リモートワークとは?定義から導入・運用、メリット・課題まで丸わかり解説
リモートワークは、人材獲得競争力強化、コスト削減、事業継続性(BCP)強化、従業員エンゲージメント向上など、企業に多くの戦略的メリットをもたらします。一方で、コミュニケーション不足、公平な人事評価、情報セキュリティリスクといった課題も存在します。本記事では、リモートワークの定義や在宅勤務、サテライトオフィスなどの多様な形態を解説。人事・管理職の皆様が成功に導くためのポイントとして、明確なルールとガイドラインの策定、最適なIT環境整備、管理職に求められる新たなマネジメントスキル、そして効果的なセキュリティ対策について具体的に説明します。これらの知識と対策を通じて、持続的成長を支える新しい働き方と組織体制を実現しましょう。

新卒から人事畑ひとすじ23年、制度設計から採用、育成、労務、果ては部下の恋バナ相談まで(?)幅広く経験。前職では人事部長として"長く活躍できる組織"を目指し、社内外から「人事の相談役」と呼ばれるように。現在はアトラエで"エンゲージメントプロデューサー(自称)"としてクライアントの組織づくりを支援しつつ、自社のエンゲージメント向上にも燃える毎日。牛丼を食べながら組織の未来を考えるのが至福の時間。口癖は「ごめんごめん、実はさ...」。ちなみに最近の悩みは「Z世代との絶妙な距離感」。
リモートワーク導入が企業にもたらす具体的なメリット
リモートワークの導入は、企業経営において戦略的な選択肢となり、多岐にわたるメリットをもたらします。特に人事・管理職の皆様にとっては、組織強化と持続的成長の鍵となる要素が数多く存在します。
人材獲得競争力の強化と定着率の向上
リモートワークを導入することで、企業は地理的な制約から解放され、全国あるいは世界中の優秀な人材を採用対象とすることができます。これにより、採用市場における競争力を大幅に高めることが可能です。また、従業員にとっては通勤ストレスの軽減やワークライフバランスの改善に繋がり、仕事とプライベートの両立がしやすくなります。この柔軟な働き方は、従業員満足度を向上させ、結果として離職率の低下やエンゲージメントの強化に貢献し、長期的な人材定着に繋がります。
コスト削減と事業継続性(BCP)の強化
リモートワークの推進は、オフィス維持にかかる賃料や光熱費、通勤手当などの固定費削減に直結します。オフィスの規模を最適化したり、フリーアドレス制を導入したりすることで、大幅なコストダウンが期待できるでしょう。さらに、災害や感染症の流行といった緊急事態が発生した場合でも、オフィスに依存しない働き方が確立されているため、業務を中断することなく継続できます。これは、企業の事業継続計画(BCP)において極めて重要な要素であり、予期せぬリスクに対する企業のレジリエンス(回復力)を高めます。
従業員エンゲージメントと生産性の向上
従業員が自身のライフスタイルに合わせて働く場所や時間を選択できることは、仕事へのモチベーションを高め、主体的な働き方を促進します。通勤時間の削減によって生まれた時間を有効活用できるため、スキルアップや自己啓発に充てることも可能です。結果として、従業員一人ひとりの生産性が向上し、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。また、企業が従業員の働き方を尊重する姿勢は、従業員ロイヤリティの向上にも繋がります。
関連する参考記事
続いて、コロナ禍を経て変化した環境についてです。それまでは全員が出社していましたが、コロナの流行と同時にリモートワーク中心の働き方へと移行しました。現在はリモートワークを行っている社員が92%、そのうちの80%以上がリモートワーク中心の働き方、50%以上がフルリモートで業務を実施しています。フルリモート勤務の導入により、地方在住での勤務が可能となったことで、現在では全社員の約18%にあたる約85名が首都圏以外に居住しています。その結果、APC社員の居住地は全国36都道府県にまで広がりました。また、働く場所の柔軟性も含め、福利構成の充実にも毎年取り組んでいて、5年前を知る社員からも「かなり働きやすい会社になってきた」との声があがっています。
リモートワークにおける主な課題とその効果的な対策
リモートワークは多くのメリットがある一方で、導入や運用においていくつかの課題も伴います。これらの課題に事前に目を向け、適切な対策を講じることが成功の鍵となります。
コミュニケーション不足と一体感の希薄化への対応
リモートワークでは、偶発的な会話や休憩中の雑談といった非公式なコミュニケーションが減少し、従業員間のコミュニケーション不足や一体感の希薄化が生じやすくなります。これに対しては、定期的なオンラインミーティング(朝礼・終礼、週次定例など)の実施はもちろん、チャットツール(Slack, Microsoft Teamsなど)を活用したこまめな情報共有や雑談用のチャンネル設置が有効です。また、バーチャルランチやオンライン懇親会など、業務外の交流を促す機会を設けることで、心理的安全性を高め、チームの一体感を醸成することが可能です。
公平で適切な人事評価制度の構築
オフィス勤務とは異なり、リモートワークでは業務プロセスや従業員の働く姿が見えにくくなるため、従来の「プロセス評価」や「態度評価」が難しくなります。この課題を解決するためには、結果に基づいた「成果主義」への評価制度への移行が不可欠です。目標管理制度(MBO)やOKR(Objectives and Key Results)を導入し、個人目標と組織目標の連動性を高めることで、公平かつ納得度の高い評価を実現できます。さらに、360度評価や自己評価なども組み合わせ、多角的な視点から評価を行うことが重要です。
高まる情報セキュリティリスクへの対応
