームビルディングの誤解と失敗パターン
効果的なチームビルディングも、やり方を間違えると逆効果になることがあります。特に人事や管理職の方々は、以下の点に注意してください。
強制的な目標設定や参加の強要は逆効果
: メンバーの意見を聞かず、一方的に目標を押し付けたり、無理にイベントへの参加を促したりすると、反発を招き、
モチベーション低下の原因
になります。自発的な参加を促す工夫と、背景にある意図を丁寧に説明する姿勢が不可欠です。
チームに丸投げするだけでは進まない
: 「チームビルディングはメンバーに任せる」と全てを現場に委ねてしまうと、方向性が見失われたり、負担が大きすぎたりして、
結局何も進まない
ことがあります。リーダーや管理職が積極的に関与し、ビジョンを示し、必要なリソースやサポート体制を築くことが不可欠です。
一過性のイベントで終わらせない長期的な視点
: 楽しいアクティビティやゲームは一時的な盛り上がりには繋がりますが、それだけでチーム力が永続的に向上することはありません。
日々の業務やコミュニケーションの中に浸透させる
ための長期的な視点と、継続的な振り返り・改善サイクルが重要です。
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小林(秋): 生産部でも毎月の振り返り会を行っています。生産部では、事務所、倉庫、梱包部屋と個々の作業場所がバラバラなこともあり、コミュニケーションが生まれ辛い状況にありました。そのため、各々が改善したいことや困っていることも表面化してこなかったんです。
そこで、みんなで話せる振り返り会をきっかけにコミュニケーションを促進し、気持ちよく働ける環境づくりを目指そうと考えました。
メンバーの適性を無視したチーム編成は避ける
: 個人のスキルや性格、強みを考慮せず、闇雲にチームを組むと、
能力が発揮されにくく、不満が蓄積する
可能性があります。適切な役割分担と組み合わせを意識し、多様な価値観を尊重するチーム作りを心がけましょう。
チームビルディングは、組織文化そのものを作り上げていく取り組みです。焦らず、メンバーの声に耳を傾けながら、粘り強く進めていくことが大切です。
まとめ:持続可能な強いチームを築くために
チームビルディングは、単なる交流イベントではなく、個々の能力を最大限に引き出し、組織全体の生産性と目標達成力を高めるための戦略的な取り組みです。VUCA時代と呼ばれる現代において、その重要性は増すばかりです。
本記事で解説したように、チームの成長段階を理解し、心理的安全性確保、1on1、効果的なミーティング、研修など、様々な手法を組み合わせながら継続的に実践することが、真のチーム力を育む上で不可欠ですし、競合との差別化にも繋がります。特に、日々の業務に溶け込ませる工夫と、リーダーが率先して心理的安全性を醸成する姿勢が、持続可能な強いチームを築く鍵となります。
記事監修者

2013年からライターとして活動。DIOの立ち上げ時から企画・運営を担当。300社を超えるWevox導入企業への取材を通して、エンゲージメントや組織づくりのストーリーを届けている。「わたしたちのエンゲージメント実践書」(日本能率協会マネジメントセンター)のブックライティングも担当。