従業員が会社の管理外の場所で業務を行うため、情報セキュリティリスクは増大します。自宅のネットワーク環境の脆弱性や、不特定多数が利用するカフェでの情報漏洩、デバイスの紛失・盗難などが懸念されます。これに対する対策としては、VPN(仮想プライベートネットワーク)の利用義務化、EDR(Endpoint Detection and Response)やMDM(Mobile Device Management)といったセキュリティツールの導入が有効です。また、従業員へのセキュリティ教育を定期的に実施し、セキュリティポリシーの周知徹底を図ることが極めて重要になります。
成功に導くリモートワーク導入・運用のポイント
リモートワークを単なる一時的な措置ではなく、企業の持続的な成長を支える戦略として成功させるためには、計画的な導入と継続的な運用改善が不可欠です。
明確なルールとガイドラインの策定と周知
リモートワークを導入するにあたり、まず「誰が、どこで、どのように働くか」を明確にするためのルールやガイドラインを策定することが重要です。これには、勤務時間、労働時間の管理方法、情報共有のプロトコル、人事評価基準、そして情報セキュリティポリシーなどが含まれます。また、就業規則や労働契約の見直しも必須です。これらのルールは全従業員に明確に周知し、疑問点があればいつでも確認できる体制を整えることで、無用なトラブルを防ぎ、従業員の自律的な働きをサポートします。光熱費補助などの福利厚生制度についても検討し、従業員にとって働きやすい環境を整備しましょう。
最適なIT環境の整備と従業員トレーニング
リモートワークを円滑に進めるためには、適切なIT環境の整備が不可欠です。具体的には、セキュアなネットワーク環境、オンライン会議ツール(Zoom, Google Meetなど)、チャットツール、プロジェクト管理ツール、勤怠管理システムなどの導入が挙げられます。また、これらのツールを従業員が最大限に活用できるよう、使い方に関するトレーニングやヘルプデスク体制の整備も重要です。デバイスの支給ポリシー(会社支給かBYODか)も明確にし、必要に応じて適切なデバイスを準備することで、業務効率の低下を防ぎます。
管理職に求められる新たなマネジメントスキル
リモートワーク環境下では、管理職には従来の「対面での管理」から「成果に基づく信頼と支援」へのマネジメントスタイルの転換が求められます。従業員の自律性を尊重しつつ、定期的な1on1ミーティングや進捗確認を通じて個々の状況を把握し、適切なサポートを行うスキルが不可欠です。マイクロマネジメントを避け、明確な目標設定とフィードバックを通じて従業員のモチベーションを維持することが重要です。また、リモート環境での従業員のメンタルヘルスケアにも配慮し、定期的なコミュニケーションを通じて心理的なサポートを提供できる管理職の育成が、組織全体のパフォーマンス向上に繋がります。
関連する参考記事
半期ごとの活動方針を踏まえて、各メンバーの担当業務とその業務を通じて何にコミットしていくのかということを明確化し、一人ひとりに伝えていきました。というのは、コロナ禍でリモートワークであったことなどから、それぞれの業務範囲はなんとなく決まっているものの、何にコミットしていくのかということが言語化されていなかったり、部署として共通認識が持てていなかったりしたんです。そこを、構造化していきました。
リモートワークの基本理解:定義と多様な働き方
リモートワークは現代の働き方として急速に普及しましたが、その本質と多様な形態を理解することは、適切な導入と運用に繋がります。
「リモートワーク」とは何か?
「リモートワーク」とは、「遠隔の」「離れた」という意味を持つ「リモート」の言葉が示す通り、会社や特定のオフィスから離れた場所で業務を行う働き方全般を指します。インターネットや情報通信技術(ICT)を最大限に活用し、自宅、サテライトオフィス、コワーキングスペース、あるいは旅先など、場所を選ばずに仕事を進めることが可能です。これにより、従業員は時間や場所に縛られず、より柔軟かつ効率的な働き方を実現できるようになります。
代表的なリモートワークの形態
リモートワークにはいくつかの具体的な形態があります。最も一般的なのは、従業員が自宅で業務を行う「在宅勤務」です。その他にも、企業が主要オフィスから離れた場所に設けた小規模なオフィスである「サテライトオフィス」を利用する形態や、複数の企業や個人が共用する「コワーキングスペース」を活用する働き方があります。さらに、休暇先や実家などで観光やレジャーと仕事を両立させる「ワーケーション」もリモートワークの一種として注目されています。これらの形態は、企業のニーズや従業員の状況に合わせて柔軟に選択・組み合わせることが可能です。
まとめ
リモートワークは、単なる一時的な働き方の変化に留まらず、企業が競争力を高め、持続的に成長するための戦略的なツールとなり得ます。人材獲得競争力の強化、コスト削減、事業継続性の向上、そして従業員エンゲージメントと生産性の向上といった多くのメリットを企業にもたらします。
一方で、コミュニケーション不足、人事評価の難しさ、情報セキュリティリスクといった課題も存在します。これらの課題に対しては、明確なルールの策定、最適なIT環境の整備、そして管理職の新たなマネジメントスキルの習得を通じて、積極的に対策を講じることが重要です。
記事監修者

2013年からライターとして活動。DIOの立ち上げ時から企画・運営を担当。300社を超えるWevox導入企業への取材を通して、エンゲージメントや組織づくりのストーリーを届けている。「わたしたちのエンゲージメント実践書」(日本能率協会マネジメントセンター)のブックライティングも担当。











